加算要素 輸入の課税価格 5つの要素と申告漏れ防止策

輸入取引の加算要素は関税計算の基礎となる重要な項目ですが、意外な費用が課税対象となることをご存知でしょうか?インボイス価格以外にも加算が必要な要素を見逃すと、事後調査で追徴課税となるリスクが高まります。通関業務従事者が知っておくべき加算要素の詳細とは?

加算要素 輸入の課税価格 計算方法

インボイスに記載ない金型代も加算対象です。


この記事の3つのポイント
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加算要素の5つの分類

輸入港までの運賃・保険料、手数料、無償提供物品、ロイヤルティ、売手帰属収益が課税価格に含まれる

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見落としやすい加算要素

金型代や無償提供資材、別契約のロイヤルティは申告漏れが多く、事後調査での指摘事例の相当程度を占める

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申告漏れのペナルティ

過少申告加算税10~15%、重加算税35~40%が課される可能性があり、早期の専門家相談が重要

加算要素 輸入の課税価格 基本的な構造

輸入貨物の課税価格は、インボイス価格だけでは計算できません。関税定率法第4条において、課税価格は「現実支払価格+加算要素」で構成されると規定されています。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/c5c7ef72adf48650f0fb470636ac7e311488cfa1


現実支払価格とは、買手から売手に対して実際に支払う価格のことです。一般的にはインボイスに記載された金額を指します。


参考)https://mkc-net2.com/regarding-the-evaluation-declaration/

しかし輸入取引では、インボイスに記載されていない別払いの費用が多数存在します。


これらの費用を加算要素といいます。



通関業者は輸入者から提供されたインボイス等の書類に基づいて申告書を作成しますが、別払いの費用までは把握できません。つまり輸入者自身が加算要素を理解し、通関業者に情報を伝える必要があります。この情報伝達が不十分だと、意図せず過少申告の状態になるリスクがあります。

課税価格の計算式は「関税額 = 課税価格 × 関税率」となり、課税価格は「CIF価格 + 加算要素」で求められます。輸入者は輸入申告前に、加算要素となる費用を正確に把握しておく必要があります。


参考)輸入申告における加算要素とは - FTA、EPAの基礎知識|…

加算要素 輸入 1号から5号までの分類

加算要素は関税定率法第4条第1項第1号から第5号まで、5つの区分に分類されています。


参考)https://www.customs.go.jp/tokyo/content/202006_hyouka_file8.pdf

1号:輸入港までの運賃・保険料等
輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用が該当します。具体的には海上運賃、航空運賃、海上保険料、貨物保険料、輸出国内での運送費用などが含まれます。


参考)https://www.foresight.jp/tsukanshi/column/addition-element/


2号:手数料・容器包装の費用
輸入貨物の買い付けに関して買手が支払った手数料仲介料が対象です。ただし買手が自身の代理人に支払う「買付手数料」は加算要素から除外されます。


これは試験でも重要なポイントです。


また輸入貨物の容器、包装に要する費用も2号に含まれます。


参考)【通関実務】計算問題パターン別攻略法(第1回:課税価格の計算…


3号:無償等により提供される物品・役務
海外の工場で製品を製造させる際、日本側で金型を作成して送ったり、原材料を無償で提供したりした場合が該当します。具体的には原材料、副資材、ラベル、金型、機械、設備、燃料、触媒、技術、設計などが含まれます。


参考)https://www.kanzei.or.jp/tokyo/tokyo_files/pdfs/other/zeikan201706016_1b.pdf


4号:特許権等の使用に係るロイヤルティ等
輸入貨物に係る特許権実用新案権意匠権商標権などの使用に対して支払われるロイヤルティライセンス料が対象です。ブランドやキャラクターのライセンス使用料、特許権使用に伴う対価などが具体例として挙げられます。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/2d87448992927f4be985b54f4ad52031a143c128


5号:売手帰属収益
買手による輸入貨物の処分または使用による収益で、直接または間接に売手に帰属するものが該当します。売手にキャッシュバックされる収益などが事例として挙げられます。

加算要素の分類を理解することが基本です。


加算要素 輸入 ロイヤルティの判断基準

ロイヤルティは事後調査で指摘されやすい加算要素の筆頭です。貨物代金とは別の契約書で支払っているから関係ないという誤解が非常に多いためです。

加算要素となるロイヤルティには3つの条件があります。第一に輸入貨物に係るものであること、第二に輸入貨物の輸入取引をするためのものであること、第三に買手により直接または間接に支払われるものであることです。

通達では「買手が当該対価を特許権者等に支払わなければ、実質的に当該輸入貨物に係る輸入取引を行うことができないこととなる又は行われないこととなるもの」と規定されています。つまり支払わなければ輸入取引が成立しないロイヤルティが加算対象です。

具体的な加算事例としては以下のケースが挙げられます。商標権者A社の子会社である売手からA商標の付された商品を輸入し、買手がA社とライセンス契約を締結してA社にロイヤルティを支払う場合。買手は商標権者である売手とライセンス契約を結んでおり、貨物代金とは別にロイヤルティを売手に支払う場合。商標権者である売手と買手はライセンス契約を締結し、売手から貨物を輸入して輸入後に商標を付す場合などです。

一方でロイヤルティを課税価格に加算しない場合もあります。輸入取引に際し、ライセンサーと製造者の関係性が認められず、ライセンス契約に関して製造者に直接行使することができない場合などが該当します。

ロイヤルティが輸入貨物そのものと関連性があり、かつ輸入取引の条件として支払われている場合に加算要素となります。契約書の内容を精査し、この2つの条件を満たすかどうか判断することが重要です。


参考)輸入貨物の課税価格とロイヤルティなどの費用の加算問題

ロイヤルティの判断は複雑ですね。契約の実態に応じた個別判断が求められるため、判断に迷った場合は税関や専門家に相談することをお勧めします。


税関の質疑応答事例集では、ロイヤルティの加算要否に関する具体的な判断基準が示されています

加算要素 輸入 金型代と無償提供資材の取扱い

金型代や無償提供資材は、インボイスに記載されないため見落としやすい加算要素です。

海外の工場で製品を製造させる際、日本側で金型を作成して送ったり、原材料を無償で提供したりしていませんか。これらの費用も輸入貨物の価値を構成するものとして加算対象となります。

3号の無償提供物品・役務には、以下の4つのカテゴリーがあります。イ.輸入貨物に組み込まれている材料、部分品またはこれらに類するもの(原材料、副資材、ラベル等)、ロ.輸入貨物の生産のために使用された工具、鋳型またはこれらに類するもの(機械、設備、金型等)、ハ.輸入貨物の生産の過程で消費された物品(燃料、触媒等)、ニ.技術、設計その他輸入貨物の生産に関する役務です。

金型は「ロ」に該当します。たとえば日本で100万円かけて金型を製作し、海外の協力工場に無償で送付したとします。その金型を使って製造された製品を輸入する場合、金型代100万円を輸入数量に応じて按分し、各回の輸入申告時に課税価格に加算する必要があります。

無償提供資材も同様です。日本から原材料を無償で提供し、海外で加工した製品を輸入する場合、その原材料費を課税価格に加算します。

複数の輸入貨物に係る加算要素となる費用が一括して支払われる場合には、個々の輸入貨物の数量等に応じた合理的な方法により按分して当該輸入貨物の課税価格に算入します。


按分計算が必要ということですね。



金型代や無償提供資材の加算要素を見落とすと、事後調査で多額の追徴課税を受けるリスクがあります。製造委託契約の内容を確認し、無償提供した物品や役務がないか、事前にチェックすることが重要です。


税関の関税評価用語等解説では、加算要素の詳細な定義と具体例が掲載されています

加算要素 輸入 買付手数料の例外規定

手数料は基本的に加算対象となりますが、買付手数料だけは例外です。


海外のエージェントに支払う手数料については、「買付手数料」であれば非加算ですが、「販売手数料」等であれば加算対象となるなど、契約の実態に応じた高度な判断が求められます。

買付手数料とは、買手が自身の代理人に支払う手数料のことです。買手が海外の調達代行業者に対し、買手のために商品を探して購入してもらう対価として支払う手数料は、買付手数料に該当し加算要素から除外されます。

一方で売手側のエージェントに支払う販売手数料や仲介手数料は、加算要素に含まれます。買手が支払った手数料であっても、それが売手側の利益になる性質のものであれば加算対象となります。

手数料の性質を見極めるには、契約書の内容を精査する必要があります。誰のために、誰に対して、どのようなサービスの対価として支払われるのかを明確にすることが重要です。


買付手数料だけは例外です。通関士試験でも最重要のポイントとして出題されるため、確実に覚えておきましょう。実務においても、手数料の性質を正しく判断することが申告漏れ防止につながります。

加算要素 輸入 事後調査での指摘とペナルティ

税関の事後調査では、会計帳簿(総勘定元帳など)と輸入申告書を突き合わせ、加算要素が課税価格に含まれているかをチェックします。

事後調査で指摘され、多額の課税(関税+消費税+加算税)がなされるケースの相当程度は、単価の誤りではなく「加算要素」の申告漏れに起因しています。つまり意外に思えるかもしれませんが、インボイス価格の間違いよりも、別払い費用の申告漏れの方が指摘事例として多いのです。

申告漏れが発覚した場合、不足していた関税・消費税に加え、原則として10%(または15%)の「過少申告加算税」が課されます。さらに事実を隠蔽・仮装していたと認定されれば、35%~40%もの「重加算税」が課される可能性があります。

過少申告加算税10%は、たとえば不足税額が100万円だった場合、10万円の加算税が追加で課されることを意味します(消費税を含む延滞税を除く本税ベース)。


重加算税35%となれば35万円です。


痛いですね。


また場合によっては刑事事件に発展する可能性もあります。事後調査の通知が来た段階、あるいは調査中に指摘を受けた段階で、早期に弁護士へ相談することをお勧めします。

事後調査は単なる税務処理ではなく「法解釈の争い」でもあります。予期せぬ課税を防ぐためにも、貿易実務に精通した専門家のサポートをご検討ください。

加算要素 輸入 評価申告制度の活用方法

加算要素がインボイスに記載されていない場合、評価申告によりその費用を別途加算する必要があります。

評価申告には個別評価申告と包括評価申告の2種類があります。個別評価申告は輸入申告ごとに加算要素を申告する方法です。包括評価申告は一定期間(最長2年間)の輸入について、事前に税関長の承認を受けて包括的に加算要素を申告する方法です。

包括評価申告において、加算要素となる金額が一括して現地に支払われている場合などは、適用期間内に輸入される個々の数量等に応じて加算金額を按分する方法と、初回輸入申告時にまとめて一括加算する方法のいずれかで申告することができます。

一括加算の方が手続きは簡便ですが、初回に多額の関税・消費税を納付する必要があります。按分加算の場合は各回の輸入時に少額ずつ納付するため、キャッシュフローの観点からは有利です。どちらの方法を選ぶかは、企業の資金繰りや事務負担を考慮して判断します。


加算要素の申告には数値化した資料(証明書類)を提示することが必須です。税関は支払明細など証拠ありきで審査を行うため、証拠がなければ加算要素として認められません。

金型代であれば金型製作の請求書や見積書、ロイヤルティであればライセンス契約書と支払明細、無償提供資材であれば材料の購入伝票などが証明書類となります。これらの資料を事前に整備しておくことが、スムーズな評価申告につながります。


加算要素 輸入 修正申告と更正の請求

過去の輸入申告で加算要素の申告漏れに気づいた場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
納税申告に誤りがあった場合、修正申告または更正の請求により訂正することができます。納める税金が少なかった場合(加算要素の申告漏れなど)は修正申告を行います。逆に納める税金が多かった場合は更正の請求を行います。

更正の請求ができる期間は、原則として貨物の輸入の許可を受けた日から5年以内です。修正申告には期限の制限はありませんが、税関から更正を受ける前に自主的に修正申告した方が、加算税の負担が軽減される可能性があります。

加算要素の申告漏れを自ら発見した場合、速やかに税関に相談し、修正申告の手続きを進めることをお勧めします。事後調査で指摘される前に自主的に修正すれば、過少申告加算税が軽減または免除される可能性があります。


また社内の輸入業務フローを見直し、今後同じミスを繰り返さないための体制を整備することも重要です。具体的には加算要素のチェックリストを作成する、通関業者との情報共有体制を強化する、定期的な社内研修を実施するなどの対策が考えられます。


加算要素 輸入 通関業者との連携体制

通関業者はインボイス等の書類に基づいて申告書を作成しますが、インボイスに記載されていない別払いの費用までは把握できません。

輸入者自身が加算要素を理解し、通関業者に情報を伝える必要があります。この情報伝達が不十分だと、意図せず過少申告の状態になるリスクがあります。

通関業者との連携を強化するには、以下のような取り組みが有効です。第一に加算要素の有無を確認するチェックシートを作成し、輸入申告ごとに提出する。第二に金型代やロイヤルティなど継続的に発生する加算要素については、包括評価申告の利用を検討する。第三に新規取引先や新商品の輸入開始時には、事前に通関業者と打ち合わせを行う。


通関業者も加算要素の存在を知らなければ、正しい申告書を作成できません。輸入者側から積極的に情報を提供することが、申告漏れ防止の第一歩です。


また通関業者に対して、定期的に自社の取引形態や契約内容を説明することも重要です。製造委託契約、ライセンス契約、原材料供給契約など、加算要素が発生しうる契約については、その内容を通関業者と共有しておきます。


通関業者との信頼関係を構築し、双方向のコミュニケーションを密にすることで、加算要素の申告漏れを防ぐことができます。


加算要素 輸入 社内管理体制の整備

加算要素の申告漏れを防ぐには、社内管理体制の整備が不可欠です。


まず経理部門と貿易部門の連携を強化します。経理部門は総勘定元帳などで海外への支払いをすべて把握していますが、それが加算要素に該当するかどうかの判断は貿易部門の専門知識が必要です。両部門が定期的に情報を共有し、海外への支払いの中で加算要素に該当するものがないかチェックする体制を作ります。


次に契約書の管理体制を整備します。ライセンス契約、製造委託契約、原材料供給契約など、加算要素が発生しうる契約書は、貿易部門が一元管理し、通関業者にも情報を共有します。契約内容が変更された場合は、速やかに通関業者に通知します。


さらに定期的な社内研修を実施します。加算要素の基礎知識、最新の税関動向、事後調査の事例などを学ぶ機会を設けることで、社員の意識を高めます。


加算要素のチェックリストを作成することも有効です。輸入申告前に「ロイヤルティの支払いはないか」「無償提供した物品はないか」「金型代は加算したか」などの項目をチェックする仕組みを作ります。


結論は属人化を避けることです。


社内管理体制を整備することで、加算要素の申告漏れを組織的に防止できます。一人の担当者に依存するのではなく、複数の目でチェックする体制を構築することが重要です。