通関業法基本通達の定義と通関手続の範囲

通関業務に携わる方々にとって必須の知識である通関業法基本通達について解説します。通関手続の範囲や業として行う場合の定義など、実務に直結する内容を網羅的に解説していますが、あなたは通関業法基本通達の最新の改正内容をご存知ですか?

通関業法基本通達の定義と通関手続

通関業法基本通達の基本知識
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通関業法の目的

通関業を営む者の業務を規制し、適正かつ迅速な通関手続の実施を確保すること

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通関手続の範囲

輸出入申告、特例申告、船名・数量変更申請など通関に関わる一連の手続き

⚖️
通関業者の責任

適正な通関業務遂行のための社内管理規則の整備と法令遵守が求められる

通関業法基本通達は、昭和47年3月1日蔵関第105号として公布され、通関業法の適正な運用を図るための具体的な指針を示すものです。通関業務に携わる方々にとって、この通達を理解することは業務を適切に遂行するための基礎となります。

 

通関業法基本通達における通関手続の範囲と定義

通関業法基本通達2-2では、通関手続の範囲について明確に定義されています。通関手続には以下のものが含まれます:

  • 関税法第7条の2第2項に規定する特例申告
  • 関税法第7条の15第1項の規定による更正の請求
  • 輸出入申告等の許可または承認の内容に変更を及ぼす手続(例:輸出許可後の船名、数量等変更申請手続)

さらに、通関業法基本通達2-2では、通関業法第2条第1号イ(1)に掲げる申告、申請等以外の手続についても言及しています。例えば、事前教示照会、不開港出入許可申請、外国貨物仮陸揚届、見本一時持出許可申請、保税地域許可申請、外国貨物運送申告、輸出差止申立または輸入差止申立なども通関手続の範囲に含まれるとされています。

 

これらの定義を理解することで、通関業者は自身が行う業務の法的位置づけを正確に把握し、適切な対応を取ることができます。

 

通関業法基本通達の「業として」の意義と解釈

通関業法基本通達2-3では、法第2条第2号に規定する「業として通関業務を行う」の意義について解説しています。これは、営利の目的をもって通関業務を反復継続して行う場合、または反復継続して行う意思をもって行う場合を指します。

 

重要なポイントとして、この「営利の目的」は直接的であるか間接的であるかを問わないとされています。つまり、通関業務が他の業務に付帯して無償で行われる場合でも、「業として」行われていると見なされる可能性があります。

 

例えば、貿易会社が自社の輸出入貨物の通関手続を無償で代行している場合でも、それが会社の主要業務の一部として反復継続的に行われているのであれば、「業として」通関業務を行っていると解釈される可能性があります。

 

この解釈は通関業者の許可取得の必要性を判断する上で非常に重要です。無許可で通関業務を「業として」行った場合、通関業法違反となり罰則の対象となる可能性があります。

 

通関業法基本通達における社内管理規則の要件

通関業法基本通達では、通関業者が整備すべき社内管理規則について詳細に規定しています。社内管理規則とは、通関業務を適正に遂行するために必要な事項が記載された内部規則のことを指します。

 

社内管理規則に含めるべき主な項目は以下の通りです:

  1. 目的等
    • 社内管理規則の制定目的
    • 適正な通関業務遂行のための基本方針と適用範囲
  2. 社内体制の構築
    • 通関業務に係る社内体制と責任者の明確化
    • コンプライアンス委員会等の設置
  3. 通関手続
    • 通関書類作成の手法、手順、留意事項
  4. 監査体制
    • 定期的かつ継続的な監査の実施方法
    • 監査結果に関する対応措置
  5. 教育および訓練
    • 通関士およびその他の従業者の専門知識習得のための教育方法
  6. 書類の保存
    • 通関業務に関する書類の保存方法と期間
  7. 顧客および貨物管理者との関係
    • 顧客情報の管理方法
    • 通関依頼内容の把握方法
  8. 税関との関係
    • 税関への通報体制
    • 税関の審査・検査への対応方法
  9. 報告および危機管理
    • 事故発生時の社内報告・連絡体制
    • 危機管理対応方法
  10. 処分
    • 法令違反時の社内処分規定
  11. 業務手順書の整備
    • 具体的な業務手順の文書化

これらの要件を満たす社内管理規則を整備することで、通関業者は適正な業務遂行を確保し、法令遵守体制を強化することができます。

 

通関業法基本通達に基づく通関業者の許可条件と基準

通関業法基本通達では、通関業の許可に関する条件や基準についても詳細に規定しています。通関業法第3条第2項の規定により、許可に付することができる条件は「貨物限定」と「許可の期限」に限定されています。

 

貨物限定の条件
貨物限定の条件は、一定の種類の貨物のみに限る旨の申請があった場合に限り付されます。これにより、特定の貨物のみを取り扱う専門的な通関業者の存在が認められています。

 

許可期限の条件
許可期限の条件は、以下の場合に付されます:

  1. 新規に通関業の許可を行う場合で、資産内容や収支状況、通関業務経験者の有無等を勘案して必要と認められる場合(期限:3年)
  2. 通関業者に対し通関業務の停止を命じた場合(期限:2年)

経営の基礎が確実であることの基準
通関業法第5条第1号の「通関業の経営の基礎が確実であること」の判断基準として、以下の点が挙げられています:

  • 資産内容が充実していること
  • 収支状況が健全であること(繰越欠損金がなく、当期利益があること)
  • 通関業務を営むための必要な設備を有していること

これらの条件や基準を理解することで、通関業の許可申請を検討している事業者は、申請前に必要な準備を整えることができます。

 

通関業法基本通達の改正動向と実務への影響

通関業法基本通達は、社会経済情勢の変化や貿易環境の進展に応じて定期的に改正されています。近年の主な改正点としては、デジタル化の進展に対応するための規定の追加や、コンプライアンス強化に関する内容の充実が挙げられます。

 

例えば、電子帳簿保存法の改正に伴い、通関業者が保管する書類の電子化に関する規定が整備されました。また、AEO制度(認定事業者制度)の拡充に伴い、AEO通関業者に関する規定も充実しています。

 

これらの改正は通関業者の実務に直接影響を与えるため、常に最新の通達内容を把握しておくことが重要です。特に、書類の保存方法や期間、電子的手続の取扱いなどは、業務効率化の観点からも注目すべき点です。

 

通関業法基本通達の改正情報は、税関のウェブサイトで公開されているほか、通関業者向けの各種セミナーや業界団体の情報誌などでも取り上げられています。定期的にこれらの情報源をチェックし、最新の動向を把握することをお勧めします。

 

また、通関業法基本通達の改正に伴い、社内管理規則や業務手順書の見直しが必要になる場合もあります。改正内容を踏まえて、自社の規則や手順を適宜更新することで、常に適正な通関業務を維持することができます。

 

税関:通関業法基本通達(昭和47年3月1日蔵関第105号)の全文
通関業法基本通達は、通関業務を行う上での基本的な指針を示すものであり、その内容を正確に理解し、適切に実務に反映させることが、通関業者にとって非常に重要です。通達の趣旨を理解し、法令遵守の姿勢を持って業務に取り組むことで、適正かつ迅速な通関手続の実現に貢献することができるでしょう。

 

通関業務は国際貿易の円滑化に不可欠な役割を担っており、通関業法基本通達はその適正な遂行を支える重要な基盤となっています。通関業者は、この通達の内容を十分に理解し、日々の業務に活かしていくことが求められています。

 

特に近年は、電子化やグローバル化の進展に伴い、通関業務を取り巻く環境も大きく変化しています。このような変化に適切に対応するためにも、通関業法基本通達の最新の内容を常に把握し、必要に応じて業務の見直しを行うことが重要です。

 

通関業法基本通達は単なる規制の枠組みではなく、適正かつ効率的な通関業務を実現するためのガイドラインとして捉え、積極的に活用していくことが、通関業者の発展につながるでしょう。