実用新案権は輸入差止の対象になりますが、無審査登録のため警告書なしで権利行使できません。
実用新案権は「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」を保護する産業財産権の一つです。特許庁に実用新案登録出願をすることで、簡易な形式審査のみで権利を取得できます。
参考)https://patentbox.jp/%E5%AE%9F%E7%94%A8%E6%96%B0%E6%A1%88%E3%81%AE%E5%85%B7%E4%BD%93%E4%BE%8B/
特許権との最も大きな違いは、保護対象が物品に限定される点です。プログラムや製造方法、ビジネスモデルなどは実用新案権の対象になりません。
参考)(IP)H31年春 問20
無審査で登録されるため、出願から約2ヶ月で登録証が届くスピード感があります。つまり早期権利化が可能です。
参考)実用新案登録の事例(その1)をご紹介します|よしはら弁理士事…
権利者は一定期間その考案を独占的に使用でき、第三者による無断使用に対しては使用停止や損害賠償を請求できます。ライセンス料を得ることも可能です。
参考)実用新案権とは?現役弁理士がわかりやすく解説!【知財タイムズ…
実用新案権の存続期間は出願日から10年間で、特許権の20年と比較すると短めに設定されています。
参考)特許と実用新案の違いについて教えてください。(実用新案)
身近な製品の中にも実用新案権で保護されているものが多数存在します。代表的な例として、シャチハタ工業のスタンパー(実用新案登録第1120473号)があります。
シャチハタは今や「ネーム印」の代名詞となっていますが、この製品の仕組み自体が実用新案として登録されていました。朱肉不要で押印できる構造の組合せが評価されたわけです。
花王のクイックルワイパーも実用新案の具体例です。使い捨てシートを装着できる清掃用具の形状と構造が保護対象となりました。
キングジムのドッチファイルも実用新案登録製品として知られています。書類整理用ファイルの形状や綴じ具の構造が考案として認められました。
情報処理試験では「電気スタンドと時計を組み合わせた製品」が実用新案権の保護対象として出題されています。既存物品同士の組合せによる新しい使い方が実用新案の典型例です。
ホームセンターで販売されているアイデア商品の多くが実用新案出願の対象になっています。生活の利便性を高める小さな工夫が権利化されているということですね。
実用新案権を侵害する物品は、関税法第69条の12第1項により輸入してはならない貨物に該当します。税関での輸入差止の対象となるわけです。
参考)https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0100-s06-07~08.pdf
しかし実用新案権には特殊な要件があります。無審査で登録されるため、税関への申立には実用新案技術評価書と警告書の提出が必須です。
参考)http://www.ipter.jp/16431865588042
技術評価書は、権利の有効性を判断する材料として、審査官が新規性や進歩性を評価したものです。これがなければ権利行使できません。
参考)https://www.fujikawa-pat.net/faq03.html
警告書は、実用新案法第29条の2に基づき権利者が侵害者に送付する文書です。業として輸入する者に対して技術評価書を提示して警告を行った事実が必要です。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/content/20190725kisairei_C5840jitsuyou.pdf
通関業務従事者としては、輸入者が警告を受けたか否かが重要な確認ポイントになります。警告なしの場合は侵害物品扱いにならない可能性があります。
実用新案権についての専用実施権も、特許権と同様に知的財産権として保護対象に含まれます。権利者本人だけでなく専用実施権者からの申立も有効です。
税関での認定手続では、実用新案権侵害の疑義がある場合、通関解放の適用があるか確認されます。過去に侵害認定された物品と同一なら手続が簡略化されることもあります。
実用新案権者が権利を行使する際には、相手方に実用新案技術評価書を提示して警告することが義務づけられています。これは無審査登録の制度的欠陥を補う措置です。
参考)実用新案の設定の登録を受けたが、その権利を行使する場合に注意…
証明責任の転換を図る意味から、権利の有効性を示す技術評価書の提示が必須とされています。新規性や進歩性の有無が判断されていないためです。
実用新案権者の行為としては、生産・譲渡・貸渡し・輸入・譲渡等の申出が専有行為に該当します。輸入も明確に権利侵害行為として列挙されています。
参考)実用新案権とは何か? とるべきケースや流れなどを解説
輸入者側が警告を受けた場合、その警告内容や技術評価書の評価結果を慎重に確認する必要があります。評価が低い場合は権利の有効性に疑義がある可能性もあります。
通関業務では、申告貨物が実用新案権侵害の疑いがある場合、輸入者に警告の有無を確認することが重要です。警告がなければ関税法上の侵害物品に該当しないケースもあります。
権利者からの申立があっても、警告書と技術評価書が提出されていない場合、税関は輸入差止措置を取らない可能性があります。手続的要件が厳格なのです。
実用新案権侵害の判断は当事者間の責任で行われます。紛争解決も基本的には当事者の判断に委ねられるため、税関の役割は限定的です。
保護対象の範囲が大きく異なります。特許権は物の発明・方法の発明・物を生産する方法の発明を保護しますが、実用新案権は物品の考案に限定されます。
審査の有無も重要な違いです。特許は実体審査を経て登録されますが、実用新案は形式審査のみで登録されます。
参考)https://build.linkweb.or.jp/knowledge/knowl/patent_panfu03.pdf
存続期間は特許権が出願日から20年、実用新案権が出願日から10年です。長期的な保護が必要なら特許を選ぶべきでしょう。
登録の早さでは実用新案が有利です。出願から約2ヶ月で登録証が届くのに対し、特許は審査に数年かかることもあります。
費用面でも差があります。実用新案は出願時に出願手数料と登録料を同時に納付すれば手続完了です。審査請求料が不要な分、コストを抑えられます。
権利行使の手間も考慮すべきポイントです。特許権は直接行使できますが、実用新案権は技術評価書の取得と警告が必須となり、手続的負担が大きくなります。
改良型製品のように進歩性が「極めて容易」とまでは言えない考案は、実用新案取得が最適です。消しゴムつき鉛筆のような組合せ考案が典型例として挙げられます。
参考)https://samoto-pat.com/images/%E5%AE%9F%E7%94%A8%E6%96%B0%E6%A1%88%E3%81%AE%E3%81%94%E7%B4%B9%E4%BB%8B.pdf
特許庁の実用新案制度の概要ページでは、制度の詳細な説明と出願手続の流れが確認できます
税関の知的財産侵害物品の取締りページでは、輸入差止制度の具体的な手続と申立方法が解説されています
私が収集した情報を基に、通関業務従事者向けの記事を作成します。