通関時に申告漏れすると300万円以下の罰金対象になります。
知的財産権とは、人間の知的創造活動で生まれたアイデアや創作物に対して法律で保護される権利です。通関業務では、これらの権利を侵害する物品の輸入が関税法第69条の2および69条の11で禁止されており、違反すると物品の没収・処分に加え、刑事罰の対象となります。
参考)https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/
知的財産権は大きく分けて「産業財産権」「著作権」「その他の権利」の3種類に分類されます。特許庁が所管する産業財産権には、特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つが含まれ、著作権は文化庁が所管しています。通関業務では特に商標権侵害物品の取り扱いが多く、令和6年の輸入差止件数では全体の93.6%を占めています。
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つまり商標権が最重要です。
これらの権利を正確に理解することで、輸入申告時の適法性判断や税関検査への対応がスムーズになります。通関士として業務を行う際は、貨物に含まれる知的財産権の種類を事前に確認し、権利者の許諾があるかどうかを荷主に確認する習慣をつけることが重要です。特に中国からの輸入貨物は侵害物品の割合が高いため、慎重な確認が必要です。
産業財産権は、特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つで構成され、いずれも特許庁への出願と審査を経て権利が発生します。
参考)知的財産としての感性価値の法的保護
特許権は、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものを保護する権利です。例えば、スナック菓子の製造方法や包装容器の製造装置などが該当し、出願から原則20年間の独占権が認められます。通関業務では、特殊な機械装置や化学製品の輸入時に特許権の確認が必要になることがあります。
参考)知的財産法とは?知的財産権の種類もわかりやすく解説!
実用新案権は、物品の形状・構造・組合せに関する考案を保護し、特許権よりも簡易な審査で出願から10年間保護されます。例としては特定形状のスナック菓子や包装容器が挙げられます。
参考)知的財産(知財)とは? – 小山特許事務所
意匠権は、視覚を通じて美感を起こさせる工業的デザインを保護する権利です。オーディオ製品の美しいデザインやパソコンの外観などが対象となり、出願から最長25年間保護されます。通関業務では、家電製品やファッション雑貨の輸入時に意匠権侵害の有無を確認する必要があります。
参考)ゼロからわかる知財用語: 難しい言葉を優しく解説
商標権は、商品やサービスに付された文字・図形・記号・立体的形状・色彩・音などを保護する権利です。自動車のエンブレムやスマートフォンのロゴマーク、さらには「きのこの山」のような立体商標も含まれます。
通関業務で最も頻繁に遭遇するのが商標権侵害物品です。偽ブランドバッグ・衣類・USBメモリなどが代表例で、令和6年には31,212件もの商標権侵害物品が税関で差し止められました。これは東京ドーム約6個分の倉庫に収まる量に相当します。
これらを見分けるには権利者のウェブサイトや特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)での事前確認が有効です。J-PlatPatでは無料で商標登録情報を検索でき、登録番号や権利者名を確認できます。
特許情報プラットフォーム J-PlatPat(商標検索に便利な公式データベース)
著作権は、思想または感情を創作的に表現したものを保護する権利で、産業財産権とは異なり出願や登録が不要です。創作と同時に自動的に権利が発生するため、通関業務ではその存在に気づきにくいという特徴があります。
保護対象には、小説・脚本・論文などの言語著作物、音楽著作物、舞踊著作物、絵画・版画・彫刻などの美術著作物が含まれます。通関業務で特に注意が必要なのは、キャラクターグッズ・DVD・書籍・ゲームソフトなどの輸入です。
令和6年の税関統計では、偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が商標権に次いで多く差し止められています。例えば、人気アニメのキャラクターを無断で使用したTシャツやスマートフォンケースなどが該当します。東京税関は平成29年7月に、中国から商標権を侵害するスマートフォンケース等128点を密輸入しようとした事例を告発しました。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/d_007.htm
著作権は無方式主義です。
通関業務従事者が著作権侵害を見抜くには、権利者の公式ライセンス情報を確認することが重要です。正規品には通常、権利者名やライセンス表記(©マークなど)が明記されています。不明な場合は荷主に対して権利者からの許諾書やライセンス契約書の提出を求めることで、リスクを回避できます。
また、ファイル共有ソフトを使った映画の違法配信事例もあり、物理的な物品だけでなくデジタルコンテンツの輸入(オンライン配信)にも注意が必要です。
参考)6 知的財産権侵害事犯、環境事犯等
知的財産権を侵害する物品を輸入すると、関税法違反で刑事罰の対象となり、個人には10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科が科されます。法人の場合は従業員が侵害物品を輸入しようとした際、業務主体である法人に対しても1000万円以下の罰金刑が科される両罰規定が適用されます。
これは重い処罰です。
実際の告発事例として、令和6年10月には福島県で商標権を侵害する衣類34点を中国から密輸入しようとした日本人が関税法違反で告発されました。また同年3月には、京都府で商標権を侵害するUSBメモリ等4,008点を密輸入しようとした日本人も告発されています。いずれも個人による少量輸入でしたが、刑事責任を問われる結果となりました。
さらに深刻なケースでは、偽ブランド品を韓国から密輸入してインターネットオークションで販売していた輸入販売会社役員らが、商標法違反・組織的犯罪処罰法違反・詐欺罪で検挙され、偽ブランド品約1,600点が押収されました。このように反復継続的な侵害行為は組織犯罪として扱われ、より重い処罰を受けます。
侵害物品は税関で没収され、裁断・焼却などの処分がなされるため、貨物の損失に加えて刑事罰というダブルのダメージを受けることになります。通関業務従事者としては、荷主に対して輸入前に権利関係の確認を促すことで、こうしたリスクを未然に防ぐことができます。特に初めて取引する海外サプライヤーからの貨物や、極端に安価な商品には注意が必要です。
参考)こんな時は弁護士に~知的財産関連の紛争について~
税関では知的財産権を保護するため、権利者からの申告に基づいて侵害疑義物品の通関保留措置を行っています。権利者は事前に税関長に対して「知識財産権権利者等届出」を提出し、侵害物品の特徴や真正品との見分け方を説明することで、水際での取締りを強化できます。
参考)http://www.choipat.com/pds/siryou/choipat_228_20210226.pdf
通関業務従事者が侵害物品の疑いがある貨物を発見した場合、税関に申告する前に荷主に確認を求めることが重要です。荷主から権利者の許諾書やライセンス契約書が提示されれば問題ありませんが、提示できない場合は輸入を見合わせるよう助言すべきです。
税関が通関保留措置を行った場合、権利者と輸入者双方に通知が行われます。輸入者側で侵害部分を取り除くか真正品に入れ替えた場合、または権利者が同意した場合には通関保留が解除されます。ただし、明らかな侵害物品の場合は解除されず、没収・処分の対象となります。
実務上の対策としては、J-PlatPatでの商標検索や権利者ウェブサイトでの正規品確認を習慣化することが効果的です。また、中国・韓国・東南アジアからの輸入貨物については、統計上侵害物品の割合が高いため、より慎重な確認が求められます。
育成者権侵害の事例も注目です。平成17年3月には、中国から熊本県が有する育成者権を侵害する中国産「ひのみどり」種いぐさ約9トンを密輸入しようとした畳表製造販売会社が告発されました。農産品の輸入でも知的財産権侵害のリスクがあることを示しています。
通関士試験対策としても、知的財産権侵害物品の取扱いは頻出テーマです。関税法第69条の2および69条の11の条文内容を正確に理解し、実務で適切に対応できるようにしておきましょう。
税関 知的財産ホームページ(最新の差止状況や告発事例を確認できます)