商標権検索の方法と通関業務注意点

商標権検索は通関業務で必須のスキルです。J-PlatPatの使い方や輸入差止制度との関係、見落としやすいトラブル事例まで、実務に直結する情報を網羅的に解説します。あなたの業務効率は向上するでしょうか?

商標権検索の方法と通関業務注意点

J-PlatPatで「称呼検索」だけ使うと類似商標を見落とします。

この記事の3つのポイント
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商標権検索の基本手順

J-PlatPatを使った称呼検索・類似検索の実践方法と、検索漏れを防ぐ複数パターンでの調査テクニック

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通関業務での商標権リスク

輸入差止申立制度の仕組みと、商標権侵害品を扱った場合の5年以下の懲役・500万円以下の罰金リスク

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調査コストの管理方法

専門家に依頼する場合の費用相場(数万円~数十万円)と、調査NGが続いた際の予算管理の注意点

商標権検索が通関業務に必要な理由


通関業務では、輸入貨物が他社の商標権を侵害していないか事前に確認する必要があります。商標権を侵害する貨物を輸入すると、税関で差し止められるだけでなく、関税法違反として刑事罰の対象になる可能性があるためです。
具体的には、商標権侵害品の輸入は5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されます。予備や未遂の段階でも処罰対象です。通関業者として、依頼主の貨物が商標権を侵害していないか確認することは、法的リスクを回避するための必須業務といえます。
参考)https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200503/jpaapatent200503_064-067.pdf

輸入差止申立制度により、商標権者が税関に申立てを行っていると、該当する貨物は水際で差し止められます。これが原因で納期遅延や追加コストが発生し、依頼主との信頼関係が損なわれるケースも少なくありません。
参考)https://www.ondatechno.com/jp/trademark/zeikan/

事前に商標権検索を実施しておけば、こうしたトラブルを未然に防げます。

商標権検索の基本ツールJ-PlatPat

商標権検索には、特許庁が提供する無料データベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を使用します。このツールでは、日本国内のすべての商標出願・登録情報を検索できます。
参考)https://www.inpit.go.jp/content/100884856.pdf


J-PlatPatの商標検索機能には、「商標(検索用)」「称呼(単純文字列)」「称呼(類似検索)」など複数の検索方法があります。最も基本的なのは称呼検索で、商標の読み方(カタカナ表記)で検索する方法です。YouTube​​
ただし、称呼検索だけでは漏れが生じる点に注意が必要です。たとえば「WORLD」と「ワールド」は見た目が異なりますが、称呼(読み)が同じため類似商標と判断されます。このような検索漏れを防ぐには、複数の検索パターンを組み合わせる必要があります。
参考)J-PlatPatの「商標検索」を利用する場合の注意点

J-PlatPatの公式操作マニュアルも公開されており、初心者でも段階的に検索方法を習得できます。​
J-PlatPat公式サイト - 商標検索の基本操作や最新情報が確認できます

商標権検索で見落としやすいポイント

商標検索で最も多い失敗は、Google検索や単純な文字列検索だけで判断してしまうことです。商標の類否判断は「見た目・響き・意味」の総合的な評価で行われるため、素人判断では見落としが出やすくなります。
参考)商標登録のよくある失敗10選と対策 – 弁理士法…


具体的な見落としパターンとして、以下があります。


  • 称呼が同じ別表記の商標:「TOKYO」と「トウキョウ」など、表記が違っても読みが同じ場合は類似と判断される​

  • 指定商品・役務の類似範囲:商品カテゴリーが異なれば同じ商標でも登録可能ですが、類似する商品群は区分を跨いで検索する必要がある​

  • 識別力のない商標:一般的な言葉や記述的な表現は、そもそも商標登録できないため検索結果に表れない​

これらを見落とすと、調査費用が無駄になるだけでなく、実際に輸入した後で商標権侵害が発覚するリスクがあります。
一回の調査で複数区分を対象にする場合、費用は「商標数×区分数×調査単価」で計算されます。たとえば4区分を調査する場合、調査単価2万円なら合計8万円になります。調査でNGが出るたびに追加費用が発生するため、最初から漏れのない調査を行うことが重要です。
参考)商標登録の調査費用に関する注意点

商標権検索の実践手順

実際の検索手順は以下のステップで進めます。YouTube​​


  1. 検索対象の整理:輸入する商品のブランド名・ロゴ・商品カテゴリー(区分)を明確にする

  2. 称呼(単純文字列)検索:J-PlatPatで商標の読み方をカタカナで検索し、同一または類似の称呼を持つ商標を確認するYouTube​

  3. 称呼(類似検索)の実施:音の響きが似た商標も検索対象に含めるYouTube​

  4. 商標(検索用)での確認:複数の読み方が考えられる場合、すべての読み方で検索するYouTube​

  5. 指定商品・役務の確認:検索結果に挙がった商標の指定商品が、自社の輸入品と同一または類似するか確認する​

検索結果の「称呼(参考情報)」欄には、その商標から生じ得る読み方がカタカナで表示されますが、これはあくまで参考情報です。実際の類否判断では、特許庁の審査基準や過去の判例に基づいた専門的な判断が必要になります。​
自力で検索する場合でも、最低限これらのステップを踏むことで、重大な見落としを減らせます。

通関業務独自の商標権検索注意点

通関業務では、商標権検索に加えて「輸入差止申立制度」の確認も必要です。この制度では、商標権者が税関に事前申立てを行っていると、該当する貨物が輸入時に差し止められます。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa_search/chiteki/index_1.htm


税関の「知的財産侵害物品情報」データベースでは、どの商標権者がどのような商標について差止申立てを行っているか公開されています。このデータベースと併用することで、輸入予定の商品が差止対象になっているか事前に確認できます。​
差止められた貨物は、原則として廃棄または積戻しの対象となり、輸入者には大きな経済的損失が発生します。通関業者としては、依頼主にこのリスクを事前に伝え、必要に応じて商標権者との交渉や使用許諾の取得を促すことも重要な役割です。
また、並行輸入品の場合でも、日本国内の商標権者の許諾なく輸入すると侵害とみなされるケースがあります。真正品であっても商標権侵害になり得るという点は、通関業務特有の注意点といえます。
税関の知的財産侵害物品情報 - 商標権に関する輸入差止申立情報を確認できます





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