円安進行時でも輸入物価が下がることがあります。
参考)円安とインフレの悪循環
インフレ圧力とは、物価を継続的に上昇させる要因が強く働きかけている状態のことです。具体的には、食料品やエネルギーの価格上昇、自動車の値上げ、ドル安などインフレの兆候を示すあらゆる事象が含まれます。
参考)インフレ圧力(インフレあつりょく)とは? 意味や使い方 - …
その働きかけが大きいことを「インフレ圧力が強い」または「高い」と表現します。
参考)インフレ圧力 ( インフレあつりょく )とは?
通関業務従事者にとって重要なのは、輸入関連のコスト変動が直接的なインフレ圧力となる点です。輸入物価の上昇は企業の仕入れコストを押し上げ、最終的に消費者価格に転嫁されることでインフレを引き起こします。2025年2月時点では、関税政策の変更や為替変動により、輸入業務に携わる企業の負担が増大しています。
参考)対中関税の引き上げにより増大する米国のインフレ圧力 — 平均…
インフレ圧力には複数の発生要因があり、主に「デマンドプルインフレ」と「コストプッシュインフレ」の2つに大別されます。
参考)インフレの「6つの要因」を理解して、しっかり対策を練ろう
デマンドプルインフレは、特定の商品やサービスへの需要が供給能力を上回ったときに発生します。財政支援や金融緩和による需要超過が典型的なケースです。例えば、コロナ禍での大規模な財政支援や行動制限緩和を受けた繰越需要により、先進国で需要増加が生じました。
参考)https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i1130000.html
コストプッシュインフレは、賃金や原材料価格などの生産コスト上昇が原因です。エネルギーや原材料の多くを海外に依存している日本経済にとって、輸入物価上昇を契機とする輸入インフレはコストプッシュインフレの引き金になりやすいものとなります。
参考)マーケティング用語集 ディマンドプルインフレ・コストプッシュ…
その他の要因としては以下が挙げられます:
つまり複合的な要因です。
通関業務従事者にとって、インフレ圧力は輸入コストの直接的な増加として現れます。関税率の引き上げは、輸入財価格の上昇を通じてインフレ圧力を高める見込みです。
試算によると、中国への追加関税賦課により、米国の平均関税率は1.4%程度押し上げられ、米国のコア財価格を0.6%程度押し上げます。これは一見小さな数字に見えますが、年間取扱高が1億円の企業であれば、60万円程度のコスト増加を意味します。
これは大きな負担ですね。
関税コストの負担構造も重要な要素です。2025年4~6月期のデータでは、関税コストの約9割を輸入国の企業が負担している計算になります。平均輸入関税率が足元の10%程度から20%台へ上昇する場合、関税コストを販売価格に転嫁しない場合、企業の負担は一段と増大する見込みです。
参考)関税コストの9割を負担する米国企業 — 先行き、関税引き上げ…
さらに、円安による輸入物価上昇も無視できません。資源・原材料の多くを輸入に依存する日本は、企業物価全体に占める輸入品のウェートが18.9%に達し、為替が物価全般に及ぼす影響は無視できません。足下、契約通貨ベースだと輸入物価は前年同月比6.9%低下している一方、円ベースだと1.4%上昇しているのは明らかに円安の影響です。
経済産業省の通商白書2023年版では、インフレ圧力の高まりと需給ひっ迫の詳細な分析が掲載されています。
輸入価格の変動は、インフレ圧力の中でも通関業務に最も直接的な影響を与える要因です。輸入品に関税が課されると価格が上がり、その負担は最終的に消費者が負担します。
参考)関税とは?仕組みや種類、経済への影響をわかりやすく解説
特に日常的に使われる商品や原材料などに関税がかかると、物価全体が上昇するインフレにつながるおそれがあります。
2020年以降、海上輸送コストは急騰しました。2021年10月までにコンテナ船の海上輸送コスト指標は、パンデミック前の水準から500%以上増加し、バルク商品の海上輸送コストは3倍になりました。これは東京-大阪間のトラック輸送費が通常5万円のところ、25万円に跳ね上がるようなものです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9700066/
輸入物価の変動には、契約通貨ベースと円ベースの差異も重要です。2022年2月の輸入物価は円ベースが前年比プラス34.0%、契約通貨ベースがプラス25.7%でした。輸入物価上昇の過半は国際商品市況の上昇で説明できますが、円安が輸入インフレを助長する意味において「悪い」側面を有することは事実です。
参考)「輸入物価上昇」と「円安」で日本企業は大ピンチ、こんな時…日…
ピクテ投信投資顧問の分析記事では、円安とインフレの悪循環について詳しく解説されています。
見逃せないポイントです。
インフレ圧力による輸入コスト増加に対処するため、通関業務従事者は複数の対策を講じる必要があります。価格変動リスクを最小化し、企業の収益を守るための実践的な手法を理解しておくことが求められます。
まず為替ヘッジの活用が基本となります。円安により輸入物価が上昇した場合、企業の価格転嫁を通じて消費者物価の上昇圧力がさらに強まります。為替予約や通貨オプションを利用することで、為替変動による輸入コストの急激な変動を抑制できます。
調達先の多様化も有効な対策です。特定国からの輸入に依存すると、その国の関税政策変更や為替変動の影響を直接受けます。複数の国・地域からの調達ルートを確保することで、リスクを分散できます。トランプ関税による貿易摩擦の激化は、日本の貿易赤字拡大や日米金利差の拡大によって円安を加速させるリスクがあります。
参考)マネイロ
契約条件の見直しも検討すべきです。長期契約の場合、価格改定条項(エスカレーション条項)を盛り込むことで、インフレ圧力による急激なコスト増を段階的に吸収できます。FOB・CIF・DDPなどインコタームズの選択によっても、関税負担のタイミングや為替リスクの所在が変わります。
在庫戦略の最適化も重要な対策となります。関税率引き上げ前の駆け込み輸入により在庫を確保する企業もありますが、過剰在庫はキャッシュフローを圧迫します。適切な在庫水準を維持しつつ、価格変動の影響を最小限に抑えるバランスが求められます。
参考)相互関税にはドル高が必要
情報収集と市場動向の監視も欠かせません。関税政策の変更や為替相場の動き、国際商品市況の変動を常にモニタリングし、早期に対応策を講じることが重要です。IMFや世界銀行、各国の中央銀行が発表する経済見通しを定期的にチェックすることで、インフレ圧力の動向を予測できます。
IMFのブログでは、長期化するパンデミック下のインフレ圧力対策について詳細な分析が掲載されています。
実践が鍵になります。

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