貿易赤字 日本 推移と原因、通関業務への影響

日本の貿易赤字は4年連続で続き、エネルギー輸入や構造的変化が主因です。通関業務従事者が知るべき貿易赤字の推移、原因、実務への影響を解説します。この変化は業務にどう影響するのでしょうか?

貿易赤字 日本 推移と構造的変化

日本は黒字率8割超の企業でも申告ミスで関税追徴リスクがあります。

この記事のポイント
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貿易赤字の継続

2024年度は5兆2216億円の赤字で4年連続、エネルギーと構造変化が主因

エネルギー依存の拡大

2023年は化石燃料だけで26兆円の赤字、原発停止と資源高が影響

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通関業務の変化

輸入案件の増加と複雑化により申告ミスのリスクが高まっている

貿易赤字 日本 推移の転換点


日本の貿易収支は2011年まで長年黒字を維持してきましたが、2011年の東日本大震災を契機に赤字へと転落しました。2024年度の貿易統計速報では5兆2216億円の赤字となり、これで4年連続の赤字記録となっています。
参考)貿易赤字4年連続、24年度15%減の5兆2216億円 - 日…


赤字幅は前年度比15%縮小しましたが、構造的な赤字体質は継続中です。2025年度に入ると赤字は2兆6507億円まで圧縮され、縮小幅は52.9%に達しました。貿易赤字は5年連続です。
参考)貿易赤字5割圧縮2.6兆円—財務省統計 : 輸出額は過去最高…


この推移で注目すべきは、黒字から赤字への転換が一時的な現象ではなく、構造的な変化である点です。2013年度には貿易赤字が12兆990億円まで拡大し、過去最大を記録しました。つまり構造変化が基本です。
参考)近年の急激な円安進行…なぜ「安いニッポン」が生まれてしまった…


2025年12月には1057億円の貿易黒字を記録し、6月以来の黒字となりましたが、これは月次での一時的な改善にすぎません。日本の貿易収支は1963年から2025年まで平均264.76億円で推移し、2007年9月に過去最高の1兆6086.8億円の黒字、2023年1月に過去最低のマイナス3兆5388.6億円を記録しています。
参考)https://jp.tradingeconomics.com/japan/balance-of-trade

貿易赤字の原因はエネルギー輸入

日本の貿易赤字の最大の原因は、エネルギー輸入の急増です。2023年には化石燃料の赤字額だけで26兆円に達し、自動車などの輸出で稼いだ黒字を完全に帳消しにしました。これは東京ドーム約5200個分の容積に相当する燃料を輸入したことになります。
参考)https://eneken.ieej.or.jp/data/5557.pdf


原発停止が火力発電への依存を加速させました。2011年の震災後、液化天然ガス(LNG)の輸入量が急増し、3年連続で過去最大を記録しました。火力発電を震災前の水準まで引き戻せれば、貿易赤字は1兆7000億円も削減できると試算されています。
参考)貿易収支赤字の要因①~原発停止で4兆円赤字拡大 2014年0…


LNG調達の急増はスポット取引の増加を通じて価格も上昇させました。エネルギー価格が震災前より5割から6割以上高騰している状況では、火力発電多用による貿易赤字への寄与は年々拡大しています。火力発電多用分だけで約1兆4000億円の赤字要因です。
エネルギー以外にも、電気機械を中心とした国際競争力の低下、産業空洞化、デジタル関連の輸入依存度の高まりといった構造的課題があります。2014年の貿易赤字拡大を要因分解すると、輸入価格の上昇が前年差で赤字方向に4.1兆円寄与し、輸入数量の増加が0.4兆円寄与しました。輸入価格上昇が主因です。

日本 貿易収支の地域別構造

地域別に見ると、対米貿易は黒字、対中国・対中東は赤字という構造が定着しています。2024年の対米貿易黒字は過去最大を記録する一方で、対中国・対中東の赤字も拡大しました。
参考)2024年貿易統計 : 過去最大の輸出額で赤字幅縮小—対米は…

2025年の対米貿易では、輸出が前年比4.1%減の20兆4140億円となり、5年ぶりの減少でした。自動車が11.4%減、自動車部品が10.7%減となり、トランプ関税の影響が顕著に現れました。対米貿易黒字は7兆5214億円で、前年より12.6%圧縮されています。​
対中国貿易では、輸出が0.4%減の微減となった一方、パソコンやスマートフォンの輸入増加により輸入が5.5%増加しました。その結果、貿易赤字は7兆9147億円となり、2年ぶりに赤字幅が拡大しました。2024年の統計では、対中国の輸出が3.6%増の18兆8917億円、輸入が7.6%増の25兆9392億円で、貿易赤字は7兆474億円に達しています。
対中東の貿易赤字はエネルギー価格の下落により21.5%減の6兆8975億円となりました。エネルギー価格変動が直接影響しますね。​
アジア全体では、輸出額が8.5%増の58兆513億円、輸入額が7.6%増の55兆1760億円となり、双方とも過去最高を記録しました。​

通関業務への実務的影響

貿易赤字の継続と輸入の増加は、通関業務従事者の業務量と複雑性を高めています。輸入通関では、NACCS(通関情報処理システム)を使った輸入申告から始まり、税関審査、貨物検査、関税・消費税の納付、輸入許可証の取得まで、複数のステップを正確に処理する必要があります。
参考)【はじめての貿易入門】輸入業務の基本ステップと必要書類 ~海…

HSコード(関税分類番号)の正確な特定が最も重要な作業です。食品や機械類では細かな分類があるため、誤りのないよう慎重な確認が求められます。分類ミスは関税率の適用誤りにつながり、企業に追徴課税リスクをもたらします。​
食品輸入では、食品衛生法に基づく「食品等輸入届出書」の提出が必須です。さらに農林水産省所管の植物防疫法や家畜伝染病予防法に基づく検疫が必要な場合もあります。規制は必須項目です。​
輸出通関でも注意が必要で、輸出先国の規制や基準を事前に確認し、必要な証明書や許可を取得しておくことが大切です。​
業務効率化のためには、NACCSシステムの活用スキル向上が不可欠です。リアルタイムでの申告状況確認や、電子データでの書類管理により、処理時間を短縮できます。特にエネルギー関連や電子機器の輸入案件が増えている現状では、各品目の特性を理解した上での正確な分類作業が求められます。

貿易赤字 推移の今後の見通し

日本の貿易収支は今後も構造的な課題を抱え続けると予想されています。トレーディングエコノミクスのグローバルマクロモデルとアナリストの予測によれば、2027年までに貿易収支はマイナス400億円を中心に推移すると見込まれています。
参考)https://ko.tradingeconomics.com/japan/balance-of-trade

トランプ政権の関税政策が今後の貿易動向に大きな影響を与える可能性があります。2024年の対米貿易黒字は8.6兆円でしたが、相互関税によってこれを半分程度縮小させる効果が期待されており、日本経済に大きな打撃をもたらす懸念があります。貿易政策は2国間協議で今後も変化します。
参考)日米関税協議:トランプ大統領は対日貿易赤字の解消を日本に求め…

円安が輸出を後押しする一方で、輸入コストも増加させる二面性があります。2025年10月の統計では、円安が海外出荷の価値を押し上げ、関税による打撃を部分的に和らげました。為替変動への対応が鍵です。
参考)https://jp.tradingeconomics.com/japan/balance-of-trade/news/503852

エネルギー政策の転換が貿易収支改善の鍵を握ります。原発の最大限の活用や、再生可能エネルギーへの転換により、化石燃料輸入を削減できれば、貿易赤字は大幅に縮小する可能性があります。​
デジタル関連の輸入依存度が高まっている点も注視が必要です。コロナ禍後は物理的接触を限定できるデジタル関連サービスの貿易が広く行われ、赤字が拡大しました。国内のデジタル産業競争力強化が求められますね。
参考)国際的なデジタル貿易と日本の赤字 基礎研REPORT(冊子版…

日本の貿易収支の最新統計と予測データ(Trading Economics)
財務省による国際収支状況の速報データ




製造業が日本を滅ぼす 貿易赤字時代を生き抜く経済学 野口悠紀雄/著