紙ベースの作業は通関士資格に有利です。
情報処理システムには大きく分けて基幹系システムと情報系システムの2種類があります。基幹系システムは企業の事業活動そのものに関わる重要なシステムで、生産管理や在庫管理、人事給与、会計などが含まれます。一方、情報系システムは社内コミュニケーションやバックオフィス業務の効率化に使われ、メールソフトやグループウェア、営業支援システムなどが該当します。
参考)情報系システムとは?基幹系システムとの違いと具体例&種類│コ…
通関業務においては、これらのシステムが複合的に活用されます。輸出入の申告や許可通知を処理するNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)は基幹系に近い役割を果たし、日本の輸出入手続きの約99%がこのシステムで処理されています。つまり基幹業務そのものです。
参考)2017年3月:NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム…
通関業務では他にも様々なシステムが使われます。書類作成システム、在庫管理システム、顧客管理システム(CRM)などです。NACCSと連携して業務全体を効率化する情報系システムも重要な役割を担っています。
通関業務における最も代表的な情報処理システムがNACCSです。NACCSは1978年に成田空港で稼働を開始し、航空貨物から海上貨物へと対象を拡大してきました。主な機能には以下のようなものがあります。
📌 NACCSの主要機能
これらで完結するということですね。
また、通関デジタル化ソリューションとして「関税計算書システム」も注目されています。日本通運では2022年10月にNECの関税計算書システムを全社導入し、AI-OCRで多種多様な帳票を自動データ化することで、入力・チェック作業の負担を大幅に軽減しました。このシステムは画面の見やすさと操作性が高く、品目の詳細登録情報が同じ画面上で一覧表示されるため、画面切り替えの手間が減る効果は非常に大きいとされています。
通関業務ではさらに、貿易管理システムも活用されます。これらのシステムは受発注管理、船積書類の作成、関税計算、税務処理などを統合的に支援します。
NECの通関プラットフォーム
NACCSと連携する関税計算書システムの詳細や、AI-OCRによる書類デジタル化、生成AIによる税番判定機能について解説されています。
情報処理システムの選定を誤ると、業務効率化どころか大きな損失を招きます。システム開発の失敗事例では、予算が当初の10倍以上に膨らんだケースや、技術選定ミスで導入したシステムが企業の業務フローに合わず使えなかった事例が報告されています。
参考)システム開発失敗事例まとめ
通関業務でシステムを選ぶ際は、以下の点を確認する必要があります。
⚠️ 業務要件との適合性チェックポイント
これらが条件です。
特に注意すべきなのがコンプライアンス違反のリスクです。通関業務では、情報共有の遅延やミスが発生すると、手続きの遅延だけでなく関税トラブルにつながる可能性があります。HSコード分類ミスによる追徴課税は単なる事務ミスでは済まされず、重大な法的リスクとなります。こうしたリスクを回避するため、システムによる入力チェックや自動計算機能を備えたソリューションを選ぶことが重要です。
参考)輸出入におけるHSコード分類ミスが招く関税トラブルと防止策|…
税関システムの脆弱性に関する研究では、マレーシアの通関情報システムにおいて、レコード未登録(RNF)が発生するケースや、許可証の期限切れが7.05%に及ぶ問題が報告されています。これはシステムが不正確な値の入力を許してしまう設計上の弱点によるものです。
参考)https://hrmars.com/papers_submitted/10871/integrity-risk-in-the-customs-automation-system.pdf
実際の導入事例から、情報処理システムがどのような効果をもたらすのか見ていきましょう。ミャンマーでは、日本のNACCSをベースとしたMACCSが導入され、輸出入の一連の通関手続きが電子化されました。商業省が発給する輸出入ライセンスとも連結されたことで、通関手続きが一気に効率化・省力化されることになりました。
ベトナムでも同様に、NTTデータが日本の通関システムをベースとしたシステムを構築し、通関手続きのIT化を実現しています。効率化が実現しました。
通関書類の作成作業においても、システム化の効果は明確です。具体的には次のようなメリットがあります。
参考)https://oacis.repo.nii.ac.jp/record/693/files/ST12.pdf
✅ システム化による具体的な効果
貿易業務でのミス削減に関する調査では、システム導入による自動チェック機能が人為的ミスを大幅に減らすことが確認されています。アナログな情報伝達手段に依存している場合、情報の伝達ミスや確認漏れが発生しやすく、ビジネスチャンスの損失にもつながります。
日本通運のシステム導入事例
AI-OCR連携による帳票の自動データ化と、関税計算書システムによる入力作業負担の軽減について、導入前後の変化が詳しく紹介されています。
情報処理システムの導入が進む一方で、通関士の専門的な判断業務の重要性は変わりません。むしろシステムが定型作業を処理することで、通関士は本来注力すべき判断業務に集中できるようになります。
日本通運の事例では、AIによるチェック機能やデータ転記機能を拡充し、負担軽減や業務のペーパーレス化を推進しています。その目的は「貿易のプロである通関士が本来注力すべき判断業務に力を注げる関税業務システムを構築すること」です。判断業務が基本です。
通関手続き全般のシステム化を検討する際、貿易の内容に対する諸法令の抵触判断を行う作業など、通関士の専門領域をサポートする機能が求められます。単純な作業の自動化だけでなく、専門知識が必要な判断をどう支援するかが、システム設計の鍵となります。
AIを活用した通関業務の高度化も進んでいます。大量のデータ分析や予測、意思決定支援などにAIが活用され、過去の通関データに基づいて最適なルートを予測したり、不正リスクを事前に察知したりすることが可能になっています。これらは使えそうです。
通関士の業務分析を通じて、情報処理システムがどの部分を自動化し、どの部分で人間の専門性を活かすべきかを明確にすることが、効果的なシステム導入の第一歩となります。