安全保障貿易管理 該非判定の手順とミス防止の具体策

安全保障貿易管理における該非判定は、輸出業務の根幹です。判定ミスは重い罰則につながりますが、適切な手順とチェック体制で違反を防げます。通関業務担当者が押さえるべき該非判定の実務とは何でしょうか?

安全保障貿易管理 該非判定

該非判定を他社の結果だけで済ませると違反リスクが跳ね上がります。

この記事の3つのポイント
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該非判定は輸出者の責任

メーカーの判定結果を鵜呑みにした違反が全体の18%。自社でスペック確認が必須

⚖️
違反時の罰則は重い

無許可輸出は最高10年の懲役または1,000万円以下の罰金。法人は5億円以下の罰金

📋
判定誤りが違反の30%

法令解釈ミスや複数項番の確認漏れが多発。ダブルチェック体制の構築が有効

安全保障貿易管理における該非判定とは


該非判定とは、輸出する貨物や提供する技術が外為法の規制対象に該当するか否かを判定する作業です。具体的には、輸出貿易管理令別表第1または外国為替令別表の1から15項の中欄に掲げられた品目に該当するかを確認します。
参考)輸出における安全保障貿易管理の規制品目・内容に対する該非の確…


この判定は輸出者自身の責任で行う必要があります。
経済産業省の分析によると、2023年度の外為法違反事案のうち該非判定関連の違反が全体の70%を占めています。特に判定誤りや法令解釈誤りが30%、判定未実施や非規制との思い込みが21%、他社の誤判定を鵜呑みにしたケースが18%という内訳です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaitameho_document/ihanjireigaitamehou5.pdf

該非判定を怠ると、無許可輸出として外為法第70条違反に問われます。最高で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は5億円以下)が科される可能性があります。
参考)該非判定は慎重に行いましょう

該非判定の具体的な手順とツール活用法

該非判定を正確に行うには、経済産業省が公開している「貨物・技術のマトリクス表」を使います。これは輸出令別表第1と貨物等省令の内容をエクセル形式で整理したもので、検索機能を使って判定対象の貨物がどの項番に該当するか確認できます。
参考)https://www.cistec.or.jp/service/webseminar/open/data/houjin/5001_gaihi_nyumon.pdf


判定の流れは次のとおりです。


  • まず輸出令別表第1の項番(1~15項)から該当する品目カテゴリを特定する

  • 次に貨物等省令で定められた詳細な仕様(スペック)と自社製品の仕様を照合する

  • 該当する場合は項番と号を記録し、非該当の場合もその根拠を記録する

複数の項番に該当する可能性がある貨物もあります。例えば工作機械の場合、2項(大量破壊兵器関連)と6項(通常兵器関連)の両方を確認する必要があります。一方の項番だけで判定を終えると、もう一方の規制に該当していても見落としてしまいます。​
CISTEC(安全保障貿易情報センター)が提供する「項目別対比表」や「パラメータシート」も有効です。これらは政省令の条文を構造化し、質問に答えていくだけで該非判定ができるよう設計されています。​
経済産業省の安全保障貿易管理ページには、最新の法令や改正情報が掲載されています。
経済産業省 安全保障貿易管理
こちらでは法令改正の履歴やQ&Aが確認できるため、判定前に必ず最新情報をチェックしておくことが推奨されます。

安全保障貿易管理で見落としやすいリスクと対策

該非判定でよくある落とし穴が「サンプル品は輸出に該当しない」という誤解です。外為法上、サンプルの提供は有償・無償を問わず輸出に当たるため、必ず該非判定と必要な許可申請を行う必要があります。​
同様に、不具合品の返送、レンタル品の返却、修理後の再納品、海外子会社への材料提供もすべて輸出に該当します。つまり物品が日本から国外に移動するほぼすべてのケースで判定が必要ということですね。​
ソフトウェアや技術情報の提供も要注意です。クラウドサービス上に規制技術を保存し、海外の子会社が自由にアクセスできる状態にすると、これは「役務の提供」とみなされます。自社の子会社であっても、非居住者がアクセス可能な状態は技術提供に該当するため、アクセス制限を設けるか役務取引許可申請が必要です。​
型番変更や代替品への切り替え時も危険です。従来品が非該当だったからといって、互換性のある新製品も自動的に非該当とは限りません。機能や性能が改良されている可能性があるため、型番が異なる製品は必ず改めて該非判定を実施します。​
法令改正への対応漏れも違反原因の一つです。過去に非該当と判定した製品でも、法令改正により該当品になるケースがあります。経済産業省の改正情報を定期的に確認し、該非判定結果の見直しを行う仕組みが必要です。​

キャッチオール規制における用途・需要者確認の実務

該非判定の結果が非該当であっても、安心はできません。キャッチオール規制の確認が残っています。
キャッチオール規制とは、リスト規制に非該当の貨物・技術であっても、大量破壊兵器等の開発に用いられるおそれがある場合に許可を必要とする仕組みです。つまり通常の鉱工業製品すべてが対象になりえます。
確認すべき点は次の2つです。​


  • 用途要件:輸入者において大量破壊兵器等の開発等に用いられるかどうか

  • 需要者要件:輸入者が大量破壊兵器等の開発等を行っているか、または特定の外国ユーザーリストに掲載されているか

2023年度の違反事案でも、該非判定で非該当だったため用途と需要者を確認せずに輸出し、キャッチオール規制違反となったケースが報告されています。リスト規制非該当の場合でも、必ず用途と需要者を確認したうえで許可申請の要否を判断することが原則です。​
経済産業省のキャッチオール規制ページには、客観要件の詳細な判断フローが掲載されています。
経済産業省 キャッチオール規制
このページでは規制対象となる地域や、輸出者が確認すべき事項が具体的に示されています。

該非判定書の作成と非該当証明書の取り扱い

該非判定の結果は必ず文書化し、社内で保管します。判定書には次の情報を記載します。​


  • 製品の型番、名称、仕様

  • 判定対象とした項番とその根拠

  • 該当または非該当の結論

  • 判定者の氏名と日付

  • 判定に使用した法令のバージョン

取引先や税関から「非該当証明書」の提出を求められることもあります。非該当証明書とは、該非判定の結果、リスト規制に非該当であることを証明する書類です。
参考)https://worldship-search.com/not-applicable-certificate/


経済産業省の安全保障貿易管理説明会資料に参考様式が掲載されているため、これを活用して作成できます。ただし非該当証明書は公的な証明書ではなく、あくまで輸出者が自社の判定結果を示すものです。証明書があっても判定誤りの責任は輸出者にあります。​
他社から入手した該非判定書についても注意が必要です。メーカーから非該当と表記された判定書を受け取った場合でも、輸出者は自社で改めて該非判定を行うよう努める必要があります。実際に他社の判定誤りを鵜呑みにした違反事例が全体の18%を占めており、最終的な判定責任は輸出者自身にあることを認識すべきです。​
判定結果は定期的に見直します。法令改正時や新製品追加時には必ず再判定を行い、社内の該非リストやデータベースを最新の状態に保つことが推奨されます。​

通関業務における該非判定ミスの防止体制

該非判定の精度を高めるには、ダブルチェック体制の構築が有効です。CISTECが推奨する体制例は次のとおりです。​
一次判定:設計担当者など技術内容を熟知した者が法令を理解したうえで判定を行う
二次判定(審査):輸出管理担当者が規制法令を熟知した立場から判定内容を審査する
最終承認:輸出管理室長などの責任者が承認する
各段階で判定者の責任範囲を明確にし、任命することが重要です。判定結果は社内関係者へ周知し、判定書および関係資料は確実に保管します。​
CP届出企業(包括許可制度を利用している企業)は、自主通報による違反発覚の割合が約7割と高く、自社内での発覚比率が高い傾向があります。一方、CP届出企業以外では税関による通報が全体の5割を占めており、自社内での発覚比率が低いのが特徴です。​
これは管理体制の差を示しています。
輸出申告時の不備にも注意が必要です。特別一般包括許可証を保有しているにもかかわらず、該当貨物を誤って非該当として税関に申告するケースがあります。また少額特例が適用される貨物を誤って非該当として申告する事例も報告されています。​
これらは直ちに外為法違反(無許可輸出)とはなりませんが、輸出申告上の不備として関税法違反になります。通関業者に代理通関を依頼する場合でも、申告不備の責任は輸出者にあるため、事前に許可証の有無や特例適用の旨を正確に伝達する必要があります。​

違反原因 割合 主な内容
判定誤り・法令解釈誤り 30% 複数項番の確認漏れ、スペック解釈ミス
判定未実施・非規制思い込み 21% 型番変更時の判定省略、サンプル品の誤解
他社誤判定鵜呑み 18% メーカー判定書の自社確認不足
管理体制未整備 9% 担当者独断での輸出、決裁ルール不在
外為法認識不足 9% ソフトウェア提供の規制対象認識不足


該非判定は専門知識を要する作業ですが、違反すると行政制裁と刑事罰の両方が科されることもある厳しい法律です。判定に困った場合は、経済産業省への照会やCISTECへの相談を活用することが推奨されます。​




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