交付決定前に設備を購入すると補助金は全額対象外になります。
参考)補助金は交付決定前に買うとアウト!補助対象外になる落とし穴と…
経済産業省が提供する補助金は、中小企業の生産性向上や事業拡大を支援する国の制度です。2026年2月現在、主要な補助金として「ものづくり補助金」「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」「小規模事業者持続化補助金」「省力化投資補助金」などがあります。
参考)人気の補助金
通関業務従事者にとって特に重要なのが、貿易プラットフォーム活用による貿易手続デジタル化推進事業費補助金です。この制度は、貿易手続のデジタル化による貿易コストの削減を目的としており、社内システムと貿易プラットフォームの連携構築に必要な経費の一部を補助します。つまり業務効率化の強い味方です。
参考)https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo_yokoku/2025/ky250514001.html
補助金額は最大2,000万円で、中小企業の場合は補助率2/3、大企業の場合は1/2が適用されます。対象経費には旅費、委託費、外注費、人件費、サービス利用料などが含まれますが、関税及び輸入消費税は公租公課のため補助対象外です。この点は注意が必要です。
参考)「「貿易プラットフォーム活用による貿易手続デジタル化推進事業…
また、省力化投資補助金も通関業務に活用できる可能性があります。IoT・ロボット等を活用した自動化設備の導入により、書類処理や貨物管理の省力化が期待できます。補助金額は200万円から最大1億円で、補助率は1/2から2/3です。
参考)https://financeinjapan.com/knowledge/GocxwKRsV64D0sCJULDM8
経済産業省の主要補助金を一覧表にまとめると、以下のようになります。
| 補助金名 | 上限額 | 補助率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 省力化投資補助金 | 200万円〜1億円 | 1/2〜2/3 | IoT・ロボット等設備導入 |
| ものづくり補助金 | 750万円〜5,000万円 | 1/2〜2/3 | 革新的な製品・サービス開発 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 5万円〜450万円 | 1/2〜2/3 | ITツール・システム導入 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万円〜250万円 | 2/3(赤字事業者3/4) | 販路開拓・広報費 |
| 貿易手続デジタル化補助金 | 2,000万円 | 中小2/3・大企業1/2 | 貿易PF連携構築 |
各補助金には明確な対象経費の定義があります。例えば、機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費などが一般的な対象です。
しかし、すべての経費が認められるわけではありません。補助金によって補助対象となる経費の内容が異なり、補助の割合や上限額も定められているため、支出する経費の一部は企業が負担することになります。
参考)補助金とは?~知らないと損する補助金の原理原則~ - 税理士…
経済産業省の概算要求資料によると、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費に1,743億円、省エネルギー設備への更新を促進するための補助金に350億円が計上されています。これらは通関業務を行う倉庫や事務所の省エネ設備更新にも活用できます。
参考)ユアサ商事株式会社
IT導入補助金では、通関業務で使用する業務効率化ソフトウェアやクラウドサービスの導入費用が対象になります。補助上限は最大450万円(一部案件で3,000万円まで)で、補助率は1/2から2/3です。国が認定したITツールから選択する必要があります。
参考)【2026年最新版】中小企業向け補助金一覧&採択ポイント解説…
補助金申請から受給までの流れは、どの制度でも基本的に同じです。まず公募情報を確認し、申請書類を作成して提出します。その後、審査を経て採択が決定されますが、ここで注意が必要です。
採択されただけでは補助金は使えません。採択後に「交付決定」という正式な決定を受けて初めて、補助事業を開始できます。この区別を理解していないと、大きな損失につながります。
参考)補助金を使っていい時期のルールと例外(例外:事業再構築補助金…
交付決定前に発注・契約・購入を行った経費は、いかなる理由があっても補助対象外となります。ものづくり補助金の公募要領にも「交付決定日よりも前に発注・契約・購入を行った経費はいかなる理由があっても補助対象外となります」と明記されています。同様に小規模事業者持続化補助金でも、交付決定前に発注・契約、購入、支払い(前払い含む)等を実施したものは補助対象経費として認められません。
つまり待つことが必須です。
具体的な申請手順は以下の通りです。
例外として、事業再構築補助金では「事前着手申請」という制度がありましたが、新事業進出補助金(事業再構築補助金の後継)では事前着手は認められていません。各補助金の最新ルールを必ず確認してください。
参考)新事業進出補助金における「事前着手」は認められない!補助対象…
補助金申請で最も注意すべきなのが、対象外経費の把握です。知らずに申請すると、不採択や減額のリスクがあります。
公租公課は補助対象外という原則があります。通関業務に関係する具体例として、通関当局に支払う関税及び輸入消費税は補助対象経費から除外する必要があります。これは貿易関連の補助金で頻出する注意点です。
参考)https://www.miesc.or.jp/topics/219/shitsumon.pdf
消費税の扱いも複雑です。補助金そのものは物やサービスの授受を伴う取引ではないため、消費税の課税対象とはならず、会計処理上は「不課税」として扱われます。しかし、補助対象事業者が補助事業において支払った経費に含まれる消費税は、仕入税額控除の対象とすることができます。
参考)国から交付される補助金に税金はかかる?基礎知識や会計処理もあ…
つまり仕入税額控除を受ける場合、その分を補助金額から差し引く必要があります。補助事業者は、自らが負担したわけではない補助金分の消費税についても、補助事業以外における支払い消費税と併せて仕入税額控除を受けることになるため、適切に申告する必要があります。
その他の対象外経費として、以下のものが挙げられます。
貿易業務に関連する注意点として、サプライチェーン多元化・販路拡大支援事業費補助金のQ&Aでは、「本補助金の交付申請者が負担した費用のみが補助対象となります」と明記されています。つまり他者負担分は対象外です。
また、支払時期にも制限があります。補助事業期間内に支出が完了していることが原則で、期間外の支払いは原則として対象外です。ただし例外として、人件費(給与等の支払が月末締め→翌月払いになる場合)や、事業の進捗上、事業期間の終了直前に経費が発生したが、経理処理の都合上、事業期間中に支払えなかった場合などは認められることがあります。
通関業務従事者が補助金を活用する具体的な場面を見ていきましょう。
貿易手続のデジタル化が最も直接的な活用方法です。貿易プラットフォーム活用による貿易手続デジタル化推進事業費補助金を使えば、社内の通関管理システムと国際的な貿易プラットフォームを連携させるための開発費用が補助されます。例えば、通関書類の自動生成、船積書類の電子化、輸出入データの一元管理などが実現できます。
具体的には、類型1として「国内外の貿易PFサービスを利用しようとする日本国の法人が、当該貿易PFと自社のシステムの接続を図るもの」が補助対象です。補助上限は2,000万円で、中小企業は経費の2/3が補助されます。
参考)【8/26 12:00で公募終了しました】貿易プラットフォー…
省力化投資も有効な手段です。省力化投資補助金を活用すれば、通関書類のスキャン自動化装置、AI-OCRによる書類読み取りシステム、倉庫内の自動仕分けロボットなどの導入費用が補助されます。これにより、書類処理時間を大幅に削減できます。例えば、手作業で1日50件処理していた通関書類が、システム導入後に150件処理できるようになれば、東京ドーム約3個分の時間を節約できる計算です(1日8時間として約16時間の削減)。
ITツールの導入では、デジタル化・AI導入補助金が役立ちます。通関業務に特化したクラウド型業務管理ソフト、顧客とのコミュニケーションツール、電子帳簿保存に対応した会計ソフトなどが対象になります。国が認定したITツールから選ぶ必要がありますが、補助率は1/2から2/3と手厚い支援です。
業務効率化でコスト削減を実現したい場合、まず自社の課題を明確にすることが重要です。書類処理に時間がかかっているのか、データ入力ミスが多いのか、顧客とのやり取りが非効率なのか。課題に応じて、デジタル化補助金、省力化投資補助金、IT導入補助金を使い分けましょう。
参考情報として、ミラサポplusでは補助金の検索や比較ができます。
ミラサポplus 補助金・助成金情報
このサイトでは、業種や目的から最適な補助金を探せるため、申請前に一度確認することをおすすめします。
補助金申請で失敗する最大の原因は、ルールの誤解と準備不足です。以下のチェックリストで、申請前に必ず確認してください。
📋 申請前チェックリスト
✅ 公募期間の確認
✅ 事業計画の整合性
✅ 交付決定前の行動制限
✅ 対象経費の確認
✅ 書類の準備
✅ 事業期間の管理
✅ 報告義務の理解
通関業務に特化した注意点として、貿易関連の補助金では、貿易プラットフォームの選定基準や、連携するシステムの仕様書が求められることがあります。事前に技術的な検討を済ませておくと、審査がスムーズです。
また、補助金は返済不要ですが、不正受給が行われた場合には、補助金交付決定の取消・返還命令、不正の内容の公表等や、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられることがあります。正確な申請が大前提です。
参考)補助金申請時の注意点
よくある失敗例を知っておくと、同じミスを避けられます。
❌ 失敗例1:採択後すぐに発注してしまった
採択通知を受け取った喜びで、すぐに設備を発注。しかし交付決定はまだ出ていなかったため、全額が補助対象外に。
❌ 失敗例2:関税を補助対象経費に含めた
輸入設備の関税を補助対象経費として申請したが、公租公課は対象外のため減額された。
❌ 失敗例3:事業期間終了後に支払った
納品は事業期間内だったが、支払いが期間外になり、補助対象外と判定された。
これらの失敗を避けるには、公募要領を隅々まで読み、不明点は事務局に問い合わせることが重要です。事務局は申請者の味方ですので、遠慮なく質問しましょう。
最後に、補助金申請は審査があるため、申請すれば必ずもらえるわけではありません。採択率は補助金によって異なりますが、ものづくり補助金で約50%、IT導入補助金で約70%程度が一般的です。不採択でも諦めずに、次回公募に向けて事業計画をブラッシュアップすることをおすすめします。