輸出者 定義 関税法における基準と実務

関税法における輸出者の定義は、所有権の有無に関わらず輸出意思を持つ者すべてが該当します。実際の輸出者と名義上の輸出者が異なる場合や特定輸出者制度の違いなど、通関実務で押さえるべきポイントを解説。あなたは正しい理解ができていますか?

輸出者 定義 関税法

📌 この記事の3つのポイント
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輸出者の定義は所有権不要

関税法上、輸出者は貨物の所有者でなくても輸出意思があれば申告者になれる

⚠️
名義貸しのリスク

実際の輸出者と名義上の輸出者が異なる場合、消費税還付で税務リスクが発生

特定輸出者の特例措置

税関長の承認を受けた特定輸出者は保税地域への搬入が不要になる

名義だけ貸したあなたに消費税の追徴課税が来ます。

輸出者の関税法上の定義と要件


関税法における輸出者の定義は、実務上非常に重要な意味を持ちます。輸出申告者の資格には関税法上別段の制限はなく、およそ貨物を輸出しようとする意思を有すれば足り、その輸出貨物の所有権を有するかどうかは問われません。
参考)貿易関係用語集(や)

これは通関業務従事者にとって意外な事実かもしれません。つまり、貨物の所有者でなくても、輸出の意思さえあれば誰でも輸出申告者になれるということです。これが原則です。
実際の実務では、輸出を行う者は自己の責任において輸出しようとする者であることが求められます。外為法第48条における「輸出をしようとする者」についても、「およそ貨物の輸出を行おうとする者であり、居住者であるか非居住者であるかを問わない」と解釈されています。
参考)輸出管理に関するFAQ

ただし、所有権を有する者である必要はないものの、自己の責任において輸出しようとする者であることを要するという点は重要です。単なる運送業者や代理人とは異なり、輸出申告者は法的責任を負う立場にあります。​
関税法における「輸出」とは、内国貨物を外国に向けて送り出すことを指します。ここで内国貨物とは、本邦にある貨物で外国貨物以外のものを指し、輸出の許可を受けた貨物や輸入許可を受けた貨物などが該当します。定義が明確ですね。
参考)関税法における輸出の意味とは?


輸出者と所有権の関係性

輸出者の定義において所有権が不要という点は、実務上様々な取引形態を可能にしています。EXW(工場渡し)条件での取引では、買主側が輸出申告を行うケースがあり、この場合、日本の居住者である税関長の許可を受けた通関業者などを「税関事務管理人」として任命し、買主の名義で輸出申告手続きを行います。
参考)EXW(工場渡)の輸出入手続き


所有権と輸出者の関係で注意すべきは、インコタームズは貨物の所有権に関する定義を行っていないという点です。たとえば海上輸送中に貨物が破損した場合、EXWやFOBの場合は輸入者が危険責任を負いますが、このとき貨物の所有権は輸出者のままということもあります。
参考)インコタームズで所有権の移転はされない|定義されている責任範…

輸出免税の適用を受ける際には、さらに複雑な状況が生まれます。EXWを使用して売主が輸出免税の適用を受けるときには、輸出証明(税関の輸出許可書)のほか、売主から買主への物品の所有権・処分権の移転が輸出許可後(船積み時など)になされることを予め当事者で合意し、その旨を契約書やインボイスなどに明記しておく必要があります。​
このように所有権と輸出者の立場は必ずしも一致しないため、契約書での明確な取り決めが重要になります。曖昧なまま進めると、税務上のトラブルや責任の所在が不明確になるリスクがあります。どちらが輸出者かを明確にすることが求められます。
通関業者や物流事業者に輸出業務を委託する場合でも、輸出者としての責任は委託元に残ります。単なる業務代行と輸出者としての立場は区別して理解する必要があります。委託契約の内容によって責任範囲が変わるため、契約書の確認が欠かせません。
参考)https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/pdfs/book/303-6.pdf

輸出者の実際と名義上の違い

通関実務では、実際の輸出者と輸出申告書に記載される輸出者(名義上の輸出者)が異なるケースが存在します。友好商社が介在する取引等の場合には、名義貸しに係る取引が多く、当該友好商社等を輸出申告者として掲名するものの、輸出申告書の原本は実際に輸出取引を行った者(実際の輸出者)が保管しています。
参考)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/11/01.htm

この場合、消費税法上の輸出免税の適用者は実際の輸出者となります。しかし、何も対策を講じなければ、輸出免税の適用を受けることができるのは輸出をした輸出名義人である商社になってしまいます。実際の輸出者は商社に対して国内で商品を販売した、つまり国内取引をしたとみる見方もあるからです。
参考)実際の輸出者と輸出名義人が違う場合の輸出免税|ネクステージ松…


実際の輸出者が輸出免税制度の適用を受けるためには、次の措置を講ずる必要があります:​


  • 輸出申告書等の原本を保存する

  • 名義貸しに係る事業者に対して輸出免税制度の適用がない旨を連絡するための消費税輸出免税不適用連絡一覧表を交付する

  • 名義貸しに係る友好商社等は、確定申告書の提出時に、上記書類の写しを提出する

これらの手続きを怠ると、深刻な税務リスクが発生します。輸出商社がインボイスを受領することにより、実質的な輸出者であるように見せて、輸出免税売上を計上して消費税還付を申告することを目論むケースがあります。
参考)消費税還付の落とし穴:名義貸し輸出につきまとう税務リスク|V…

この状況下では消費税法上の違反状態が生じます。国税当局は実質的な輸出者の判断が難しくなるため、輸出商社に税務調査が入ると、調査が実際の輸出者にも波及していく可能性があります。つまり、「インボイスを渡しただけなのに」免税売上を否認される税務リスクが発生するということです。​
名義貸しの取引を行う場合は、必ず適切な書類管理と連絡体制を整えることが必須です。税務調査のリスクを避けるため、国税庁が指定する様式に従った書類作成を徹底しましょう。
国税庁の輸出免税に関する質疑応答事例(名義貸し取引の適切な処理方法について詳細が記載されています)

輸出者における特定輸出者制度

特定輸出者制度は、通常の輸出者とは異なる特例措置を受けられる制度です。セキュリティ管理とコンプライアンスの体制が整備された者としてあらかじめいずれかの税関長の承認を受けた輸出者(特定輸出者)が、保税地域等に貨物を搬入することなく輸出申告を行い輸出の許可を受けることができます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/extsukan/5601_jr.htm

特定輸出者になるためには、関税法第67条に定められた要件をクリアし、特定輸出者承認申請書やその他書類を提出し、税関長の承認を得る必要があります。承認要件には、法令遵守体制や貨物の管理体制など複数の項目があり、暴力団関係者でないことなども確認されます。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/faq/a1-1-2.htm


特定輸出者制度の主なメリットは以下の通りです:
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/aeo_merit.htm



  • 保税地域への搬入が不要になり、倉庫から直接輸出許可を受けられる

  • 申告官署の自由化(貨物の所在地に関わらず、どこの税関にも申告できる)

  • 輸出許可後の訂正に係る申請手続の簡素化

  • 通い容器に関する免税手続の簡素化

通常の輸出手続きでは、貨物を保税地域に搬入してから税関の審査を受ける必要がありますが、特定輸出者は税関長が貨物が置かれている倉庫で関税審査を行います。保税輸送の手間が省けます。
参考)輸出業務を簡素化する特定輸出申告制度のメリットと仕組み

ただし、特定輸出者制度と混同しやすい用語として「特例輸出貨物」と「特定輸出貨物」があります。「特定輸出貨物」は特定輸出申告して税関長の許可を受けた貨物を指し、「特例輸出貨物」はそれに加えて特定委託輸出申告や特定製造貨物輸出申告が行われて許可を受けた貨物も含む、やや広い概念です。
参考)特例輸出貨物と特定輸出貨物は、何が違うのか。

特定輸出者の承認を受けることで輸出業務の効率化が図れますが、承認後も継続的にコンプライアンス体制の維持が求められます。違反があれば承認取消しのリスクもあるため注意が必要です。AEO制度の一環として位置づけられており、国際的なサプライチェーンセキュリティの観点からも重要な制度となっています。
参考)関税法

税関カスタムスアンサー 特定輸出者制度の概要(承認要件や申請方法の詳細が掲載されています)

輸出者定義の実務上の注意点

輸出者の定義を実務で適用する際には、複数の注意点があります。まず、輸出通関手続きでは、輸出申告者が海運・通関業者に貨物の通関および船積みを依頼し、船積依頼書を提出します。その後、海運・通関業者が船積依頼書に基づいて税関に輸出申告を行い、税関は必要に応じて書類審査や現物検査を行って輸出許可を出します。
参考)貿易実務の流れ

この流れで重要なのは、通関業者は輸出者の代理として申告を行っているという点です。税関に貨物を「通す」ことが通関士の仕事ですが、輸出者としての法的責任は依頼主にあります。つまり通関業者に依頼したからといって、輸出者としての責任が免除されるわけではありません。​
輸出貨物の現品検査では、輸出申告者、貨主、仕向地等を総合的に判断し、関税又は内国消費税の戻し税、輸出免税等の取扱いを受ける貨物など、貨物の種類や性質等が審査されます。この審査で問題が発見された場合、最終的な責任は輸出者が負うことになります。
参考)https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0100-s06-01~02.pdf

輸出代行者が輸出する場合も、実質的な輸出者は誰かという判断が重要です。本邦へ輸入するための売買契約が製造者と買手の間で結ばれており、輸出者は製造者から輸出業務を委託された立場にある場合、実質的な輸出者は製造者となります。契約関係が明確であることが求められます。​
個人輸出においても同様のルールが適用されます。誰でも始めることができますが、理解しておくべきルールやリスク・注意点を知らずに始めると、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。関税や輸入規制をはじめ、国際輸送ならではのポイントを押さえることが大切です。
参考)【初心者向け】個人輸出の始め方|メリット・リスク・注意点を徹…

安全保障貿易管理の観点からも、輸出者の定義は重要です。輸出先の国・地域を問わず、貨物及び技術が規制対象のスペックの場合には、原則として輸出等の許可が必要になります。需要者に関わらず、例えば海外の大学や研究機関への輸出であっても許可が必要な場合があります。​
技術提供においても注意が必要で、輸出貨物の使用技術を提供する者が貨物の輸出者でない場合でも、許可が必要になるケースがあります。ただし、講演会への参加に制限がなく誰でも参加できる講演会であれば、許可は不要です。技術の提供形態で判断が変わります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/qanda25.html

これらの実務上の注意点を理解し、適切な手続きを行うことで、通関業務でのトラブルを回避できます。特に消費税還付や安全保障貿易管理に関わる案件では、輸出者の定義を正確に理解することが必須です。疑問がある場合は、税関や税理士、通関士などの専門家に相談することをおすすめします。




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