法令遵守と順守の違い・意味・通関業務でのコンプライアンス対策

通関業務に携わる上で法令遵守は経営の根幹です。「遵守」と「順守」、どちらが正しいのか。コンプライアンス違反がもたらす深刻なペナルティとは。あなたの会社は本当に大丈夫ですか?

法令遵守と順守の意味・通関業務に関わる重要性

通関業務では申告ミスが修正申告だけで終わると思っていませんか?

この記事の3つのポイント
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遵守と順守の違い

「遵守」は法令を尊重し厳格に守る意味、「順守」は素直に従う意味で、通関業務では「法令遵守」が標準表記

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通関業務の法的責任

申告ミスには延滞税年7.3%、過少申告加算税10%、さらに監督処分で51日間業務停止の実例も

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実践的コンプライアンス対策

法令遵守規則の整備、社内教育体制、自主的修正申告によるペナルティ軽減方法を解説

法令遵守と順守の違いとは


「法令遵守」と「法令順守」は同じ読み方(じゅんしゅ)ですが、使い分けには明確な違いがあります。
参考)「順守」と「遵守」の違いとは?意味と正しい使い分け、ビジネス…


遵守は「遵」という漢字に「従う・尊重する」という意味が含まれ、規則の本質的な理解を伴って厳格に守ることを表します。一方、順守は「順」の字が「素直に従う」というニュアンスを持ち、言われるがままに従う姿勢を示します。
参考)「遵守」とは?読み方と意味や「順守」との違い・その他類義語や…


つまり遵守ということですね。
公式文書や法的文脈では「法令遵守」が一般的に使用されます。税関や通関業法の公式資料でも「法令遵守規則」という表記が標準です。
参考)https://www.jiffa.or.jp/themes/jiffa/statement/PDF/AEO2.pdf


通関業務は関税法、通関業法、外為法など複数の法令が関わる専門分野です。これらの法律を単に形式的に守るだけでなく、その趣旨を理解し尊重する姿勢が求められるため、「遵守」という表現が適切なのです。
参考)「遵守」と「順守」の違いとは? 意味・使い分け方や類語を解説…


英語では"comply with regulations"(規則に従う)、"adhere to"(規則に忠実に従う)といった表現が使われます。​

通関業務における法令遵守の具体的内容

通関業務の法令遵守とは、単なる法律の文言を守ることではありません。
日本国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)が公開する「輸出入関連業務に係る法令遵守規則」では、以下の基本方針が定められています:
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/CPmodel_broker.pdf



  • 輸出入関連業務等の遂行に際しては、法令を遵守し、違法行為は行わない

  • 法令遵守のため必要な社内体制の整備を図る

  • 通関業者としての良識をもって業務を行い、社会的な信用及び品位を害するような行為は行わない

  • 定められた業務手順書に従って、適正に業務を行う

これが基本です。
具体的な業務では、通関手続における貨物の確認、関係書類に基づく適正かつ確実な申告、申告事項と貨物の現物との照合などが求められます。依頼を受けた通関手続の内容と必要な書類等の対査確認も重要な手続きです。​
認定通関業者制度(AEO制度)では、より高度なコンプライアンス体制が要求されます。法令遵守規則(コンプライアンスプログラム)の整備、社内管理体制の確立、継続的な社員教育が必須です。
税関の認定通関業者向けコンプライアンスプログラムモデル(法令遵守規則の具体例と社内体制整備の参考資料)

法令違反時の罰則・ペナルティの実態

通関業務で法令違反が発覚すると、金銭的ペナルティだけでなく業務停止という深刻な事態を招きます。
修正申告に関する附帯税は段階的に課されます。延滞税は法定納期限(通常は輸入許可日)の翌日から納付日まで年7.3%の税率で計算されます。過少申告加算税は基本10%ですが、税関からの調査通知前に自主的に修正申告した場合は5%に軽減されます。
厳しいところですね。
無申告の場合はさらに重く、無申告加算税が課され、決定に基づく税額にも延滞税が加算されます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1306_jr.htm


通関業法上の行政処分として、監督処分と懲戒処分があります。監督処分には口頭・文書による厳重注意、1年以内の期間を定めた通関業務の全部または一部の停止、通関業の許可取り消し、業務改善命令が含まれます。
2024年の実例では、ケイラインロジスティックス株式会社が営業担当者の関税法違反行為により、2025年5月24日より51日間の通関業務全部停止処分を受けました。東京ドーム5つ分の広さに匹敵するほどの経営的インパクトがあったはずです。​
刑事罰も用意されており、偽りその他不正の手段により通関業の許可を受けた者や無許可営業には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。監督処分(業務停止)に違反すると同じく1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
これは使えそうです。

コンプライアンス体制整備の実践方法

効果的なコンプライアンス体制は、ルール整備と社員教育の両輪で機能します。
社内規程の整備では、法令遵守規則(コンプライアンスプログラム)と業務手順書の作成が第一歩です。これらの文書には通関手続の受注に係る手続、通関書類の作成基準、貨物と書類の照合方法などを明記します。AEO制度の認定を受けるには、このような規程類が必須要件です。
階層別の教育プログラムが効果的です:
参考)コンプライアンス対策を徹底解説|社員教育の進め方と実践手順 …

階層 主な目的 研修内容例
経営層 経営責任とリスク管理の理解 企業リスクと経営判断・重大違反事例の共有・ガバナンス体制整備
管理職 部下の違反防止と相談対応 違反予兆の察知方法・報告相談対応手順・ハラスメント防止
一般社員 日常業務での遵法意識定着 基本法令と社内ルール・情報管理・SNS利用・行動事例
新入社員 自社基準の早期習得 企業理念・基本方針・禁止事項の周知


つまり段階的な教育です。
eラーニングによる継続的な研修も有効です。法改正や新しい事例を随時追加し、全社員が最新の知識を維持できる環境を整えましょう。
参考)コンプライアンスの教育はどうすればいい?目的・実施方法を学ん…


コンプライアンス教育の具体的な進め方とeラーニング活用事例(階層別研修プログラムの設計方法)
通関業務特有のリスクポイントとして、外為法違反に注意が必要です。輸出管理体制が不十分で許可申請の要否を通関業者任せにした結果、無許可輸出が発生した事例があります。出荷管理での通関業者への書類送付や伝達内容の不備も問題になりやすいポイントです。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/compliance_programs_pdf/5_jirei.pdf


リスク低減のための通関業務独自視点

通関業務のコンプライアンスでは、日常の細かなチェック体制が違反を防ぎます。
依頼者情報の事前確認が重要です。通関業法では顧客等から通関手続の依頼を受ける前に、定められた手続を行うことが求められます。この段階で依頼内容の妥当性、必要書類の完備状況を確認することで、後工程でのミスを防げます。​
どういうことでしょうか?
具体的には、通関手続を行う際に依頼を受けた内容と必要書類等の対査確認を行い、通関書類作成時には貨物を正確に把握するため必要に応じて貨物の内容を確認します。これは書類と現物の不一致による申告ミスを防ぐための基本動作です。​
税関とのコミュニケーション体制も見逃せません。申告内容に疑義が生じた場合の問い合わせルート、修正申告が必要になった際の迅速な対応フローを事前に確立しておくことで、ペナルティを最小化できます。
参考)輸入通関の適正申告とは?申告ミス・修正申告・税関調査対策


自主的な修正申告のタイミングには大きな意味があります。税関から調査通知を受ける前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税が10%から5%に半減します。調査通知後では軽減措置が受けられないため、社内で申告ミスを発見した時点で即座に対応する文化が重要です。
参考)輸入申告に係る過少申告加算税の計算方法 - 通関士の通信教育…


痛いですね。
デジタルツールの活用も効果的です。通関書類の作成支援システム、法改正情報の自動通知サービス、申告内容の自動チェック機能などを導入することで、人的ミスを減らせます。特に電子申告センターを活用すれば、異なる税関管轄地域の貨物も一元管理できます。
参考)https://www.e3s-conferences.org/articles/e3sconf/pdf/2023/08/e3sconf_afe2023_05053.pdf


定期的な内部監査と役員によるコンプライアンスヒアリングも実践されています。2024年の監督処分事例では、違反発覚後に役員が全社員へのヒアリングを実施し、再発防止に取り組んだことが報告されています。​
通関業者の監督処分と通関士の懲戒処分の違い(処分の種類と要件の詳細解説)
継続的な法令情報のアップデートが不可欠です。関税率の改定、HSコードの変更、輸出入規制の追加など、通関業務を取り巻く法令は頻繁に変わります。これらの変更情報を社内で速やかに共有し、業務手順書に反映させる仕組みを整えましょう。
参考)コンプライアンス(法令遵守)とは?考え方や事例をわかりやすく…


意外ですね。
コンプライアンス違反は企業の信用失墜だけでなく、取引先や荷主にも迷惑をかけます。業務停止期間中は顧客対応ができず、長年築いた信頼関係が一瞬で崩れるリスクがあります。法令遵守は経営の根幹であり、通関業務に携わる全員が当事者意識を持つべき課題です。
参考)コンプライアンスリスク:あなたの会社は大丈夫?3つのリスクと…





「法令遵守」が日本を滅ぼす