法令違反 罰則|通関業務従事者が知るべき懲役・罰金と監督処分の実態

通関業務における法令違反は懲役や罰金だけでなく、業務停止や従事禁止など厳しい行政処分も招きます。関税法・通関業法の罰則体系と実際の処分事例を理解して、知らないうちに重大な違反を犯していませんか?

法令違反 罰則

課税価格を5分の1に減らして申告すると、あなたも懲役刑の対象になります。

この記事のポイント
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通関業務の法令違反は二重処分

刑事罰(懲役・罰金)と行政処分(業務停止・従事禁止)の両方を受ける可能性があり、個人と法人の双方が罰せられる両罰規定が適用される

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法令違反の罰則は段階的

関税法違反は最大10年の懲役、通関業法違反は最大1年の懲役など、違反内容により刑罰の重さが異なり、金額により罰金額も変動する

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実務での違反事例は意外と身近

課税価格の申告漏れ、インボイス改ざん、少額特例の不正利用など、納期優先や知識不足から生じる違反が実際の処分事例の多くを占める

法令違反 罰則の基本体系と通関業務従事者への影響

通関業務従事者が直面する法令違反の罰則は、刑事罰と行政処分の二段構えになっています。
刑事罰には懲役刑と罰金刑があり、関税法違反の場合は最大10年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科される可能性があります。一方、通関業法違反では最大1年以下の懲役または100万円以下の罰金となり、違反の種類により刑罰の重さが段階的に設定されています。
参考)通関業法に規定する罰則


行政処分は財務大臣または税関長が行う監督処分と懲戒処分に分かれます。通関業者に対しては1年以内の業務停止または許可取消が命じられ、通関士個人には戒告、1年以内の従事停止、2年間の従事禁止という3段階の処分があります。
参考)通関業者に対する「監督処分」と通関士に対する「懲戒処分」とは…


両罰規定が厄介なところです。
通関業法第45条により、従業者が違反行為を行った場合、行為者本人だけでなく法人にも罰金刑が科されます。例えば、通関業務担当者が不正申告を行うと、その担当者が懲役または罰金を受けるだけでなく、所属する通関業者も同額の罰金を支払う義務が生じるのです。
参考)『罰則・「通関業法の罰条」と「関税法の罰条」』 : 貿易とも…


法令違反 罰則の具体的な金額と懲役年数

関税法の罰則は違反内容により細かく分類され、それぞれ異なる刑罰が定められています。
参考)関税法違反の事件は弁護士へご相談ください – 刑事事件の実力…


輸入禁制品(覚醒剤、麻薬、児童ポルノなど)を輸入した場合、10年以下の懲役または3000万円以下の罰金、あるいはその併科となります。これは関税法第109条に規定される最も重い刑罰です。
参考)http://www.bepats.co.jp/Home/P-rireki/H140901/HOKA/KZ2000-109.htm


偽りその他不正の手段により関税を免れた場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその併科が科されます。実際の事例では、並行輸入品の申告で正規インボイスの5分の1の価格で申告し、合計30回にわたり1800万円の関税を免れた通関業務担当主任が関税法第110条違反で起訴され、罰金刑が確定しています。
参考)https://blog.goo.ne.jp/kazuchann/e/c0f35dbe8f9afbc94ffd27e3d223c5b1

通関業法の罰則はより軽いものの、業務への影響は深刻です。​


  • 偽りその他不正の手段により通関業の許可を受けた者:1年以下の懲役または100万円以下の罰金

  • 監督処分(業務停止命令)に違反した者:1年以下の懲役または100万円以下の罰金

  • 通関士の懲戒処分(従事停止・禁止)に違反した者:6月以下の懲役または50万円以下の罰金

  • 業務改善命令に違反した者:50万円以下の罰金

罰金だけでは終わりません。
財務大臣による行政処分が別途行われ、通関業の許可取消や通関士の従事禁止処分を受けると、2年間は新たな許可や確認を受けられない欠格事由に該当します。
参考)【通関業法】条文別徹底解説シリーズ(第4回:監督・懲戒)

法令違反 罰則につながる実際の事例パターン

通関業務での法令違反は、意図的な不正だけでなく、知識不足や社内連携ミスからも発生しています。
参考)もし不正輸出をしてしまったらどうなる?実際にあった事例もあわ…

経済産業省の調査によると、2013年4月から2018年3月の間の輸出法令違反の原因上位3つは「法令知識の欠如」(26%)、「社内連携ミス等の過失」、そして意図的な不正でした。つまり、4件に1件は知識不足が原因です。​
課税価格の申告漏れが最も一般的な違反事例です。輸入者が提供した部材の金型費用、特許権使用料、運送費用などを課税価格に含めずに申告した結果、税関の事後調査で申告漏れが発覚し、追徴税額と重加算税を課されるケースが多数報告されています。
参考)https://www.jtia.or.jp/osirase/20211112%E8%BC%B8%E5%85%A5%E4%BA%8B%E5%BE%8C%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%A0%B1%E9%81%93%E7%99%BA%E8%A1%A8.pdf

少額特例の不正利用も摘発事例として挙げられます。ある企業は納期を早めるため、リスト規制対象だった59万円相当の品物を複数回に分けて船積することで少額特例の対象と偽り、不正輸出を繰り返しました。その結果、会社には罰金50万円、管理部長には罰金20万円の略式命令が下されています。​
保税蔵置場での不適切な貨物取扱いも要注意です。
2024年8月には、ケイラインロジスティックス株式会社が営業担当者による不適切な貨物取扱いにより、担当者が税関から通告処分を受け、会社も両罰規定に基づき通告処分を受けました。その結果、通関業法上の監督処分まで受ける事態となったのです。
参考)ケイラインロジスティックス株式会社

法令違反 罰則を回避するための通関業務チェックポイント

法令違反を未然に防ぐには、日常業務でのチェック体制が不可欠です。
課税価格の算定では、輸入者から提供された部材、金型、設計図、ソフトウェアなどの無償提供物品を必ず確認してください。これらは関税定率法第4条により課税価格に加算する必要があり、見落とすと申告漏れとして重加算税の対象になります。​
インボイス金額の確認は二重三重に行うべきです。並行輸入品や中古品であっても、実際の取引価格を正確に申告する必要があります。金額を意図的に減らして申告すると、関税法第110条違反となり、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される可能性があります。​
社内での情報共有が決定的に重要です。
輸出入に関わる営業部門、調達部門、通関部門の間で、取引条件、無償提供物品、ライセンス料などの情報を確実に共有する仕組みを作ってください。法令知識の欠如が違反原因の26%を占めることを考えると、定期的な社内研修と最新法令の周知も欠かせません。​
関税法や通関業法の条文は財務省や税関のウェブサイトで確認できます。特に関税法の罰条については、税関ウェブサイトに詳細が掲載されているため、業務内容に関連する条文を定期的に確認することをお勧めします。
関税法の罰条(税関ウェブサイト)- 各種手続違反や密輸に関する罰則の詳細が確認できる公式資料

法令違反 罰則後の通関業務復帰プロセスと期間

懲戒処分や監督処分を受けた後、通関業務に復帰できるかどうかは処分の種類により異なります。​
通関士への戒告処分であれば、業務上の制限は一切ありません。戒告は行政指導の一種であり、通関業務への従事を継続できます。
参考)https://tsukanboeki-shun.com/kantoku/


1年以内の従事停止処分の場合、停止期間中は一般従業者としても通関業務に従事できません。しかし停止期間が経過すれば、何ら手続を要せず自動的に通関士として業務に復帰できます。資格自体は喪失しないということですね。
2年間の従事禁止処分は通関士個人に対する最も重い懲戒処分です。この期間中は通関業務に一切従事できず、2年間は通関士の確認を受けることもできません。ただし永久失格ではなく、2年間の禁止期間が満了すれば、再度の確認手続により復職が可能になります。​
通関業者の許可取消を受けた場合、より深刻な影響があります。取消から2年間は新規許可の欠格事由に該当し、新たに通関業の許可を申請することができません。この期間は、別の通関業者の従業員として働くことは可能ですが、自社での通関業務は一切行えないのです。​
処分歴は信用情報として残ります。
財務大臣による監督処分や懲戒処分の情報は、税関や財務省のデータベースに記録され、将来の許可申請や確認申請の際に参照されます。軽微な違反であっても、繰り返せば次回はより重い処分を受ける可能性が高まるため、一度でも処分を受けた場合は、再発防止策を徹底的に講じる必要があります。