犬は家畜伝染病予防法の対象外なのに違反すると300万円の罰金です。
家畜伝染病予防法における「家畜」として指定されているのは、牛、水牛、鹿、馬、めん羊、山羊、豚、いのしし、鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥の15種です。これらの動物が法令上の対象となり、飼養衛生管理基準の遵守義務が生じます。
参考)飼養衛生管理基準について ~対象家畜(動物)を飼養する皆様へ…
対象動物の範囲は畜産業に限定されません。
例えば、ペットとして飼育される馬や観賞用の鶏であっても、家畜伝染病予防法の適用を受けます。法律上は飼育目的に関わらず、種類により規制対象か否かが決まる仕組みです。
参考)家畜の飼養衛生管理基準について - 群馬県ホームページ(農政…
通関業務では、これら15種の動物およびその死体、肉製品が輸入検疫の対象となることを認識しておく必要があります。少量の土産品であっても例外はありません。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1804_jr.htm
家畜伝染病予防法第37条第1項に基づく指定検疫物は、大きく3つのカテゴリーに分類されます。第一に偶蹄類の動物と馬科の動物、第二に家きん類(鶏、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥、あひる、がちょうなどのかも目の鳥類)、第三に兎とみつばちです。
参考)家畜伝染病予防法
これらの指定検疫物には、生きている動物だけでなく死体も含まれます。さらに肉、臓器、卵、ソーセージ、ハムなどの加工品、さらには一部の稲わらまでが規制対象となっています。
参考)https://jvma-vet.jp/ekigaku/todoke/10.html
つまり畜産物全般が対象です。
通関業務従事者にとって意外なのは、犬と猫が家畜伝染病予防法の「家畜」には含まれていない点です。しかし犬は指定検疫物として別途規定されており、レプトスピラ症の検疫対象となります。猫は狂犬病予防法の適用を受けますが、家畜伝染病予防法上の指定検疫物ではありません。
参考)家畜伝染病予防法に基づく定期報告
対象動物を輸入する際は、輸入予定日の一定期間前に動物検疫所長へ輸入届を提出する義務があります。届出期間は動物の種類により異なり、偶蹄類の動物と馬は輸入予定の120日前から90日前まで、家きん類は70日前から40日前まで、犬は40日前までとなっています。
参考)家畜伝染病予防法:動物検疫所
この届出を怠ると検疫が受けられません。
さらに輸入の2日前までに輸入検査申請書を提出するか、ANIPASシステムを利用して検査申請を行う必要があります。通関業務では、荷主がこれらの手続きを完了しているか事前確認が重要です。
届出期間の長さは、輸出国での検査や証明書取得に必要な時間を考慮して設定されています。特に偶蹄類と馬は口蹄疫などの重大な家畜伝染病のリスクが高いため、最も長い事前届出期間が設けられているのです。
家畜伝染病予防法の規制対象物品を輸入する際、税関では動物検疫所が交付した輸入検疫証明書の提出が義務付けられています。この証明書は、動物検疫所での検査に合格し、法令に定められた要件を満たしていることを証明するものです。
証明書がなければ通関できません。
郵便物または携帯品として輸入される場合、検査合格の確認は容器や包装に動物検疫所が押印した「検疫済」の印により行われます。通関業務従事者は、この印の有無を目視で確認する作業が求められます。
輸入規制対象物品は、一般貨物、携帯品、国際郵便物など輸送形態に関わらず、また量の多少や用途(土産、個人消費など)に関係なく全て規制対象です。例外は一切ありません。
家畜伝染病予防法に違反して対象動物や指定検疫物を輸入した場合、法人には最大5000万円の罰金が科される可能性があります。個人の場合でも、犬の違反輸入は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、猫の違反輸入は30万円以下の罰金となります。
参考)犬、猫を輸入するには:動物検疫所
5000万円は約50人分の年収です。
通関業者としては、荷主に対して事前に輸入検疫の必要性を説明し、動物検疫所への相談を促すことがリスク回避につながります。特に初めて動物や畜産物を輸入する荷主に対しては、農林水産省動物検疫所のホームページで最新情報を確認するよう案内することが有効です。
動物検疫所ホームページ
輸入禁止国や停止措置の最新情報が掲載されており、通関業務の事前確認に役立ちます。
違反が発覚した場合、貨物は没収または返送となり、荷主は多大な経済的損失を被ります。通関業務従事者としては、書類不備を水際で発見し、適切な検疫手続きへ誘導する役割が求められているのです。