通関業務では知的財産侵害物品の取り扱いが厳禁です。
知的財産(IP:Intellectual Property)とは、人の創造的な活動によって生み出された無形の資産を指します。文学作品、音楽、発明、デザイン、企業のロゴ、ビジネスのノウハウなど、形のないものに対して認められる財産権です。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/d-globalbusiness-00010.php
通関業務では、知的財産侵害物品は「輸入してはならない貨物」として関税法第69条の11で規定されています。つまり基本中の基本です。税関では特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、育成者権を侵害する物品を厳格に取り締まっています。
参考)https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vfq-att/pdf_publications_01072024.pdf
これらの権利は2003年に制定された知的財産基本法によって保護され、日本の産業競争力を支える重要な要素となっています。通関業務従事者にとって、これらの権利を正確に理解することは業務上の必須知識です。
参考)https://ipmag.skettt.com/detail/intellectual-property-rights
知的財産権は大きく分けて産業財産権と著作権に分類されます。産業財産権には特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つが含まれ、いずれも特許庁への登録が必要です。
参考)知的財産の種類!著作権・特許・商標・意匠の違い、理解できてい…
主な知的財産権の種類
これらの権利それぞれに保護対象や保護期間が異なるため、通関業務では各権利の特性を理解する必要があります。特許の場合、反復可能性が求められるため、個人的な能力に起因する秘伝のような技術は保護対象外となります。
通関士試験でも知的財産権に関する問題は頻出テーマとなっており、実務知識として確実に押さえておくべき分野です。
参考)通関士試験対策の完全ガイド:効率的な学習法で合格を目指す|5…
知的財産侵害物品を故意に輸出入した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科という重い刑罰が科されます。この刑罰は2016年の関税法改正で強化されたものです。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/a_003.htm
注意すべき点は法人の責任です。代表者や従業員が法人の業務として知的財産侵害物品を故意に輸出入した場合、その法人に対しても1000万円以下の罰金が科されます。つまり両罰規定です。
個別の知的財産権法でも罰則が設けられています。特許権侵害は7年以下の懲役または1億円以下の罰金、商標権侵害も同様に7年以下の懲役または1億円以下の罰金となっています。著作権侵害については5年以下の懲役または500万円以下の罰金が定められています。
参考)세관을 통한 지식재산권 보호
これらの罰則は単なる過失では適用されず、「故意」が要件となっています。しかし通関業務従事者として知的財産侵害物品を見逃すことは、業務上の重大な過失と判断される可能性があります。
税関での水際取締りを回避するため、申告内容を偽る行為はさらに重い罪に問われます。通関業務では慎重な確認作業が不可欠ですね。
税関が知的財産侵害物品に該当すると思われる貨物(侵害疑義物品)を発見すると、認定手続きが開始されます。この手続きは、権利者と輸出入者双方の意見を聴取した上で、税関が侵害の有無を判断するプロセスです。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kinseihin/2503_jr.htm
認定手続きの流れは次のとおりです。まず税関は侵害疑義物品を発見すると、権利者と輸出入者に通知を行います。その後、両者は税関に対して意見を述べることができ、証拠資料を提出することも可能です。
参考)http://www.tokugikon.jp/gikonshi/285/285kiko1.pdf
税関は提出された意見と証拠に基づいて判断を行い、認定結果を権利者と輸出入者に通知します。侵害物品と認定された場合、税関長はその貨物を没収できます。これが基本の流れです。
特許権や意匠権など技術的判断が必要な場合、税関は特許庁長官に意見照会できる制度があります。この制度により、専門的な判断が必要な案件でも適切な認定が可能となっています。
通関業務従事者は、認定手続きが開始された時点で迅速に対応する必要があります。輸入者側の代理人として意見書を提出する場合、侵害に該当しない根拠を明確に示すことが求められます。
近年、知的財産権を活用したIPビジネスが拡大しています。日本企業が海外展開する際、特許・商標・著作権・意匠権を戦略的に活用することで、競争優位性を確保できます。
通関業務従事者は、正規の知的財産ライセンス契約に基づく輸出入と、侵害物品の輸出入を見極める能力が必要です。例えば、海外でライセンス生産された製品を輸入する場合、適切なライセンス契約の存在を確認する書類審査が重要となります。
知的財産権は企業価値を裏付ける証明書として、資金調達やM&Aの場面でも重視されています。独占的使用権、収益化、信用という3大メリットがあり、スタートアップ企業の成長にも不可欠な要素です。
参考)知財3大メリット
国際的にはWIPO(世界知的所有権機関)が特許・商標・著作権などの分野で国際規則を策定し、加盟国による知的財産権保護を支援しています。通関業務もこの国際的な枠組みの中で機能しており、各国税関との協力体制が構築されています。
通関業務では知的財産権の保護と円滑な貿易の両立が求められます。権利者保護を重視しつつ、正規品の迅速な通関を実現するバランス感覚が重要ですね。
税関の知的財産ホームページでは、一般輸入者向けに知的財産侵害物品の取締りに関する詳細情報が提供されています
一般財団法人対日貿易投資交流促進協会(MIPRO)が発行する「輸入ビジネスと知的財産権の基礎 Q&A」は、通関実務に役立つ具体的な事例を豊富に掲載しています