インボイス記載額だけで申告すると、後から数百万円単位の追徴を受けます。
関税評価で最も多い失敗は、別払いの費用を申告から漏らすことです。
参考)税関事後調査 輸入コストに含まれる意外な「加算要素」
通関業者はインボイスに記載された情報のみで申告書を作成するため、輸入者が別途支払っているロイヤルティや技術提供料、設計費などは把握できません。その結果、輸入者が意図せず「脱税(過少申告)」の状態になってしまうケースが相当数あります。
税関の事後調査で指摘される多額の課税は、単価の誤りではなく「加算要素」の申告漏れに起因するものが大半です。
特に以下のような費用が見落とされがちです:
参考)関税評価でのロイヤルティ加算漏れに起因する追徴と遡及の回避手…
これらは関税評価ガイドラインに照らすと「加算対象」に該当する場合が多く、後からまとめて追徴されるリスクがあります。
実際の事例では、輸入会社が関税当局に支払ロイヤルティの加算対象かどうか質問し、当初「加算対象ではない」という減額更正を受けました。しかしその後、関税当局は会社の説明に誤りがあったとして決定を覆し、不足税額を追徴して加算税を課しました。このように、初期判断が覆るケースもあります。
参考)https://www.kimchang.com/jp/insights/detail.kc?sch_section=2amp;idx=22980
遡及適用による追徴は数千万円から数億円規模の「思わぬ特損」となり、決算に悪影響を及ぼすだけでなく、経理・調達部門の担当者が重大なコンプライアンス違反に問われる事態にも発展します。
課税価格の計算には、インボイス価格に加えて運賃と保険料を含めるのが基本です。
参考)輸入通関における現実支払価格算定のための加算費用と控除費用:…
日本では物品の卸売価格に運賃と保険料を加算したCIF価格が課税標準となるため、仕入書価格にこれらが含まれていない場合は必ず加算します。課税価格に加算する費用と加算しない費用は関税定率法第4条に定められています。
しかし、加算要素が別途発生しており、その金額がインボイスに記載されていない場合は、評価申告によりその費用を別途加算する必要があります。つまり、インボイス記載の3要素だけでは不十分ということですね。
参考)https://mkc-net2.com/regarding-the-evaluation-declaration/
評価申告が必要となる主なケースは以下のとおりです:
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1408_jr.htm
運送契約に基づく場合は、当該運送契約に基づき運送人等に最終的に支払われる費用を加算します。最低運賃やパーセル運賃が適用されるときは、その運賃で構いません。貨物保険を掛けた場合は、その運送区間に対応する保険料も加算要素になります。
参考)米国のコンテナ滞留による海上運賃の高騰は関税評価に影響するか…
特殊な事情で運賃が著しく高額になった場合、実際に要した額ではなく通常必要とされる額を加算することになっている点も覚えておきましょう。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/yougoshu.htm
売手と買手の間に特殊関係があると、取引価格がそのまま課税価格として認められないことがあります。
参考)関税の課税価格の決定について|弁護士コラム・論文・エッセイ|…
関税定率法第4条第2項第4号によれば、売手と買手との間に特殊関係がある場合、輸入貨物の取引価格に影響を与える可能性があるため、取引価格(仕入書価格)を直ちに課税価格とすることはできません。この特殊関係の範囲について、関税定率法施行令第1条の8第3号は5%以上の株式を所有している場合を規定しています。
買手と売手が共同して同一の第三者である会社を間接に支配している場合も、特殊関係にあると判断されます。当該特殊関係が輸入貨物の取引価格に影響を与えていると認められるときは、関税定率法第4条第1項の規定により課税価格を決定することができません。
参考)通関士の過去問 第50回(平成28年) 関税法、関税定率法そ…
ただし例外があります。
特殊関係が取引価格に影響を与えているかどうかは、輸入貨物の価格の成立の仕組みや取引関係の実態等を検討して判断します。その結果、売手と買手が特殊関係にないような状態でその輸入取引を行っているものと税関が認めるときは、その輸入貨物の取引価格は特殊関係の影響を受けていないものとして取り扱われます。
実務では、輸入者側がこの「影響を受けていない」ことを証明する必要があります。証明に失敗すると、成約価格と価額が不合理に乖離しているとして、その差額について輸入関税及び輸入段階増値税を徴収されることになります。
包括申告制度を使えば、継続取引での評価申告を大幅に省力化できます。
同一の内容の輸入取引が継続して行われる場合、納税申告に先立って課税価格の計算方法を記載した申告書(包括申告書)を提出すれば、その適用期間内(最長2年間)は個々の納税申告の際の評価申告を省略できます。
包括申告を行う場合は、必要事項を記載した評価申告書2通(原本及び交付用)を、輸入貨物の主要な輸入予定地を管轄する税関に提出します。
包括評価申告において、加算要素となる金額が一括して現地に支払われている場合などは、適用期間内に輸入される個々の数量等に応じて加算金額を按分する方法と、初回輸入申告時にまとめて一括加算する方法のいずれかで申告できます。ただし、税率が異なる複数品目に評価金額がまたがる場合などは、一括加算する方法は取れず、個別評価申告を行う必要があります。
貨物の輸入に先立って関税評価上の取扱いについて税関の見解を確認したい場合は、文書による事前教示制度を利用してください。
事前教示制度では、必要事項(取引の概要など)を記載した「事前教示に関する照会書(関税評価照会用)(C-1000号-6)」1通と審査に必要なその他の資料(売買契約書など)を、照会貨物の主要な輸入予定地を管轄する税関に提出します。税関は照会書を受理してから原則として90日以内の極力早期に文書回答を行います。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/index.htm
回答内容に意見があるときは、「事前教示回答書(変更通知書)(関税評価回答用)」を通じて対応されます。この事前確認により、輸入時の不確実性を大幅に減らせます。
輸入後に価格が変動した場合の関税評価も、実務上の重要論点です。
原材料の急激な値上げがあり、既に輸出した貨物についても値上げ後の価格との差額を支払うケースがあります。このような遡及値上げによる支払いの場合、課税価格は仕入書価格に当初価格と値上後価格の差額(プラス運賃等)を加算して計算します。
遡及値上げは加算対象ということですね。
参考)https://www.kanzei.or.jp/osaka%20/osaka_files/pdfs/20230308-2.pdf
これは関税定率法第4条第1項本文および関税定率法基本通達4-2(1)(3)、4-2の2(2)に基づく取扱いです。
また、期末の価格調整金ではなく期中の輸入価格を調整する場合でも、関税評価額の観点から輸入価格が妥当ではないと税関から指摘を受ける可能性があります。特に中国税関では、この点が厳しく審査されています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/itaxseminar2023/28.questionnaireresults.pdf
税関が内部資料記載の価格を最低価格として運用し、輸入取引の当事者が当該価格未満の取引価格を申告する場合に取引価格を拒絶する例や、輸出者が為替変動に伴い取引価格を下方調整した際に、個別の状況を考慮せず申告された取引価格を拒否した事例も報告されています。このような場合、課税価格の決定理由を示さなかったことが関税評価協定第16条に非整合である旨が認定されたケースもあります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto/3_dispute_settlement/32_wto_rules_and_compliance_report/322_past_columns/2015/2015-2.pdf
適切な価格調整を行うためには、契約書や価格変動の根拠資料を整備し、税関に対して合理的な説明ができるよう準備しておくことが重要です。事前に税関と協議するか、事前教示制度を活用して取扱いを確認するのが確実な方法です。
税関公式サイトの「輸入貨物の関税評価事例」には、質疑応答事例や事前教示回答が掲載されており、具体的なケース別の判断基準を確認できます
税関の「評価申告制度の概要(カスタムスアンサー)」では、評価申告書の提出が必要な場合と不要な場合の基準が明確に示されています