中古車輸出では保険をかけないと共同海損分担金を実費負担します
外航貨物海上保険には、英国保険市場で作成された協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)に基づくA条件、B条件、C条件の3種類があります。通関業務で扱う中古車輸出案件では、C条件の海上保険をかけるのが一般的です。C条件は補償範囲が狭い分、保険料率が低く設定されています。
C条件で補償されるのは、船の火災や沈没による車両の全損事故、船の座礁などの海難事故で共同海損が宣言された場合の共同海損分担金の支払いなどです。つまり船自体に大きな問題が起きた場合に限定されます。陸上輸送中の事故や保管中の盗難は対象外です。
通関業務においては、CIF条件以外での輸入時に税関よりCIF価格算出のため海上保険料請求書(Debit Note)の提示を求められることがあります。保険証券は検査登録時にも必要な重要書類なので紛失しないよう注意が必要です。
海上保険の保険金額は「CIF価格×110%」で算出されます。CIF価格とは「商品価格+海上運賃+海上保険料」の合計額です。この110%という数字には、輸入者の希望利益10%が加算されているという意味があります。
参考)http://www.cars-jp.com/syorui01.pdf
具体的な保険料の計算方法は「CIF価格×110%×保険料率」です。たとえばCIF価格が100万円の車両を輸出し、保険料率が0.5%の場合、保険料は5,500円(1,000,000円×1.1×0.005=5,500円)となります。
ただしほとんどの保険会社で海上保険の最低料金を3,000円と設定しているため、計算した金額が3,000円未満の場合は3,000円が保険料となります。つまり低額の車両でも一定の保険料負担が発生するということですね。
輸入申告時に保険料の額が不明な場合、従前はC&F価格の1%を保険料として申告することが認められていましたが、この取扱いは廃止されています。
共同海損とは、海難事故など航行中に生じた損害または費用を船主および荷主で分担し合う制度です。船主が「共同海損」を宣言すると、貨物の被救助価額で按分された金額の共同海損分担金が荷主に請求されます。
海上保険をかけていない場合、この費用を実費負担することになります。
共同海損が原則です。
たとえば船が座礁して救助作業が必要になった場合、その費用は全ての荷主に請求されるのです。
通関業務従事者として知っておくべきは、破損や盗難の保険処理には輸出先国で貨物の引渡しを受けてから14日以内にClaim Noticeを船会社に提出し、それに対する回答を書面で受けておく必要があるという点です。この期限を過ぎると補償が受けられなくなる可能性があります。
保険処理の手順については事前に保険会社に確認しておくことが望ましいでしょう。
中古車輸出では基本的にC条件ですが、信用状(L/C)取引でA条件の海上保険証券を要求される場合があります。A条件は最も補償範囲が広く、火災・爆発、船舶の座礁、陸上輸送用具の転覆・脱線、輸送用具の衝突、積込・荷卸の際の水没または落下による梱包1個毎の全損、海水の浸入などが補償されます。
参考)輸出の海上保険
この場合、保険会社と協議してA条件の海上保険証券を発行してもらう必要があります。A条件の海上保険証券を銀行に提出しないと書類不備となってしまいます。
シンガポールやタイなどほぼ新車といえる登録済み未使用車を輸出する場合は、A条件の保険をかけることが可能な場合があります。これは保険会社によって対応が違うため、取引をしている保険会社と相談する必要があるでしょう。
C条件とA条件では保険料率が異なり、A条件のほうが高く設定されています。補償範囲が広い分、コスト負担も大きくなるということですね。
通関手続きに必要な書類として、車両の金額(購入時の契約書等)、海上運賃、海上保険(加入されている場合)を記載した書類が求められます。海上保険証券は検査登録時にも必要になる非常に重要な書類なので紛失しないようにしてください。
輸入貨物の保険始期は輸出貨物の始期と異なる点に注意が必要です。CFR条件での輸入貨物については、「FOB Attachment Clause」が適用され、インコタームズ上のリスク移転時期、すなわち貨物を輸出本船の甲板に置いた時点が保険の始期となります。
したがって船積完了までは海外側サプライヤーによる保険付保が必要です。FOB条件、CFR条件、FCA条件、CPT条件等の場合、輸入者が自らの利益のために貨物海上保険を付保します。
輸入者側が日本の損害保険会社の外航貨物海上保険を付保することは、保険の内容や保険会社の選択を十分検討でき、事故にも即対応できるため、輸出者に付保依頼するより有利になることがあります。
保険会社の選択肢が広がるのがメリットです。
CIF条件では商品が売り手の国の港で船に積み込まれた瞬間に、リスクは売り手から買い手に移転しますが、輸送費用と保険料については引き続き売り手が負担します。リスクとコスト負担が分かれているということですね。
東京海上日動の外航貨物海上保険の補償内容詳細ページでは、各条件の補償範囲が表形式で比較されています
JETROの貿易・投資相談Q&Aでは、荷主としての貨物への保険の種類と留意点が実務視点で解説されています
PLANETCARSの中古車輸出の海上保険ページでは、保険料の具体的な計算例や保険処理の手順が詳しく説明されています