DDPでは輸入通関の失敗リスクを輸出者が負います。
DAP(Delivered at Place:仕向地持込渡し)は、インコタームズ2020で定められた取引条件のひとつです。売主が買主の指定する仕向地まで商品を輸送し、到着した運送手段に積載された状態で荷卸準備が整った時点で、費用とリスクが買主に移転します。
輸入通関手続きと関税の支払いは買主の責任です。売主は輸出国での輸送費、国際輸送費、輸入国での指定場所までの配送費を負担しますが、関税・消費税などの輸入諸税は負担しません。
つまり関税は買主負担です。
DAPはインコタームズ2010で初めて導入された比較的新しい条件で、それ以前のDAF(国境持込渡し)、DES(本船持込渡し)、DDU(関税抜き持込渡し)を統合する形で新設されました。通関業務従事者にとっては、買主側で輸入通関を手配する前提の条件として頻繁に扱われます。
DDP(Delivered Duty Paid:関税込持込渡し)は、インコタームズ11規則の中で売主の負担が最も大きい取引条件です。売主は輸入国側の指定仕向地まで商品を輸送し、さらに輸入通関手続きと関税・消費税の支払いまですべて完了させる義務を負います。
参考)インコタームズのDDP・DDU・DAPの違いについて解説!輸…
買主の負担は最小限に抑えられます。荷卸作業のリスクと費用のみを買主が負担し、それ以外のほぼすべての費用とリスクは売主側が引き受ける形です。輸入国内での通関費用、輸送費用、関税、消費税を売主が負担する条件は、インコタームズの中でDDPだけです。
参考)インコタームズとは何か?国際貿易における取引条件について
DDPは「ドア・ツー・ドア」での完全な物流サービスを提供する条件として機能します。売主が輸入国で通関許可を取得できない場合や、輸入国の法規制に対応するリソースがない場合は、DDPの使用を避けてDAPを選択する方が賢明です。
輸出者の通関対応力が鍵になります。
参考)貿易条件における DDP と DAP の違い - Basen…
費用負担の違いは「関税と輸入諸税を誰が支払うか」に集約されます。DAPでは買主が関税・消費税・通関手数料を負担し、DDPでは売主がこれらすべてを負担します。
参考)DDPとDAPの違いとは?国際輸送で使われる貿易条件をわかり…
| 費用項目 | DAP | DDP |
|---|---|---|
| 輸出国内輸送費 | 売主 | |
| 国際輸送費(海上・航空) | 売主 | 売主 |
| 輸出通関費用 | 売主 | 売主 |
| 輸入関税・消費税 | 買主 | 売主 |
| 輸入通関手数料 | 買主 | 売主 |
| 輸入国内配送費 | 売主 | 売主 |
| 荷卸作業費 | 買主 | 買主 |
例えば日本からシンガポールへ100万円の商品を輸出する場合、DAPなら売主は国際輸送費と現地配送費のみを負担し、シンガポールの関税(仮に7%として7万円)は買主が支払います。DDPでは売主がこの7万円も含めた全費用を負担することになります。売主の費用負担はDDPの方が明らかに大きいですね。
通関業務従事者としては、契約書で条件を確認する際、関税負担の明記があるか必ずチェックする必要があります。
曖昧な記載は後のトラブル原因になります。
リスク移転のタイミングは両条件で異なります。DAPでは、買主の指定場所に到着した運送手段に積載された状態で荷卸準備が整った時点でリスクが移転します。
つまり荷卸前にリスクは買主に移ります。
DDPでは、輸入通関を完了し、指定場所で荷卸準備が整った時点でリスクが買主に移転します。
通関完了後の移転がポイントです。
通関中に発生した損傷や遅延のリスクは売主が負担するため、売主にとっては通関トラブルが大きなリスク要因となります。
具体例を挙げると、コンテナが輸入国の港に到着した後、通関検査で商品に不備が見つかり廃棄処分になった場合、DAPなら買主の責任ですが、DDPでは売主の責任になります。
通関リスクの所在が明確に違いますね。
輸送中の事故や遅延については、DAPでもDDPでも指定場所到着前であれば売主がリスクを負います。ただしDDPの方が売主のリスク負担期間が長く、通関手続き完了まで延びる点が実務上の大きな違いです。輸出者はこのリスク差を十分に理解しておく必要があります。
通関手続きの責任者が両条件の核心的な違いです。DAPでは輸入通関は買主が行い、DDPでは売主が行います。
この違いは実務に大きな影響を与えます。
DAPを選択した場合、買主は輸入国の通関規制、必要書類、輸入許可要件を熟知している必要があります。例えば食品や医薬品など規制が厳しい商品では、買主側に専門的な通関ノウハウがないと手続きが滞ります。
買主の通関能力が前提条件ですね。
DDPでは売主が輸入国の通関を代行しますが、売主が現地の通関業者や代理人を確保できない場合、この条件は機能しません。特に売主が輸入国での事業拠点を持たない場合、通関許可の取得自体が困難になるケースもあります。
売主のリソースが問われます。
実務上、DDPで輸入通関を行う際、売主は輸入者の名義で通関手続きを行うため、買主から必要書類(輸入許可証、納税者番号など)の提供を受ける必要があります。この書類のやり取りがスムーズでないと、通関が大幅に遅延するリスクがあります。
事前の書類確認が欠かせません。
条件選択の判断基準は「売主の通関対応力」と「買主の通関ノウハウ」です。売主が輸入国で適切な物流パートナーを持ち、通関リスクを管理できる体制があればDDPが適しています。逆に売主が国際輸送のみを得意とし、輸入国の通関が複雑な場合はDAPを選び、通関責任を買主に任せる方が合理的です。
買主の視点では、輸入プロセスを簡素化し、運営コストを削減したい場合はDDPを選択します。すべての手続きを売主に一任できるため、買主側の業務負担が最小化されます。
買主にとっては楽な条件です。
一方、買主が輸入国の通関手続きに精通しており、関税や通関業務を処理する能力がある場合は、DAPの方が良い選択肢です。関税負担を自社でコントロールでき、通関のタイミングも調整しやすくなります。
買主の能力次第で選択が変わりますね。
コスト面では、DDPは売主が関税を含むすべての費用を負担するため、商品価格に上乗せされることが一般的です。DAPなら買主が関税を直接支払うため、トータルコストの透明性が高まります。どちらが最終的に有利かは、関税率や物流費の見積もり精度によって変わります。
参考:国土交通省や税関の公式サイトでインコタームズの最新情報を確認しておくと、実務での判断がより正確になります。
三井倉庫ロジスティクスのインコタームズ解説記事では、DAPとDDPの実務上の注意点が詳しく紹介されています。
通関業務の参考資料として活用できます。