あなたが賦課課税方式の貨物で「修正申告します」と税関に伝えると、書類ごと受け取り拒否されます。
申告納税方式とは、輸入者が自ら税額を計算して申告することで、納付すべき関税額が確定する方式です。関税法第6条の2第1項第1号、および第7条に根拠規定があります。通関業務の現場では、一般的な商業貨物のほぼすべてがこの方式に該当するため、「輸入申告=申告納税方式」という理解で問題ありません。
この方式の本質は、税額確定の主体が「輸入者(納税義務者)」にある点です。輸入者は輸入申告と同時に納税申告を行い、課税標準(課税価格)・税率・税額の計算結果を税関長へ提出します。税関長はその内容を審査しますが、原則として輸入者の申告内容が正しいという前提のもとで許可が下ります。これが「申告納税制度の精神」であり、納税者の誠実な申告を信頼する仕組みです。
つまり輸入者が計算を間違えれば、その誤りは原則として輸入者の責任になります。
実務上のポイントは、無税貨物や無償貨物でも申告が必要な点です。「どうせ税額ゼロだから申告は省略できる」という誤解は危険です。課税価格が発生しなくても、申告自体は関税法上の義務として存在します。通関士として荷主から「これ無税品だから軽くやっておいて」と言われても、手続きを省略する理由にはなりません。申告が必要です。
また、特例輸入申告制度も申告納税方式の枠内の話です。税関長の承認を受けた特例輸入者や、税関長の認定を受けた認定通関業者に委託した特例委託輸入者は、輸入申告と納税申告を分離できます。この場合、貨物を先に引き取り、後から特例申告書を提出して納税申告を行います。引取りの迅速化というメリットがある反面、申告期限の管理が重要になります。特例申告が原則です。
参考:ジェトロ貿易投資相談Q&A「輸入申告における課税方式:日本」
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-011012.html
賦課課税方式とは、輸入者の申告ではなく、税関長の処分によって納付すべき関税額が確定する方式です。関税法第6条の2第1項第2号に列挙されており、適用対象は限定的です。通関業従事者はこの6つを丸ごと把握しておく必要があります。
具体的な適用対象は以下の通りです。
実務上、最も注意が必要なのは郵便物の20万円ラインです。課税価格が20万円を超える郵便物については、輸入申告が必要となり申告納税方式が適用されます。一方、20万円以下であれば賦課課税方式となり、税関長が税額を算定して「国際郵便物課税通知書」を名宛人に送付する形になります。これは東京ドーム一個分の大きな差と言えるほど、手続きの性質が180度異なります。
意外と見落とされるのが「過少申告加算税・無申告加算税・重加算税」自体も賦課課税方式で確定するという点です。加算税は申告納税方式の貨物に課されるペナルティですが、加算税そのものの確定は「税関長の処分」によって行われます。自分で計算して納付する手続きではありません。
また、携帯品でも「商業量に達するもの」は申告納税方式に切り替わります。たとえば個人の土産品であれば賦課課税方式ですが、明らかに転売目的の大量品は別扱いです。この判断は税関が行います。
参考:財務省税関「カスタムスアンサー:輸入貨物の課税方式について」
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1305_jr.htm
申告納税方式が適用される貨物で税額に誤りがあった場合、訂正手段は大きく2つあります。「修正申告」と「更正の請求」です。どちらを使うかは、当初申告した税額が「過少(少なすぎ)」か「過大(多すぎ)」かによって決まります。
修正申告は、当初の納税申告で申告した税額が正しい税額より少なかった場合に行う手続きです(関税法第7条の14)。輸入者側から自主的に申告することで、不足していた関税を追納します。修正申告が可能な期間は、輸入許可の日(法定納期限)から原則5年以内、かつ税関長による増額更正が行われるまでです。
ここが実務上とても重要です。
税関の調査通知を受ける前に自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税は課されません。一方、税関の調査通知を受けてから修正申告を行った場合は、不足税額の原則10%の過少申告加算税が課されます。さらに税関長の「更正」が行われると、加算税に加えて延滞税も発生します。早期発見・早期申告がコストを抑える最大の対策です。
更正の請求は逆のケース、つまり申告税額が過大だった場合に輸入者が還付を求める手続きです。更正の請求ができる期間は原則として輸入許可の日から5年以内です。請求を受けた税関は内容を審査し、税額が多すぎると認めた場合に「更正」を行い、過払い分を還付します。還付は大丈夫です。
また、「更正」と「決定」という税関側の手続きも理解しておく必要があります。税関長が輸入者の申告に誤りを発見して税額を変更する行為が「更正」、そもそも申告がなかった貨物について税関長が税額を決定する行為が「決定」です。いずれも税関側の主体的な処分であり、修正申告とは主体が異なります。
参考:フォーサイト「修正申告や更正の請求とは!?延滞税の計算についても解説!」
https://www.foresight.jp/tsukanshi/column/amendment-declaration/
ここが申告納税方式との最大の違いです。賦課課税方式が適用された貨物の関税については、修正申告も更正の請求も使えません。
なぜかというと、賦課課税方式では「申告」という行為自体が存在しないからです。税額は最初から税関長の処分によって確定しており、輸入者が申告した税額というものがありません。修正する「申告」がそもそも存在しないため、修正申告という概念が成立しないのです。これは基本が原則です。
では、賦課決定された関税の額に誤りがあった場合や、輸入者が納得できない場合はどうするのか。その答えが「不服申立制度」です。
不服申立ての流れは以下の通りです。
ポイントは、再調査の請求は「経由する義務はない」という点です。直接、財務大臣への審査請求を選択することもできます。ただし、実務上は税関長への再調査の請求から始める例がほとんどです。手続きが簡略で、費用も抑えられます。
なお、税関長が自らの賦課決定に課税標準または税額の誤りを発見した場合は、「再賦課決定」によって変更することができます。これは税関側の自主的な是正であり、輸入者の申立てとは異なります。再賦課決定が可能な期間は原則として法定納期限から5年以内(入国者の携帯品等で課税標準の申告があったものは3年以内)です。
参考:税関「9401 税関の処分に不服があるときの不服申立手続」
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/9401_jr.htm
申告納税方式の現場で最も実害が大きい話が、申告誤りに伴う加算税です。加算税は関税法第12条の2以下に規定されており、悪質性の度合いに応じて3段階に分かれています。
まず過少申告加算税ですが、これは期限内に申告したものの税額が不足していた場合のペナルティです。不足税額の原則10%が課されます。ただし、不足税額が当初税額と50万円のうち多い金額を超える場合、超過分には15%が適用されます。意識的な不正ではない計算ミスでも課されるため、通関実務の担当者にとって身近なリスクです。
次に無申告加算税ですが、申告すべき貨物を申告しなかった場合に課されます。税率は原則15%と過少申告加算税より高く設定されています。納付すべき税額が50万円を超え300万円以下の部分には20%、300万円を超える部分には30%が適用されます。申告漏れは痛いですね。
最も重いのが重加算税です。申告の基礎となる事実を「隠蔽」または「仮装」した場合に課され、過少申告を伴う場合は35%、無申告を伴う場合は40%という高率です。さらに、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課された実績があれば、税率はさらに10%上乗せされます。脱税と認定されると企業の社会的信用にも直結します。
なお、加算税と延滞税は別物です。延滞税は関税の支払いが遅れた期間に応じて課される利子的な性格のものです。過少申告加算税が課される場合でも延滞税は別途発生するため、ダブルで課税されるケースが実務上は珍しくありません。
重要な例外として覚えておきたいのが、税関の調査通知を受ける前に自主的に修正申告した場合です。この場合は過少申告加算税が免除されます。インボイスの計算ミスや課税価格の算定漏れを社内チェックで発見した際は、速やかに修正申告を行うことが最大の防衛策です。税関からの連絡を待ってからでは遅く、10%の加算税が確定してしまいます。
参考:有森FA法律事務所「輸入通関における加算税制度の法的解説と実務上の留意点」
https://aog-partners.com/kasanzeinorikaihahissudesu/
試験や研修では2方式の定義を覚えることが中心ですが、実際の通関現場ではグレーゾーンの判断に迫られる場面があります。ここでは他のサイトではあまり触れられない、実務的な「迷ったときの判断フロー」を紹介します。
まず最初に確認すべきは「その貨物は輸入申告が必要か」という点です。輸入申告が求められる貨物であれば、原則として申告納税方式が適用されます。申告納税方式が基本原則です。賦課課税方式はあくまで例外として列挙された貨物にしか適用されません。
次に確認すべきは「郵便物かどうか」です。郵便物の場合は課税価格の20万円ラインが分岐点になります。20万円以下は賦課課税方式、20万円超は申告納税方式です。これは東京から大阪まで(約500km)と東京から福岡まで(約900km)くらいの差のある重要なラインです。20万円という数字だけは条件が覚えておく価値があります。
また、現場でよく出る疑問が「携帯品は必ず賦課課税方式か?」という点です。原則として入国者の携帯品は賦課課税方式ですが、「商業量に達するもの」は申告納税方式に切り替わります。このケースでは税関職員が判断しますが、通関業者として荷主から相談された際には「商業目的かどうか」を必ず確認する必要があります。
さらに、加算税・延滞税などのペナルティ系の税も賦課課税方式である点は現場で混乱しやすいポイントです。輸入者が計算して申告するものではなく、税関長が賦課決定します。これは使えそうです。
最後に、方式を間違えると手続きがまったく通らなくなる点を改めて強調したいと思います。賦課課税方式が適用された貨物に修正申告書を提出しても、税関は受理しません。その場合の正しいルートは「再調査の請求」または「審査請求」です。通関業者として誤った手続きを荷主に案内してしまうと、不服申立の期限(処分を知った日の翌日から3か月)を徒過させるリスクにもなります。
方式の確認は通関業務の入り口です。
参考:通関士・貿易実務講座「申告納税方式と賦課課税方式を解説!条文・過去問付き」
https://tsukanboeki-shun.com/shinkoku/