賦課課税方式と申告納税方式の違いと実務での注意点

通関業務で必須の「賦課課税方式」と「申告納税方式」。どちらが適用されるかで、修正申告の可否や不服申立の手続きが大きく変わります。あなたは正しく判断できていますか?

賦課課税方式と申告納税方式の違いを通関実務で完全理解

賦課課税方式が適用された関税は、税額が間違っていても修正申告で直せません。


この記事の3つのポイント
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方式の基本的な違い

申告納税方式は輸入者が自ら税額を申告して確定する方式。賦課課税方式は税関長の処分によってのみ税額が確定する方式で、適用される貨物の種類が明確に決まっています。

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方式によって手続きが根本的に違う

賦課課税方式では「修正申告」も「更正の請求」もできません。不服がある場合は「不服申立制度」を使うしかなく、申告納税方式とは全く異なる対応ルートになります。

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加算税の種類と税率を押さえる

過少申告加算税(10%)・無申告加算税(15%〜30%)・重加算税(35〜40%)は、いずれも申告納税方式で確定する制裁税。賦課課税方式とのつながりを整理することが実務対応の基礎です。


賦課課税方式・申告納税方式の基本的な定義と根拠条文

関税の税額確定には2つのルートがあります。まず「申告納税方式」とは、輸入者(納税義務者)が自ら課税標準や税額を計算し、税関長に申告することで税額が確定する方式です(関税法第6条の2第1項第1号・第7条)。日本の輸入貨物の大半はこちらが適用されます。


一方の「賦課課税方式」は、税関長の処分(賦課決定)によってのみ、納付すべき税額が確定する方式です(関税法第6条の2第1項第2号・第8条)。輸入者側が申告するわけではなく、税関が金額を決めて通知します。賦課課税方式が原則です。


「申告納税方式が原則」と覚えておけばOKです。


賦課課税方式は例外的な適用場面に限定されており、関税法第8条にその対象が列挙されています。主なものとして、以下が挙げられます。



こうして見ると「賦課課税方式の対象は実は幅広い」と気づきます。意外ですね。


ただし重要なのは、その「逆引き」の考え方です。賦課課税方式が適用される場面を全て覚え、それ以外はすべて申告納税方式と理解するのが実務上の基本です。郵便物であっても課税価格が20万円を超える場合は申告納税方式に変わる、という境界線は通関士試験でも頻出の論点であり、実務でもトラブルが起きやすいポイントです。


参考:輸入申告における課税方式の詳細はJETROの公式Q&Aで整理されています。


輸入申告における課税方式:日本 | 貿易・投資相談Q&A(JETRO)


賦課課税方式の申告納税方式との実務上の手続き上の違い

方式の違いが最もクリティカルに影響するのは、「税額に誤りがあったとき」の手続きです。申告納税方式であれば、税額が少なかった場合には「修正申告」、多かった場合には「更正の請求」という手続きが使えます。どちらも輸入者(または通関業者)が主体的に動ける手続きです。


ところが、賦課課税方式ではこれが使えません。これが原則です。


JETROの公式Q&Aにも明記されています。「申告納税方式と異なり、賦課決定された関税については修正申告、更正の請求を行うことはできません。」これは、税関長がすでに処分を下して税額を確定させているため、輸入者の申告行為を前提とした修正手続きは制度上成立しないからです。


では、税額に納得がいかない場合はどうすればよいのでしょうか?


賦課課税方式で不服がある場合は、「不服申立制度」を利用します。具体的には次のいずれかです。


  • 再調査の請求:処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、税関長へ申し立てる手続き。
  • 審査請求財務大臣へ申し立てる手続き。再調査の請求と並行して選択できる場合もある。


3か月という期限は短い。これは必須です。


申告納税方式で修正申告を行った後は不服申立ができない(修正申告自体が確定行為だから)という制約もあり、どちらの方式が適用されているかによって、手続きの順序と期限が根本的に変わります。通関業務に携わる立場からすると、顧客から「税額がおかしいのでは」と相談を受けた際に、まず「どちらの方式が適用されているか」を確認することが最初の一手です。


参考:不服申立手続の概要は税関の公式ページで確認できます。


税関の処分に不服があるときの不服申立手続 | 税関 Japan Customs


賦課課税方式が適用される郵便物・携帯品の現場での見極め方

通関業務の現場では、「この貨物はどちらの方式が適用されるのか」を瞬時に判断しなければならない場面が数多くあります。特に郵便物と入国者の携帯品・別送品は、金額や数量によって方式が切り替わるため、見極めが難しいケースです。


郵便物のルールを整理すると、課税価格の合計が20万円以下のものは賦課課税方式が適用されます。このとき、輸入者が「輸入申告」を行う必要はなく、税関長が直接処分します。「輸入許可書」も発行されません(東京税関の公式Q&Aにも記載あり)。


課税価格が20万円を超えると申告納税方式に変わります。


20万円という金額は、コンビニの大型テレビとほぼ同じくらいのイメージです。海外の物品を個人で輸入する場合でも、高額な家電製品や複数の商品をまとめて注文する際はこのラインを超えることがあります。


入国者の携帯品・別送品については「商業量に達するか否か」が分岐点です。商業量に達しないものは賦課課税方式ですが、商業量に達すると申告納税方式が適用されます。「商業量かどうか」は、品目・数量・用途などを総合的に判断するため、現場では曖昧なケースが発生することもあります。厳しいところですね。


寄贈物品の郵便物も賦課課税方式が適用される場合があります(関税法第8条第1項第2号)。無償で送られた品物でも、贈り物として受け取った側が思わぬ課税を受けるケースがあるため、顧客への事前説明が重要です。


また、相殺関税や不当廉売関税(アンチダンピング税)も賦課課税方式が適用されます。これらはWTO協定に基づき、調査・決定された後に追加的に課税される特殊な関税であり、輸入者が自ら申告する性格のものではないため、賦課課税方式が採用されています。この点は実務でも混乱しやすいポイントです。


賦課課税方式で確定する重加算税・過少申告加算税の税率と実務リスク

申告納税方式が適用される貨物において、申告誤りが発覚した際に課される加算税(附帯税)も、賦課課税方式によって確定します。これは見落としがちなポイントです。


つまり、メインの関税は申告納税方式で確定しているのに、そのペナルティとしての加算税は賦課課税方式で確定するということです。なぜなら、加算税は輸入者が申告するものではなく、税関長が処分として課すものだからです。


加算税の種類と税率を整理すると、以下のとおりです(関税法第12条の2以下)。


加算税の種類 原則税率 加重される場合 自主申告時の扱い
過少申告加算税 10% 超過部分は15% 調査通知前なら免除
無申告加算税 15% 300万円超は30% 5%に軽減
重加算税(過少) 35% 反復時は45% 免除なし
重加算税(無申告) 40% 反復時は50% 免除なし


重加算税の40%は、本税の約半分が追加で課される水準です。痛いですね。


重要なのは「自主申告のタイミング」です。税関から調査通知を受ける前に自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税は免除されます。調査通知後、更正予知前の修正申告では5%の過少申告加算税が課されますが、税関に指摘されてからの修正よりも格段に有利です。


過去に運賃・保険料の加算要素が漏れていたことが後から判明するケースは、税関事後調査でよく指摘されるパターンです。通関業者として、申告時のインボイス内容を丁寧に確認し、疑問点があれば速やかに確認することがリスク回避の核心です。自主的な誤り発見と修正申告の実施、これが加算税を最小限に抑える鍵です。


参考:加算税の詳細な条文解説はe-Govの関税法条文で確認できます。


関税法(e-Gov 法令検索)


申告納税方式の「修正申告・更正の請求」と賦課課税方式の「不服申立」の実務フロー比較

両方式で手続きが変わる点は、通関業従事者が顧客対応する際に最も差がつくポイントです。具体的なフローを対比して整理します。


申告納税方式の場合、税額の誤りに対する手続きは次のとおりです。税額が少なかった場合は輸入者が「修正申告書」を提出します。税額が多かった場合は「更正の請求書」を税関長に提出し、過払い分の還付を求めます。更正の請求期限は、輸入許可日から5年以内です(一部例外あり)。これが基本です。


一方、賦課課税方式の場合、修正申告・更正の請求は制度上使えません。税関長から送られてくる「賦課決定通知書」または「納税告知書」の内容に不服があれば、処分を知った日の翌日から3か月以内に「再調査の請求」を税関長に行います。さらに不服があれば財務大臣への「審査請求」、その後は行政訴訟へと進みます。


申告納税方式の修正申告では「もし自分で間違いに気づいた場合に主体的に動ける」という柔軟性があります。一方の賦課課税方式では、税関長がすでに下した処分に対して異議を申し立てるという構造になるため、証拠の整理や法的な論拠構築が重要になります。


どういうことでしょうか?簡単に言えば、賦課課税方式の不服申立は、行政処分への異議申し立てという性格が強く、通常の「計算間違いの訂正」よりも難易度が高い手続きです。通関業者が自社の判断だけで進めるには限界があるケースも多く、弁護士や通関士資格を持つ専門家に連携することが有効な選択肢になります。


比較項目 申告納税方式 賦課課税方式
税額が少なかった時 修正申告(輸入者が主体) 税関長による再賦課決定
税額が多かった時 更正の請求(5年以内) 不服申立(3か月以内)
手続きの主体 輸入者・通関業者 処分に対する異議申立
対応の難易度 比較的手続きしやすい 証拠・法的根拠が必要


実務では、顧客が「税額がおかしい」と感じた時点で、まず適用方式を特定することが先決です。その上で、申告納税方式なら更正の請求の期限(5年)を確認し、賦課課税方式なら3か月という短い不服申立期限に間に合うよう速やかに動く必要があります。期限を守ることが最優先です。


参考:ジェトロの還付手続きQ&Aでは不服申立のフローが具体的に解説されています。


過払いの関税および消費税の還付手続き:日本 | 貿易・投資相談Q&A(JETRO)


通関業者が見落としやすい「無税・無償貨物」と申告納税方式の盲点

申告納税方式に関して、通関業従事者が現場でうっかり誤解しがちなポイントがあります。それは「関税が無税の貨物」や「無償の貨物(サンプル等)」にも申告が必要かどうかという点です。


結論から言えば、申告は必要です。


関税法第7条では「申告納税方式が適用される貨物を輸入しようとする者は、輸入申告の際、その貨物の課税標準その他必要な事項を申告しなければならない」と規定されています。関税がゼロでも、代金のやりとりがなくても、申告行為そのものは省略できません。


これは意外ですね。「どうせ関税がかからないから申告しなくてもいいだろう」という判断は、通関の現場では絶対に避けなければなりません。無申告のまま輸入した場合、無申告加算税(最大30%)の対象になるリスクがあります。さらに悪意があると判断された場合は、関税法違反として刑事罰の対象になる可能性もゼロではありません。


また、輸入許可書の発行についても方式によって違いがあります。申告納税方式では輸入許可書が発行されますが、賦課課税方式(課税価格20万円以下の郵便物など)では輸入許可書が発行されません。これが後からトラブルになるケースがあります。たとえば、輸入実績の証明書類として輸入許可書のコピーを求められる場面で、郵便物輸入だと対応できないことに気づくケースです。


こうした場面のリスクに備えて、関税法第9条の規定や税関の「輸入申告書の電子記録」を確認する方法を事前に押さえておくことが有効です。


参考:通関業者・輸入者向けの加算税制度の概要は税関の公式PDFで詳しく確認できます。


輸入者・通関業者の皆様へ(加算税制度の概要)| 税関 Japan Customs