調査通知が来た後に修正申告すると、加算税0円のチャンスが永遠に消える。
「調査通知」という言葉を初めて聞いたとき、なんとなく「税務調査の日程を知らせてくれる通知」だと思っていませんか。実はそれは「事前通知」の説明であり、調査通知はまったく別の目的で設けられた制度です。この混同が、余計なペナルティを払うきっかけになることがあります。
調査通知とは、関税法および国税通則法の規定に基づき、税関や税務署が輸入者・納税者に対して「これから実地調査を行いますよ」という最低限の連絡をすることを指します。通知する項目は以下の3つだけです。
日時も場所も担当者名も、この段階では伝える必要がありません。そのためほとんどの場合、電話一本で行われます。書面が後から届くこともありません。
調査通知が導入された背景は、平成28年(2016年)の加算税改正にあります。もともと加算税(ペナルティ)のトリガーとなるのは「事前通知」でした。しかし事前通知には日程調整が必要で、通知完了まで時間がかかります。その間に修正申告を済ませることで加算税を逃れるという「確信犯的な過少申告」が横行していたのです。そこで、日時の調整なしで即座に発令できる「調査通知」というワンステップが追加されました。
関税に関わる輸入事後調査においても同じ仕組みが適用されます。税関から「調査を実施します」という連絡が来た瞬間、それが調査通知にあたり、それ以降に提出した修正申告には加算税が課されるのです。
つまり調査通知はシンプルですが、その意味は重大です。これが届いた後か前かで、納税者の支払うペナルティはゼロか数十万円か、という大きな差になることがあります。
参考:税関による加算税制度の詳細(カスタムスアンサー)
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1307_jr.htm
事前通知は、調査通知とは目的がまったく異なります。これは手続きの透明性を確保するための制度です。
平成23年(2011年)の税制改正により、国税通則法第74条の9に規定されました。実地調査を行う場合、税務署長などは原則として事前に納税者へ以下の11項目を通知しなければならないとされています。
調査通知の3項目と比べると、事前通知には「④調査開始日時」「⑤調査を行う場所」「⑨担当職員の氏名と所属」などが加わっています。これらは日程調整が完了しなければ通知できないため、事前通知は必ず日程確定後に行われます。
これが実務で問題になる場面があります。税務調査官や税関担当者が最初の電話で「来週の火曜日はいかがですか?」と候補日を提案してくる場合です。それに応じてその場で日程を決めてしまうと、調査通知と事前通知が同時に成立してしまいます。
大事なのは順番です。「まず調査通知(税目・期間の連絡)→次に日程調整→最後に事前通知(日時を含む全11項目の確認)」という2段階の手順が本来の正しい流れです。しかし実務では多くのケースでこれが1本の電話で行われており、この違いを知らないまま対応すると不利になることがあるのです。
なお、顧問税理士または通関業者が付いている場合、事前通知はその代理人に対して行えば足ります。これは平成26年(2014年)の税制改正で規定されています。
参考:国税庁 事前通知および調査に関する通達(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/03_2.htm
「調査通知か事前通知かで何が変わるの?」と思う方もいるでしょう。最大の実務上の影響は、修正申告をしたときの加算税の税率です。これが通知の前後で大きく変わります。
関税の過少申告加算税の税率はおよそ以下の3段階に分かれています。
| タイミング | 過少申告加算税率 |
|---|---|
| 調査通知より前に自主修正申告 | 0%(免除) |
| 調査通知後〜更正の予知前に修正申告 | 5% |
| 更正の予知後〜調査終了後に修正申告 | 10%(超過部分は15%) |
| 隠蔽・仮装があった場合(重加算税) | 35〜40% |
これは関税でも国税でも基本的な考え方は共通です。
つまり調査通知が来る前に自らミスを見つけて修正申告すれば、加算税はゼロです。延滞税はかかりますが、それ以外のペナルティは発生しません。
具体的に考えてみましょう。たとえば課税価格の申告漏れが1,000万円あったとします。これに係る関税が仮に100万円だとすると、通知前の自主修正なら追加で払うのは100万円+延滞税のみです。しかし調査通知後に発覚した場合は100万円+加算税5万円(5%)、更正予知後だと100万円+加算税10万円(10%)以上になります。さらに重加算税の対象になると最大140万円(100万円×140%)まで跳ね上がります。これは一発で会社の損益に影響するレベルです。
だからこそ「調査通知が来た後の修正申告では遅い」という意識が重要です。
令和6事務年度の財務省データによると、税関が輸入事後調査を実施した3,609者のうち、なんと約74.5%にあたる2,690者で申告漏れが発見されています。追徴税額の合計は157億円を超えました。輸入取引を行っている会社にとって、これは他人事ではありません。
参考:財務省 令和6事務年度 輸入事後調査の状況
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/collection/ka20251112b1.html
「原則として事前通知がある」というのは、例外があることも意味します。これが「無予告調査」と呼ばれるもので、知らないと驚くことになります。
国税通則法第74条の10(および関税法の対応規定)では、次の要件に該当する場合、事前通知なしで調査が開始されると規定されています。
具体的には、インボイスの改ざんや、取引先との通謀による二重帳票作成、タレコミ情報による事前把握などが典型です。こうしたケースでは税関が突然来社する可能性があります。
ただし、無予告調査であっても「調査通知」は通常存在します。正確には調査担当者が会社に到着した後、その場で「調査通知」と「調査開始の説明」が行われる形です。事前通知のルールとは別の話として理解しておく必要があります。
事後調査は基本的にはアポなしで行われることはありません。ただし、違法行為の情報を税関が事前に把握している場合や、複数のタレコミがある場合には予告なく来社する可能性があります。そのため、通常の取引であっても帳簿書類を常に整理しておくことが、最大の備えになります。
なお、輸入事後調査については通常、1ヶ月ほど前に税関から電話またはFAXで連絡が来るのが一般的です。事前通知なしの調査は例外的対応なので、過度に不安を感じる必要はありません。
参考:税関 輸入事後調査手続に関するQ&A(税関公式)
https://www.customs.go.jp/shiryo/jigochousafaq.htm
以上をふまえると、税関や税務署から最初に電話がかかってきた瞬間が、対応の分かれ目になります。この1本目の電話が調査通知にあたる可能性があるからです。
よくあるのは次のような流れです。
このシナリオ通りに対応してしまうと、調査通知後の修正申告という扱いになり、加算税が発生するリスクがあります。
そこで実務上は、調査通知を受けた最初の電話では日程の確定を保留にすることが推奨されています。「日程については確認の上、後日改めてご連絡します」と一度保留し、その間に顧問税理士や通関業者に相談する時間を作るのが望ましい対応です。
この保留期間を使って過去の申告内容を見直し、申告漏れの可能性がある箇所を洗い出すことが大切です。もし誤りが見つかった場合は、正式な事前通知が来る前に自主修正申告を検討することができます。この順序で動くことで、余分な加算税を支払わずに済む可能性が出てきます。
もし過少申告や課税価格の誤りに心当たりがある場合は、通関業者や関税に詳しい税理士・弁護士へ早めの相談が有効です。調査通知が届いた後でも、更正予知(税関から具体的な指摘を受ける)前に修正申告を行えば、5%の軽減税率が適用される余地があります。
参考:過少申告加算税と重加算税の違いについて(有森FA法律事務所)
https://aog-partners.com/kasyousinkokukasanzeitozyukasanzei/