重加算税を課されると特例輸入者の承認は即取り消しになる。
税関の公式サイトには、特例輸入者として承認を受けた企業の一覧がPDF形式で公開されています。この一覧には、企業名(日本語・英語)、法人番号(13桁)、管轄税関が記載されており、定期的に更新されているのが特徴です。
参考)https://www.customs.go.jp/kyotsu/aeo/import/importer.pdf
2018年時点での大阪税関管轄だけで25社、全国では数百社の企業が承認を受けていることが確認できます。掲載企業には、YKK株式会社(法人番号6010001032696)、株式会社アイシン(6180301013611)、住友化学株式会社(2010001071327)、丸紅株式会社(9010001008776)など、製造業・商社を中心とした大手企業が名を連ねています。
参考)https://www.customs.go.jp/kyotsu/aeo/import/i_osaka/o_tokureiyunyu_20180222.pdf
つまり大企業中心の制度です。
一覧は税関のウェブサイトから誰でも閲覧可能で、取引先が特例輸入者かどうかを確認する際の参考資料として活用できます。法人番号も併記されているため、国税庁の法人番号公表サイトと照合して企業情報を確認することも可能です。
参考)日本からの輸入申告に法人番号が必要に−中南米の制度改定動向−…
特例輸入者の承認を受けるには、厳格な要件をクリアする必要があります。最も重要なのは、過去3年間において関税法その他の国税に関する法令に違反していないこと、関税や輸入貨物に係る消費税・地方消費税について重加算税を課されていないことです。
さらに、過去3年以内に関税や内国消費税を滞納した履歴がないこと、暴力団員等でないこと、特例輸入者の承認を取り消されてから3年が経過していることも要件に含まれます。これらの条件は、法令遵守の優れた輸入者であることを客観的に証明するための基準です。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1902_jr.htm
条件は思ったより多いです。
また、特例申告にNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を使用して行うこと、特例申告貨物の輸入に関する業務を適正かつ確実に遂行できる能力を有していることが求められます。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/faq/a1-1-1.htm
法令遵守規則については、以下の14項目を規定した書面を作成する必要があります:
準備は大変そうです。
特例輸入者制度の最大のメリットは、納税申告の前に貨物を引き取ることが可能になる点です。通常の輸入通関では、輸入申告と納税申告を同時に行う必要がありますが、特例輸入者はこれを分離できるため、貨物の引き取りを大幅に早められます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1901_jr.htm
さらに、貨物が日本に到着する前に輸入申告を行い、輸入許可を受けることも可能です。これにより、港や空港での滞留時間を最小限に抑え、サプライチェーン全体のリードタイムを短縮できます。実際に、AEO輸入者(特例輸入者)の35.1%が「リードタイム短縮及びコストの削減」をメリットとして感じ、26.0%が「引取申告と納税申告の分離」を評価しています。
参考)https://www.kanzei.or.jp/wp-content/uploads/2025/08/230606_analysis-Results_03_AEO.pdf
数字で見ると効果は明らかです。
輸入申告時の申告項目が削減されることも大きな利点です。通常の輸入申告では詳細な納税額の計算や多くの書類提出が必要ですが、特例輸入者は簡素化された手続きで貨物を引き取れます。また、輸入申告時に納税のための審査・検査が軽減され、税関における物理的な検査の頻度も下がる傾向にあります。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/pdf/FAX1901.pdf
これらのメリットを最大限活用するためには、NACCS端末の適切な運用と社内体制の整備が不可欠です。特に、法令遵守規則に基づいた定期的な社内監査や従業員教育を実施することで、承認取り消しのリスクを回避できます。
特例輸入者の承認は、重加算税を課されたとき、または関税や輸入貨物に係る内国消費税・地方消費税を滞納したときに取り消されます。承認取り消しは極めて異例ですが、実際に大手企業でも発生した事例があります。
参考)https://ameblo.jp/rlvvisole/entry-12356273216.html
2008年には、三菱商事が米国産豚肉の輸入において関税逃れを行い、約14億円の追徴課税(過少申告加算税と延滞税を含む)を受け、横浜税関から特例輸入者の承認を取り消されました。この承認取り消しにより、同社は全ての品目について輸入通関の優遇が受けられなくなるという重大な影響を被りました。
参考)『トピックス:(特例輸入者の承認取り消し!)』 : 貿易とも…
14億円の追徴は痛いですね。
重加算税が適用されるのは、より重大な違反があった場合です。具体的には、故意にインボイス価格を低く改ざんしたり、複数のインボイスを使い分けて虚偽申告(いわゆる「二重価格」)を行ったりした場合に課されます。
参考)過少申告加算税と重加算税の違いと防止策
承認が取り消されると、再び特例輸入者になるには取り消しから3年が経過する必要があります。この3年間は通常の輸入通関手続きを行わなければならず、貨物引き取りの遅延やコスト増加といった経済的損失が発生します。
これらのリスクを回避するには、社内の法令遵守体制を強化することが重要です。特に、インボイス価格の確認プロセスを複数の担当者でチェックする体制を整えたり、定期的な社内監査で申告内容の正確性を検証したりすることで、故意・過失を問わず違反を未然に防げます。
特例輸入者制度は、日本のAEO(Authorized Economic Operator)制度の一部として位置づけられています。AEO制度には、輸入者向けの特例輸入者以外にも、特定輸出者、特定保税承認者、認定通関業者、特定保税運送者、認定製造者といった複数の類型があります。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/aeo_merit.htm
AEO制度全体の目的は、貿易に関わる事業者のうち、法令遵守と貨物管理が優れた者を税関が承認・認定し、通関手続きの簡素化や迅速化といった優遇措置を提供することにあります。特例輸入者は輸入に特化した優遇措置を受けられるのに対し、特定輸出者は輸出貨物の保税地域への搬入が不要になるなど、各制度で異なるメリットが設定されています。
制度ごとに特徴があるんですね。
また、AEO制度は国際的な相互承認の枠組みも持っています。日本と相互承認協定を結んだ国では、日本のAEO事業者が相手国でも優遇措置を受けられる場合があります。これにより、国際的なサプライチェーンにおける競争力を高めることが可能です。
複数のAEO資格を同時に取得することも可能で、例えば輸出入の両方を行う企業が特定輸出者と特例輸入者の両方の承認を受けることで、輸出入双方の手続きを効率化できます。ただし、それぞれの資格で承認要件や法令遵守規則の内容が異なるため、社内体制の整備には相応の投資が必要です。
AEO制度を活用する際は、自社のビジネスモデルに最も適した資格を優先的に取得し、段階的に他の資格へ展開していく戦略が効果的です。税関の相談窓口や通関業者の助言を活用しながら、自社に最適なAEO資格の組み合わせを検討しましょう。
税関公式サイトの特例輸入者一覧PDF
承認を受けている企業の最新リストを確認できます。
税関カスタムスアンサー:特例輸入者制度の概要
制度の詳細な説明とメリットについて解説されています。
特例輸入者承認要件の詳細
承認を受けるための具体的な要件が一覧表で確認できます。