輸入申告書類の保管期間と通関業者が守るべき義務

輸入申告書類の保管期間は帳簿7年・書類5年が基本ですが、通関業者には別途3年の保存義務があることをご存じでしょうか?起算日のミスや電子保存の要件違反が追徴課税につながるリスクを、あなたは正しく把握できていますか?

輸入申告書類の保管期間と通関業者が知るべき保存義務

輸入許可が下りた翌日ではなく、許可日当日から数えてしまうと保存期間が1日ずつずれ、最終年度に書類を廃棄して税関事後調査で30万円以下の罰金リスクを負います。


📋 この記事の3つのポイント
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保管期間は書類の種類で異なる

輸入関係の帳簿は7年間、書類・電子取引情報は5年間。通関業者自身が保管する申告書写しは通関業法により別途3年間の保存義務がある。

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起算日のミスが最大の落とし穴

保存期間の起算日は「輸入許可の日の翌日」から計算する。許可当日を1日目と数えると最終年度に早まって廃棄してしまうリスクがある。

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電子保存には関税法固有の要件がある

電子帳簿保存法と関税法の電子帳簿保存制度は別物。管轄省庁も異なり、要件を混同したまま運用すると違反認定・重加算税の対象になる。


輸入申告書類の保管期間の基本:帳簿7年・書類5年の違いとは

輸入申告書類の保管期間には、書類の種類によってはっきりとした区分があります。関税法第94条に基づき、業として輸入を行う輸入申告者には帳簿と書類の2種類の保存義務が課されており、それぞれ期間が異なります。


帳簿の保存期間は、輸入許可の日の翌日から起算して7年間です。帳簿に記載すべき事項は、品名・数量・価格・仕出人の氏名または名称・輸入許可年月日・許可書の番号の6項目です。7年間というのは、実務上かなり長い期間に感じられます。


一方、書類の保存期間は5年間(輸入許可の日の翌日から起算)です。保存すべき書類の範囲は広く、契約書・インボイス(仕入書)・運賃明細書・保険料明細書・包装明細書(パッキングリスト)・価格表など、輸入申告の内容を裏付けるすべての貿易書類が対象です。電子メールやEDIなど電子取引で授受した取引情報も、同じく5年間の保存が必要です。つまり書類と電子データは5年が基本です。


| 書類の区分 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 帳簿(品名・数量・価格等の記載) | 7年間 | 輸入許可の日の翌日から |
| 書類(契約書・インボイス・B/Lなど) | 5年間 | 輸入許可の日の翌日から |
| 電子取引の取引情報(メール・EDIなど) | 5年間 | 輸入許可の日の翌日から |


ここで重要なのが起算日の解釈です。「輸入許可の日の翌日から起算」という文言は、許可が下りた当日は0日目として数えるという意味になります。仮に2024年1月10日に輸入許可が下りた場合、帳簿の保存期限は2031年1月10日(翌日の1月11日から7年後)です。許可日当日を1日目と誤って計算すると、期限が1日早まってしまいます。


なお、書類に帳簿記載事項がすべて含まれている場合は、帳簿への記載を省略して書類のみを保存する方法も認められています。ただしその場合、その書類または輸入許可書を帳簿と同じ期間(7年間)保存しなければなりません。つまり省略しても保存期間は短くなりません。これは見落としやすいポイントです。


輸出の場合は帳簿・書類ともに5年間ですが、輸入の場合は帳簿のみ7年間と長くなっています。輸出入を両方手がける業者にとっては、この違いを明確に管理しないと、誤って輸入帳簿を5年で廃棄してしまうリスクがあります。


参考:税関公式ページによる保存義務の詳細

税関カスタムスアンサー「輸入者に対する帳簿書類の保存義務について」


通関業者が保管する輸入申告書写しの保存期間:3年ルールの落とし穴

通関業者として輸入申告を代行した場合、保管すべき書類の根拠法は「関税法」ではなく「通関業法」になります。ここが重要な分岐点です。


通関業法第22条第1項および同法施行令第8条の規定により、通関業者は通関業務に関する帳簿を設けるとともに、取扱いに係る書類を3年間保存しなければなりません。この書類の中には、税関官署に提出した輸入(納税)申告書や輸出申告書の写しが含まれます。


輸入者(荷主)は関税法に基づき7年・5年の保存義務を負う一方で、通関業者が保管する申告書写しの期間は3年です。つまり同じ輸入申告に関する書類でも、誰が保管義務を負うかによって年数が変わります。3年が基本です。


帳簿・書類の保存期間起算日は、帳簿の場合は「閉鎖の日」の後3年間、書類の場合は「作成の日」の後3年間とされています。なお、税関ではこれらの輸出入申告書をおおむね7年程度保存しており、NACCSシステムを通じて申告されたものはNACCSセンター(現・NACCS株式会社)でも7年間保存されています。


実務上よくある誤解として、「税関にデータが残っているから通関業者側は保存しなくていい」という考え方があります。これは違反になります。税関やNACCSのデータは行政側の記録であり、通関業者自身の帳簿・書類の保存義務を代替するものではありません。


万が一、保存義務違反が発覚した場合、税関長は通関業法第34条に基づき、通関業務の全部または一部の停止、さらには許可の取消しといった処分を下すことができます。通関業の許可が取り消されれば、事業継続が不可能になります。それだけ重い処分です。


また、通関業者は毎年の事業報告に加え、税関長による帳簿書類の検査(通関業法第38条)を受ける義務もあります。調査が入ったときに3年分の書類が揃っていないと、即座に指摘の対象になります。


フォーサイト「通関業者の義務と権利」|通関業法第22条に基づく帳簿・書類の保存義務を解説


輸入申告書類の税関事後調査と保管期間:令和6年度調査で追徴157億円の実態

税関が行う輸入事後調査は、通関後に輸入貨物の納税申告が適正だったかを確認する税務調査です。調査の頻度は3〜5年に1度程度とされていますが、対象期間は調査日から遡って5年間です。


財務省が公表した「令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の輸入事後調査の結果」によると、調査を受けた輸入者は3,609者、そのうち申告漏れ等のあった者は2,690者(74.5%)、追徴税額の合計は約157億円(前事務年度比16.8%増)に達しています。調査対象者の4人に3人が何らかの不備を指摘されている計算になります。


| 項目 | 令和6事務年度 |
|---|---|
| 調査を行った輸入者 | 3,609者 |
| 申告漏れ等のあった輸入者 | 2,690者(74.5%) |
| 申告漏れ等に係る課税価格 | 約1,390億7千万円 |
| 納付不足税額 | 約148億9千万円 |
| 追徴税額合計 | 約157億円 |


この調査で問題になるのは、申告内容そのものだけではありません。帳簿や書類がきちんと整備・保存されているかどうかも、調査の重要なチェックポイントです。書類の保存が不十分だと、それ自体が法令違反として指摘されるうえ、申告内容の裏付けができなくなり、税関の指定する金額での修正申告を迫られるリスクがあります。


調査の結果、申告内容に誤りが確認された場合、納付不足税額に加えて過少申告加算税(10%)が課されます。さらに、帳簿の電子保存要件に不備があり、それが過少申告の隠蔽・仮装と判断された場合には、通常の重加算税(過少申告なら35%)にさらに10%が上乗せされます。つまり最大45%相当の重加算税が課される可能性があります。これは痛いですね。


申告漏れ等の発生要因を見ると、インボイスは正しいが申告に誤りがあるケースが約87%を占めていました。担当者レベルのケアレスミスや、課税価格の計算への理解不足が主因です。通関業者として帳簿書類をしっかり整備しておくことが、後々の調査対応に直結します。


財務省「令和6事務年度の輸入事後調査の結果」(PDF)|追徴税額や申告漏れ事例の詳細


輸入申告書類の電子保存:関税法の要件と電子帳簿保存法の混同に注意

近年、ペーパーレス化の流れを受けて電子保存に移行する企業が増えています。しかし関税関係書類の電子保存には、一般的な電子帳簿保存法とは別の「関税法固有の電子帳簿保存制度」が存在します。この二つを混同したまま運用すると、要件違反になります。


関税法の電子帳簿保存制度は税関が管轄し、電子帳簿保存法は国税庁が管轄しています。対象書類の範囲や具体的な要件は似ていますが、法律としては別物です。たとえば電子帳簿保存法では電子取引データの紙出力保存は原則認められないのに対し、関税法では一定条件のもと出力書面での保存も認められるなど、細部で異なります。


電子保存する際に最低限クリアすべき主な要件は以下のとおりです。


- 真実性の確保:保存データが削除・改ざんされていないこと(タイムスタンプ付与、訂正・削除の記録保持など)
- 可視性の確保:保存データを検索・表示・印刷できる環境の整備
- 整理・区分:許可書番号などによって帳簿と書類の対応関係が明確になるよう整理されていること


スキャナ保存についても同様で、要件を満たさない形でスキャン保存を行い、その書類に基づく申告に過少申告が発生した場合、重加算税に10%が加算される規定があります(関税法第12条の4第3項)。


実務上、よく見落とされるのがメールの自動削除設定です。取引先とメールで授受したインボイスや契約書は「電子取引の取引情報」として5年間の保存義務があります。しかし、メールサーバーの容量管理のために古いメールを自動削除する設定がオンになっていると、意図せず保存義務違反になるケースがあります。


電子取引データの管理に不安がある場合は、関税関係帳簿書類の電子保存に対応した文書管理システムの導入を検討するのが現実的な対策です。税関の公式資料でも定期的な改正が行われているため、最新の要件は税関の「帳簿書類の保存義務と電子帳簿等保存制度」ページを定期的にチェックすることが必要です。


税関「帳簿書類の保存義務と電子帳簿等保存制度」|電子保存の最新要件を確認できる公式ページ


ビジネスブレイン太田昭和「貿易関係の帳簿や書類の電子保存」|関税法と電子帳簿保存法の違いを整理した実務向け解説


輸入申告書類の保管期間における特例輸入者・原産地証明書の扱い:見落としやすい例外ルール

通常の輸入者と異なる保存ルールが適用されるケースが実務上いくつか存在します。ここを把握しておくと、管理ミスを未然に防げます。


まず、特例輸入者特例申告制度の利用者)については、保存期間の起算日が通常の輸入者と異なります。通常は「輸入許可の日の翌日」から起算しますが、特例申告貨物の場合は「輸入の許可の日の属する月の翌月末日の翌日」から起算します。関税法第7条の9に明記されています。


たとえば、2024年3月15日に輸入許可を受けた特例申告貨物の帳簿は、2024年4月末日(3月の翌月末)の翌日、つまり2024年5月1日を起算日として7年間、すなわち2031年4月30日まで保存が必要です。通常輸入と1か月半近くのずれが生じることになります。


次に、原産地証明書(EPA/FTA関連)の保存期間は、輸入者側が原産品申告書を提出するケースでも5年間の保存義務があります。ただし輸出者が発行する原産品申告書の保存期間は、各国の協定によって3〜5年と異なります。国ごとにルールが異なります。特定の協定相手国との取引では、輸入時に利用した特恵税率の根拠として、原産地証明書の保存が税関事後調査で求められることがあります。原産地証明書が5年以内に廃棄されていると、適用した特恵税率の正当性を証明できなくなり、差額関税の追徴対象になりかねません。


また、輸入者が輸出者に部材を無償提供していた場合、その費用を課税価格に加算して申告する義務があります。令和6年度の事後調査でも「輸出者に無償提供した部材の申告漏れ」が代表的な指摘事例として挙げられています。この部材に関する契約書・発注書・費用明細なども、輸入申告書類として5年間の保存対象です。


証明書類の有無が追徴課税の分岐点になるケースを踏まえると、種類別に廃棄期限をリスト化した「書類台帳」を作成し、定期的に棚卸しを行う管理体制が現実的な対応策です。エクセルでも十分機能しますが、件数が多い場合は文書管理システムとの連携も有効です。書類台帳があれば対応できます。


有森FA法律事務所「輸入事業者の帳簿書類の保存義務」|特例輸入者の起算日の違いや罰則の根拠も解説