特恵税率適用国の一覧と除外品目・条件を解説

特恵税率は開発途上国支援のための低税率制度ですが、適用国や除外品目には複雑なルールがあります。通関業務で見落としがちな適用条件や国別の除外措置を知っていますか?

特恵税率適用国と適用条件

Form Aがあっても特恵税率を使えない国があります。

この記事の3つのポイント
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特恵受益国は126か国4地域

2026年時点で日本は130か国・地域を特恵受益国として指定。うち44か国が後発開発途上国(LDC)として無税措置の対象となっています。

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国別・品目別の適用除外がある

高中所得国や輸出シェアが高い国では特定品目が特恵適用から除外されます。中国・タイ・インドネシアなど主要輸入国で多数の除外品目が存在します。

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原産地証明書が必須

課税価格20万円超の貨物では原産地証明書(Form A)の提出が必須。書類不備による関税差額の追徴リスクに注意が必要です。

特恵税率適用国の基本構成と分類

日本の特恵関税制度は126か国と4地域を対象としています。この制度は開発途上国からの輸入品に一般税率より低い関税率を適用することで、対象国の経済発展を支援する仕組みです。
特恵受益国は大きく2つに分類されます。一般特恵受益国と後発開発途上国(LDC)です。LDCは44か国が指定されており、アフガニスタン、バングラデシュ、エチオピア、カンボジア、ミャンマー、ラオスなどが含まれます。
一般特恵受益国には、インド、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、エジプト、トルコ、アルゼンチン、ブラジルなどの新興国が含まれます。これらの国からの輸入では、農水産品は一般税率の20~80%、鉱工業品は原則無税となります。
LDCからの輸入では、特別特恵関税例外品目を除き原則無税です。これは一般特恵よりもさらに優遇された措置で、日本は1980年4月から導入しています。
無税と聞くと魅力的ですが、実際は除外品目が多数存在します。

特恵税率の適用除外となる国と品目

特恵受益国であっても、経済発展の度合いに応じて適用が制限されます。具体的には、世界銀行統計で「高中所得国」以上に該当し、かつWTO統計で世界総輸出額の1%以上を占める国が部分卒業の対象です。
参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/tokkeikanzei/minaoshi.htm

2025年度では、中国、タイ、インドネシア、インドなどの主要国で品目別の適用除外が実施されています。除外される品目は、当該国からの輸入が特定品目の国内総輸入額の50%を超え、かつ輸入額が10億円を超える場合に決定されます。
参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/tokkeikanzei/2025jogai.html


タイからの輸入では、マンゴスチン、ドリアン、竜眼などの熱帯果実、シーフード缶詰、ポリカーボネートなどの石化製品、扇風機、エアコン、冷蔵庫、テレビなどの家電製品、自動車部品など幅広い品目が除外対象となっています。インドネシアからも同様に多数の品目が除外されます。​
除外措置は3年間適用されます。この間、該当品目には一般税率が適用されるため、事前に税関のWebサイトで最新の除外品目リストを確認する必要があります。
参考)特恵適用除外品目(国別・品目別) - SANKYU-物流情報…


確認を怠ると誤申告のリスクがあります。

特恵税率適用のための原産地証明書要件

特恵関税を適用するには、輸入申告時に原産地証明書(Form A)の提出が原則必須です。これは輸出国の商工会議所などが発行する「一般特恵制度原産地証明書様式A」を指します。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1502_jr.htm


ただし、課税価格の総額が20万円以下の貨物は原産地証明書の提出が免除されます。課税価格とは、貨物本体の価格に運賃や保険料を加えた税関申告額の合計です。
参考)課税価格の総額が20万円以下の場合 – 関税削減.com【H…


原産地証明書は輸入申告時の提出が原則ですが、災害などやむを得ない事情で税関長が認めた場合や、担保を提供して輸入許可前引取承認を受ける条件で事後提出も可能です。事後提出が認められた場合、一般税率と特恵税率の差額が還付されます。
物品の種類や形状から原産地が明らかな品目も証明書提出が免除されます。これは「C特恵」と呼ばれ、税関長が別途定める品目が対象です。
20万円の境界線は意外に重要です。

特恵税率適用における通関実務の注意点

Form Aの記載内容に不備があると、特恵税率が適用されず一般税率での課税となります。特に、HSコードの誤記、原産地基準の不明確な記載、発行機関の署名・印章の不備などが通関トラブルの原因です。​
輸入許可後にForm Aの不備が判明した場合、通常の関税率との差額を追徴される可能性があります。差額が大きい貨物では数十万円の追加負担が発生することもあるため、輸入前の書類確認が重要です。
カンボジア、ミャンマー、ラオスはLDCとして現在も全ての一般特恵対象品目の適用が可能ですが、カンボジアは2029年にLDCを卒業する見込みです。卒業後は特別特恵関税の適用が外されるため、EPAやFTAの利用検討が必要になります。
参考)カンボジアLDC卒業に向けて、EPA・FTA利用の検討を


LDC卒業後、G7諸国の多くは3年間の経過措置を設けています。日本も同様の措置を導入予定で、卒業国からの輸入者には準備期間が与えられます。
参考)https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-of_customs/proceedings_customs/material/20241126/kana20241126siryo2-1.pdf

経過措置は一時的な救済策にすぎません。

特恵税率の適用除外措置と全面卒業基準

特恵受益国の経済発展に応じて、特恵関税の適用が段階的に制限されます。全面卒業の基準は、3年連続で世界銀行統計の「高所得国」に該当した国、または「高中所得国」に該当しかつ世界総輸出額の1%以上を占める国です。​
部分卒業の基準は、世界銀行統計の「高所得国」に該当した国、または「高中所得国」に該当しかつ世界総輸出額の1%以上である国が対象です。部分卒業国では、特定品目のみ特恵税率の適用が除外されます。​
適用除外の決定には2つの条件があります。対象品目の前年の輸入実績が10億円を超えること、および当該国からの輸入が特定品目の国内総輸入額の50%を超えることです。この2条件を満たすと、3年間特恵関税の適用対象から除外されます。​
LDCは卒業対象から除外されます。つまり、後発開発途上国はその経済発展度にかかわらず、特別特恵関税の恩恵を受け続けることができるのです。​

特恵税率適用国での石油製品と農水産品の扱い

特恵関税には例外品目が設定されており、石油製品や一部の農水産品は国内産業保護の観点から適用が制限されています。特恵関税例外品目は、一般特恵でも特別特恵(LDC)でも適用されない品目です。​
農水産品はHS1~24類に分類され、約2,500品目のうち有税品目は約2,100品目です。特定の431品目のみが特恵対象となり、各品目ごとに一般税率より低い税率が設定されています。税率はおおむね5~10%の範囲です。
参考)発展途上国から輸入する貨物に適用される「特恵関税制度」を正し…


鉱工業品はHS25~97類に分類され、約7,200品目のうち有税品目は約4,300品目です。石油製品を中心とした特恵関税例外品目以外は、原則無税となります。​
LDCからの輸入でも、特別特恵関税例外品目(関税暫定措置法別表第5)に該当する品目は無税の対象外です。これらの品目では、一般税率または軽減税率が適用されます。​
例外品目の把握が申告精度を左右します。
税関「カスタムスアンサー:特恵適用国・地域一覧」では、全130か国・地域の一覧とLDC指定国がわかります
税関「令和8年度特恵適用除外措置」では、最新の国別・品目別除外リストが確認できます