特恵関税対象国の最新一覧と除外措置

特恵関税の対象国は130の国と地域が指定されていますが、中国やタイなど経済発展した国は除外されています。通関業務で適用条件を見落とすとどんな影響があるでしょうか?

特恵関税対象国と除外措置の詳細

インドネシア産木材製品は45億円超えで除外対象なのに使い続けると3年間無効申告を繰り返すことになります。

この記事の3ポイント
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対象国は130の国と地域

126か国と4地域が指定され、うち44か国はLDCとして特別特恵税率が適用される

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中国など5か国が2019年度から除外

経済発展により中国、メキシコ、タイ、ブラジル、マレーシアが対象から外れた

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国別・品目別の除外措置が存在

輸入額45億円超かつシェア50%超の品目は3年間適用除外となる

特恵関税対象国の現在の指定状況

特恵関税の受益国は2026年2月現在、126か国と4地域の合計130が指定されています。アジアではインド、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどが含まれ、アフリカ、中南米、中東、東欧の開発途上国が広く対象です。
この中で特に重要なのが、44か国に及ぶ「特別特恵受益国(LDC)」の存在です。後発開発途上国と呼ばれるこれらの国からの輸入品は、原則として無税になる特別特恵関税が適用されます。バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、ラオスなど、アジアの縫製品輸出国の多くがこのLDCに該当します。
対象国リストは毎年度見直しが行われます。国内産業への影響を考慮し、適用できる品目や受益国が調整されるためです。通関業務では最新の指定状況を確認する習慣が欠かせません。​
税関のカスタムスアンサー1504番で、国名の後ろに「*」マークがついている国がLDCです。また下線がついている国は、後述する国別・品目別の適用除外措置の対象となっています。​

特恵関税から除外された対象国の経緯

2019年度から中国、メキシコ、タイ、ブラジル、マレーシアの5か国が特恵関税の対象から全面的に除外されました。経済が発展し、途上国支援としての関税減免の必要性が薄れたと財務省が判断したためです。
除外の基準は、世界銀行の所得分類で連続3年間「高所得国」に該当するか、または「高中所得国」に該当しかつ全世界の総輸出額に占める割合が1%以上を満たした国です。つまり、国の経済力と輸出競争力の両方が評価されます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1506_jr.htm

これより前の2000年度には、韓国、アラブ首長国連邦などが同様の基準で除外されました。経済発展に伴う段階的な「卒業」制度が設けられているのです。結果として競争力が高まった国からの輸入品には通常の関税率が適用されることになります。​
除外後は、EPA(経済連携協定)を締結している場合にEPA税率の適用を検討することが実務の流れです。中国とはRCEP、タイとは日タイEPAが発効しており、品目によってはこちらの特恵税率が利用できます。
参考)EPAの原産品判定基準と特恵関税:インドネシア向け輸出

特恵関税対象国でも適用除外となる品目の条件

受益国に指定されていても、特定の品目だけが特恵関税の適用から除外される「国別・品目別適用除外措置」が存在します。これは過去3年間の日本への総輸入額が45億円を超え、かつ同一物品の全世界からの総輸入額に占める当該国の割合が50%を超えた品目が対象です。
参考)https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-of_customs/report/kana161215bc.pdf


この基準を満たすと、その品目は特恵関税の適用対象から3年間除外されます。例えばインドネシアからの木材製品や繊維製品など、特定の国が輸出競争力を持つ品目で適用除外が発生しやすい構造です。
除外品目は税関の「カスタムスアンサー1504」の国名一覧で下線表示されている国について、財務省の告示で具体的なHSコードが公表されます。通関業務では、Form Aが提出されても自動的に特恵が適用されるわけではなく、該当品目かどうかの確認が必須です。
LDC(後発開発途上国)と、ラオス・ミャンマー・カンボジアの3か国については、この国別・品目別除外措置の対象外となっています。つまり全ての一般特恵対象品目で継続的に適用を受けられます。​

特恵関税対象国の原産品証明に必要な書類

特恵関税を適用するには、受益国を原産地とする物品であることを証明する「一般特恵制度原産地証明書様式A」(Form A)の提出が原則として必要です。この証明書は輸出国の税関または権限を有する商工会議所等が発給したもので、発給日から1年間有効です。
Form Aには、輸出者名、受荷人名、商品の品名・数量・HSコード、原産地基準を満たす根拠などが記載されます。輸出者の申告に基づいて発給されるため、発給機関は証明内容の真正性を審査する立場にあります。
参考)一般特恵関税制度原産地証明書様式A、Generalized …

原産地基準は「完全生産品」または「実質的加工基準」のいずれかを満たす必要があります。実質的加工基準の原則は「HS4桁(項)の変更」で、他国から輸入した原材料を使用しても、受益国内での加工によって関税分類が4桁レベルで変わる製造を行えば原産品として認められます。
加えて「直送要件」も必須条件です。受益国から日本へ直接輸送されることが求められ、第三国を経由する場合は積み替えや良好な状態を保つための保存作業などに限定されます。この場合、通しのB/L(船荷証券)が証拠書類として必要です。
参考)第三国経由貨物に特恵適用上必要な通しB/L – 関税削減.c…


特恵関税対象国からの輸入で見落としやすいリスク

Form Aが提出されていても、品目が一般特恵の例外品目に該当していれば適用されません。関税暫定措置法別表第2に記載された例外品目は、国内産業保護の観点から特恵税率の設定がない品目です。革製品や特定の農産品などが該当します。
さらにLDC向けの特別特恵関税にも、別表第5に記載された特別特恵例外品目が存在します。つまり後発開発途上国からの輸入でも、全ての品目が無税になるわけではありません。​
EPA税率が設定されている品目では、一般特恵税率よりEPA税率の方が低い場合、EPA税率のみが適用されるルールがあります。逆に一般特恵税率の方が低くてもEPA協定が優先されるケースもあるため、税率比較と適用順位の確認が実務上の注意点です。​
Form Aの有効期限切れや記載内容の不備も頻発するミスです。発給日から1年を超えた証明書や、B/L記載の商品名・数量とForm Aの内容が一致しない場合は適用が認められません。輸入申告前に書類の整合性を点検する手順を組み込むことが有効です。

特恵関税対象国を活用した通関業務の効率化

複数の受益国から同種の原材料を調達する場合、国別・品目別除外措置の対象になっていない国を選定することでコスト削減が図れます。例えば中国が除外された後、ベトナムやインドネシアへの調達先変更を検討する企業が増えました。
参考)https://www.nikkei.com/article/DGKKZO09676950X11C16A1EE8000


ただし単に税率だけで判断せず、原産地基準を満たせるかが重要です。実質的加工基準のHS4桁変更を満たすには、受益国での製造工程が十分な付加価値を生む内容でなければなりません。輸出者と事前に製造工程を確認し、Form A発給の可能性を詰めておくと申告がスムーズです。​
LDC指定国からの輸入では、特別特恵税率により原則無税となるため、関税コストがほぼゼロになります。バングラデシュやカンボジアなどアジアの縫製拠点からのアパレル輸入では、この制度が価格競争力の源泉になっています。​
税関のカスタムスアンサーや財務省の関税率表を定期的にチェックし、年度ごとの対象国・品目の変更を把握する体制を作ることが、通関業務の安定性向上につながります。最新情報は税関ホームページの「特恵関税制度」のページで確認できます。
税関カスタムスアンサー1504番 - 特恵適用国・地域一覧の最新版が掲載されており、LDC指定や除外措置の有無が一覧で確認できます
ジェトロ貿易投資相談Q&A - 一般特恵関税制度と特別特恵関税制度の違い、適用条件、原産地基準について詳細な解説があります