EPAと記載すべき原産地証明書にFTAと書くと無効になります。
経済連携協定には複数の略称が存在し、それぞれ異なる協定形態を指します。最も一般的なのはEPA(Economic Partnership Agreement)で、日本語では「経済連携協定」と表記されます。これに対してFTA(Free Trade Agreement)は「自由貿易協定」と呼ばれ、EPAよりも対象範囲が限定的です。
参考)わかりやすい用語集 解説:経済連携協定(けいざいれんけいきょ…
多国間協定としては、RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership:地域的な包括的経済連携)が2022年1月に発効し、世界のGDP、貿易総額、人口の約3割を占める大型協定となっています。また、TPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋パートナーシップ)やCPTPP(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership:包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ)も重要な多国間協定です。
日本では複数国にまたがる大規模な協定を「メガEPA」と呼ぶことがあり、TPPや日EU・EPA、RCEPなどがこれに該当します。通関業務では協定ごとに異なる原産地規則や証明手続きが適用されるため、正確な略称の理解が不可欠です。
参考)https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2019/2019honbun/i3140000.html
EPAとFTAは関税削減という共通点を持ちながら、対象範囲に明確な違いがあります。FTAは特定の国・地域間で関税やサービス貿易の障壁を削減・撤廃することを主目的とする協定です。一方、EPAはFTAの要素に加えて、投資規制の撤廃、知的財産の保護、人的交流の拡大など、より幅広い分野での連携を含む包括的な協定となっています。
参考)経済連携協定(EPA)等 : 財務省
つまりFTAはEPAに含まれる概念です。
日本が締結する協定の多くはEPA形式を採用しており、外務省の外交青書でも「経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)」と併記される形で説明されています。実務上、日本の輸出入業務ではEPAという用語が主流となっており、特定原産地証明書の発給手続きもEPAに基づいて実施されます。
参考)経済連携協定 - Wikipedia
通関業務従事者にとって重要なのは、協定の種類によって原産地規則や証明書の様式が異なる点です。EPA税率の適用を受けるためには、各協定で定められた要件に従った原産地証明書等を輸入申告時に提出する必要があり、協定名の誤記は証明書の無効につながる可能性があります。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1524_jr.htm
RCEP協定は、ASEAN10カ国に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを加えた15カ国が参加する多国間協定で、日本の貿易額の約5割をカバーする規模となっています。日本にとっては初めて中国・韓国とEPAを締結した点で歴史的意義があります。
参考)RCEP協定について
RCEPの最大の特徴は、複数国にまたがる統一的な原産地規則を持つことです。これにより、加盟国間での累積原産地規則が利用でき、広域サプライチェーンを前提とした貿易が可能になります。例えば、日本で部品を製造し、タイで組み立て、中国に輸出する場合でも、RCEP域内での付加価値が基準を満たせば原産品として認められます。
参考)RCEP・EPA・FTAの違いを整理|貿易協定の種類と実務で…
ただし便利さの裏に複雑さもあります。
多国間協定は対象国が広い反面、原産地判定の考え方が二国間EPAと異なるため、判定作業がやや複雑になりやすい傾向があります。単純な二国間取引であれば、従来の二国間EPAの方が判断しやすいケースもあります。通関業務では、取引形態や商品特性に応じてRCEPと二国間EPAを使い分ける実務スキルが求められています。
EPA税率の適用を受けるためには、輸入貨物がEPAに基づく原産品であることを証明する原産地証明書等を輸入申告時に提出する必要があります。この証明書には、適用する協定の名称を正確に記載しなければなりません。
協定名の誤記や不備は深刻な結果を招きます。EPA税率の適用が否認されると、過去に削減された関税が徴収され、さらに過少申告加算税が課されます。具体的には、税関から調査通知を受けた後に修正申告を行った場合、増加税額の5〜10%の過少申告加算税が発生します。
参考)EPAの仕組みを英語で解説して取引先に理解させる – 関税削…
これは単なる事務ミスでは済みません。
原産地証明書の認証後はいかなる理由があっても訂正できず、無効となるだけでなく処罰の対象となる可能性もあります。そのため、証明書作成時には適用する協定の正式な略称(EPA、RCEP、CPTPPなど)を確認し、各協定で定められた様式と必要的記載事項に従うことが絶対条件です。
参考)認証後に変更が生じたら
特定原産地証明書の発給を受けた産品が実際には特定原産品でなかったことが判明した場合、法令で定める期間内に発給機関である日本商工会議所に書面で通知する義務があります。通関業務従事者は、こうしたリスクを理解し、協定の略称と内容を正確に把握しておく必要があります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/qa.html
実務では取引相手国や商品特性に応じて、最も有利な協定を選択することが重要です。日本が締結している複数のEPAでは、同じ国との間でも協定によって関税率や原産地規則が異なる場合があります。例えば、ASEAN加盟国との貿易では、RCEP、二国間EPA、日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定のいずれかを選択できるケースがあります。
参考)RCEPやCPTPPなど使い分け(東京都)
協定ごとに原産地規則の考え方が異なるため、関税率が低くても証明手続きが煩雑な場合があります。このため、単純に税率だけでなく、原産地判定の難易度、証明書取得コスト、取引頻度なども考慮して協定を選択する必要があります。
選択には専門知識が欠かせません。
通関業務に従事する方は、各協定の略称と特徴を整理し、取引先に適切にアドバイスできる体制を整えることが求められます。経済産業省や税関のウェブサイトでは、EPA原産地規則マニュアルや各協定の解説資料が公開されており、これらを活用して最新情報を把握することが重要です。
税関のEPA原産地規則マニュアル(PDF)では、各協定の原産地規則の詳細が体系的に解説されています
経済産業省の原産地証明制度のページでは、証明書取得の手続きフローや企業登録方法が確認できます