原産地規則わかりやすく解説|通関業務の基準と手続き

EPA・FTA原産地規則の基準や証明手続きについて、通関業務従事者向けにわかりやすく解説します。実質的変更基準や累積規定など、実務で押さえるべきポイントとよくあるミスの対策を知っていますか?

原産地規則わかりやすく解説

日本産と記載しても原産品にならない

この記事の3つのポイント
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原産地規則の基本構造

完全生産品・原産材料のみ使用・実質的変更基準の3つの基準で原産品を判定

証明手続きの種類

第三者証明・輸出者自己申告・認定輸出者制度の3方式から選択可能

⚠️
よくあるミスと対策

HSコード誤りや記載ミスは特恵関税不適用・追徴課税のリスクあり

原産地規則の基本的な定義と役割


原産地規則とは、貨物の原産地(物品の「国籍」)を決定するためのルールです。関税政策の適用・不適用が物品の原産地に依存するため、このルールを用いて原産地を決定する必要があります。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/origin/index.htm

原産地規則には「原産地基準」と「原産地手続」の2つの柱があります。原産地基準は、どのような貨物が原産品と認められるかの基準を規定し、原産地手続は、輸入申告時に貨物が原産品であることを証明する手続きや事後確認手続等を規定しています。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/origin/gaiyou.htm

商品に「made in Japan」と記載されているだけでは、EPA協定における原産品として認められません。協定における原産品として認められるには、原産地規則を満たし、かつそれを証明する原産地証明書が必要です。つまり表示と実態は別物です。​
EPAやFTAなどの経済連携協定では、締約国間で関税を撤廃または削減することで貿易を促進します。このとき、第三国の産品が相手国を経由して輸入されることでEPA税率が不正に適用されることを防ぐため、原産地規則が重要な役割を果たすのです。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/origin/epa_shoho.pdf

原産地規則における3つの基準とは

EPAの原産地基準には3つのパターンがあります。完全生産品、原産材料のみから生産される産品、実質的変更基準を満たす産品です。​
完全生産品とは、締約国で完全に得られた産品を指します。例えば農産物や鉱産物、海産物などがこれに該当します。原産材料のみから生産される産品は、すべての材料が締約国の原産材料である場合に原産品となります。​
実質的変更基準は、第三国の材料(非原産材料)を使用した場合でも、最終産品が元の材料から大きく変化している場合に原産品と認められる基準です。この基準は品目ごとに異なるため、「品目別規則」としてまとめられ、各協定の附属書等になっています。​
実質的変更基準の判定には、関税分類変更基準(HSコードの変更)、付加価値基準(一定の付加価値割合)、加工工程基準などが使われます。産品のHSコードと使用された全ての非原産材料のHSコードが異なる結果になった場合、原産品となります。例外的な救済規定もあります。
参考)原産地規則


原産地規則で知っておくべき累積規定

累積規定は、複数の締約国で生産された材料や加工を自国のものとみなすことができる特別なルールです。当該原材料が全て締約国の原産材料であれば、累積規定を適用することにより、当該製品を製造する締約国の原産材料とみなされます。​
品目別規則を満たすか確認する必要はなく、生産される当該製品は原産品となります。例えば日本からベトナムに部材を送り、ベトナムで組み立てた製品を日本に輸入する場合、日本原産の部材はベトナム原産材料とみなされるのです。​
累積にはモノの累積と生産の累積があります。モノの累積とは、相手国のモノを特恵受益国の完全生産品とみなして原産材料とすることを意味します。生産の累積は、相手国で行った生産を自国で行った生産とみなすことです。サプライチェーン構築の鍵となります。​
実質的変更基準の例外として、救済的な規定には累積、自国関与基準、僅少の非原産材料(De Minimis)があります。これらの規定を理解することで、より柔軟に原産地規則を活用できるようになります。
参考)https://www.kanzei.or.jp/tokyo/tokyo_files/pdfs/other/zeikan201706016_3b.pdf

原産地証明の手続きと3つの証明方式

日本輸入時における原産地証明手続には、複数の証明制度を利用することができます。主な証明方式は、第三者証明制度、輸出者自己申告、認定輸出者制度の3つです。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/origin/rcep3.html

第三者証明制度は、輸出者や生産者が輸出国発給当局に申請し原産地証明書を取得、それを輸入者に送付し、輸入者が輸入国税関にその原産地証明書を提出することで原産品であることを証明する制度です。従来から使われている方式です。
輸出者自己申告では、輸出者または生産者が産品が原産品であることを証明するための十分な情報を有している場合に限り、原産品申告書を作成することができます。協定附属書の必要的記載事項が含まれていれば任意の様式で作成可能で、英語で作成する必要があります。日本では原産品申告書に加えて、産品が原産品であることを明らかにする書類(原産品申告明細書及び関係書類)の提出が必要です。​
認定輸出者制度は、各締約国の権限ある当局による認定を受けた輸出者自らが作成した原産地申告を輸入者が輸入締約国の税関当局に提出することで原産品であることを証明する制度です。認定を受けるメリットは大きいです。​

原産地証明でよくある3つのミスと対策

原産地証明にまつわる典型的なミスは、単純な記載ミス・転記ミス、ルール誤解による不適切申告、サプライヤー依存による情報不足の3つです。これらのミスは特恵関税適用不可や追徴課税のリスクを招きます。
参考)原産地証明の誤りが引き起こす特恵関税適用不可トラブルの防止策…

HSコードの誤りは、原産地検証で最も高くつくミスの一つです。多くの協定の原産地規則はHSコードを前提に設計されており、分類がずれるだけで原産品認定が崩れる可能性があります。協定ごとにHSのバージョンが異なる場合があり、HS2002とHS2007では番号が変わることがあるため注意が必要です。
具体的なトラブル事例として、中国から部材を購入し日本で組立てASEANへ完成品として輸出したが、原産地証明書には日本原産と記載して特恵関税申請したところ、税関で「日本原産と認める加工工程ではない」と却下されたケースがあります。加工基準の誤解が招いた失敗です。​
原産地虚偽記載に対する罰則は厳格です。商工会議所の罰則規程では、故意の場合は申請者および代行業者の貿易登録を抹消、過失または錯誤の場合には1カ月間の証明書発給停止となります。2020年度だけで6社・311件が処分されました。再発防止策は必須です。
参考)https://www.tokyo-cci.or.jp/shomei/pdf/bassoku.pdf


原産地誤認表示の輸入トラブルも頻発しています。パッケージに「フランスの職人が監修」と記載された中国産焼き菓子が、フランス産と誤解を与えるとして輸入不可になった事例があります。イタリアの伝統製法と記載されたスペイン産オリーブオイルも、パッケージ修正を求められ納期遅れが発生しました。​
ミスを防ぐには、現場教育の徹底とサプライチェーン全体での情報共有が重要です。特に下請任せ・確認不足は致命的です。原産地証明書の発給を受けた後の内容改ざんは、輸出者名の改ざんの場合、申請者および代行業者の貿易登録が抹消されます。書類管理も厳格に。

原産地規則の直接運送原則と第三国経由

締約国から日本に直接運送されているならば問題ありませんが、非原産国である第三国を経由した場合、注意が必要です。そこで加工等が行われていた場合、締約国の原産性は失ってしまいます。
参考)原産地規則と原産地手続事始め

単に積替えや一時蔵置以外の取扱いはされていないという事実を、経由地の税関が証明したものが必要です。この証明がないと、せっかく原産品として認められる産品でも、EPA税率の適用が受けられなくなってしまいます。物流ルートも確認対象です。​
直接運送原則は、EPA協定の原産地規則において重要な要件の一つです。輸送中の不正な加工や材料の追加を防ぐため、締約国から輸入国へ直接運送されることが求められます。第三国を経由する場合は、税関の管理下にあったことを証明する必要があります。
この原則を理解していないと、運送コスト削減のために第三国を経由したことで、EPA税率が適用できなくなるという事態が発生します。運送ルートの設計段階から原産地規則を意識することが求められます。運賃と関税の両面で検討しましょう。

原産地規則実務で押さえるべきHSコード管理

協定では産品の特定にHSコードを利用します。輸入者に通関時の輸入申告を何番でやっているか、または税関に問い合わせれば確認が可能です(6桁)。​
現在はHS2017やHS2022が一般的ですが、EPAにHS2002の番号が適用されている場合、番号が変わることがあります。この変更を見落とすと、品目別規則の確認時に誤った基準を適用してしまい、原産品判定が誤る原因となります。バージョン管理が重要です。​
輸入申告における適用税番とのHSコード相違が、HSのバージョンの違いに起因する場合等は、有効と認められる場合があります。必要に応じて原産地調査官等に相談することが推奨されています。迷ったら相談が基本です。​
実質的変更基準では、産品のHSコードと使用された全ての非原産材料のHSコードが異なる結果になった場合に原産品となります。このため、材料のHSコード分類も正確に把握しておく必要があります。サプライヤーからの情報収集体制を整えましょう。​

原産地規則活用で得られる関税メリット

EPAを活用すると、通常の関税率(MFN税率)より有利なEPA税率が適用されます。ただし、その産品がEPA税率の適用を受ける資格があるかを原産地規則で確認する必要があります。
参考)https://www.jafic.org/pdf/related05.pdf

関税削減効果は品目によって大きく異なります。例えば工業製品では数パーセントから十数パーセントの関税が免除または削減される場合があり、輸入コストを大幅に抑えることができます。特に継続的に大量輸入する場合、年間で数百万円から数千万円のコスト削減につながることもあります。計算してみる価値があります。
EPAごとに関税撤廃・削減のスケジュールが異なるため、複数の協定を比較検討することも重要です。例えば同じ品目でも、日ASEAN EPA、日中韓FTA(交渉中)、RCEPなど、どの協定を利用するかによって関税率が変わります。最も有利な協定を選びましょう。
原産地規則を理解し適切に活用することで、企業の国際競争力を高めることができます。調達先の見直し、製造拠点の配置、サプライチェーンの再構築など、戦略的な意思決定の材料として原産地規則の知識は不可欠です。攻めの活用を目指しましょう。​
税関の原産地規則ページでは、EPA原産地規則の詳細な解説と各協定の品目別規則を確認できます。実務で迷ったときの参考資料として活用してください。
ジェトロのEPA活用ガイドでは、輸出時の原産地証明書の使用方法および輸入者のメリットについて具体的な事例とともに解説されています。海外取引先への説明資料としても有用です。




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