原産地証明書の形式ミス1つで関税差額の2倍の追徴課税になります。
FTA(Free Trade Agreement)は「自由貿易協定」の略称で、2ヵ国以上の特定の国・地域間で関税やサービス貿易の障壁を削減・撤廃することを目的とする協定です。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/18213.php
一方EPA(Economic Partnership Agreement)は「経済連携協定」の略称で、FTAの内容に加えて投資規制の撤廃、知的財産制度の保護、人的交流の拡大など、より幅広い分野での共通ルールを定めた協定です。
つまりEPAの方が広い範囲をカバーします。
実務上の注意点として、日本政府は海外の協定を「FTA」、日本が関係するものを「EPA」と呼び分ける傾向がありますが、国際的に確立した定義があるわけではありません。結論はFTAがEPAに含まれるということですね。
参考)自由貿易協定 - Wikipedia
通関業務従事者にとっては、どちらの略称でも「原産地証明書の提出義務」や「原産地規則の遵守」といった実務要件は変わらないため、協定名よりも適用条件の確認が重要です。
世界には多様な自由貿易協定が存在し、それぞれ独自の略称で呼ばれています。主要な略称を理解することは通関業務の効率化に直結します。
代表的な協定の略称
これらを把握すれば大丈夫です。
日本の貿易総額の8割超がEPAやFTAによってカバーされており、RCEPの発効によってその範囲はさらに拡大しています。各協定で原産地規則や証明書の形式が異なるため、輸入申告時には適用する協定の略称と要件を正確に把握する必要があります。
参考)https://www.nx-soken.co.jp/topics/logistics-2109-01
例えば日EU・EPAでは自己申告方式の原産地声明(Statement on Origin)が採用されていますが、他の協定では第三者機関発行の原産地証明書(CO)が必要な場合もあります。適切な略称の理解が実務ミス防止につながるということですね。
参考)原産地証明書の不備でFTA適用が否認された~形式ミスが命取り…
JETRO「世界のFTAデータベース」
世界各国のFTA・EPA協定の詳細情報と最新の発効状況を確認できるJETROの公式データベースです。
自由貿易協定を活用する最大のメリットは、関税の削減または免除による輸入コストの大幅な削減です。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/16805.php
通常5%の関税がかかる輸入品でも、協定を活用すれば0%で通関できるケースがあります。これは価格競争力の向上に直結します。
具体的な例を挙げましょう。基本税率が20%、協定税率が15%、EPA税率が5%、特恵税率が10%の貨物を輸入する場合、EPA税率の適用条件を満たせば最も低い5%が適用されます。
年間1億円の輸入を行う企業なら、20%と5%の差額は1,500万円です。
ただし、EPA税率を適用するには原産地証明書の提出が必須であり、原産地規則を満たしていることを証明する必要があります。MFN税率(最恵国税率)が既に0%の品目ではEPA適用のメリットがないため、事前に実行関税率表で確認することが重要です。
参考)優遇関税スキームに基づく原産地利用率の規則
関税削減以外にも、通関手続きの簡素化や予見可能性の向上といったメリットがあり、サプライチェーン全体の効率化に貢献します。
原産地証明書の不備は、通関業務従事者が直面する最も深刻なリスクの1つです。形式的なミス1つで特恵関税が適用されず、高額な追徴課税が発生します。
実例として、ある企業がEUから輸入した繊維製品について日EU・EPAに基づく0%関税の適用を受けようとした際、原産地証明書に日付・署名・文言の欠落があり特恵申請が否認されました。
追徴課税は悪意がなくても課されます。
よくある不備の具体例は以下の通りです。
これらの形式不備は無効とされる可能性が高く、タイでは関税差額の2倍の加算税が課され、無申告扱いとなった場合は物品の売買価格に輸入関税とVATを加算した金額の2倍から4倍が罰金となります。ベトナムでは最高7,000万ドンの罰金、インドネシアでは最高1,000%の罰金が科されるケースもあります。
参考)経済連携協定や自由貿易協定に違反した場合の罰則 - FTA、…
日本でも関税法による罰則のほか、「経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律」によって、証明書を発行する輸出側に30万円もしくは50万円の罰金が課され、悪質なケースでは企業の経済連携協定利用停止措置も考えられます。
原産地証明書だけでなく、積送基準(運送上の要件)も満たさなければEPA税率は適用されません。これは意外に見落とされるポイントです。
積送基準とは、産品をEPA締約国から日本に直接運送する必要があるという規定です。第三国を経由する場合には、EPA締約国からの通し船荷証券(B/L)等が必要となります。
例えばタイから日本へ貨物を輸入する際、シンガポールで積み替えが発生した場合でも、タイ発行の通しB/Lがあれば積送基準を満たします。しかしシンガポールで新たなB/Lが発行されていると、積送基準違反となりEPA税率が適用されません。
この点は重要です。
通関業務従事者は、輸入相談の段階で輸入者に対して正しい情報を伝え、必要な船荷証券を取り寄せる指導を行っておくことで、通関時のトラブルを回避できます。各EPA国によって条件や規定が異なるため、都度最新の情報を確認して審査すれば問題なく通関が行えます。
参考)EPA税率は3つの条件で攻略可能!実務時のポイントについても…
積送基準を満たしているかの確認は、B/Lの発行地と経由地を精査することで可能です。
国際的な環境下で事業展開していながら特恵関税のメリットを活用していない企業が依然として多く存在します。多くの貿易統計から特恵利用率が低水準であることが明らかになっています。
利用率低迷の背景には、原産地規則の要件が過度に厳しいことや、原産地判定を誤って輸入申告した際のコストが大きいことがあります。
どういうことでしょうか?
EPA協定を利用するには、①原産地規則を満たすこと、②原産地証明書を取得すること、③積送基準を満たすこと、④輸入申告時に特恵適用を申請すること、という4つの要件をすべて満たす必要があります。
製品が原産地ステータスを取得するための規則が厳しすぎるか、またはそのプロセスを担当する人員が他の業務に割り当てられ対応できていない場合が多いのです。
対策としては、まず自社の輸出入品目がどの協定で関税メリットがあるか調べることから始めます。次に仕入先や製造工程を確認し、原産地ルールを満たしているか精査します。原産地証明書の取得ルール・申請方法を理解しておくことも必須です。
税関「EPA税率を適用する場合の輸入通関手続」
原産地証明手続きの詳細と各協定の要件を確認できる税関の公式ガイドです。
特恵マージンが小さい(MFN税率が既に低い)場合はEPA利用のインセンティブが機能しないため、実行関税率表で事前確認することが効率的な判断につながります。
これで必要な情報が収集できましたので、記事を作成します。