協定税率適用国一覧と原産地証明書

協定税率が適用される国や地域は一体どれくらいあり、EPA税率との違いは何でしょうか?通関業務で見落としがちな特恵関税や原産地証明書の不備リスクについても詳しく解説します。知らないと追徴課税されるポイントとは?

協定税率適用国と特恵関税制度

原産地証明書の不備があると追徴課税だけでなく加算税も発生します。

この記事の3ポイント要約
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協定税率の適用範囲

WTO加盟164か国・地域と便益関税適用国に協定税率が適用され、EPA締約国にはさらに低い特恵税率が優先適用される

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原産地証明書の重要性

EPA税率適用には原産地証明書が必須で、記載不備や原産性喪失に気づかず申請すると発給取消・追徴課税・加算税の対象になる

⚠️
通関業務従事者のリスク

生産場所の海外移転や材料調達先変更で原産性を失うケースが多発し、気づかず申請すると最大30万円の罰金対象となる

協定税率が適用される国と地域の全体像


協定税率は、WTO加盟国・地域に対して適用される関税率です。2026年2月現在、WTOには164の国・地域が加盟しており、これらすべてに協定税率が適用されます。
協定税率はMFN税率(Most Favored Nation:最恵国待遇税率)とも呼ばれます。基本税率よりも低い場合に適用される仕組みです。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/faq/

WTO非加盟国でも条件を満たせば適用されます。通商航海条約等の二国間条約で最恵国待遇を約束している国、または実質的に最恵国待遇と同様の取扱いをしている国には、相互主義に基づき「便益関税」として協定税率と同等の税率が適用されます。
わが国関税率の適用状況表では、協定欄に○印がある国が協定税率適用対象です。また、△印は便益関税が適用されることを示しています。
参考)日本関税協会

EPA税率と協定税率の違いと優先順位

EPA(経済連携協定)税率は協定税率よりもさらに低い特恵税率です。日本は2026年現在、RCEP、CPTPP、日EU・EPAなど多数のEPAを締結しています。
参考)特定原産地証明書とは?


税率の適用優先順位は明確に決まっています。暫定税率→協定税率→EPA税率の順で、より低い税率が優先適用される仕組みです。
参考)日本には特別な特恵関税がある

EPA税率の適用には条件があります。原産地規則を満たし、原産地証明書または原産品申告書を提出する必要があるのです。つまり条件を満たさなければ適用されません。​
日本が締結しているEPAの相手国には、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、EU、米国、英国、RCEP、UAEなどがあります。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/wto-fta/epa/pdf/epa_fta_all_20240201.pdf


協定税率適用における特恵関税制度の種類

特恵関税には一般特恵(GSP)と特別特恵(LDC特恵)の2種類があります。どちらも開発途上国からの輸入に適用される制度です。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1504_jr.htm


一般特恵関税は138の国・地域に適用されます。インド、インドネシア、タイ、フィリピン、ブラジル、アルゼンチンなどが対象です。​
特別特恵関税はさらに低い税率が設定されています。LDC(後発開発途上国)47か国に対して適用され、多くの品目で無税となるのが特徴です。​
ただし注意が必要です。EPAを締約している国から輸入する場合、EPA税率が一般特恵税率より高い場合を除き、EPA税率のみが適用されます。特別特恵税率については別途確認が必要です。​

協定税率適用に必要な原産地証明書の実務

EPA税率の適用には原産地証明書が不可欠です。この証明書により、輸出産品がEPAに基づく原産資格を満たしていることを証明し、相手国税関でEPA税率の適用を受けられます。​
原産地証明書には複数の方式があります。第三者証明方式(日本商工会議所などが発給)、認定輸出者自己証明方式、輸入者自己申告方式などです。協定により採用されている方式が異なります。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/origin/epa.pdf

証明書の記載不備は重大なリスクです。輸出者・輸入者の名称住所の相違、インボイス番号の脱落、HS番号の相違、特恵基準の脱落などがあると、EPA税率が適用されない場合があります。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/procedure/fubi_epa.pdf

第三国インボイスを使用する場合は特に注意が必要です。原産地証明書に第三国インボイスの番号・日付・発行者名・住所を記載しないと、特恵税率が認められない事例が発生しています。記載漏れは頻発するミスです。
参考)https://opendocs.ids.ac.uk/opendocs/bitstream/20.500.12413/18108/4/ICTD_WP173.pdf

協定税率適用時の原産性喪失リスクと対策

原産性を失ったまま証明書を発給申請すると深刻な結果を招きます。輸入国で追徴課税だけでなく加算税の対象となり、日本では証明書発給が取り消されます。​
原産性喪失の主な原因は3つです。生産場所の海外移転、材料部品の調達先変更による非原産材料化、材料価格上昇による付加価値基準未達などがあります。​
実際の事例を見ると深刻さがわかります。部品メーカーA社が海外に生産を移転したのに、長年にわたり原産品判定を見直さず、商社B社が誤った判定結果を使い続けたケースでは、証明書が取り消されました。生産管理部と貿易管理部の連絡漏れが原因です。​
別の事例では材料の調達先変更が問題になりました。銅線を国内調達から海外調達に変更した結果、HSコード変更が起きず関税分類変更基準を満たさなくなったのです。原産性喪失に気づかず申請してしまいました。​
付加価値基準を使う場合も油断できません。非原産材料の価格が1,000円上昇しただけで、RVC(域内付加価値割合)が45%から38%に低下し、40%以上という原産地基準を満たさなくなった事例があります。​
法的義務も厳格です。証明書受給者は、発給を受けた物品が特定原産品でなかったことを知ったときは、遅滞なく日本商工会議所に書面で通知しなければなりません。通知が遅れると30万円以下の罰金が科されます。​
防止策は組織的な体制整備が基本です。生産場所が日本国内であることを工場名・所在地まで確認する、輸出者・生産者間および社内各部門で生産・調達情報を共有する体制を作る、原産品判定結果を定期的に見直すルールを設けるなどが有効です。​
社内勉強会の開催やEPAセミナーへの参加も推奨されます。原産地証明制度への理解を深めることが、ミスの防止につながるのです。​
参考になる資料として、経済産業省が公開している「EPA原産地証明書の利用における留意事項について」があります。実際の取消事例と対策が詳しく解説されています。
経済産業省「EPA原産地証明書の利用における留意事項」
税関の「不備のある経済連携協定(EPA)原産地証明書等の取扱い」も実務上重要です。どのような不備が有効・無効となるかが一覧表で確認できます。
税関「不備のある経済連携協定(EPA)原産地証明書等の取扱い」

協定税率適用における通関実務の独自視点

協定税率適用で見落とされがちなのが「便益関税」の存在です。WTO非加盟国でも実質的に最恵国待遇と同様の取扱いをしている国には、相互主義に基づいて協定税率と同率の関税率が適用されます。
この制度により、外交関係を考慮しながら柔軟な関税政策が可能になっています。通関業務従事者としては、単純にWTO加盟国リストだけでなく、便益関税適用国も確認する必要があるのです。​
もう一つの盲点は僅少規定です。協定によっては、一定割合以下の非原産材料であれば原産地基準を満たすとみなす「僅少規定」があります。しかし、材料価格の上昇により僅少の範囲を超えてしまうと、原産性を失います。​
為替レートの変動も影響を与えます。FOB価格や材料価格の変動、為替レートの変動により原産資格割合が低下するリスクがあるため、定期的な見直しが不可欠です。​
日本商工会議所は企業登録している企業に対して定期的に注意喚起を行っています。これを活用し、最新情報を常に把握しておくことが、通関業務従事者の専門性を高める鍵となります。​
💡 実務での活用ポイント


  • わが国関税率の適用状況表で協定税率適用国を定期確認する

  • EPA締約国からの輸入では原産地証明書の記載内容を必ず精査する

  • 社内で生産・調達情報の共有体制を構築し原産性喪失を防ぐ

  • 材料価格や為替レートの変動を定期的にモニタリングする

  • 便益関税や僅少規定など特殊なケースにも対応できる知識を持つ

⚠️ 通関業務従事者が注意すべきリスク


  • 原産地証明書の不備による追徴課税・加算税

  • 原産性喪失を知りながら通知しない場合の30万円以下の罰金

  • 第三国インボイス記載漏れによる特恵税率不適用

  • 生産場所海外移転や材料調達先変更の情報共有不足

  • 付加価値基準における材料価格変動の見落とし




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