原産品申告書フォーマットの書き方と選び方完全ガイド

原産品申告書のフォーマットはEPAの種類によって異なり、書き方を間違えると特恵税率が否認されることも。正しい様式の選び方・記載事項・注意点を徹底解説。あなたは正しい書式で作成できていますか?

原産品申告書フォーマットの選び方と正しい書き方

原産品申告書のフォーマットは「どれか1種類」だと思っていませんか?実は、使うEPAを間違えると関税削減が丸ごと否認され、追徴課税を受けるリスクがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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フォーマットはEPAごとに異なる

CPTPP・日EU・日米・RCEPなど協定別に必須記載事項と様式が異なります。使う協定を確認してから書式を選ぶことが基本です。

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20万円以下なら申告書の提出自体が省略できる

課税価格の合計が20万円以下の貨物は、原産品申告書・明細書・関係書類すべての提出を省略できます。ただし原産性の確認義務は残ります。

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記録は最長4年間の保管が必要

申告書の作成後も証拠書類を4年間保管する義務があります。事後確認(検認)に対応できないと特恵税率が遡及して否認されます。


原産品申告書フォーマットの基本:任意様式と固定様式の違い

原産品申告書のフォーマットには「完全に自由な任意様式」と「協定が定めた固定の申告文を使うもの」の2種類があります。この違いを把握していないと、せっかく用意した書類が差し戻しになるケースもあります。


まず整理しておきたいのが、様式の自由度はEPA(経済連携協定)ごとに異なるという点です。代表的な違いは以下のとおりです。







































協定名 様式の種類 主な特徴
CPTPP(TPP11) 任意様式 協定で定めた必須記載事項を満たせばOK
日EU・EPA インボイス等への申告文記載 英語・日本語等の協定所定の文言を商業書類に書く
日英EPA インボイス等への申告文記載 日EU・EPAに準じた申告文を使用する
日米貿易協定 任意様式(輸入者のみ) 輸出者・生産者は原則作成不可
RCEP 任意様式または商業書類 締約国・証明方式により分かれる
日豪EPA 任意様式 税関の様式見本(Word形式)が利用可


任意様式でよい協定であっても、税関が公開しているWord形式の様式見本をそのまま使うことが、実務上もっとも手堅い方法です。これが基本です。


様式見本は税関の「原産地規則ポータル」から各EPA別にダウンロードできます。協定ごとに和文・英文の両方が用意されており、記載要領も同梱されているので、初めて作成する場合は必ずこのページを起点にしてください。


参考:各協定の様式見本・手引きが一覧で確認できる税関の公式ページ
原産地基準・証明手続/様式見本 : 税関 Japan Customs


原産品申告書フォーマットのEPA別必須記載事項

原産品申告書フォーマットに書くべき内容は、EPAによって微妙に異なります。意外ですね。たとえば「証明者の電話番号」は一部の協定では必須ですが、省略できる協定もあります。


CPTPP(TPP11)で定められている主な必須記載事項は以下のとおりです。



  • 証明者の区分(輸出者・生産者・輸入者のいずれか)

  • 証明者の氏名・住所(国名含む)・電話番号・メールアドレス

  • 輸出者の氏名・住所(証明者と異なる場合)

  • 生産者の氏名・住所(証明者・輸出者と異なる場合)

  • 輸入者の氏名・住所・メールアドレス・電話番号(不明な場合は省略可)

  • HSコード6桁、品名、仕入書番号

  • 原産性の基準(WO・PE・CTH・CTSHなどの記号)

  • 包括的な期間(同一産品を複数回輸送する場合、最大12か月)

  • 正規の署名と日付

  • 産品が原産品かつ情報が真正であることの誓約文


一方、日EU・EPAの場合は「インボイスに協定所定の申告文を記載する」形式のため、上記のようなリスト型の書類は原則として不要です。申告文の中に法人番号(13桁)と原産地基準の記号、必要に応じて有効期間を書き込む構造になっています。


日米貿易協定は特殊なケースです。この協定だけは輸入者のみが原産品申告書を作成できます。他のほとんどの協定では輸出者・生産者も作成主体になれますが、日米ではそれができません。日本から米国へ輸出する立場の方は注意が必要です。


原産性の基準は記号で記載します。CPTPPを例に取ると「WO(完全生産品)」「PE(原産材料のみから生産)」「CTH(4桁関税分類変更)」「CTSH(6桁関税分類変更)」「RVC(付加価値基準)」「SP(加工工程基準)」などがあります。この基準記号を誤ると、税関から問い合わせが入ることがあります。記号は1つだけ覚えておけばOKです。


参考:CPTPPおよび日EU・EPAに関する記載要領・実務手順を詳しく解説している民間サイト
EPA(FTA)原産品申告書(自己申告書)の作成方法 – FFTAコンサルティング


原産品申告書フォーマットのダウンロード先と使い分け方

原産品申告書のフォーマットは税関公式サイトからWordで無料入手できます。これは無料です。


ただし「任意様式でいい」と言われたからこそ、逆に迷う方も多いでしょう。どのファイルを使えばよいのか、利用シーン別に整理します。


🟢 日本へ輸入するとき(輸入者または通関業者が作成する場合)


使用するEPAの「日本への輸入用」欄にある様式を選びます。CPTPPであれば「原産品申告書・和文(Word)」と「原産品申告明細書・和文(Word)」を合わせて用意するのが原則です。


🔵 日本から輸出するとき(輸出者・生産者が作成する場合)


日EU・EPAや日英EPAでは、インボイスに申告文を直接書き込む形になります。別途のWord書式は不要で、英語で記載した申告文のみで成立します。


🟡 複数回の輸送に1枚で対応したいとき(包括的な原産品申告書)


同一の産品を複数回にわたって取引する場合は、申告書に「包括的な期間」を記入することで、最大12か月間、同一の申告書を使い回すことができます。毎回書類を新たに準備するコストが抑えられます。これは使えそうです。


なお、日米貿易協定の場合は輸入者が作成する唯一の様式があり、「輸出者・生産者からコピーをもらう」という運用は制度上できません。



  • 税関公式の様式見本はすべてWordまたはPDF形式で公開されている

  • 各協定の「手引き」PDFも同じページで取得でき、記載例が付いている

  • 英文・和文の2種が用意されているため、輸入先・輸出先に応じて選択する


参考:様式見本、手引き、記入例をEPA別に一覧化した税関の公式ページ(日豪・CPTPP・日EU・日米・日英・RCEPすべてを網羅)
原産地基準・証明手続/様式見本 : 税関 Japan Customs


原産品申告書フォーマット作成時に見落としがちな3つの注意点

フォーマット自体は用意できても、記入段階で落とし穴にはまることがあります。厳しいところですね。実務でよく起きるミスを3つ挙げます。


① HSコードのバージョン違い


各EPAは協定締結時のHSコードのバージョンを基準としています。現在(2022年版)と比べて版が古い協定も多く、具体的にはCPTPPが2012年版、日EU・EPAと日英EPAが2017年版を採用しています。現在使っているHSコードをそのまま記載すると、協定上のコードと一致しないケースがあるため、相関表でのクロスチェックが必要です。HS番号の確認は必須です。


② 法人番号の英語版登録漏れ


日EU・EPAの申告書には証明者の法人番号(13桁)を記載しますが、EUの税関当局はこれを国税庁法人番号公表サイトの英語版で照合します。英語版サイトへの登録は自動ではなく、事業者が自ら手続きをしなければ掲載されません。英語版未登録のままにしていると、EU税関からの事後確認(検認)の際に照合できず、最悪の場合は特恵税率が否認される可能性があります。


③ 真正性に関する記載のミスは「軽微な誤り」にならない


原産品申告書の記載ミスには、税関が「軽微な誤り」として認めてくれるものと、そうでないものがあります。金額や品名の小さな誤記は軽微な誤りとして補正できることがありますが、作成者の氏名・作成年月日・署名など「真正性に直結する項目」の不備は、軽微な誤りとして処理できません。つまり書き直しになります。誤記の種類で対応が変わります。


なお、20万円以下の輸入貨物については原産品申告書の提出自体を省略できます。ただし省略できるのはあくまでも書類の提出であり、実際に原産品の要件を満たしているかどうかの確認義務まで消えるわけではありません。申告書の提出省略と原産性の確認は別物だということを忘れないようにしましょう。


参考:不備のある原産品申告書の取扱いについて税関が公開している実務指針
不備のある原産品申告書の取扱い(税関・PDF)


原産品申告書フォーマット作成後に必要な証拠書類の保管と事後確認対策

原産品申告書を提出して通関が完了しても、それで手続きが完全に終わるわけではありません。提出後も対応が続きます。


税関による「事後確認」とは、特恵税率を適用した輸入貨物について、通関後に貨物が本当に相手国の原産品であったかどうかを確認する手続きです。書面による情報提供要請または輸入者の事業所への個別訪問によって実施されます。事後確認の結果、原産品であることが確認できない場合は特恵税率の適用が否認され、通常税率との差額を追徴課税されます。過少申告加算税の対象にもなります。痛いですね。


証拠書類の保管期間は、日EU・EPAや日英EPAでは申告日から4年間、その他の協定でもおおむね3〜5年程度の保管が求められます。保管すべき書類の例は以下のとおりです。



  • 原産品申告書・原産品申告明細書のコピー

  • インボイス、パッキングリスト

  • 製造工程表・原材料表

  • サプライヤーから入手した原産地に関する誓約書(サプライヤー証明書)

  • HSコードの根拠となる資料(分類通知、事前教示回答書など)


「通関が通ったのだから問題ない」と書類を廃棄してしまうと、後から事後確認が来たときに全く対応できなくなります。4年間の保管が条件です。


事後確認リスクを事前に下げる方法として有効なのが「事前教示制度」の活用です。これは輸入前に税関へ貨物の原産性について照会し、文書で回答を得ておく制度で、この回答書の番号を輸入申告書に記載することで原産品申告明細書や関係書類の提出を省略できます。回答の有効期間は発出後3年間です。日々の輸入に同一の産品を使う場合は一度取得しておくと大幅に手間が減ります。


参考:事後確認の目的・方法・対応策を詳しく解説した税関の公式ページ
事後確認 : 税関 Japan Customs