輸入許可前引取承認適用法令と要件・担保・注意点

輸入許可前引取承認制度の適用法令や承認要件、担保提供の手続きについて、通関業務従事者が押さえるべきポイントを詳しく解説します。特例申告との関係や承認されないケースも理解していますか?

輸入許可前引取承認適用法令

特例申告貨物ではBP申請できません

この記事のポイント
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関税法73条が根拠法令

輸入申告後に関税額相当の担保を提供し税関長の承認を受けることで許可前引取が可能になる制度

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特例申告貨物は対象外

特例申告を選択した場合は輸入許可前引取承認制度を利用できないため事前確認が必須

💰
担保額は申告税額の1.1倍

関税・消費税等を含めた税額の1.1倍が担保として必要になり供託または保証書を提出

輸入許可前引取承認の法的根拠と条文内容

輸入許可前引取承認制度は、関税法第73条第1項に規定されている制度です。原則として輸入貨物は輸入許可を受けた後でなければ引き取ることができませんが、特別な事情がある場合に例外的に許可前の引取を認める仕組みになっています。


参考)貨物の輸入許可前引取り:日本


条文では「外国貨物(特例申告貨物を除く)を輸入申告の後輸入の許可前に引き取ろうとする者は、関税額(過少申告加算税並びに重加算税に相当する額を除く)に相当する担保を提供して税関長の承認を受けなければならない」と規定されています。


つまり申告税額が基準です。



参考)Redirecting to https://tsukans…


この制度を利用する際は、輸入申告において他法令による許可・承認等が必要な場合にはそれらを得ていることを税関に証明しなければなりません。他法令の手続きが完了していない場合は、輸入許可前引取承認を受けることはできません。


参考)輸入許可前貨物の引取り


制度の本旨は、税関側の事情や貨物の性質上の理由により輸入許可の取得に時間を要する場合に、事業者の負担を軽減することにあります。専ら関税の納期限延長を目的とする等、明らかに制度の本旨に反する申請は承認されません。


参考)輸入許可前引取が認められる具体的な事情について


輸入許可前引取承認が認められる具体的事情

税関側の事情により輸入許可が遅延する場合には、輸入許可前引取承認が認められます。具体的には、新規輸入品などで課税標準の審査に日時を要する場合や、分析・検定を要するなどの理由により関税率表の分類に時間を要する場合が該当します。


参考)輸入許可前貨物の引取承認制度について


輸入者側の事情としては、貴重品や危険物、変質・損傷のおそれがあり特に引取りを急ぐ貨物が対象になります。展示会等へ出品するもので時間的制約があるときも承認事由に該当します。


緊急性が鍵です。



参考)https://mkc-net2.com/approval-of-pre-import-license/


特恵税率または経済連携協定に基づく税率の適用のため必要とされる原産地証明書の提出が遅れるときにも、輸入許可前引取承認を受けることができます。ただし、この場合は「原産地証明書の提出猶予」の承認を受けた場合に限られます。証明書の事後提出が認められる条件として、災害その他やむを得ない場合等で税関長が認めた場合、または担保を提供し輸入許可前引取承認を受けることが前提になります。


なお、税関の都合により輸入許可が遅延する場合でも、担保の提供は必要です。


担保提供は免除されません。



参考)2025年片山立志先生の通関士合格ポイントコラム 第14回

輸入許可前引取承認に必要な担保の額と手続き

輸入許可前引取承認を受けるためには、関税額に相当する担保を提供する必要があります。ここでいう関税額には、関税だけでなく消費税や地方消費税も含まれます。


加算税は除外されます。



参考)Redirecting to https://tsukans…


担保の額は、税額の決定に特に問題がないと認められれば当該申告税額と同額となりますが、一般的には原則として申告税額の1.1倍の額となります。例えば申告税額が100万円であれば、担保額は110万円が必要です。


1割増が目安ですね。



参考)輸入許可前引取り制度についての続きの解説

担保の形式としては、供託または保証書の提出が認められています。東京税関のホームページでは、担保として提出する保証書の様式や書き方を確認することができます。関税額に相当する担保の提供がない場合は、輸入許可前引取承認は受けられません。


参考)https://www.moj.go.jp/content/001402913.pdf


輸入許可前引取承認を受けた貨物は、税関の輸入許可を得なくとも保税地域から引き取ってマーケットで売ることができます。ただし、関税の納付は貨物引取後に行う必要があり、納税後に正式な輸入許可となり完全な内国貨物となります。


輸入許可前引取承認と特例申告貨物の関係性

特例申告貨物は、輸入許可前引取承認制度の対象から明確に除外されています。関税法第73条第1項において「外国貨物(特例申告貨物を除く)」と規定されているためです。


特例申告では使えません。



特例輸入者が輸入(引取)申告をして輸入の許可を受けようとする場合には、輸入許可前引取承認申請をすることができません。なぜ特例輸入者が輸入(引取)申告をした場合に申請できないのかといえば、そもそも申請自体が不要だからです。

特例申告制度では、輸入申告と納税申告が分離されており、先に引取申告を行って貨物を引き取り、後から納税申告を行う仕組みになっています。このため、納税申告について問題が発生した場合でも先に引取を認めるための輸入許可前引取承認制度を利用する必要がありません。


申請理由が生じないのです。



ただし、特例輸入者が特例申告を選択せず普通の輸入(納税)申告を行った場合には、普通の輸入者と同様に輸入許可前引取承認を受けることができます。その場合には普通の輸入者と同様に関税相当額の担保の提供が必要になります。


選択の自由がありますね。


輸入許可前引取承認が認められないケースと対策

輸入してはならない貨物に該当する場合は、輸入許可前引取承認は認められません。例えば麻薬や覚醒剤、知的財産権を侵害する貨物などが該当します。これらの貨物は輸入自体が禁止されているため、引取承認の対象外です。

他法令に基づく許可・承認等が得られない場合も、承認されません。輸入申告の際に必要な食品衛生法、植物防疫法、薬機法などの他法令手続きが完了していなければ、輸入許可前引取承認を受けることはできません。


他法令手続きが前提条件です。



原産地を偽った表示等がされている場合も、承認されません。申告貨物について原産地の虚偽表示・誤認表示がある場合や、当該貨物が輸入を許可するにふさわしくない場合には、輸入許可前引取承認は受けられません。


これらのリスクを回避するには、輸入申告前の事前確認が重要です。他法令の要否や原産地表示の正確性を事前にチェックし、必要な手続きを完了させておくことで、スムーズに輸入許可前引取承認を受けることができます。通関士通関業者との連携により、書類不備や手続き漏れを防ぐことが可能です。

税関の公式ページ「輸入の許可前における貨物の引取制度(カスタムスアンサー)」では、制度の基本的な仕組みと利用できる場合の具体例が詳しく掲載されています
JETROの「貨物の輸入許可前引取り」ページでは、適用基準や納税手続きの流れについて実務的な解説があります