原産地表示ルール工業製品の義務と罰則を通関業務者が解説

工業製品の原産地表示ルールは通関業務に直結する重要事項です。誤表示が招く5年以下の懲役や3億円の罰金、輸入不可のリスクとは?違反事例から実務対応まで詳しく解説します。

原産地表示ルール工業製品

実質的変更を加えない簡単なラベル付けは原産国になりません

📋 この記事の3ポイント
⚖️
工業製品の原産地判定基準

HSコード変更を伴う実質的変更が原産国の決め手。縫製や編立が基準となります

⚠️
違反時の刑事罰

5年以下の懲役または500万円以下の罰金。法人には3億円以下の罰金が科されます

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輸入通関でのリスク

誤認表示は通関不可。表示消去・訂正・積戻しの措置が取られます

原産地表示の法的義務と工業製品の対象範囲


工業製品の原産地表示には明確な法的枠組みが存在します。不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)によって、原産地について誤認を生じさせる表示が規制されています。
参考)https://www.jafic.org/pdf/manual_20231220.pdf


ただし、工業製品の原産地表示は食品とは異なり、日本では法令上の義務付けはありません。これは、WTOのTBT協定により、原産国表示の強制規格が輸入障害となることから困難な状態にあるためです。​
しかし、外国語表記のブランドが多いアパレル業界では、消費者に誤認を与える可能性が高いことから、原則として全ての商品に原産国表示を行うことが求められています。業界団体による自主表示基準が設けられている場合もあります。
参考)衣料品の輸入販売時の原産地表示:日本


つまり義務ではなくとも、誤認を招く表示は違法です。
輸入通関時には、関税法71条により、直接もしくは間接に偽った表示または誤認を生じさせる可能性のある原産地表示がされている外国貨物は輸入できません。ただし、これは通関の時点で原産地表示が義務付けられているということではありません。​

原産地表示の実質的変更基準とHSコード

2カ国以上で生産が行われた工業製品の原産地判定には、「実質的な変更」という概念が中心となります。税関では、「生産が2カ国以上にわたる場合には、実質的な変更をもたらし、新しい特性を与える行為を最後に行った国」を原産地としています。
参考)日本産の原産地の認定基準 - 横浜商工会議所

この実質的変更の判定には、関税番号(HSコード)の変更が用いられます。HSコードが変更されることで、実質的変更が加えられたと判定されるのです。​
衣料品の場合、具体的な基準が明確です。ソックスを除く衣料品は縫製を行った国、ソックスについては編立を行った国が原産国となります。例えばシャツについて、イタリアの生地を中国で縫製し、日本でラベル付けを行った場合、原産国は中国になります。
参考)原産国表示(不当景品類及び不当表示防止法)

実質的変更に当たらない作業もあります。商品へのラベル付け、商品の梱包・包装、簡単な刺繍やプリントなどは該当しません。これらは原産国の判定に影響しないということですね。​
日本には、輸出物品についての原産地判定基準は存在しないため、商工会議所では原産地証明書における物品の原産地の判定において、輸入物品に対する原産地の判定基準を準用しています。​

原産地表示違反時の罰則と法人処罰

原産地表示の違反には、極めて重い刑事罰が科されます。不正競争防止法第21条2項1号、第2条1項13号に該当する場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または懲役刑と罰金刑の併科となります。
参考)『注意したい、商品の原産地表示』|三宅法律事務所


厳しいところですね。
法人に対する処罰も極めて重く、代表者の他に法人に対しても3億円以下の罰金が科されることがあります。これは、個人の行為者だけでなく、事業者そのものも刑事罰の対象となるということです。
参考)https://www.shinginza.com/db/01368.html


処罰の対象となる行為には2つのパターンがあります。不正の目的をもって誤認惹起行為をした場合は法第21条2項1号、不正の目的はなくても「原産地」の虚偽表示をした場合は同項2号によって、同じく5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科されます。​
つまり故意がなくても処罰されます。
飲食料品については別途JAS法の規定もあり、原産地について虚偽の表示をした飲食料品を販売した者に対しては、JAS法第23条の2による処罰規定が平成21年に新設されています。こちらは2年以下の懲役又は200万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金となります。​

原産地表示の通関トラブル事例と対応

原産地表示のミスは、輸入通関で深刻なトラブルを招きます。関税法71条の2により、税関長は原産地について偽った表示または誤認を生じさせる表示がある外国貨物については輸入を許可せず、輸入申告者に直ちに通知し、期間を指定してその表示を消させ、もしくは訂正させ、または当該貨物を積みもどさせます。
参考)原産地表示の表示ミスが招く輸入通関トラブル


実際のトラブル事例として、フランスの伝統的なレシピを再現した焼き菓子を中国で製造し、日本に輸入しようとしたケースがあります。パッケージには「フレンチスタイル」「フランスの職人が監修」などの文言が記載され、フランスの国旗がデザインされていましたが、通関担当者は「原産地が中国であるにもかかわらず、フランス産と誤解を与えるパッケージになっている」と判断し、輸入が認められませんでした。​
スペイン産のオリーブオイルのパッケージに「イタリアの伝統製法」と記載していたことが問題になったケースもあります。日本の法律では、原産国以外の国名が強調されると、消費者に誤解を与える可能性があるため違反とみなされることがあります。このケースでは、業者は追加コストをかけてパッケージを修正し、改めて輸入手続きを進めることになり、大幅な納期遅れが発生しました。​
痛いですね。
ラベルやケースマークに原産地を無表示の場合でも、商品そのものに紛らわしい記載があると、税関から原産地表示を求められるケースもあります。例として、「USA」という文字がデザインされた中国製Tシャツを輸入したところ、原産地誤認の恐れがあるため、税関から「MADE IN CHINA」の表示をするように求められた事例があります。
参考)輸入貨物の原産地誤認トラブル事例 – 国際物流の…

このようなトラブルを回避するには、輸入前の段階で原産地表示の適切性を確認することが必須です。パッケージデザインに他国を連想させる要素が含まれていないか、原産国表示が明確に記載されているかをチェックする体制を整えましょう。税関への事前教示制度を活用して、通関前に表示の適否を確認しておくと安心です。

原産地表示の実務管理体制と輸出入取引法

通関業務従事者として、原産地表示の管理体制を整えることは極めて重要です。食品を扱う場合でも、消費者に対し正しい表示を行うという意識をもち、食品表示制度の認識を深め、内容を確認し、管理体制を整えていくことが大切です。
参考)食品表示法に違反するとどうなる?事例をもとに解説!

輸出入取引法も原産地表示に関する重要な規制を設けています。本邦から輸出する貨物に係わる虚偽の原産地表示については、輸出入取引法第2条第2号で「不公正な輸出取引」として定義されています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/tsutatsutou/tuuti1/aa229.pdf
YouTube​
過去の違反事例として、韓国で製造したエンジンの部品を一旦日本に輸入し、日本製と偽って中東や南米に輸出していた例があります。このケースでは日系メーカーが韓国で製造した製品でしたが、例え日系メーカーが製造したものであっても原産国は正しく表示することが必要です。YouTube​
経済産業省では、日本からの輸出者に対して6ヶ月間エンジン部品の全地域向け輸出を禁止する処分をしました。日本製品の信頼が失われ日本の輸出産業全体が大きな影響を受ける可能性があります。YouTube​
これは使えそうです。
日本で製造した髭剃りをドイツのメーカーの商標を使用した上でドイツ産と偽ってタイに輸出した例もあります。このような事例から、製造国と販売ブランドの混同による誤表示にも注意が必要であることがわかります。YouTube​
原産地表示の適正管理には、サプライチェーン全体での情報共有が不可欠です。製造委託先の所在地を正確に把握し、製造工程のどの段階で実質的変更が行われるかを文書化しておくことで、後のトラブルを防げます。定期的な社内研修を実施し、景品表示法や輸出入取引法の最新動向を従業員に周知する仕組みを作りましょう。




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