申告時に他法令の証明が不要な貨物でも、NACCSでは申告と同時に許可になるため、通関業者は事実上すべて申告前に証明書を用意しなければ取消しリスクが生じます。

「他法令」とは、関税法・関税定率法・関税暫定措置法といった関税関係法令以外の法令のうち、輸出または輸入に関して許可・承認などを定めたものを指します 。食品衛生法、薬機法、外為法など、所管省庁が異なる多岐にわたる法令が該当します。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1801_jr.htm)
通関業者の立場で見ると、これは「税関への申告手続き」と「他省庁への手続き」を並行して管理しなければならないことを意味します 。担当省庁の許可書や証明書を税関に提示できなければ、輸出入の許可は下りないのです。 foresight(https://www.foresight.jp/tsukanshi/column/other-laws-and-regulations/)
現在、輸出に係る他法令は14法令、輸入に係る他法令は33法令が対象として定められています 。これだけ多くの法令が関係するため、品目ごとの適切な確認が欠かせません。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
関税法70条の条文は非常にシンプルですが、実務への影響は非常に大きいといえます。
参考リンク:税関公式の輸入関係他法令一覧(担当省庁・確認書類・問合せ先を一覧で確認できます)
税関|輸入関係他法令の概要(カスタムスアンサー)
他法令には「証明のタイミング」によって2つのジャンルがあります。これは実務の手順を考えるうえで非常に重要です。
まず第1ジャンル(第1項)は、輸出入申告の時点で、他法令上の許可・承認等を受けている旨を税関に証明しなければならないものです 。たとえば外為法(輸出貿易管理令)に基づく経済産業大臣の輸出許可がこれにあたります。ロシア向けにハイスペック機械を輸出する場合などは、原則として許可が下りない可能性もあります。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
第2ジャンル(第2項)は、申告後の税関の審査・検査の際に証明・確認を受けるものです 。食品衛生法に基づく検疫証明書などが代表例で、申告時点では書類がなくても受け付けられる建て付けになっています。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
| 区分 | 根拠条文 | 証明タイミング | 代表的な法令 |
|------|---------|--------------|------------|
| 第1ジャンル | 70条第1項 | 輸出入申告の時 | 外為法、覚醒剤取締法、銃刀法など |
| 第2ジャンル | 70条第2項 | 審査・検査の際 | 食品衛生法、植物防疫法、薬機法など |
これが基本の区分です。ただし後述するように、実務ではこの区別はほぼ有名無実になっています。
輸入に係る他法令は第1ジャンルが24法令、第2ジャンルが8法令で合計33法令に及びます(品目によっては両ジャンルに重複して該当する場合もあります)。把握しきれない量に思えますが、実務で頻繁に登場するのは限られています。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
特に通関業従事者が遭遇しやすい法令を整理すると以下の通りです。
- 🍽️ 食品衛生法(厚生労働省)— 食品・飲料・食器全般。陶磁器の鉛・カドミウム基準値超えは輸入不可
- 🌿 植物防疫法(農林水産省)— 切り花、果実、種子などの植物類
- 🐾 家畜伝染病予防法(農林水産省)— 畜産物・生皮など
- 💊 薬機法(厚生労働省)— 医薬品、医療機器、化粧品
- 🔫 銃刀法(警察庁)— 銃砲・刀剣類
- ☣️ 毒物及び劇物取締法(厚生労働省)— 農薬原料、化学物質
- 🌍 外為法・輸入貿易管理令(経済産業省)— 戦略物資、輸入割当品目
対象貨物かどうかを調べるには、税関ホームページで「実行関税率表」を確認し、品目の右端「他法令」欄に記載されたアルファベット2文字の法令コードを確認します 。この法令コードはNACCSのシステム上のコードとも連動しています。 logistida(https://www.logistida.com/post/20221004)
参考リンク:実行関税率表での他法令コードの見方について
輸出入関係「他法令」とは|Logistida
制度上は第2ジャンルの他法令は「申告後の審査・検査の際」に証明すればよいことになっています。知っていると「それなら申告先行で進めてもいい」と思いがちです。
ところが現実は違います。
現在の輸出入手続きはNACCSで行われており、申告と同時に許可になるケースが非常に多いのです 。つまり審査・検査の際に証明しようとしても、許可が出てしまっていた、という状況が起こりえます。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
その場合は「申告撤回」という手続きが必要になります。これは非常に手間がかかる作業であり、荷主への説明も必要です。厳しいところですね。
さらに最悪のケースとして、他法令上の手続きが未済のまま輸入許可が下りてしまった場合は、担当省庁への謝罪・説明、商品の回収、消費者への補償、マスコミ対応など多大な損失を被るリスクがあります 。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
つまり実務では、第2ジャンルであっても申告前に証明書を揃えておくのが原則です。
この問題を防ぐためには、貨物ごとに関係する他法令を事前に洗い出し、所管省庁への手続き完了のスケジュールをあらかじめ立てることが有効です。チェックリスト形式で管理するのが実践的な対処法といえます。
輸出は輸入と比べて法令数が少なく(14法令)、実務で見落とされやすい傾向があります。輸出の第1ジャンルは12法令、第2ジャンルは2法令です 。 gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
輸出で特に注意が必要な法令は以下の通りです。
- 🌏 外為法(輸出貿易管理令) — 対象国・品目の規制が頻繁に変わる。ロシア・イランなど制裁国向けは特に注意
- 🦅 文化財保護法 — 古美術品・文化財の無許可輸出は厳禁
- 🐦 鳥獣保護法・狂犬病予防法 — ペットや動物製品も対象
- 🌱 植物防疫法 — 輸出先国の検疫証明が必要な品目あり
輸出の第2ジャンルは「麻薬及び向精神薬取締法」と「道路運送車両法」の2法令のみです。道路運送車両法が含まれている点は意外ですね。中古自動車の輸出時に自動車通関証明書が必要になる場面がこれにあたります。
輸出でよくある見落としの一つが、輸出先国の規制ばかり確認し、日本側の輸出法令確認を怠るケースです。外為法に基づく輸出許可(キャッチオール規制)に引っかかるかどうかは品目と仕向地の組み合わせで判断されるため、意識的なチェックが必要です。
参考リンク:輸出規制対象かどうかの判断に使える、経済産業省の輸出管理ページ
経済産業省|安全保障貿易管理(輸出管理)
他法令の証明・確認ができなかった場合、関税法70条第3項の規定により輸出入は許可されません 。これは単なる遅延ではなく、業務上の信用問題に直結します。 aec.go(https://www.aec.go.jp/kaigi/senmon/bougo/siryo10/1_haifu.pdf)
特に大きなリスクとして認識すべきは以下の3点です。
- ❌ 輸入許可が下りずに貨物が保税地域に留め置かれる — 保管コストが日単位で発生し、荷主への賠償リスクも生じる
- ❌ 他法令手続き未済のまま誤って輸入許可になった場合 — 所管省庁への報告義務が生じ、商品回収・廃棄などの対応が必要になることもある gtconsultant(https://gtconsultant.net/other-law/)
- ❌ 申告撤回の手続きが発生 — NACCS上の申告を撤回するには税関への届出と理由説明が必要で、業務効率が大幅に落ちる
対策として最も実効性が高いのは、品目コードと他法令コードの突合を申告前に必ず行うことです。実行関税率表の「他法令」欄を確認し、法令コードが存在する品目は必ず所管省庁への確認ステップをワークフローに組み込みます。
また、食品衛生法の輸入届出のように、証明書の取得にリードタイムがかかる他法令については、貨物の入港前から手続きを開始するのがトラブル回避の基本です。これが条件です。
NACCSの通関情報システムには他法令コードの照合機能が組み込まれていますが、それに頼るだけでなく、品目分類の時点から他法令を意識した確認フローを自社で構築することが、通関業者としての実務力につながります。
参考リンク:関税法70条の条文全文と基本通達の詳細確認に
他法令の証明は、申告の時か、審査・検査の時か|GTConsultant.net