通則3(a)で判断できれば通則3(b)は使いません
通則1は品目分類の大原則を定めた規定です。物品の所属は項の規定及びこれに関係する部又は類の注の規定に従って決定します。
表題は単に参照上の便宜のために設けたものであり、法的拘束力はありません。つまり品目表の見出しだけを見て分類を決定することはできないということです。
これは意外ですね。
参考)HSコード決定の原則「通則」とは – 関税削減.com【HS…
通関業務では必ず以下の手順で確認する必要があります。まず表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定します。次に項の物品の説明や範囲について関税率表解説・分類例規を参照します。
そして部注、類注に従って分類を決定します。
一つのHSコードを特定するには最低でも6種類の資料を確認しなければなりません。実行関税率表、関税率表解説、国際例規、国内例規、部注規定、類注規定です。
この確認を怠ると誤分類につながります。
木製の家具を例にすると、実行関税率表だけを見ると44類の「その他の木製品」に分類しそうになります。しかし44類の解説を確認すると家具は除外規定があり、正しくは94類に分類されることがわかります。このように解説や注を確認しないと誤った分類をしてしまうのです。
オリーブの分類も興味深い事例です。一般的には果物と考えられますが、7類の注規定でオリーブは野菜に含まれると明記されています。誰もが果物と信じていても法的拘束力のある注規定に従わなければなりません。
知識だけでは判断できません。
通則2は未完成品や分解品、混合物の取り扱いを定めています。通則2(a)では未完成の物品でも完成品としての重要な特性を有するものは完成品として分類します。
参考)HSコード通則1 関税分類の大原則 - FFTAコンサルティ…
車輪を装着していないトラックや分解されたテーブルは通則2(a)を適用して完成品のHSコードに分類されます。輸送コスト削減のために膨張させる前のプラスチックボトルも完成品として扱われます。
通則2(b)は2つ以上の材料や物質からなるものの所属決定を通則3に委ねる規定です。小麦粉70%ととうもろこしの粉30%の混合物や、木製ベースを綿織物で覆いアルミ製の足をつけたアイロン台などが該当します。
通則3は最も複雑で実務上の判断が難しい規定です。通則3(a)では最も特殊な限定をして記載している項が優先されます。車のタイヤは「車の部分品」より「ゴム製のタイヤ」の方が限定的なためHS4011に分類されます。
参考)https://tgg.jugani-japan.com/tsujike/2023/09/custom11/
通則3(b)は物品に重要な特性を与えている材料や構成要素で所属を決定します。金属フレームの写真立ての中に50枚の写真が入るプラスチック製ポケットがある製品では、50枚収納できるプラスチックポケットの方が重要な特性と判断されHS3926に分類されます。
通則3(c)は通則3(a)も3(b)も適用できない場合に数字上で最後の項に分類する規定です。綿50%ポリエステル50%のT-シャツはHS6109.10とHS6109.90の両方に該当しますが、数字上後のHS6109.90に分類されます。
HSコードの誤分類は想像以上に深刻な結果をもたらします。米国税関では2025年2月の1ヶ月間だけで28件の監査を実施し、約290万ドルの未払い関税を発見しました。
米国の輸入業者がクーラーバッグを断熱性ありとして関税率3.4%で申告したケースでは、実質的な断熱性能がないことが判明し正しい関税率17.6%との差額に加えて約5万ドルのペナルティが課されました。
これは痛いですね。
フォード社のトランジットコネクトの事例では、貨物輸送用車両を乗用車として誤分類し、関税率が2.5%から25%に跳ね上がりました。未払い関税約1億8,347万ドルと民事制裁金約1億8,000万ドルで合計約3.6億ドルという異例の規模になっています。
日本国内でも初めて輸入する品目や類似品目で分類ミスが起こりやすいです。同じ電子機器でも部品として扱われるか完成品として扱われるかで適用税率が異なります。
海外の取引先が提供するHSコードをそのまま使用するリスクも指摘されています。各国で関税率表の解釈や文化的背景が異なるため、日本の税関で確認する必要があります。
書類不備で税関審査が進まず貨物が保税地域で足止めされるケースもあります。品名や数量、単価の間違い、総額と小計の不一致などが原因です。
これらは事前に防げます。
事前教示制度を活用することで分類の誤りを未然に防げます。税関の無料相談も利用できるため、不明な点は必ず確認すべきです。
参考)https://www.kanzei.or.jp/wp-content/uploads/2025/06/20250317.pdf
税関の輸出入通関手続きの便利な制度
通関手続きで利用できる各種制度の概要と申請方法が確認できます。事前教示制度についても詳細が記載されています。
通則4は通則1から3までで所属を決定できない物品に適用されます。当該物品に最も類似する物品が属する項に分類するという規定です。
車両を持ち上げるためのエアージャッキ(空気を膨らませて使用するタイプ)は一般的なジャッキと形状が大きく異なります。通則1から3まで適用できない場合、通則4を適用して最も類似する物品が属する項に該当させます。
適用機会は少ないです。
通則5(a)は専用ケースの取り扱いを定めています。バイオリンケースのように特定の物品を収納するために特に製作され、長期間の使用に適し、物品とともに提示され通常一緒に販売されるものは物品に含まれます。
ただし重要な特性を全体に与えている容器には通則5(a)は適用されません。袋入りガムと貯金箱を兼ねたがん具を包装した物では、容器がおもちゃとしての重要な特性を持つためガムとがん具を別々に分類します。
通則5(b)は通常の包装材料や包装容器は物品に含まれると定めています。ただし明らかに反復使用に適する包装材料や包装容器(圧縮ガス用ドラム容器など)には適用されません。
通則6は号レベル(HS6桁)での所属決定に通則1から5を準用する規定です。ハイブリッド自動車は通則1でHS8703の乗用自動車に分類された後、通則6に沿って6桁レベルを決定します。
通則6の適用では同一の水準にある号のみを比較できます。1段落ちの号(水準1)同士、2段落ちの号(水準2)同士で比較し、段階を飛び越えた比較はできません。
これが基本ルールです。
品目分類で最も重要なのは通則の適用順序を守ることです。通則1で決定できればそこで終了し、決定できなければ通則2へ進みます。通則3は(a)(b)(c)の順に適用し、上位で決定できたら下位には進みません。
過去の輸入データを参照し分類の一貫性を保つことも重要です。同じ商品で毎回異なるHSコードを使用していると税関審査で指摘を受けるリスクがあります。
チェックリストを作成し取引先や社内で情報を共有することでミスを防げます。初めて輸入する品目の場合は必ず6種類の資料を確認し、不明点は税関に照会します。
ネットでの品名検索だけに頼るのは危険です。検索結果の根拠を理解せず誤った当てはめをしてしまい大惨事を招く可能性があります。
HSコード選定基礎の理解が必要です。
品目分類は各国独自の文化や考え方によって左右されることがあります。日本で正しいとされる分類が他国で異なる判断をされることもあるため、輸出先国の規定も確認が必要です。
事前に関税分類を調査し適切なコードを適用することでリスクを軽減できます。特に高額な貨物や新規取引先からの輸入では事前教示制度の活用を検討すべきです。
ジェトロの品目分類の考え方資料
機械類の部分品の分類方法や事前教示制度の利用方法について具体的な解説があります。
実務での判断に役立つ情報が含まれています。
通則の正確な理解と適用は通関業務の基本であり、追徴課税や罰金のリスクを回避するために不可欠です。6種類の資料を横断的に確認する手間を惜しまず、不明点は必ず専門家や税関に確認する姿勢が重要になります。