品目コードを適当に選んで、あとで数十万円の追徴課税を受けた輸入担当者がいます。
品目コード(HSコード)とは、世界共通の商品分類番号です。正式名称は「Harmonized System Code(調和システムコード)」といい、世界税関機構(WCO)が定めた国際規格に基づいています。
この番号は通常9〜10桁の数字で構成されており、上位6桁が世界共通の「HS番号」、下位の桁が各国独自の細分類となります。日本では税関の「実行関税率表」に基づき9桁で管理されています。
番号の構造を図解するとこうなります。
| 桁数 | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| 上2桁 | 類(Section) | 大分類(例:第21類=各種調製食料品) |
| 上4桁 | 項(Heading) | 中分類 |
| 上6桁 | 号(Subheading) | 国際共通の細分類 |
| 下3桁 | 統計細分 | 日本独自の細分類 |
食品は主に第1類〜第24類に分類されます。つまり品目コードが変わるだけで、関税率・輸入届出の要否・食品衛生法の適用区分がまるごと変わるということです。これが原則です。
なぜ重要かというと、同じ「チョコレート菓子」に見える商品でも、砂糖の含有量が50%以上か未満かによって品目コードが異なり、関税率が変わります。「なんとなく似てる品目コードでいいか」という判断が、追徴課税や通関差し止めに直結するリスクがあります。
食品の輸入を行う際は、商品の種類・加工状態・原材料比率・用途を正確に把握したうえで品目コードを選定することが、コスト管理の出発点になります。
参考:品目分類とHSの基本解説(税関公式)
品目分類とHS - 税関 Japan Customs
「食品なら関税は低い」と思い込んでいる人は要注意です。食品の品目コードの世界は、原材料の組み合わせや加工の度合いによって関税率が数十パーセント単位で変わることがあります。
まず知っておきたいのが、砂糖含有量による分類変動です。砂糖を含む食品の場合、しょ糖の含有量が全重量の50%以上かどうかで品目コードが変わり、関税率にも差が出ます。砂糖自体の関税率はWTO協定税率で約35%です。天然ハチミツは関税率30%ですが、砂糖を加えた人造ハチミツになると50%まで跳ね上がります。砂糖の含有比率だけで税率が約20ポイントも違う、ということになります。
次に見逃せないのが、加工度・形状の違いです。代表的な例がコーヒーで、生豆(0901.11)と焙煎済み(0901.21)では品目コードが別扱いです。同じ「コーヒー」でも、加工前と後で完全に異なる番号になります。これは意外ですね。
さらに注目したいのが、外側を覆う素材の問題です。「ホワイトチョコレートをディップしたクッキー」ならクッキーの品目コードが適用されますが、「ホワイトチョコレートでコーティングされたクッキー」の場合はホワイトチョコレートの品目コードが適用されます。外側を覆う素材が主体とみなされるためです。同じ商品に見えても、製造工程の違いで分類がガラリと変わることがあります。
食品の品目コードで特に関税率が高い品目をまとめると以下の通りです。
| 食品の種類 | 品目コード(類) | 主な関税率(WTO協定) |
|---|---|---|
| 精米・玄米 | 第10類 | 約280%相当(従量税:341円/kg) |
| こんにゃく芋(輸入時) | 第07類・第11類 | 実質300%超(歴史的最高値は1,706%) |
| 砂糖・糖菓 | 第17類 | 約35%〜50% |
| 乳製品(チーズ等) | 第04類 | 約22%〜40% |
| 牛肉 | 第02類 | 25.8%〜50%(輸入量で変動) |
| 調製食料品(カレーなど) | 第21類 | 21.3%前後 |
こんにゃく芋の関税率は歴史的に有名です。1995年の関税化開始時には輸入価格163円/kgに対して関税額が2,796円/kg、これで計算すると1,706%という数字でした。ただし現在は輸入価格が上昇しているため、実質的な税率は大幅に下がっています。
また一方で、こんにゃく「製品」(加工済み)の関税率は約20%と、こんにゃく芋とはまったく異なる水準です。原料と加工品で品目コードが分かれるため、これほど大きな差が生まれます。
参考:食品輸入における関税制度の詳細
食品の輸入にかかる関税を徹底解説 - フライングフィッシュ
品目コードは「なんとなく当てはまりそう」ではなく、正確な根拠に基づいて選定することが必要です。税関は「そのコードを選んだ理由」を見ています。結論はシンプルです。
実務で使える調べ方の手順は以下の3ステップです。
ステップ1:税関Tariff検索(実行関税率表)を開く
日本税関の公式サイト(customs.go.jp)内にある「実行関税率表」を使います。輸入の場合は「実行関税率表」、輸出の場合は「輸出統計品目表」を参照します。
アクセス先:`https://www.customs.go.jp/tariff/`
商品名を英語で入力すると候補が表示されます(英語検索の方がヒット率が高いです)。
ステップ2:商品の特性を整理してから選ぶ
候補が複数出てきたとき、以下の要素を一つずつ確認します。
- 🔸 原材料(主な成分・含有量)
- 🔸 加工の有無(生鮮・加工品・調製品)
- 🔸 用途(食用・業務用など)
- 🔸 形状・包装
例えばジャムの場合、フルーツの種類によって品目コードが微妙に変わることがあります。「ジャム」という商品名だけで番号を選ばず、フルーツの種類と砂糖含有量まで確認することが必要です。
ステップ3:注釈・補足説明を必ず読む
税率ページには「注」という補足説明が記載されています。除外条件や素材基準などがここに書かれており、ここを読まずに番号を選ぶと誤分類のリスクが高まります。
初心者が特に間違えやすいパターンが3つあります。
1. 商品名だけで選んでしまう:ネット検索で見た「それっぽい番号」をそのまま使うのは危険です。
2. 輸出者が書いた番号をそのまま使う:海外サプライヤーが記載した番号は、日本の通関基準と一致しないことが多いです。最終責任は輸入者にあります。
3. 材質・成分を無視する:食品は原材料比率・含有量・加工状態が分類に直結します。
参考:HSコードの調べ方と食品の分類例
HSコードの調べ方を初心者向けに解説 - japan-import-guide.com
品目コードの誤りは「ただの記入ミス」では済みません。税関側が誤分類を発見した場合、様々なリスクが同時に発生します。
まず最も直接的なリスクが追徴課税です。実際よりも関税率の低い品目コードで申告していた場合、差額の関税と延滞税が課されます。さらに、意図的に低関税のコードを使ったとみなされると、過少申告加算税や重加算税まで加わります。
実例として、FTA(自由貿易協定)を活用している食品メーカーに多いケースがあります。原産地証明書に記載したHSコードと、輸入申告書に記載したHSコードが一致していないと、FTAの優遇税率が適用されなくなります。顧客へのコスト転嫁が発生し、クレームや損害賠償請求に発展したケースも報告されています。
次に通関差し止めのリスクがあります。食品の場合、品目コードによって食品衛生法に基づく届出の要否が決まります。届出が不要なコードで申告したが、実際は届出が必要な食品だったという事態になると、税関で貨物が保留になります。廃棄や再輸送のコストが発生し、顧客への納期遅延にもつながります。
また、誤りが発覚した場合の対応フローを把握しておくことも重要です。
- ① 税関から指摘を受けたら、指摘理由を確認する
- ② 商品の仕様書・写真・原材料リストを整理する
- ③ 「修正申告」または「説明資料の提出」で対応する
税関の指摘に根拠をもって反論したい場合は、品目を選んだ理由を文書化しておくことが有効です。「なぜこの番号を選んだか」を説明できる状態にしておくことが条件です。
品目コードの誤りは後から修正することが可能ですが、迅速な対応が求められます。発覚したら速やかに通関業者や専門家に相談するのが得策です。
参考:HSコードの付け間違いで起こるトラブル事例
HSコードの付け間違いで起こるトラブル事例とは?
品目コードの選定に迷ったとき、最も確実で安全な方法があります。それが税関の「事前教示制度」です。
事前教示制度とは、輸入を予定している商品について、実際に輸入する前に正式な品目コードと関税率を税関に照会できる制度です。無料で利用できます。
回答書が発出されると、その内容は原則3年間有効として通関審査に尊重されます。つまり一度確定させれば、3年間は同じ商品に同じ番号を使って申告できるということです。継続的な輸入においては特に有効です。
回答にかかる目安期間は以下の通りです(目安)。
- 🕐 関税率の回答:照会書受理から約1ヶ月以内
- 🕐 原産地の回答:照会書受理から約2ヶ月以内
照会する際に必要な資料は、商品の詳細仕様書・原材料リスト・製造工程表・写真などです。情報が不足していると回答が遅れたり、再提出を求められたりするため、できるだけ詳細な情報を揃えてから照会することをおすすめします。
もう一点、知っておくと便利なのが「税関の事前教示回答事例データベース」です。税関公式サイトには過去の照会に対する回答事例が公開されており、似た商品の分類事例を確認できます。自社商品と近い事例が見つかれば、品目コード選定の参考にできます。
事前教示制度を使うべき場面は次の3つです。
- 🔹 初めて輸入する食品カテゴリを扱うとき
- 🔹 加工度・原材料比率が微妙で分類に迷うとき
- 🔹 FTA・EPA税率を活用したい商品を扱うとき
品目コードが確定すれば、仕入れコストの計算が正確にできるようになります。つまり販売価格の設定や利益計算もより確実になります。これは使えそうです。
参考:事前教示制度の詳細と申請方法
事前教示制度について - 東京税関
正確な品目コードが決まったら、次は「その番号に適用できる最安の関税率はどれか」を調べることで、輸入コストを大きく下げられる可能性があります。
日本が締結しているEPA(経済連携協定)には現在20以上の協定があり、それぞれ品目コードごとに特別な関税率(EPA税率)が設定されています。例えば、通常の関税率が21.3%のビーフカレー(調製食料品)でも、EPA締結国からの輸入であれば税率が段階的に引き下げられるケースがあります。
注意点として、EPA税率は自動的には適用されません。適用を受けるためには原産地証明書が必要です。原産地証明書のHSコードと輸入申告書のHSコードが一致していることが必須条件となります。ここがズレると優遇税率が使えなくなるため、品目コードの精度がより一層重要になります。
また、特恵関税(GSP)も活用できる場面があります。開発途上国からの輸入品に対して通常よりも低い関税率が適用される制度で、ミャンマーなどからのこんにゃく芋が無税になるのも特恵関税の一例です。対象国・対象品目は定期的に見直されるため、最新情報の確認を習慣にすることが大切です。
関税率には「基本税率・暫定税率・WTO協定税率・特恵税率・EPA税率」など複数の種類があります。これらの中から自動的に最低の税率が適用されるわけではなく、申請が必要なものもあるため、実際の通関業者や専門家とともに確認するのが確実です。
品目コードを正確に押さえ、EPA・特恵関税の活用可否を確認するという2ステップをルーティン化することで、食品輸入のコスト管理の精度は大幅に上がります。
参考:EPAの利用とHSコードの調べ方(経済産業省)
STEP.2 輸入する品物のHSコードを特定する - 経済産業省

【通関士マグカップ】輸出統計品目表/実行関税率表(輸入統計品目表)[EXPORT STATISTICAL SCHEDULE/CUSTOMS TARIFF SCHEDULES][通関士マグカップ]