hsコードを税関任せにすると5年分の追徴と信用失墜が一度にやってきます。
HSコードは、世界税関機構(WCO)が管理する「商品の名称及び分類についての統一システム(HS条約)」に基づく国際的な品目分類コードです。[8][1]
通関実務でよく聞く「税番」「輸出入統計品目番号」「関税番号」などの呼び名は、基本的にこのHSコードをベースに各国が拡張したものと考えると整理しやすくなります。[2][1]
つまり6桁までが世界共通の「HSコード」、そこから先の桁数(日本なら9桁・10桁など)が各国独自の細分という構造です。[9][2]
つまり6桁共通が原則です。
もう少し具体的にイメージしてみましょう。
HSコードは「類(2桁)」「項(4桁)」「号(6桁)」という階層構造を持ち、例えばプラスチック製品であれば39類から順に絞り込んでいきます。
参考)https://www.dhl.com/discover/ja-jp/logistics-advice/essential-guides/hs-codes
ここまではWCOが管理する国際共通ルールであり、日本だけでなく米国HTSコードやEU CNコードも同じ6桁を土台に追加桁で細分している点がポイントです。
参考)https://www.dhl.com/discover/ja-jp/logistics-advice/essential-guides/country-hs-codes
6桁までが世界の共通言語ということですね。
この6桁共通という性質は、通関業者にとって大きなメリットを生みます。
例えば日本で輸入した貨物の6桁HSコードを把握しておけば、同じ貨物を米国へ再輸出する際も、HTSやCNの候補を短時間で絞り込めます。
参考)Customs Tariff Classification …
結果として、各国の税番表の読み直し時間や、現地ブローカーとの照合作業を数時間単位で削減できるケースもあります。
時間短縮が基本です。
この基礎を押さえたうえで、次に重要になるのが「WCOがHSをどのように運用・改正しているか」という視点です。
HSは5年ごと(次期は6年周期)に大幅改正が行われ、環境関連品やデジタル機器など新しい品目が追加されます。
改正のたびに旧コードが削除・統合され、実務では移行表を追いかけないと「いつの間にか存在しないコードを使い続けていた」という事態になりかねません。
改正フォローが条件です。
通関業務従事者の多くは「HSコードは世界共通だから、海外側のコードをそのまま日本申告に使っても大きな問題はない」と無意識に考えがちです。
しかし実務では、6桁以降の桁が国ごとに大きく異なり、米国HTSでは10桁、日本の統計品目番号では9桁・10桁といった独自拡張が行われています。[10][2]
つまり、インボイスに記載された海外の10桁HTSをそのまま日本の税番とみなす運用は、本来の制度設計とズレているのです。
つまり安易な流用は危険です。
具体例を考えてみます。
例えば同じプラスチック製品でも、米国HTSでは材質や用途ごとに細かく税番が分かれており、日本と下4桁の体系が異なることがよくあります。
インボイス記載のHTS10桁をそのまま日本のNACCSに入力すると、一見通るように見えても、実際には別物を指す日本税番になってしまう可能性があります。
どういうことでしょうか?
ここで効いてくるのが、WCOの役割と各国制度の関係です。
WCOはHS条約に基づき6桁までの国際分類と解釈ルール(解釈通則)を示す一方、各国は自国の産業政策や統計ニーズに応じて7桁以降を設計します。
参考)https://www.wcoesarocb.org/wp-content/uploads/2018/07/2.-WCO_HS-CLASSIFICATION-HANDBOOK.pdf
そのため、WCOの資料やHS解説書だけでは、各国独自コードの中身までは把握できません。
各国追加桁は別物です。
通関業務従事者にとってのメリットとデメリットもはっきりしています。
メリットとしては、6桁HSを軸に各国コードを「マッピング」することで、マルチカントリー展開する荷主の税番管理を一元化でき、情報整理の手間を大幅に削減できます。
一方で、海外税番をそのまま日本申告に流用し続けると、HS基本ルールから外れた誤分類が蓄積し、後述の事後調査で5年分の追徴を受けるリスクが急速に高まります。
参考)HSコードの誤記とその法的リスク
リスクと効率の線引きが大事ですね。
税関事後調査の現場では、HSコードの妥当性が重点的にチェックされ、同業他社と異なるコードを継続使用している場合などは特に疑念が強まると指摘されています。[4]
実際の事例として、長年区分1で許可されていた品目について、事後調査でプラスチック塗布が判明し、過去の審査結果がすべて白紙となり、過去5年分の関税差額と過少申告加算税が追徴されたケースが報告されています。[3]
これを金額に置き換えると、年間数千万円規模の輸入がある企業では、5年分の税額差と加算税・延滞税を合計して、億単位の負担になることも珍しくありません。
痛いですね。
ここで重要なのは、「税関が一度許可したHSコードでも、後から誤りと判断され得る」という点です。
書類審査や目視検査の段階では分からなかった加工の有無や、材質構成の違いが、事後調査で帳簿・仕様書・製造プロセスの確認を通じて明らかになると、当初の審査結果は遡って修正されます。
参考)税関事後調査でHSコードの誤りから追徴課税になるケース – …
輸入者側は「税関のお墨付き」と考えていても、WCOのHS通則や解釈に照らして誤りと判断されれば、原則として過去5年分まで遡及されるのです。
つまり事後調査が本番です。
通関業者にとってのリスクも無視できません。
輸入者が追徴を受けた場合、通関業者に対し「専門家として適切なHSコードを選定すべき注意義務を怠った」として、損害賠償請求が提起される可能性があります。
金額だけでなく、荷主との信頼関係が大きく損なわれ、契約解消や取引縮小につながることも考えられます。
信用リスクも深刻です。
このリスクを抑えるための実務的な対策としては、次のような手順が有効です。
まず、HSの一般解釈通則(GIR1~6)とWCO解説書を踏まえ、自社で扱う主要品目については「なぜそのHSに該当するのか」を文書で説明できるレベルまで整理します。
次に、グレーゾーンと思われる品目や高額関税品については、税関への事前教示制度を積極的に活用し、公式な見解を取得しておくことで、後日の争いを最小化できます。
事前教示の活用が条件です。
近年、韓国税関庁(KCS)などでは、HSコードの候補を自動提案するAIモデルが開発され、通関担当者の意思決定を支援する試みが進んでいます。[6][5]
これらのモデルは、貨物のテキスト説明から最も可能性の高い6桁HSサブヘディングを提示し、その根拠となる過去事例や説明文を同時に示すことで、「なぜそのコードなのか」を説明可能な形で提供する設計になっています。[5]
また、画像情報とテキスト情報を組み合わせたマルチモーダル型のHS予測モデルも提案されており、特にEC貨物のように情報が雑多な分野での活用が期待されています。[11]
AI活用が新常識になりつつあります。
ただし、AIツールはあくまで補助的な存在であり、最終的なコード決定は現場の通関担当者がGIRとWCOルールに基づいて行う必要があります。
AIが提示した候補が誤っていても、「システムがそう出したから」という理由では、税関や裁判所の判断を覆すことはできません。
参考)Redirecting...
むしろ、AIに依存しすぎることで、担当者の分類スキルが低下し、イレギュラーな貨物や分類ルールの改正に対応できなくなる恐れもあります。
つまり過信は禁物です。
それでもAI・支援ツールを上手に使えば、通関実務の生産性を大きく高められます。
例えば、年間数千件レベルの品目分類を担当する部署では、AIで上位3候補のHSコードを提示させ、担当者はその中からGIRに照らして最終決定する運用を取ることで、1件あたりの検討時間を数分単位で削減できます。
参考)[2111.01663] Classification of…
また、過去の分類事例や裁決事例を検索・参照するオンラインツールを組み合わせれば、新任担当者でも一定レベルの分類品質を保ちやすくなります。
AIは時短ツールという位置付けです。
通関業務従事者としては、次のような活用ステップをイメージするとスムーズです。
まず、現在の分類プロセスのどこにボトルネックがあるか(貨物情報の収集か、類・項の絞り込みか、解釈通則の適用か)を洗い出します。
次に、そのボトルネック部分にマッチしたツール(テキスト解析型AI、類見出し検索ツール、過去事例DBなど)を1つだけ試験導入し、効果とリスクを検証します。
合わない場合は早めに見切り、社内の分類マニュアルや教育コンテンツの整備に予算を振り向けるのも一案です。
結論は段階導入が安全です。
WCOのHSは、原則5年ごとに見直しが行われ、世界の貿易構造の変化を反映した改正が繰り返されています。[8][7]
直近の改正では、環境関連機器や電子廃棄物、3Dプリンタ関連など、新しい産業分野に対応するコードが追加される一方、使用頻度の低いコードの統合・削除も行われています。[7]
この「改正サイクル」を追いかける姿勢があるかどうかで、通関現場の実務品質に数年単位の差が生まれます。
改正フォローこそ差別化要因です。
実務上ありがちな落とし穴は、「過去の資料をそのまま信じてしまうこと」です。
例えば10年前の社内マニュアルや、荷主が自社で作成した古い税番表をそのまま参照していると、すでに廃止されたHSコードや意味の変わったコードを使い続けてしまう危険があります。
結果として、税関事後調査で「改正後は別のコードに移管されているのに、旧コードを継続使用している」と指摘され、やはり5年分の遡及修正を求められる可能性があります。
古いマニュアルは要注意です。
そこで有効なのが、「HS改正カレンダー」と「コード移行表」の社内共有です。
WCOや各国税関はHS改正のたびに詳細な改正表・対照表を公開しており、日本税関もHS改正に合わせて国内税番表を更新します。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/bunrui_hs.htm
通関部門としては、改正のたびに主要品目の一覧を作成し、旧コードから新コードへの移行を確認する「棚卸し作業」を行うことで、見落としを大幅に減らせます。
棚卸しが基本です。
このプロセスを効率化するためのツール・サービスも検討に値します。
例えば、関税専門のコンサルティング会社や通関士事務所が提供する「HSコード見直し診断」「事後調査対策パック」などは、主要品目の分類を第三者の目でチェックし、リスクの高い品目を洗い出してくれます。
また、社内向けには税関やWCOの公開資料を元にしたeラーニングや勉強会を定期的に行い、改正ポイントを現場レベルで共有しておくと、個人依存のリスクを減らせます。
教育投資なら問題ありません。
最後に、公式情報源の活用も忘れてはいけません。
日本税関の「品目分類とHS」ページは、HS制度の概要や国内制度との関係を整理した基本資料として、社内研修にも使いやすい内容になっています。
また、WCOが発行するHS分類ハンドブックは、分類インフラ整備や実務運用のガイドとして、より高度なレベルでの参考になります。
公式資料を軸にすれば大きく迷いません。
日本税関のHS制度概要と実務ポイントを解説した公式ページです。HSの位置づけや国内税番との関係を確認するときに役立ちます。
税関「品目分類とHS」
WCOが発行するHS分類ハンドブックで、HSの構造、運用、分類インフラ整備の考え方が詳しく説明されています。高度な分類実務の参考になります。
WCO HS Classification Handbook