承認なしで輸入すると、法人には最大10億円の罰金が科されます。
輸入貿易管理令に基づく輸入承認制度には、いくつかの種類があります。通関業に従事していると「2号承認」という言葉はよく耳にするはずですが、「2の2号承認」との違いを正確に説明できるかどうかは別の話です。
2号承認は、特定の原産地または船積地域に係る貨物について、経済産業大臣の承認を必要とする制度です。言い換えると「どこから来たか」が規制の軸になります。例えば、北朝鮮を原産地とする全貨物、ロシアを原産地とするアルコール飲料、ウクライナのクリミア地域を原産地とする全貨物などが、この2号承認の対象となります。
一方、2の2号承認は「どこから来たか」ではなく「何であるか」が規制の軸です。地域に関わらず、貨物の種類そのものによって経済産業大臣の承認が必要になる制度です。つまり原産地・船積地域がどの国であっても、対象品目に該当する貨物であれば承認が必要になります。これが実務上で最も誤解されやすいポイントです。
規制の根拠となる条文も異なります。2号承認が輸入貿易管理令第4条1項2号に基づくのに対し、2の2号承認は同令第4条1項2の2号に基づきます。条文番号を見てもわかるとおり、後から独立した規制として追加されたものです。
覚えておきたいのはこの1点です。「地域で縛るのが2号承認、貨物で縛るのが2の2号承認」です。
対象品目のHSコード番号数で見ると、2の2号承認は関税率表上102品目にのぼります。一見多く感じますが、後述するとおり品目の性格ごとに整理するとスッキリ理解できます。
参考:経済産業省 輸入承認制度別一覧(各制度の根拠と対象品目を確認できる公式ページ)
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/04_kamotsu/02_import/import_seido.html
102品目というと膨大に聞こえますが、品目のカテゴリは大きく5つのグループに分けて理解するとわかりやすくなります。通関業務で遭遇する頻度が異なるため、それぞれの特徴を把握しておくことが実務上の精度につながります。
① 核・放射性関連品目
ウラン鉱およびトリウム鉱(精鉱を含む)、天然ウランおよびその化合物、ウラン235を濃縮したウランおよびプルトニウム、使用済みの原子炉用核燃料要素、原子炉本体・核燃料要素・部分品などが含まれます。HSコードで言えば2612、2844、8401などがここに該当します。エネルギー業界やアカデミック機関からの依頼があった場合は、真っ先に2の2号承認の確認が必要です。
② 火薬・武器類
火薬(HSコード3601)、爆薬(3602)、導火線・導爆線・雷管(3603)、軍用の武器(9301)、けん銃(9302)、その他の火器(9303)、戦車その他装甲車両(8710)、軍艦(8906)、軍用航空機(8802)などが含まれます。民間レベルでの輸入依頼がほぼ発生しない品目ですが、試験や研究目的での少量輸入依頼で問題になるケースも存在します。
③ 原子力設備関連品目
原子炉(8401.10)、核燃料要素(8401.30)、ジルコニウムの管(8109.91)、電離放射線の測定用・検出用機器(核燃料物質含有のもの)などがあります。プラント輸入案件などで資機材として含まれることがあり、見落としが発生しやすい領域です。
④ ワシントン条約・国際条約関連
ワシントン条約(CITES)の附属書Ⅰ・Ⅱに掲げる種に属する動物または植物およびその個体の一部・派生物、モントリオール議定書の附属書に定める物質および製品、化学兵器禁止法に定める第一種指定物質、水銀に関する水俣条約に定める水銀などです。HSコードが特定されないケースも多く、インボイスの品名から内容物を確認する必要があります。
⑤ その他の規制品目
石綿(アスベスト)は労働安全衛生法施行令で使用が禁止されており、2の2号承認の対象でもあります。大麻草、指定化学物質なども対象です。古い設備部品やヴィンテージ製品の輸入依頼で含有が判明するケースがあり、依頼主が知らないまま持ち込もうとする場面が現場では起こり得ます。
品目に迷ったときは、まず経済産業省の「申請が必要な貨物一覧」ページでHSコードを確認するのが基本です。
参考:経済産業省 輸入承認対象貨物一覧(HSコードと品目例を照合できる公式リスト)
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/04_kamotsu/02_import/import_kamotsu.html
2の2号承認の申請手順は、2号承認の場合と基本的な流れは同じです。ただし、割当制度(IQ)のように「輸入割当申請→割当証明書取得→輸入承認申請」という2ステップは必要なく、輸入承認申請1本で対応するのが原則です。
申請の流れを整理します。
| ステップ | 内容 | 窓口・ツール |
|---|---|---|
| ① | 対象品目の確認(HSコード・品名で2の2号対象かをチェック) | 経済産業省 輸入承認対象貨物一覧 |
| ② | 輸入承認申請書の作成 | NACCSパッケージソフト(IMLコード使用) |
| ③ | 必要書類の準備・添付 | インボイス・輸入契約書など品目ごとに異なる |
| ④ | 経済産業大臣あての電子申請 | NACCS外為法関連業務(無料) |
| ⑤ | 輸入承認証(電子ライセンス)の取得 | NACCSで通知・番号確認 |
| ⑥ | 税関への輸入申告時に電子ライセンス番号を申告 | 通関業者に電子ライセンス番号を連携 |
NACCSで経済産業省への申請が行える「外為法関連業務」は、利用料は無料です。ただしNACCSのパッケージソフトのインストールとデジタル証明書の取得が必要であり、パソコンの台数分だけデジタル証明書が必要になる点に注意してください。
申請様式のコードについては、輸入承認申請様式(2の2号承認含む)として「IML」コードを使用します。2号承認申請様式の「IMI」と混同しないよう確認が必要です。
電子申請できない品目も一部あります。ワシントン条約関連や一部の武器類など、書面による原本提出が必要な品目では電子申請に対応していないケースがあります。税関からの指示に従い、書類を審査担当窓口に郵送または持参する形になります。書面原本が必要かどうかの事前確認が、スムーズな通関のカギです。
また通関業者が荷主に代わり代理申請する場合は、申請者コードの取得が別途必要です。申請者コードは「V1xxxF0A」の形式で付与されます。すでにNACCSを利用している通関業者であっても、代理申請用のコードを持っていなければ申請が行えないため、新規案件前に確認しておく必要があります。
参考:経済産業省 NACCS外為法関連業務の概要(電子申請の手順と利用登録方法が解説されています)
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/05_naccs/naccs.html
通関業従事者が実務で最も注意すべきなのが、「一見して規制品と見えない品目」の見落としです。これは件数こそ多くないものの、発生した場合の影響が非常に大きくなります。
代表的な見落としリスクを3つ挙げます。
🔸 アスベスト含有建材・設備部品
石綿(アスベスト)は2の2号承認の対象品目です。新規製品についてはメーカーが含有を表示しているケースが多いですが、中古設備・ヴィンテージ製品・補修部品では含有が見えにくいという問題があります。製造年が1970〜1990年代の機械設備に含まれているケースが実際に報告されており、インボイスの品名だけを見て判断するのは危険です。輸入者が「アスベストが入っているとは知らなかった」では通関上の免責になりません。依頼主にMSDS(安全データシート)の提出を求めることで事前確認できます。
🔸 研究・学術目的の放射性物質
大学・研究機関からの依頼で、研究用途の放射性同位元素・ウラン化合物が含まれる案件があります。「少量だから」「学術目的だから」という理由では2の2号承認が免除されるわけではありません。承認は必要です。学術機関であっても手続きは同じで、対象品目である以上は必ず経済産業大臣の承認を取得した上で通関申告に進む必要があります。
🔸 ワシントン条約該当品の派生物・加工品
ワシントン条約の規制対象は、生きた動植物だけではありません。「個体の一部」「派生物」も規制対象に含まれます。象牙製品・べっ甲製品・毛皮・剥製・漢方薬に含まれる動植物成分(麝香・熊胆など)もその例です。工芸品として輸入依頼があった際に、素材の原材料まで確認しない場合に問題になります。輸出国政府発行のCITES輸出許可書の有無を確認するのが基本です。
2の2号承認の確認が必要かどうかは、HSコードの確認とインボイス記載の品名・素材の照合の両方を行うことが原則です。どちらか片方だけでは精度が落ちます。これが条件です。
参考:税関 ワシントン条約該当物品の輸入規制の概要(FAX資料として要点が整理されています)
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/pdf/FAX1808.pdf
2の2号承認が必要な貨物を無承認で輸入した場合、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく罰則が適用されます。これは「知らなかった」という事情が考慮されにくい領域です。
外為法の罰則規定は以下のとおりです。
| 対象 | 刑事罰(最大) |
|---|---|
| 個人(違反行為者) | 懲役10年 または 罰金3,000万円(もしくは輸入価格の5倍)、あるいは両方の併科 |
| 法人 | 罰金10億円(または輸入価格の5倍) |
痛いですね。「うっかり承認を取らなかった」という場合でも、悪意がなければ許されるわけではありません。外為法は結果責任の性格が強く、違反行為の事実そのものが問われます。
刑事罰に加えて、行政制裁として最長3年間の輸出入禁止処分が科されることもあります。通関業者が代理申請を行う立場であった場合、コンプライアンス体制が問われることにもなります。会社としての信用を大きく損なうリスクがあります。
違反が発覚するケースで多いのは、税関の審査・検査での発見です。税関は、経済産業大臣の指示に従い、通関時に輸入の承認を受けているかどうかを確認する義務を負っています(輸入貿易管理令)。輸入申告時に承認証が存在しない場合、税関が輸入許可を出せないだけでなく、違反として経済産業省に通報される流れになります。
2の2号承認の確認漏れはいわば「承認を取り忘れたまま本番に臨んだ」状態です。通関前の段階で発見できれば、まだ対応策があります。承認申請を行い、承認証を取得した上で輸入申告を行えば問題ありません。しかし通関申告後・輸入許可後に発覚した場合は、修正対応の範囲が格段に広がります。早期発見が最大のリスク低減策です。
外為法第69条の7では、「7年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金」として一段軽い罰則類型もあり、違反の態様によって適用条文が異なります。重大な輸出入管理違反(安全保障関連)になると10年・10億円の規定が適用されるため、対象品目の性格によってリスクレベルに差があることも理解しておく必要があります。
参考:東京商工会議所 外為法の概要と違反事例(具体的な違反事例と罰則を確認できます)
https://www.tokyo-cci.or.jp/international/outreach/column02/
知識として制度を理解していても、日々の実務で抜け漏れが出るのはオペレーションの問題です。以下のチェックポイントを案件受付の段階で確認する習慣をつけることで、承認漏れのリスクを大きく下げることができます。これは使えそうです。
🔍 ステップ1:インボイスの品名・成分の確認
荷主から受け取ったインボイスに記載された品名を確認します。「部品」「機械」「工芸品」などの大括りの記載になっている場合は、詳細な品名・素材・成分の確認を荷主に求めます。特に「含有物がある製品」については、MSDSやスペックシートの提出を求めることが有効です。
🔍 ステップ2:HSコードの確認と2の2号対象リストとの照合
インボイス情報をもとに適切なHSコードを特定し、経済産業省の「申請が必要な貨物一覧」に記載のHSコードと照合します。一致するコードが含まれる場合は、2の2号承認(または他の承認)が必要かどうかを確認します。
🔍 ステップ3:原産地・船積地域の確認(2号承認との重複チェック)
2の2号承認の対象品目であると同時に、特定地域からの輸入である場合は、2号承認も必要になるケースがあります。北朝鮮・ロシア・ウクライナ(一部地域)・シリアなどからの輸入は、品目によらず2号承認が原則必要です。2の2号と2号の両方が必要になるケースは見落としやすいため、ダブルチェックが必要です。
🔍 ステップ4:NACCSでの申請状況の確認
輸入承認申請が必要と判明した場合は、荷主に対して承認取得を案内します。通関業者が代理申請する場合は、申請者コードの確認と、NACCSへのデジタル証明書のセットアップ状況を事前に確認しておきます。電子ライセンス番号を取得したあとは、通関申告時に番号を正確に紐づけます。
🔍 ステップ5:書面原本が必要かどうかの確認
ワシントン条約関連品目など、電子申請に対応していない品目については、輸出国政府発行のCITES輸出許可書(原本)の有無を確認します。原本なしでは通関ができないため、船積み前から書類の入手状況を荷主に確認しておくことが重要です。
2の2号承認は件数こそ多くないかもしれませんが、一件でも見落とした場合のリスクが大きい分野です。「経験上こういう案件はない」という思い込みが、最も危険な思考パターンです。案件の属性によらず、一定の確認フローを仕組みとして持つことが、通関業従事者としての安定した業務品質につながります。対象品目の性格を理解し、確認の仕組みを整えておけば問題ありません。
参考:輸入貿易管理令(e-Gov 法令検索)(条文の原文を確認できる法令検索ページ。第4条1項2の2号の規定を直接参照できます)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000414/