外国為替及び外国貿易法とは何か?通関業務従事者が知るべき規制と罰則

外国為替及び外国貿易法(外為法)は、貿易取引や対外投資の管理・調整を行う法律です。通関業務に携わる方にとって、輸出入許可や安全保障貿易管理の知識は不可欠ですが、実は知らないと重大な損失につながる落とし穴が潜んでいることをご存知でしょうか?

外国為替及び外国貿易法とは

許可なしで輸出すると3年間輸出禁止になります

この記事の3ポイント
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外為法の基本的な役割

対外取引の管理・調整を行い、国際社会の平和と安全を維持するための法律。輸出入や投資、為替取引など広範囲をカバー

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通関業務での重要な規制

安全保障貿易管理(リスト規制・キャッチオール規制)と経済制裁による輸出入規制が主な柱。許可・承認が必要な取引を見極めることが必須

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違反した場合の重大なリスク

最大10年の拘禁刑、10億円の罰金、3年間の輸出禁止など厳しい処分。過失でも対象となり、「知らなかった」は通用しない

外国為替及び外国貿易法の目的と基本概念


外国為替及び外国貿易法(外為法)は、対外取引に対し必要最小限の管理・調整を行うことにより、対外取引の正常な発展や国際社会の平和・安全の維持を目的とした法律です。1949年(昭和24年)12月1日に制定された法律で、外国為替や外国貿易など、日本と外国との間の資金や財・サービスの移動、外貨建て取引の規制を定めています。
参考)外国為替及び外国貿易法 - Wikipedia


この法律の対象範囲は非常に広いです。
具体的には、貿易取引、対内投資、為替取引といったクロスボーダー取引全般が含まれます。通関業務従事者にとって最も関係が深いのは、輸出入の許可・承認制度と安全保障貿易管理の部分です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/fba5484b04c38c513d18e960b3677e48c2028e29

外為法は「熱海の老舗温泉旅館」のようだと表現されることがあります。これは、制定当初は為替管理だけを対象としていたものが、徐々に貿易管理や投資管理へと規制範囲を拡大してきた歴史があるためです。つまり増築に増築を重ねた結果、複雑な構造になっているということですね。​
外為法の規制対象は大きく4つに分類されます。支払等(3章)、資本取引等(4章)、対内直接投資等(5章)、外国貿易(6章)です。このうち通関業務に直接関わるのは主に第6章の外国貿易と、第4章の一部である役務取引等(技術提供)になります。​

外国為替及び外国貿易法が定める輸出入規制の仕組み

外為法に基づく貿易管理には、輸出管理と輸入管理の2つがあります。輸出管理は貨物の輸出だけでなく、技術の提供(役務取引等)も含まれる点が特徴です。一方、輸入管理は貨物の輸入のみを対象としています。​
輸出管理は3つのカテゴリーに分類できます。​
第一に、国際的な平和および安全の維持を目的とした安全保障貿易管理があります。これは外為法48条1項、25条1項などに基づいて実施されます。第二に、国連制裁や有志国による協調制裁、独自制裁を担保するための経済制裁目的の輸出管理です。第三に、水俣条約やバーゼル条約、ワシントン条約などの国際約束履行を目的とした輸出管理があります。​
特定の貨物の輸出入、特定の国・地域を仕向地とする貨物の輸出、特定の国・地域を原産地・船積地とする貨物の輸入などを行う場合には、経済産業大臣の許可や承認が必要となります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/bf91b6abaa67741985797ab2dee9344c750dc0e1


許可が必要な対象貨物および技術は、政令以下に細かく規定されています。貨物については「輸出貿易管理令別表第1」に、技術については「外国為替令別表」に記載され、さらに詳細なスペックは「貨物等省令」で特定されています。​

外国為替及び外国貿易法における安全保障貿易管理の重要性

安全保障貿易管理は、武器や軍事転用可能な貨物・技術が、国際社会の安全性を脅かす国家やテロリストなど懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐための制度です。日本をはじめとする主要国では、先進国を中心とした国際輸出管理レジームを作り、国際社会と協調して輸出管理を行っています。​
日本が参加する主な国際輸出管理レジームには、NSG(原子力供給国グループ)、AG(オーストラリア・グループ)、MTCR(ミサイル技術管理レジーム)、WA(ワッセナー・アレンジメント)の4つがあります。​
これらのレジームで合意された規制対象品目リストに基づいて各国が規制を実施します。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo02.html

安全保障貿易管理には「リスト規制」と「キャッチオール規制」の2種類があります。リスト規制は、輸出令別表第1の1~15項に該当する貨物、または外為令別表の1~15項に該当する技術を輸出・提供する場合、仕向地を問わず経済産業大臣の許可が必要になる制度です。
参考)安全保障貿易管理におけるキャッチオール規制:日本


キャッチオール規制は補完的な輸出規制です。リスト規制品目以外でも、大量破壊兵器や通常兵器の開発等に使用されるおそれがある場合には、輸出許可が必要になることがあります。食料や木材などを除く全ての貨物・技術が対象範囲です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/catchall.html

通関業務従事者にとって、該非判定(貨物や技術がリスト規制に該当するかどうかの判定)は極めて重要な作業になります。該非判定を誤ると、許可なしで輸出してしまい外為法違反となるリスクが高まります。
参考)該非判定|安全保障貿易管理上の輸出許可を取得する方法 |東京…

該非判定を行う際には、輸出令、外為令、貨物等省令、運用通達などを総合的に確認する必要があります。例えば輸出令別表第1の2項には「核燃料物質又は核原料物質」が規定されており、貨物等省令第1条でウラン・トリウム・プルトニウムなどの具体的な物質が列挙され、運用通達でさらに詳細な解釈が示されています。​
また、マトリクス表という一覧表を活用すると、政令・省令・通達をまとめて確認できるため、判定作業の効率化につながります。​
経済産業省の安全保障貿易管理ページ(リスト規制の詳細や貨物・技術のマトリクス表が掲載されています)

外国為替及び外国貿易法違反の罰則とその深刻さ

外為法違反に対する罰則は極めて厳しいものです。刑事罰としては最大10年以下の拘禁刑、個人には3,000万円以下の罰金、法人には10億円以下の罰金、またはこれらの併科が科されます。さらに行政制裁として、3年間の輸出禁止や社名公表といった措置が取られることもあります。
参考)https://timewell.jp/columns/excheck/foreign-exchange-law-violation-penalty


特に重要なのは、過失でも対象になるという点です。​
「知らなかった」「気づかなかった」という言い訳は通用しません。該非判定を怠った、許可申請を忘れた、といった過失による違反でも処分の対象となり得ます。また、時効がないため、過去の取引についても遡って責任を問われる可能性があります。​
外為法には行政制裁と刑事罰の両方が規定されています。行政制裁としては、輸出入の禁止などの措置が取られます。これは企業にとって事業継続に関わる重大なペナルティです。懲役などの刑事罰も併せて科される可能性があるため、違反を行った個人だけでなく、その所属する法人にも罰金刑が科されます。
参考)外国為替及び外国貿易法(外為法)の概要と違反事例 |東京商工…


過去の違反事例を見ると、2016年度から2020年度までの5年間で、対北朝鮮措置違反に係る行政措置が8件(輸出6件、輸入2件)実施されています。北朝鮮は安全保障の観点から日本と緊張関係が高く、違反時のレピュテーションリスクも極めて高い国です。​
北朝鮮に対しては、人道目的等の限定的な場合を除き、あらゆる品目の輸出入が禁止されています。そのため、直接取引だけでなく、北朝鮮周辺国との取引においても取引相手方のバックグラウンドチェック、輸出品の最終仕向地の確認、輸入品の原産地の確認を徹底する必要があります。​

外国為替及び外国貿易法の経済制裁と通関実務への影響

外為法は経済制裁の根拠法としても機能しています。日本が締結した条約や国際約束を履行するため、または国際平和のための国際的な努力に寄与するため、国連制裁や有志国による協調制裁を実施できます。さらに、日本の平和および安全の維持のため特に必要があるときは、閣議決定と国会承認を条件に独自制裁も実施可能です。​
現在日本が実施している独自制裁は北朝鮮制裁のみです。​
ただし国連制裁でも北朝鮮制裁が実施されており、厳密には国連制裁への上乗せ制裁が独自制裁として実施されている形です。日本が講じている経済制裁には、北朝鮮制裁、イラン制裁、ロシア制裁、中央アフリカ制裁、コンゴ民主共和国制裁など複数の制裁プログラムが存在します。​
各制裁プログラムの規制範囲は異なります。支払等・資本取引などの金融制裁しか実施していないもの、貨物の輸入のみを禁止しているもの、金融制裁に加えて貨物の輸出入を禁止しているものなど、バリエーションがあります。​
通関業務従事者は、取り扱う貨物の仕向地や原産地が経済制裁対象国に該当していないか、常に最新情報を確認する必要があります。財務省経済産業省のホームページで、日本が講じている経済制裁の内容を参照できます。​
ロシア制裁については、現時点で執行事例はないものの、G7において厳格な執行が合意されているため、今後活発な執行が行われる可能性があります。特に注意が必要ですね。​

外国為替及び外国貿易法遵守のために通関業務で取るべき対策

外為法違反を防ぐために、通関業務従事者は体系的な管理体制を構築する必要があります。まず重要なのは該非判定の徹底です。輸出入する貨物や提供する技術が、リスト規制に該当するかどうかを正確に判定する仕組みを社内に整備しましょう。
該非判定の精度を高めるには、専門知識を持った担当者の育成が不可欠です。
定期的に研修を実施し、最新の法令改正や規制品目の変更について情報共有を行うことが効果的です。また、判断が難しいケースについては、安全保障貿易情報センター(CISTEC)などの専門機関に相談する選択肢もあります。
安全保障貿易情報センター(CISTEC)の輸出管理用語集(外為法、輸出令、外為令などの略称と正式名称が確認できます)
キャッチオール規制への対応も重要です。リスト規制に該当しない貨物でも、用途や需要者によっては許可が必要になる場合があります。客観要件(大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれ)とインフォーム要件(経済産業大臣からの通知)の2つの要件を理解し、該当する可能性がある取引については事前に確認を行いましょう。​
取引相手のスクリーニングも欠かせません。輸出先や輸入元が経済制裁対象の個人・団体に該当していないか、定期的にチェックする体制を整えます。北朝鮮のようにフロント企業や迂回輸出・迂回輸入を通じて制裁を逃れようとする事例もあるため、周辺国との取引でも警戒が必要です。​
記録の保存と管理も重要なポイントです。該非判定の根拠資料、許可申請書類、取引先とのやり取りなど、輸出入に関する一連の記録を適切に保管しておくことで、万が一当局から問い合わせがあった場合にも適切に対応できます。外為法違反には時効がないため、過去の取引記録も長期間保管しておく必要があります。​
社内コンプライアンス体制の構築には、輸出管理責任者の設置、社内規程の整備、定期的な監査の実施などが含まれます。経済産業省が公表している「輸出者等遵守基準」を参考に、自社の管理体制を見直すことが推奨されます。
このような体制整備により、違反リスクを大幅に低減できます。通関業務に携わる全員が外為法の重要性を理解し、日々の業務で遵守意識を持つことが、企業全体のリスク管理につながるのです。




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