軍事転用 輸出規制の基本と実務ポイント

通関業務で見落としがちな軍事転用リスク。日常品でも輸出規制対象になることをご存じですか?違反すると最大10年の懲役や3000万円の罰金も。知らないと会社の信用を失う重要ポイントを解説します。

軍事転用 輸出規制の概要

日常的に扱う貨物が許可なし輸出で10年の懲役対象になります

この記事の3つのポイント
⚖️
リスト規制とキャッチオール規制

武器だけでなく民生品も軍事転用可能なら輸出許可が必要。食品や木材以外はほぼ全品目が対象になる可能性があります

🚨
違反時の罰則は最大10年の懲役

核兵器関連なら10年以下の懲役または3000万円以下の罰金。法人には最大10億円の罰金が科されます

📋
通関業務従事者が確認すべき項目

品目のスペック、仕向地、需要者、用途の4点セット確認が基本。ホワイト国向けでも用途次第で許可が必要です

軍事転用 輸出規制とは何か


軍事転用 輸出規制とは、武器や大量破壊兵器の開発に使われる可能性がある貨物や技術の輸出を、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて管理する制度です。日本は国際平和と安全保障の維持を目的に、経済産業省が中心となってこの規制を運用しています。
参考)輸出管理の基礎


規制の対象は武器そのものだけではありません。民生用の製品や技術であっても、軍事目的に転用できる「デュアルユース品目」は規制対象になります。たとえば工作機械、測定装置、化学物質、半導体など、私たちが日常的に扱う貨物の多くが該当する可能性があります。
つまり規制対象は広範囲です。
通関業務従事者にとって重要なのは、この規制が「知らなかった」では済まされない点です。輸出者は自らの責任で貨物や技術が規制対象かどうかを判断し、必要に応じて経済産業大臣の許可を取得しなければなりません。違反すれば刑事罰や行政制裁の対象となり、企業の存続に関わる事態に発展します。
参考)輸出管理の基礎


国際輸出管理レジームという国際的な枠組みに日本も参加しており、先進国が協調して軍事転用可能な物資の拡散を防いでいます。この枠組みに基づいて、日本の外為法では「リスト規制」と「キャッチオール規制」という二つの柱で輸出を管理しています。

軍事転用のリスク対象となる品目

リスト規制では、輸出貿易管理令(輸出令)別表第1の1~15項に具体的な品目が列挙されています。1項は武器そのもので、銃器、爆発物、推進剤などが該当します。2項から15項は大量破壊兵器関連と通常兵器関連に分かれており、原子力関連、化学兵器、生物兵器、ミサイル、先端材料、工作機械、エレクトロニクス、コンピュータ、通信機器、センサー、航法装置、海洋関係、推進装置など多岐にわたります。
参考)用語解説

一見すると軍事とは無関係に見える品目も含まれています。たとえば数値制御工作機械、ロボット、半導体製造装置、高性能カメラ、暗号装置、加速度計、ジャイロスコープなどです。これらは民生用としても広く使われる汎用品ですが、軍事転用の可能性があるため厳格に管理されています。
どういうことでしょうか?
日常的に輸出される貨物でも、スペック次第でリスト規制に該当する場合があります。たとえば赤外線カメラは中国への無許可輸出で罰金100万円と3ヶ月の輸出禁止処分を受けた事例があります。磁気測定装置や誘導炉も違反事例として報告されています。
参考)中小企業の製品や機密情報が軍事転用されるリスクについて


さらにキャッチオール規制では、リスト規制に該当しない品目でも、食品や木材などを除くほぼすべての貨物が対象になります。これは用途や需要者の観点から軍事転用の危険性があると判断される場合に適用されます。つまり通常の民生品であっても、使われ方次第では許可申請が必要になるということです。
実務では「マトリックス表」と呼ばれる一覧表で品目とスペックを照合します。このリストはほぼ毎年更新されるため、最新の法令に基づいた確認が必須です。​
経済産業省:リスト規制品目の詳細とQ&A

輸出規制違反の罰則と行政処分

外為法違反の罰則は非常に厳しく設定されています。核兵器等またはその開発等のために用いられるおそれが特に大きい貨物や技術を無許可で輸出した場合、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。目的物の価格の5倍が3000万円以上の場合、罰金の上限は5倍の額になります。
参考)外為法違反 - 企業犯罪・不祥事対応は、コンプライアンス専門…

それ以外の兵器や技術でも7年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金、またはその両方です。個人だけでなく法人も処罰対象で、核兵器関連の場合は10億円以下、それ以外は7億円以下の罰金が科されます。
参考)コラム


厳しいところですね。
刑事罰に加えて行政制裁もあります。経済産業省は違反企業に対して、一定期間の輸出禁止措置を課すことができます。たとえば3ヶ月間の全貨物・全地域への輸出禁止という処分もあり、これは企業の事業活動を直撃します。
違反事例として、納期を早めるために許可なく輸出した案件や、少額特例を悪用して規制対象品を分割輸出した事例があります。前者は個人の判断ミス、後者は意図的な脱法行為ですが、いずれも厳しい処分を受けました。
最近では中国籍者がエヌビディア社製AI用半導体を中国へ無許可で迂回輸出した容疑で逮捕・刑事告訴された事例も報告されています。半導体のような高度技術品は特に監視が強化されており、違反すれば即座に摘発される状況です。
参考)CISTECジャーナル

罰則だけでなく、社会的信用の失墜も大きなデメリットです。違反企業は取引先から敬遠され、ビジネスチャンスを失います。国際的な信用も損なわれ、グローバル展開が困難になる恐れがあります。
違反を防ぐには社内の輸出管理体制の構築が必須です。輸出管理責任者の選任、規程の整備、従業員教育、定期的な監査などを組織的に実施することで、リスクを最小化できます。​
安全保障貿易情報センター:違反事例の詳細レポート

キャッチオール規制の仕組みと対象国

キャッチオール規制は、リスト規制に該当しない品目でも、用途や需要者によって輸出許可が必要になる制度です。大きく「大量破壊兵器キャッチオール規制」と「通常兵器キャッチオール規制」の2種類があります。
大量破壊兵器キャッチオール規制では、輸出管理を厳格に実施している「ホワイト国(現在はグループA)」以外への輸出が対象です。貨物や技術が核兵器等の開発等に用いられるおそれがあると輸出者が知った場合、または経済産業大臣からインフォーム通知を受けた場合、許可申請が必要になります。
参考)リスト規制とキャッチオール規制について教えてください。


ホワイト国(グループA)には、アメリカ、カナダ、EU諸国などが含まれます。これらの国への輸出はキャッチオール規制の対象外となります。ただし大量破壊兵器の開発等に用いられる場合には、ホワイト国向けでも許可が必要です。
つまりホワイト国なら安心ではありません。
通常兵器キャッチオール規制は、国連武器禁輸国・地域への輸出と、それ以外の地域でも通常兵器の開発等に用いられるおそれがある場合に適用されます。後者の場合、経済産業大臣からインフォーム通知を受けた時点で許可申請が必要です。​
実務上重要なのは「用途要件」と「需要者要件」の確認です。用途要件では、貨物や技術が大量破壊兵器や通常兵器の開発、製造、使用に使われる可能性があるかを判断します。需要者要件では、受領者が過去に大量破壊兵器を開発したことがあるか、軍事関係機関かどうかを確認します。​
これらの判断は輸出者の責任で行います。取引先の情報、資本関係、最終用途を詳細に調査する必要があります。疑わしい場合は経済産業省に相談するのが安全策です。
キャッチオール規制には例外措置もあります。食品、木材、事務的な文書などは対象外です。また特定の条件を満たせば許可申請を省略できる「特例」も設けられています。ただしこの特例は大量破壊兵器等の開発等に用いられる場合には適用できません。

通関業務従事者が見落としやすいポイント

通関業務従事者が最も見落としやすいのは、民生品の軍事転用リスクです。一見すると普通の工業製品でも、スペックや用途によっては規制対象になります。たとえば高性能カメラ、工作機械、測定機器、化学薬品などは、日常的に輸出される品目ですが、軍事転用の可能性が常にあります。
もう一つのポイントは「技術の提供」も規制対象という点です。貨物の輸出だけでなく、設計図、製造ノウハウ、ソフトウェアなどの技術情報を外国人に提供する行為も、外為法の管理対象になります。メールでの技術データ送付、外国人研究者への研修、共同研究なども該当する可能性があります。
参考)https://www.kyoto-u.ac.jp/contentarea/ja/research/export/documents/pamphlet130314.pdf


どういうことでしょうか?
留学生への技術指導も注意が必要です。大学や研究機関では、留学生に対して技術提供を行う際、輸出管理条項を契約に盛り込むことが推奨されています。大量破壊兵器への転用を行わないという確約を取ることで、リスクを減らせます。​
仕向地の確認も重要です。輸出先がホワイト国(グループA)でも、最終需要者が第三国にいる場合や、再輸出される場合には注意が必要です。また仲介貿易取引といって、日本を経由せず外国間で直接貨物が移動する取引でも、日本企業が関与すれば許可が必要なケースがあります。
少額特例の悪用も違反につながります。規制対象品を複数回に分けて輸出し、1回あたりの金額を少額特例の範囲内に収めて許可を逃れる行為は、明確な違反です。実際にこの手法で摘発された事例があり、罰金刑が科されています。​
意外ですね。
最新の法令改正への対応も見落としやすい点です。リスト規制の対象品目は毎年見直され、新たに追加される品目もあります。2025年10月にも改正が行われており、常に最新情報をチェックする必要があります。
米国再輸出規制(EAR)との関係も複雑です。米国原産品や米国技術を一定以上含む製品を日本から再輸出する場合、外為法だけでなく米国の輸出管理規則にも従う必要があります。これを見落とすと、日本だけでなく米国からも制裁を受けるリスクがあります。​
これらのリスクを回避するために、通関業務従事者は以下の4点セットを必ず確認すべきです。第一に品目のスペック(リスト規制該当性)、第二に仕向地(ホワイト国か否か)、第三に需要者(軍事関係機関か否か)、第四に用途(軍事転用の可能性)です。これらを組織的にチェックする体制を整えることが、違反防止の基本です。
安全保障貿易情報センター:安全保障輸出管理制度の詳細

軍事転用リスク回避のための実務対策

輸出管理体制の構築は、企業規模に関わらず必須です。まず輸出管理責任者を選任し、社内規程を整備します。規程には、貨物・技術の該非判定手順、許可申請のフロー、取引審査の基準、違反時の対応などを明記します。​
該非判定は輸出管理の第一歩です。輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、リスト規制に該当するかを確認します。メーカーから該非判定書を取り寄せるか、自社で経済産業省のマトリックス表と照合します。判断が難しい場合は、経済産業省に事前相談することも可能です。
取引審査では、取引先の信用調査が重要です。需要者の事業内容、資本関係、過去の取引実績などを確認し、軍事関係機関でないかをチェックします。疑わしい兆候(用途が不明確、支払条件が異常、連絡先が私書箱など)があれば、取引を見合わせるか経済産業省に相談します。
納期管理も違反防止のポイントです。納期に間に合わないからといって、許可申請を省略して輸出してはいけません。許可申請には通常数週間から数ヶ月かかるため、余裕を持った納期設定が必要です。顧客には事前に許可申請の必要性を説明し、納期に余裕を持たせる交渉が求められます。
従業員教育は継続的に実施します。営業、貿易、技術、経営層すべてに輸出管理の重要性を周知し、違反のリスクとペナルティを理解させます。特に新入社員や異動者には、導入研修を必ず行います。年に1回以上の定期研修も効果的です。
これは使えそうです。
記録の保管も法令上の義務です。該非判定書、許可申請書類、取引審査記録、契約書、インボイスなどは、輸出後も一定期間保管します。監査や検査の際に提示を求められることがあるため、整理して保管する必要があります。​
経済産業省や安全保障貿易情報センター(CISTEC)が提供する情報やセミナーを活用することも有効です。最新の法令改正情報、違反事例、実務のベストプラクティスなどが入手できます。特にCISTECの図説資料「軍事転用可能な民生品」は、具体的な品目を写真付きで解説しており、社内教育に役立ちます。
参考)図説:軍事転用可能な民生品 -通常兵器関連品目編-


輸出管理は面倒に感じるかもしれませんが、違反すれば企業の存続に関わります。刑事罰や行政制裁だけでなく、取引先からの信用失墜、ビジネス機会の喪失など、長期的なダメージは計り知れません。逆に適切な管理体制を構築すれば、コンプライアンス企業として取引先からの信頼を得られ、ビジネスチャンスが広がります。
組織全体で輸出管理に取り組む姿勢が、リスク回避の鍵です。トップのコミットメント、部門横断の協力体制、継続的な改善活動が、実効性のある輸出管理を支えます。​
海外への輸出が制限される?安全保障のための輸出管理規制とは




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