デュアルユース スピンオフ技術と輸出管理の実務

軍民両用のデュアルユース技術において、軍事技術が民間転用されるスピンオフの事例や通関業務上の注意点を解説します。輸出許可や該非判定のミスが重大な処罰につながる現実を、あなたはご存知ですか?

デュアルユース スピンオフとは

通関業務でスピンオフ技術を扱うと輸出許可なしで最高10年の懲役になります。

この記事の3つのポイント
🔄
デュアルユースとスピンオフの基礎

軍事技術が民生転用されるスピンオフの仕組みと、通関業務における規制対象品目の判別方法を理解できます

⚖️
輸出管理上の重大リスク

該非判定ミスや無許可輸出による罰則は最高10年の懲役・1000万円の罰金で、企業は5年間輸出許可申請不可となる実例を紹介します

📋
実務で使える対策手順

リスト規制と取引審査の3ステップ、誤輸出時の自己申告フローなど、現場で即活用できる管理手法を解説します

デュアルユース スピンオフ技術の定義


デュアルユースとは、軍事と民生の両方の分野で利用できる技術や製品、サービスを指します。この用語は安全保障貿易管理の文脈で頻繁に使われ、通関業務従事者にとって正確な理解が必須です。
参考)デュアルユース|サイバー/デジタルリスクNavi [用語集]


スピンオフは、もともと軍事目的で開発された技術が民生用に転用されるケースを意味します。20世紀、特に1980年代まではスピンオフの事例が多く、国家レベルで研究・開発された軍事技術が私たちの生活を便利で豊かにすることに役立てられてきました。
参考)軍事技術のデュアルユース:国内外民生転用(スピンオフ)篇|後…


つまりスピンオフが基本です。
一方で、民生品のために開発されたものを軍事に応用するケースは「スピンオン」と呼ばれます。産業IT化が加速した1990年代以降、とりわけ21世紀入り後はスピンオンの事例が激増し、民生技術と軍事技術の区別が困難化しています。通関業務では、どちらのケースも外為法に基づく輸出管理規制の対象になる可能性があるため注意が必要です。
参考)301 Moved Permanently


日本国内では外国為替及び外国貿易法(外為法)によって、特定の貨物・技術は「キャッチオール規制」で包括的に管理され、経産省の許可が必要になる場合があります。輸出の際には、商品が規制対象かどうかを判断する「該非判定」を行い、必要に応じて許可を取得することが求められます。
参考)軍民両用技術(デュアルユース)とは? - アラウンド・ザ・ワ…


デュアルユース スピンオフの具体例

軍事技術から民生技術に転用されたスピンオフの例には、腕時計やボールペン、保存食の缶詰などがあります。これらは現在では日常生活に欠かせない製品となっています。
参考)防衛装備で注目されるデュアルユース製品

GPS技術もスピンオフの代表例です。JAXAでは高速飛行実証機の航法装置開発時に蓄積されたGPS技術を基盤とし、気象観測や海難救助のための「GPS式波浪計測システム」として製品開発され、気象庁が石廊崎沖、室戸沖で利用した実績があります。
参考)https://www.jaxa.jp/press/2005/06/20050629_sac_spinoff_at01.pdf

これは使えそうです。
通信機器、炭素繊維、半導体製造装置などもデュアルユース品目として知られています。通信機器はミサイルの制御に、炭素繊維は戦闘機の機体に、半導体製造装置は軍事用ICチップの生産に使用可能なため、輸出時には厳格な審査が必要です。​
工作機械はウラン濃縮用遠心分離機の製造に、シアン化ナトリウムは金属めっき工程で使われる一方で懸念用途がある例として挙げられます。赤外線カメラの中国への無許可輸出では罰金100万円と3ヶ月の輸出禁止、誘導炉のイランへの無許可輸出でも処罰された事例があります。
参考)中小企業の輸出管理に関する体制構築の支援について(中小企業等…

デュアルユース スピンオフと輸出管理規制の関係

デュアルユース品目の輸出には、リスト規制とキャッチオール規制という2つの規制体系が存在します。リスト規制は、輸出令別表第1に記載された貨物や技術を規制対象とし、これらを輸出する際には経済産業大臣の許可が必要です。
参考)外為法に違反せずに技術のやり取りをする方法 事例学習の方法も…


該非判定は、輸出しようとする貨物や技術がリスト規制に該当するかを確認する作業です。リスト規制品に関する技術を外国の者(非居住者)に提供する場合や、提供する技術の用途や需要者にキャッチオール規制における懸念が認められる場合は、その提供に際して事前の許可が必要です。
参考)デュアルユースとは何か?安全保障貿易管理の観点から品目例も解…


〇〇が条件です。
海外出張、技術研修などの技術のやり取りも輸出管理規制の対象になることがあります。技術は「設計」「製造」「使用」に分類され、外国において特定技術を提供することを目的とする取引や、居住者から非居住者への技術提供には外為法25条1項に基づく許可が求められます。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/security_trade_control/pdf/guide/202401_v2.pdf


中国では「輸出管理法」第19条および「デュアルユース品目輸出管理条例」第21条で、輸出貨物の荷主またはその代理人として通関を行う企業がデュアルユース品目を輸出する際には、商務部が交付した輸出許可証を提出し、審査を受けることが義務付けられています。通関申告時に当該貨物の輸出許可証を取得していない場合や、別のロットの貨物の輸出許可証を提出した場合には「無許可輸出」とみなされ、処罰の対象になるおそれがあります。
参考)https://www.jtn.com/JP/news_content.aspx?Lan=JPamp;MenuID=05004amp;KeyID=00000000000000009468

経済産業省「安全保障貿易管理ハンドブック」
リスト規制やキャッチオール規制の詳細について、経済産業省が公開している公式ハンドブックで基礎から学べます。

デュアルユース スピンオフと通関業務の注意点

通関業務でデュアルユース品目を扱う際、該非判定のミスは重大な法的リスクにつながります。外為法違反は、ケースによっては最高で10年以下の懲役、1000万円以下の罰金が科される重大なものです。
参考)輸入規制対象品を誤って輸出した場合の法的リスクと実務対応|n…

社会的信用の失墜も避けられません。
輸出管理規制には該非判定、取引審査、出荷管理という3つの手続きがあります。該非判定でリスト規制に該当すると判断された場合、次に用途の確認と需要者等の確認を行う取引審査が必要です。用途がミサイル開発など懸念用途である場合や、需要者が軍事組織など懸念需要者である場合には、輸出許可の取得が求められます。
参考)海外への輸出が制限される?安全保障のための輸出管理規制とは|…


2024年に中国で実施された行政処罰の事例では、輸出先を偽って申告したケース(C社を輸出先として申請・取得した輸出許可証で輸出申告し、実際にはD社向けに輸出した)や、輸出代行業者が委託された貨物が両用品目であり輸出許可証を未取得であることを見逃したケースで、税関による行政処罰として警告が与えられ、8万6000元の制裁金が科されました。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b41ddf5b802238e1/20250007_02.pdf

中国の「デュアルユース品目輸出管理条例」では、違法収入がない場合またはその額が50万元未満の場合、30万元以上300万元以下の罰金を科すとされています。国務院の主管商務部門は、処罰決定の発効日から5年以内に提出される包括許可の申請や輸出証書の取得を禁止できます。
参考)【中国】両用品目輸出管理条例及び両用品目輸出管理リスト


デュアルユース スピンオフに関する誤輸出時の対応

規制対象品を誤って輸出した場合、速やかに上司・法務・貿易管理部門へ報告することが最優先です。輸出の全工程(どの品目が、いつ、だれが、どこへ、どのように)を洗い出し、貨物の現状(未出荷・在庫・移動中・到着済み)を把握します。​
結論は自己申告です。
早い段階で行政(経済産業局等)への自己申告および相談を行い、事実関係を整理したうえで然るべき行政対応をとることが肝心です。黙って隠し通そうとすれば、後々もっと大きな制裁や社会的非難につながります。​
輸出事業者、輸入業者が両用品目の輸出に懸念がある状況を発見した場合、直ちに輸出を停止して国務院の主管部門に報告し、かつ検査に協力しなければなりません。最終需要者または最終用途の管理要求に違反する場合、国家の安全と利益を害するおそれがある場合、両用品目がテロリズムの目的に用いられる場合は、特に厳格な対応が求められます。​
厳しいところですね。
誤輸出による法的リスクには、外為法違反による刑事責任(個人・法人ともに)、輸出入停止等の行政処分、社会的信用の失墜(プレスリリースや報道による風評被害)、得意先・関係先との契約違反や損害賠償責任などがあります。​
関税法上の両罰規定により、法人の代表者または法人の代理人、使用人その他の従業者がその法人の業務または財産について違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対してもそれぞれの条の罰金刑を課することとされています。許可を受けないで輸出入する等の罪(関税法112条)や用途外に使用する等の罪(関税法112条の2)などが該当します。
参考)関税法上の両罰規定について

一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)「中国輸出管理法に係る両用品目輸出管理条例」
中国の輸出管理法における再輸出規制やみなし輸出規制など、日本企業が注意すべき法律事務所の解説が参照できます。
📊 該非判定書の準備フロー
通関業務において該非判定書を準備する際は、以下の手順を確認してください。


  • ステップ1:製品仕様書と輸出令別表第1を照合し、リスト規制該当性を判断

  • ステップ2:該当する場合は用途・需要者を確認し、キャッチオール規制の適用を検討

  • ステップ3:必要書類(該非判定書、用途誓約書等)を準備し、経済産業省へ許可申請

経済産業省は、中小企業の機微な製品・技術の流出を防ぐ目的で、2019年より中小企業の輸出管理に関する体制構築の支援を目的とした事業(中小企業等アウトリーチ事業)を実施しています。​
いいことですね。
少額特例とは、一定の範囲の貨物の中で、貨物の種類ごとに定められた一定の価格以下のものについて、リスト規制に該当する場合であっても許可を不要とする制度です。ただし、この特例が適用されるかどうかは品目と価格によって異なるため、事前に確認が必要です。​
🌐 国際的なデュアルユース規制の動向
近年、国際的な安全保障環境の変化に伴い、デュアルユース品目の規制は強化される傾向にあります。
EUでは2021年6月11日に改訂版「デュアルユース品目輸出管理規則(EU 2021/821)」が発行され、同年9月9日に施行されました。この規則は2009年に導入された既存の輸出管理法規を置き換え、管理範囲をさらに拡大しています。
参考)http://www.clausiuspress.com/assets/default/article/2023/03/24/article_1679669892.pdf

中国では2024年11月に、米国型の再輸出規制を導入したデュアルユース品目管理条例が施行されました。輸入業者やエンドユーザーが規定された期限内に検証に協力せず、関連する証明資料を提出しなかったことで、エンドユーザーやエンドユースを確認できなくなった場合、国務院の商務主管部門は関係する輸入業者やエンドユーザーを注視リストに加えることができるとされています。
参考)中国、デュアルユース品目で米国型の再輸出規制を導入、エンドユ…

注視リストに掲載された輸出事業者と最終需要者は、包括許可の申請や輸出証書の取得が禁止され、個別許可を申請する場合には注視リストに掲載された輸入業者、最終需要者のリスク評価報告を提出し、輸出管理法令及び関連要求を遵守することを誓約しなければなりません。​
痛いですね。
さらに中国の条例では、国務院の商務主管部門の同意なしに、中国の公民、法人、その他の組織は、外国政府が行う輸出管理に関する現場訪問あるいは審査を受け入れることを承諾する、あるいは受け入れてはならないとするコンプライアンス要求が設けられています。外国政府の輸出管理上の現地訪問・検証を受ける場合の事前遵法義務が明確にされており、商務主管部門の同意を取得することが求められます。
参考)https://www.cistec.or.jp/service/china_law/20220701.pdf

🔒 技術提供時の特別な注意事項
物の輸出だけではなく、技術の提供も輸出管理規制の対象になります。技術は「設計」「製造」「使用」に分類され、リスト規制品に関する技術(リスト規制技術)を外国の者(非居住者)に提供する場合や、提供する技術の用途や需要者にキャッチオール規制における懸念が認められる場合は、その提供に際して事前の許可が必要です。​
海外出張の際の製品や技術資料の持ち出し、海外からの技術研修生の受け入れの場合にも、輸出管理規制の対象となることがあるので要注意です。外国において特定技術を提供することを目的とする取引には、外為法25条1項に基づく海外での技術指導や討議、技術開発会議等が含まれます。
〇〇には期限がありますだけ覚えておけばOKです。
中国の条例では、入国後にメンテナンスや試験または検査を行い、合理的な期限内に輸出地の前エンドユーザーに再輸送する場合、または出国後にメンテナンスや試験または検査を行い、合理的な期限内に国内へ再輸送する場合には、一定の配慮がなされることがあります。
参考)最新: 『デュアルユース品目輸出管理規制条例』の公布 &l…

もし取引相手の輸入業者、エンドユーザーが国務院主管部門の「注目リスト」や「管理コントロールリスト」に組み入れられた場合、現地輸出企業はデュアルユース品目の輸出を個別許可のみに限定されるか、輸出取引に制限や禁止が課される可能性があります。​
意外ですね。
デュアルユース品目の輸出管理は、安全保障貿易管理の中核をなす重要な業務です。通関業務従事者は、該非判定から取引審査、出荷管理まで一連の手続きを正確に理解し、法令遵守を徹底することが求められます。誤輸出による罰則は個人・法人ともに極めて重く、社会的信用の失墜や輸出禁止措置など長期的な影響を及ぼします。日々の業務では、製品仕様と規制リストの照合を丁寧に行い、疑義がある場合は必ず上司や法務部門に相談する体制を整えることが不可欠です。




[ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ] DUAL PACK 2.0 1B V カーディガンジャケット -セットアップ対応 ウォッシャブル マルチ機能- 12221441806 1950 DK.GRAY(19) M