経済産業省が主務官庁だと思っていても、海産物を輸入すると農林水産省が管轄になります。
ワシントン条約(CITES)では、各締約国が輸出入許可書や証明書を発給する権限を持つ「管理当局」を指定することが義務付けられています。日本では、一般的な輸出入(海からの持ち込みを除く)については経済産業省が、海からの持ち込みについては農林水産省が管理当局として指定されています。
参考)環境省_ワシントン条約とは|ワシントン条約と種の保存法
管理当局は、輸入承認証や事前確認書を発給する実務を担当します。経済産業省の場合、貿易経済安全保障局 貿易管理部 野生動植物貿易審査室(通称ワシントン室)が窓口となり、申請から発給までは通常5営業日程度かかります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_im.html
つまり輸入形態で窓口が変わります。
この二元的な体制は、海洋資源の管理と陸上貿易の管理という専門性の違いを反映したものです。海産物や海からの持ち込みについては、水産資源の専門知識を持つ農林水産省が対応することで、より適切な判断が可能になっています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_about.html
科学当局は、種の存続の観点から輸出入に関して管理当局に助言を行う機関です。日本では、陸上動物については環境省、植物及び主な水棲動物については農林水産省が科学当局として指定されています。
参考)ワシントン条約に基づく輸出入規制:日本
具体的には、カリフォルニアラッコ、アシカ科、アザラシ科、クジラ目、海牛目、ウミガメ科、オサガメ科、魚類、軟体動物門については水産庁が担当します。植物のうち草本類については農林水産省本省、木本類については林野庁、それ以外の陸上動物は環境省という分担になっています。
参考)https://www.jtef.jp/img_showcase/showcase_suggest_05_d.pdf
この分担が基本です。
科学当局の助言は、種の保護という条約の目的を達成するために不可欠なプロセスです。管理当局は科学当局の助言を踏まえて、輸出入許可書の発給可否を判断します。
参考)https://www.env.go.jp/content/900515967.pdf
通関業務従事者にとって重要なのは、ワシントン条約該当物品については通関手続きのできる税関官署が限定されている点です。税関では、水際取締りの実効を確保するために、該当物品に係る輸入通関官署を限定し、これらの官署に専担者を配置しています。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/washington/washington.htm
輸入申告の際には、CITES輸出許可書(または再輸出証明書)と、種によっては経済産業大臣からの「輸入承認証」または「事前確認書」を税関に提出しなければなりません。CITES輸出許可書の有効期限は発行日から6か月後となっており、この期限までに必ず税関に輸入申告する必要があります。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1808_jr.html
期限厳守が原則です。
申請に際しては、動植物種の学術名(ラテン語表記)を正確に伝えることが求められます。初めて申請される場合は、申請内容の確認や修正に時間を要することもあるため、早めの申請が推奨されています。
ワシントン条約に違反した場合、個人には最大5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される可能性があります。法人が違反した場合には、最大1億円の罰金が科される可能性もあります。
参考)ワシントン条約に違反するとどうなる?国際輸送のトラブル事例か…
違反の重大性によっては、行政処分として輸出入の差し止めや、税関からの指導が入るケースもあります。貨物を輸出する際には、規制対象かどうかを確認し、対象製品の輸出は事前の許可取得が必須です。
参考)ワシントン条約の概要と注意点
これは重いところですね。
もし税関から規制対象物品の含有を指摘された場合、まず違反内容を正確に把握することが必要です。どの貨物が規制対象であったか、必要な手続きが行われていなかった理由を明確にし、輸出に関与した取引先や関係者全体からヒアリングを行うことが求められます。
参考)ワシントン条約に違反してしまった場合
ワシントン条約のより適切な履行を図るため、日本では「ワシントン条約関係省庁連絡会議」が設置されています。この会議は、議長役の環境省をはじめ、経済産業省、農林水産省、水産庁、林野庁、財務省、外務省、厚生労働省などの関係省庁間の協議の場として機能しています。
参考)https://www.env.go.jp/earth/coop/coop/document/07-ttmncj/07-ttmncj-34.pdf
この連絡会議が設置された背景には、1997年のクアラルンプールでの締約国会議における非難決議がありました。この会議を契機として、関係省庁が留保問題などについて協議する体制が整備されました。
協議の場が重要です。
現在、日本はワシントン条約の締約国として、2023年から2025年までの3年間で年平均約51万4,558米ドル(分担率約7.8%)を事務局に拠出しており、米国、中国に次ぐ第3位の拠出国となっています。この高い分担率は、日本が条約履行において重要な役割を担っていることを示しています。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/page23_004072.html
外務省国際協力局地球環境課は、条約の解釈に関する窓口として機能しており、通関業務に関する疑問が生じた場合の相談先となっています。
参考)ワシントン条約所管官庁リスト:トラフィックイーストアジアジャ…
経済産業省 ワシントン条約(CITES)ページ
輸入承認手続きの詳細や申請フォーム、FAQ等が掲載されており、実務上の疑問を解決するための参考リンクです。
環境省 ワシントン条約と種の保存法
科学当局としての環境省の役割や、対象種の詳細について解説されています。
税関 ワシントン条約
通関手続きにおける注意点や、通関可能な税関官署のリストが確認できます。