EUへの輸出品でCO2排出量を未申告だと課税される。
地球環境問題は、通関業務や貿易実務に直接的な影響を及ぼすようになっています。2023年10月から、EUに輸出する企業は製品のCO2排出量(カーボンフットプリント)を報告する義務を負い、2026-2027年には炭素価格に基づく課税額の支払いが始まります。EU内で生産された商品よりもCO2排出削減が不十分な場合、炭素国境調整メカニズム(CBAM)により課金が予定されており、環境に配慮できていない商品はEU圏内で安く販売できなくなります。
参考)脱炭素時代の貿易戦略:カーボンフットプリントとグリーン物流で…
国際貿易は各国の需要と供給を結びつけていますが、環境コストが市場価格に適切に反映されていないという問題があります。つまり環境負荷が見えにくいということですね。国際輸送に伴うCO2排出量は膨大で、貿易量の増大とともに環境負荷も増加しています。日本のCO2排出量の約20%が運輸部門に関連しており、特にトラック輸送が多くを占めるため、その削減が求められています。
参考)https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h12/12082.html
通関業務従事者にとって、これらの環境規制への対応は避けて通れません。カーボンフットプリントの算定・申告体制を整えないと、輸出先での課税リスクや通関遅延が発生する可能性があります。申告内容に誤りがある場合、税関による事後調査で不足額の徴収や罰則が科されることもあります。環境規制が貿易制限を伴うケースも増えており、実務上の注意が必要です。
参考)カーボンフットプリントの義務化をめぐる動向を徹底解説!海外・…
地球環境問題への対策として、各国が環境規制を強化しています。特にEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、輸入品に対して炭素価格に相当する賦課金を課す制度です。現在の対象品目は「鉄鋼」「セメント」「肥料」「アルミニウム」「電力」の5品目ですが、今後範囲が拡大される予定です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto/3_dispute_settlement/32_wto_rules_and_compliance_report/322_past_columns/2021/2021-3.pdf
この制度により、気候変動対策の強度が異なる国同士の製品でも、コスト競争の条件が合わせられます。自国からの輸出に対して水際で炭素コスト分の還付を行う場合もあります。環境規制への対応が不十分な企業は、価格競争力を失うリスクがあるということですね。
参考)301 Moved Permanently
国際輸送は大量のCO2を排出しており、港湾や物流拠点での排出削減が重要視されています。トラック、船舶、航空機を利用する物流業界は、特に注視される対象です。輸送距離が長くなるほど環境負荷は増大し、国際分業が進むほど貨物が最終消費者に届くまでの距離も増加します。これは避けられない構造です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10028761/
貿易実務においては、環境規制への対応が遅れると、通関手続きでの遅延や追加コスト発生につながります。書類不備や申告漏れは、輸入許可の遅れや罰則の対象となる可能性があります。関税法第111条では、許可を受けずに貨物を輸出入した者は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれを併科すると規定されています。厳しいところですね。
参考)中越瓦版第11号 輸出入通関における申告外貨物について|中越…
カーボンフットプリント(CFP)とは、製品のライフサイクル全体における気候変動への環境影響を表す指標です。製品の製造から輸送、使用、廃棄までの全工程で排出されるCO2量を数値化したものです。通関業務従事者は、この算定データを輸出申告時に提出する必要が生じています。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/004_05_00.pdf
CFPの算定には、サプライチェーン全体でのデータ収集が不可欠です。原材料の調達、製造工程、輸送手段、エネルギー消費など、多岐にわたる情報を集約する必要があります。取引先にCO2排出量の算定を強いるケースも想定されるため、中小企業でも無理なく算定可能な方法の確立が求められています。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/001_04_00.pdf
算定方法には国際的な基準が存在し、製品カーボンフットプリント(PCF)ガイドラインなどが参考になります。ライフサイクル影響評価(LCIA)の手法を用いて、気候変動という環境影響カテゴリに対する影響を評価します。つまり統一基準があるということですね。
参考)https://www.tfs-initiative.com/app/uploads/2025/05/TfS-PCF-Guideline-JP.pdf
カーボンフットプリントの申告が不十分だと、EU輸出時に課税負担が発生します。2023年10月から報告義務が始まり、2026-2027年には実際の課税が開始される予定です。対応を急がないと、輸出コストが増大し競争力を失う可能性があります。これは使えそうです。
算定体制を整えるには、社内でのデータ収集ルールの確立、取引先との情報共有体制の構築、専門ツールやサービスの活用が有効です。経済産業省や関連団体が提供するガイドラインを参考に、段階的に対応を進めることが推奨されます。経済産業省のカーボンフットプリント資料では、算定方法の詳細が解説されています。
グリーン物流とは、環境負荷を低減しながら効率的な物流を実現する取り組みです。CO2排出量の削減、輸送効率の向上、再生可能エネルギーの活用などが含まれます。通関業務に関わる企業にとって、グリーン物流への転換は避けられない課題となっています。
参考)グリーン物流とは?CO2排出量削減でESG経営を実現!
具体的な取り組みには、以下のようなものがあります:
モーダルシフトは特に効果的な手段です。ネスレ日本では、全国3工場から顧客への配送をトラック輸送から鉄道と船舶を利用した輸送に一部切り替え、CO2排出量の大幅削減に成功しました。関東-関西間の幹線輸送では、路線便による小口輸送と比較して約30%のCO2排出量削減ができた事例もあります。結論は大型化と集約化です。
グリーン物流の推進には、荷主と輸送事業者の連携が不可欠です。貨物輸送を発注する荷主においても対策が必要で、モーダルシフトや共同輸配送への取り組みには荷主の関与が不可欠です。環境規制の強化や社会要請に応じた取り組みは、コスト削減、企業イメージ向上、競争力強化、ESG投資の誘致につながります。
参考)https://www.daiwahouse.co.jp/business/logistics/dplletter/column/005.html
政府も支援策を打ち出しています。「物流総合効率化法」に基づく税制優遇・補助金、グリーン物流パートナーシップ推進事業、グリーン経営認証制度などがあります。経済産業省の貿易と環境に関する資料では、炭素国境調整措置とWTOルールの整合性について詳しく解説されています。
環境規制は今後さらに強化される見込みです。EUのCBAMは対象品目を拡大する方針で、輸入品に対する環境基準も厳格化されていきます。国際海運においても、国際海事機関(IMO)は2050年までに船舶からの温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減する目標を掲げています。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/12/8/3220/pdf
通関業務従事者は、これらの規制動向を常に把握し、実務に反映させる必要があります。カーボンフットプリントの算定・申告体制を整え、グリーン物流への対応を進めることが、今後の競争力維持に直結します。カーボンフットプリントの表示を急ぐあまり、取引先に過度な負担を強いることは避けるべきですが、段階的な準備は必要です。
環境規制への対応が不十分だと、以下のようなリスクが生じます:
参考)輸送トラブルのリアル:なぜ通関で貨物が止まるのか?その裏側と…
これらのリスクを回避するには、社内体制の整備が急務です。カーボンフットプリント算定のためのデータ収集体制、取引先との情報共有ルール、専門知識を持つ人材の育成などが必要です。外部の専門サービスを活用することも有効な選択肢です。
国際貿易における環境影響の研究も進んでいます。排出集約度の高い国から低い国への生産活動の移転が、世界全体のCO2排出量増加につながっているとの指摘もあります。貿易を通じた経済活動の拡大が自然資源の破壊を助長し、天然資源の枯渇や環境影響を引き起こすという問題も認識されています。意外ですね。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10906309/
通関業務の現場では、環境規制への対応が新たな業務として定着していきます。従来の関税分類や評価申告に加えて、カーボンフットプリントの算定・申告が標準業務となる日は近いでしょう。環境対応が不十分な企業は市場から排除されるリスクがあるため、早期の体制構築が競争優位につながります。ジェトロのCBAM解説資料では、EU炭素国境調整メカニズムの詳細が日本語で提供されています。
通関業務従事者が今すぐ取り組むべき対策は、情報収集と社内体制の整備です。まず、自社が扱う品目がCBAMの対象に含まれるか、今後含まれる可能性があるかを確認します。現在は鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力の5品目が対象ですが、拡大が予定されています。
次に、カーボンフットプリント算定のための準備を始めます。製品のライフサイクル全体でのCO2排出量を把握するには、以下のデータが必要です:
これらのデータを取引先から収集する仕組みを構築することが第一歩です。サプライチェーン全体での協力が不可欠なため、取引先との情報共有体制を整えます。中小企業でも対応可能な簡易算定ツールの活用も検討します。
グリーン物流への転換も並行して進めます。輸送コストとCO2排出量の両方を削減できるモーダルシフトは、優先的に検討すべき施策です。トラック輸送を鉄道や船舶に切り替えることで、CO2排出量をトラック比で鉄道1/7、海運1/4に削減できます。関東-関西間の幹線輸送では、約30%の削減実績があります。これは必須です。
共同配送の検討も有効です。複数企業の荷物を一括輸送することで、輸送回数を減らし、積載効率を向上させることができます。これにより燃料費削減とCO2排出量削減の両方を実現できます。荷主と輸送事業者が連携して取り組むことで、効果が最大化されます。
通関手続きでの書類不備を防ぐことも重要です。カーボンフットプリントの申告が義務化された場合、申告内容に誤りがあると通関遅延や罰則の対象となります。税関による事後調査で不足額の徴収や指導を受ける可能性もあります。申告外貨物が見つかった場合、関税法第111条により5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれを併科される可能性があります。痛いですね。
参考)税関の事後調査:日本
実務対応のチェックリストとして、以下の項目を確認します:
✅ 自社取扱品目がCBAM対象か確認済み
✅ カーボンフットプリント算定に必要なデータ項目を特定済み
✅ 取引先へのデータ提供依頼の仕組みを構築済み
✅ 算定ツールまたは外部サービスの選定済み
✅ モーダルシフトの可能性を検討済み
✅ 共同配送の機会を探索済み
✅ 社内の環境対応責任者を明確化済み
✅ 最新の環境規制情報を入手する仕組みを構築済み
これらの対策を段階的に進めることで、環境規制への対応力が高まります。早期に体制を整えた企業は、競争優位を確保できるでしょう。環境対応は今やコストではなく、投資として捉えるべき時代です。ESG投資の観点からも、環境配慮型の企業が評価される傾向が強まっています。
政府の支援制度も積極的に活用します。物流総合効率化法に基づく税制優遇や補助金、グリーン物流パートナーシップ推進事業、グリーン経営認証制度などが利用可能です。鈴与のグリーン物流コラムでは、具体的な取り組み事例が紹介されており、実務の参考になります。
環境規制は年々厳格化しており、対応の遅れは事業継続リスクに直結します。通関業務従事者は、従来の関税・貿易実務に加えて、環境対応の知識とスキルを身につける必要があります。社内研修の実施や外部セミナーへの参加、専門資格の取得なども検討する価値があります。これからの時代、環境対応力が通関業務従事者の必須スキルになることは間違いありません。