環境規制一覧世界の通関業務で知るべき規制物質と罰則

世界各国の環境規制は通関業務において最も重要な確認項目の一つです。EUのREACHやRoHS、中国版RoHSなど、国ごとに異なる規制物質と罰則を体系的に整理し、通関トラブルを未然に防ぐための実践的な知識を解説します。あなたの通関業務は本当に安全ですか?

環境規制一覧世界の通関業務

環境規制を知らずに申告すると100万円の罰金になります。

この記事で分かること
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世界の環境規制の全体像

EU、中国、アメリカなど主要国の環境規制と規制物質を国別に整理

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通関業務での違反リスク

規制物質の申告漏れによる罰金や懲役などの具体的な罰則内容

実務での確認方法

HSコード判定から成分確認まで、トラブルを防ぐチェック手順

環境規制の世界的な増加と通関業務への影響


世界各国で環境規制が急増しています。2020年以降だけでも300を超える環境関連規制が施行され、通関業務に直接影響を与える状況です。
参考)[特集 世界のESG規制]気候変動や人権など新ルールが2倍超…

これは通関業務従事者にとって見逃せない変化です。
環境規制は気候変動、生物多様性、循環型経済、人権、情報開示など多岐にわたります。特にEUを中心とした先進国では、化学物質管理から炭素排出量まで、輸入品に対する要求が年々厳格化しているのです。
通関時の申告では、製品に含まれる規制物質の有無を正確に把握する必要があります。法令知識の欠如により、規制があることを知らず成分把握や該非判定を行わないケースが違反事例の大半を占めています。新たに輸出入を始める製品については、メーカーからSDS(安全データシート)などの製品情報を入手し、規制物質が含有されていないか確認することが重要です。​

環境規制一覧の主要地域別の規制体系

環境規制は地域ごとに異なる法体系を持っています。
**EU(欧州連合)**では、REACH規則、RoHS指令、WEEE指令、ELV指令、包装廃棄物指令などが中心となります。REACH規則は化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則で、EU市場で統一的に適用されます。REACH規則は規則(Regulation)であるため、発効すると各国における立法措置は不要で直接適用される点が特徴です。RoHS指令は電気電子機器における特定有害物質の使用制限を定めており、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどが規制対象となっています。
参考)EU RoHSなどの環境規制 - NECA 制御技術のポータ…


中国では独自の環境規制体系が整備されています。中国版RoHS、環境保護法、気候変動対策など、日系企業のサプライチェーンにも重大な影響を及ぼす規制が存在します。
参考)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/guide/asia_environment.pdf

アジア諸国でも環境規制の整備が進んでいます。韓国のグリーン建築物造成支援法、シンガポールのカーボンプライシング法、タイのエネルギー保全推進法など、各国が独自の規制を導入しているのが現状です。​
アジアでは制度整備に向けた議論が活発です。

環境規制で規制される主な化学物質一覧

通関業務で特に注意すべき規制物質があります。
RoHS指令の対象物質として、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、六価クロム(Cr6+)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)が制限されています。これらの物質は電気電子機器に含まれることが多く、通関時の申告で見落としやすい項目です。
参考)Q656.REACH規則とRoHS指令の関係性について

REACH規則では、高懸念物質(SVHC)として数百種類の化学物質が段階的に追加されています。年間1トン以上の化学物質をEU域内で製造または輸入する事業者は登録義務を負います。​
日本の特定有害廃棄物等の輸出入規制では、アンチモン、ヒ素、ベリリウム、カドミウム、鉛、水銀、セレン、テルル、タリウムなどの金属類とその化合物が規制対象です。これらは合金や成分として含まれる場合も規制されるため、製品の組成を詳細に確認する必要があります。
参考)https://www.env.go.jp/en/recycle/asian_net/Country_Information/Law_N_Regulation/Japan/Matters_listed_in_Article_3-JP.pdf

意外なのは、試薬や医薬品原料にも規制物質が含まれることです。無水酢酸などの麻薬等原材料に指定されている成分が、製造工程で使用する試薬に含まれていた事例があります。​
つまり全成分の確認が必須です。

環境規制違反の通関業務における罰則内容

通関業務での環境規制違反には厳しい罰則が科されます。
日本の関税法では、虚偽書類提出等の各種手続違反に対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されています。通関業法では、業務改善命令違反に対して1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
タイの事例では、2017年関税法改正により罰則体系が明確化されました。密輸に対しては輸入関税支払い後の物品価格の4倍の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方が科されます。関税支払い回避の場合は納付不足額の0.5~4倍の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方となります。禁制品・規制品の無許可輸入については50万バーツ(約200万円)以下の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方が適用されるのです。
参考)違反行為を細分化、罰則はおおむね軽減−新関税法のポイント(3…

申告の不備だけでも罰金対象になります。​
通関士に対する懲戒処分として、通関業務従事の停止または禁止処分に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。これは個人に対する処分であり、通関士資格を持つ従事者は特に注意が必要です。
参考)https://ameblo.jp/rlvvisole/entry-12281361820.html

中国では環境汚染犯罪に対する罰則が強化されており、罰金刑だけでなく懲役刑も科される事例が増えています。環境法の抑止効果を高めるため、罰則の厳格化が進んでいるためです。
参考)https://www.mdpi.com/1660-4601/19/22/14745/pdf?version=1668662339

環境規制一覧の通関実務での確認手順

通関トラブルを防ぐには事前確認が不可欠です。
まずHSコード(関税分類コード)の正確な判定を行います。HSコードの誤りは関税率変更、FTA無効化、追加税発生につながります。類似品のコードを流用するのは危険で、製品ごとに正確な分類が求められます。​
次に規制物質の成分確認を実施します。メーカーや仕入先からSDS(安全データシート)、成分表、カタログ仕様書を入手し、規制物質の含有状況を把握します。特に初めて取り扱う製品や、成分変更があった製品については、必ず最新情報を確認することが基本です。​
規制品に該当する場合は必要な許可を事前取得します。医療器具、食品、化学品などは、輸入許可が必要にもかかわらず未取得で差止となるケースがあります。経済産業省厚生労働省、動植物検疫所などの関係機関に事前相談することで、トラブルを回避できます。​
書類の記載内容も重要な確認ポイントです。インボイスへのHSコード記載、原産地証明書の署名・HSコード一致、梱包明細の正確性など、書類不備は申告保留や修正指示の原因となります。​

環境規制の最新動向と炭素国境調整措置

EUでは2023年から炭素国境調整措置(CBAM)が始動しました。これは域外諸国からのセメント、アルミ、肥料、電力、水素、鉄鋼の輸入について、製品当たり炭素排出量に基づく証書の購入(輸入課金)を求める制度です。
参考)https://faportal.deloitte.jp/institute/report/articles/000897.html


現在は移行期間で、2026年から本格実施される予定です。欧州委員会は2025年にCBAM対象製品を追加するかの評価を行う予定で、有機化合物やポリマーなどカーボン・リーケージが高い製品の追加が想定されています。​
通関業務への影響は大きいです。
日本のねじ・ボルト等業界では、CBAM対応による炭素排出量の報告が求められることが想定されており、経済産業省委託事業で算定ガイドラインが作成されました。通関時に製品の炭素排出量データを添付する必要が生じる可能性があります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/cbam/cbam.html

船舶燃料の硫黄酸化物(SOx)規制も2020年に強化されました。マルポール条約により、船舶燃料に含まれるSOx濃度を抑制する規制が改定され、海上運賃にLSSチャージ(低硫黄燃料サーチャージ)が追加されるケースが増えています。これは運送コストに直接影響するため、通関業務でも輸送形態の確認が重要になっているのです。
参考)貿易における環境保護条約について |貿易コラム|株式会社HP…

中国やインドなどの新興諸国はCBAMについて懸念を表明しています。EEA域内事業者には2034年まで無償排出枠があることから、これを域内産業保護としてWTO違反を指摘する声もあり、今後の国際的な議論が注目されます。​
経済産業省のCBAM解説ページには、最新の対象品目と算定方法が掲載されています
税関の罰則一覧では、関税法違反の具体的な罰金額と懲役期間を確認できます
JETROの環境規制Q&Aでは、EU規制の最新動向と実務対応が詳しく解説されています




環境リスク規制の比較政治学:日本とEUにおける化学物質政策 (MINERVA人文・社会科学叢書)