通関業者に委託しているのに、消費税の仕入税額控除を通関業者側に取られてしまうことがあります。

輸入許可証とは、税関に輸入(納税)申告を行い、関税・消費税等を納付した後に税関長から交付される公的な許可文書です。 正式には「輸入許可通知書」とも呼ばれ、英語では「Import Declaration(I/D)」と表記されます。 この文書は単なる手続き完了の証明書ではなく、消費税の申告において仕入税額控除を受けるための証憑書類として機能する点が実務上の最大のポイントです。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1101_jr.htm)
消費税法上、輸入品にかかる消費税(輸入消費税)は、保税地域から課税貨物を引き取る際に課税されます。 課税標準は、CIF価格(運賃・保険料込み価格)に関税およびその他の個別消費税額を加算した合計額です。 つまり、関税が高くなるほど消費税の計算基礎も膨らむ構造になっています。 nta.go(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6563.htm)
輸入消費税の仕入税額控除を受けるためには、国内取引で使う適格請求書(インボイス)ではなく、税関から交付された輸入許可書等の保存が条件です。 海外サプライヤーが発行した仕入インボイスを証憑として使おうとする誤りが実務では頻発しますが、これは認められません。 輸入取引はあくまで税関で課税されるため、控除の根拠は税関証憑に限られます。 note(https://note.com/quirky_violet490/n/n2697f95cbb9e)
国税庁タックスアンサーNo.6563 輸入取引にかかる消費税の解説(国税庁公式)
輸入消費税の仕入税額控除ができるのは、原則として輸入申告名義人のみです。 これは消費税法第30条に基づくルールであり、保税地域から課税貨物を引き取った者=輸入申告書に名義人として記載された者が、控除の権利を持ちます。 skadvisory(https://skadvisory.jp/import_tax_jct_deduction/)
問題が生じやすいのが、荷受人が通関業者に輸入通関を委託するケースです。もし輸入申告書や輸入許可書の「輸入者欄」が通関業者の名義になっていると、仕入税額控除の権利は通関業者側に移ってしまいます。 つまり、委託した荷受人(本来の輸入事業者)は、支払った輸入消費税相当額を自社の申告で控除できないという事態になります。これは痛いですね。 m-accounting-firm(https://m-accounting-firm.com/consumption-tax/yunyuushouhizei-to-shiirezeigakukoujo/)
| 輸入申告書の名義人 | 仕入税額控除ができる者 | 注意点 |
|---|---|---|
| 荷受人(自社) | 荷受人(自社)✅ | 通常のケース。問題なし |
| 通関業者 | 通関業者のみ⚠️ | 荷受人は手数料部分のみ控除可 |
| 製造者名義(関税法規定) | 実質的輸入者(消基通11-1-6) | 一定要件を満たせば例外あり |
例外規定として、消費税法基本通達11-1-6では「実質的な輸入者」が輸入申告名義人と異なる場合でも、一定の3要件をすべて満たせば仕入税額控除が認められます。 その3要件とは、①実質的な輸入者が輸入後に有償で課税貨物を譲り受けること、②消費税額・地方消費税額を実質的な輸入者が負担すること、③輸入申告者名義の輸入許可書と消費税等領収証書の原本を保存することです。原本の保存が条件です。 tax-sos.co(https://www.tax-sos.co.jp/news_tax/1686.html)
輸入消費税の仕入税額控除ができるのは輸入申告名義人(SKアドバイザリー、実務解説)
輸入消費税の課税標準の計算式は以下のとおりです。
CIF価格は運賃(Freight)と保険料(Insurance)を含む価格です。 国内仕入れの場合と異なり、輸送コストや保険料も消費税の計算基礎に入る点は意外と見落とされがちです。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000915.html)
少額輸入の場合、課税価格の合計額が1万円以下の物品については、関税と消費税が免税になります。 ただし、酒税やたばこ税など消費税以外の内国消費税が課される品目については、この免税は適用されません。また、1インボイスに係る貨物を意図的に分割して申告しても、インボイスに記載された全貨物の課税価格を合計して判断されます。この1万円免税ラインは条件が厳しいということですね。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1006_jr.htm)
なお、郵便物の場合は、1つの包装に梱包された輸入貨物の課税価格合計が1万円以下のものに限り免税が適用されます。 同一差出人から同一名宛人へ分散して郵送されたものは合算されるため注意が必要です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1006_jr.htm)
輸入消費税の計算方法と免税・非課税措置の詳細解説(インフォマート)
通常の輸入通関では、輸入申告と同時に関税・消費税を納付しなければ輸入許可を受けられません。 しかし、輸入頻度が高い事業者にとって毎回の即時納付は資金繰りの負担になります。これを解消するのが特例申告制度(特例輸入者制度)です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1101_jr.htm)
特例輸入者または特例委託輸入者に認定されると、貨物の引取申告と納税申告を分離できます。 輸入許可は先に取得し、1ヶ月分の関税・消費税をまとめて翌月末日(特例申告書の提出期限)に申告・納付する方式です。さらに、特例申告書の提出期限から最大2ヶ月の納期限延長が認められています。 つまり、輸入許可日が5月1日の場合、最終的な納付期限は8月31日まで延ばせる計算になります。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1302_jr.htm)
落とし穴は、特例延長を利用する際に期限内に延長申請書を提出しなければ延長が認められない点です。 申請を失念すると通常の納期限が適用され、延滞税が発生するリスクがあります。延長申請の期限管理は必須です。また、消費税の延長には関税の納期限延長申請と同時に行う必要があります。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010821.html)
納期限延長制度のメリット・デメリットと実務上の注意点(フォーサイト)
輸入申告後に税額の計算誤りや申告価格の過大記載が発覚した場合、泣き寝入りする必要はありません。関税法上、更正の請求によって過払いの関税および消費税の還付を受けられます。 更正の請求が認められる期限は、輸入許可日から5年以内(特例申告貨物の場合は特例申告書の提出期限を基準とする)です。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-011227.html)
手続きの流れは次のとおりです。
更正の請求が認められると、納付すべき関税があればまずそれに充当し、残余分が過払い関税として消費税・還付加算金(利息相当額)とともに金銭で還付されます。 還付加算金が付くということですね。これは使えそうです。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-011227.html)
逆に、申告額が過少だった場合は修正申告が必要です。 修正申告は自主的に行う場合と税関から更正処分を受ける場合とで加算税の扱いが異なります。税関の事後調査で発覚するよりも、自主的に修正申告を行う方が加算税率が低く、経済的なダメージを最小化できます。また、還付請求権の消滅時効は5年であるため、過去の輸入履歴に遡れる余地があります。通関業従事者として、依頼主の過払いに気づいたときは5年の期限を念頭に置いて対応することが重要です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1305_jr.htm)