転送サービスだから通関は関係ない、と思っていませんか?20万円超の荷物を申告なしで発送すると、関税法違反になります。
楽天グローバル エクスプレス(以下、RGX)は、楽天が運営する楽天公式の海外配送代行(転送)サービスです。利用者は楽天市場をはじめAmazon・Yahoo!ショッピングなど日本国内の通販サイトで購入した商品を、RGXが運営する国内倉庫(埼玉県)にいったん集約したうえで、海外の受取人に国際発送します。
通関業従事者の視点から見ると、このサービスは「転送業者が輸出者の役割を担う」構造になっています。つまり、エンドユーザー(海外在住の購入者)が輸出を直接行うわけではなく、RGXが荷主に代わって輸出手続きの実務を担います。これは業務フローを考えるうえで重要な前提です。
RGXの配送方式は大きく4種類に分かれています。
| 配送方式 | 目安日数 | 主なキャリア |
|---|---|---|
| スーパーエクスプレス | 2〜5日 | DHL・FedEx |
| スタンダードエクスプレス | 5〜10日 | 日本郵便(EMS相当) |
| エコノミーエア | 7〜14日 | 日本郵便・ECMS・SF Express |
| 船便(Surface) | 60〜90日 | 日本郵便 |
スタンダードエクスプレスで米国に1kgの荷物を送る場合、送料は6,350円程度です。船便なら4,290円ほどになりますが、90日という期間は実務上ほとんど使われません。
サービスの利用は楽天会員IDがあれば開始できます。ただし犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく本人確認(KYC)が義務づけられており、本人確認書類の提出が完了しない限り梱包依頼も発送依頼もできない仕組みになっています。つまり「誰でも匿名で使える転送サービス」ではありません。通関業従事者として依頼人に説明する際には、この本人確認の存在を前提に案内する必要があります。
複数店舗からの購入品を1つにまとめる「おまとめ梱包」は無料で提供されています。これが送料節約の主な手段となっていますが、通関上は「1つの荷物としての申告価格合計」が問われます。まとめることで課税評価額が高くなるケースがある点は、依頼人への説明で欠かせない情報です。
楽天グローバル エクスプレス 公式:ご利用のながれ(基本フローと配送方式の詳細)
通関業従事者が最も注意すべき点の一つが、輸出申告の義務発生ラインです。関税法第76条の規定により、内容品の合計価格が20万円を超える国際郵便物(EMS・国際小包・小形包装物など)を海外へ発送する場合、税関への輸出申告と輸出許可の取得が必要になります。
RGXも同様のルールに従っており、内容品価値が20万円を超える荷物の輸出通関申告の代理・代行には別途2,800円の手数料が発生します。この2,800円という金額は日本郵便が郵便物の輸出申告代行に設定している手数料と同額であり、業界標準の水準です。
20万円という金額は、感覚的につかみにくいかもしれません。例えばハイエンドのカメラ本体1台で20万円を超えることはよくありますし、複数商品の「おまとめ梱包」をした場合、1点ずつは5〜6万円程度でも4点まとめると超過するケースがあります。合計金額で判定される点を見落としやすいので注意が必要です。
申告が必要な荷物で申告を怠ると関税法違反となります。これは「知らなかった」では通らない部分です。通関業者として依頼人の荷物の価格合計を確認する習慣を持つことが、トラブル回避につながります。
また、クーポン値引き後の金額がインボイスおよび輸出通関申告の申告価格として使用されるという点も見落とされがちです。RGXは2023年以降、「発送時のインボイス書類や出荷ラベルに商品金額の記載がある場合は、クーポン値引後の金額を記載する」と明示しており、輸出・輸入通関の申告もクーポン値引後の金額で行われます。元の定価ではなく実際の支払い額が申告価格になる、という運用です。
日本郵便 公式:内容品の合計価格が20万円を超える郵便物の輸出申告手続(関税法第76条の根拠とフロー)
RGXで送れない商品には大きく2つのカテゴリがあります。法律・条約によるもの(爆発物・麻薬・ワシントン条約対象品など)と、輸送上の安全規制によるもの(リチウム電池関連、アルコール25%超の酒類など)です。
通関業従事者として実務上重要なのは「送れない理由」を正確に把握することです。RGXは依頼人の申告に基づいて荷物を受け入れますが、内容確認の結果、禁制品と判定された荷物は「保留中のお荷物」としてマイページに表示され、依頼人は国内転送・返品・廃棄のいずれかを選択しなければなりません。
特に注意が必要なのが、国別に禁制品が異なるケースです。食品は「アマゾングローバルが対応していないが楽天グローバル エクスプレスなら送れる」と認識されている場合が多いですが、米国向けに限ってはFDA規制のため食品・飲料の発送は受け付けていません。これは多くの依頼人が誤解しているポイントです。通関実務の現場でよく見られる「食品なら転送でOK」という思い込みを、正確な情報で上書きしておくことが重要です。
禁制品だとわかったタイミングが「輸出後」だった場合は最悪です。輸入国の税関で没収・廃棄となり、RGXは「補償や代替対応の案内はできない」と明示しています。通関が失敗しても送料は返還されません。禁制品の確認は発送依頼前が原則です。
楽天グローバル エクスプレス 公式:海外に配送できない商品(禁制品一覧と注意事項)
2023年9月1日より、RGXはEU加盟国をはじめとする対象国・地域向けの荷物に対し、ユーザーに代わってHSコードの振り分けを実施するようになりました。これは「統計品目表」に従ったもので、対象国はアイスランド・アイルランド・イタリアをはじめドイツ・フランス・スペイン・スウェーデンなど主要EU加盟国をほぼ網羅しています。この対応は無料で行われており、ユーザーが自分でHSコードを入力する必要はありません。
ただし、通関業従事者として理解しておきたいのは、この「代替的なHSコード付与」が適切かどうかを依頼人側からは確認する手段がほぼないという点です。RGXがシステム的に統計品目表を参照して付与するとはいえ、品目分類の適切さについてユーザー側で検証することはできません。分類誤りがあっても輸出申告が通ってしまうケースもあり、後日輸入国の税関での問題につながるリスクは残ります。
EU向けHSコードの義務化は、2023年のEU税関規則改正(Import Control System 2 = ICS2の第3フェーズ)に連動した動きです。国際的な越境EC規制の強化が進むなか、転送サービス事業者にも品目分類の責任が求められるようになっています。
通関業従事者として依頼人に伝えるべき視点は、「RGXがHSコードを付けてくれるから安心」ではなく「どのHSコードが付与されているかをマイページで確認し、疑問があれば事前にRGXへ問い合わせること」です。マイページの「荷物詳細」画面でHSコードを確認できるため、発送前のチェックを習慣化することを推奨します。
楽天グローバル エクスプレス 公式FAQ:HSコードの振り分けについて(対象国と運用方法)
2025年8月29日(米国東部時間)、米国のデミニミス制度(De Minimis Rule)が廃止されました。これは「800ドル以下の輸入品は関税免除」というルールで、長年にわたって越境ECの拡大を支えた制度です。廃止により、金額にかかわらずすべての米国向け輸入品に関税が課されることになりました。
RGXはこれを受け、米国向けの一部配送方式(スタンダードエコノミー・エコノミーエア・船便)を2025年9月30日に一時停止しています。現在はスーパーエクスプレス(DHL・FedEx)のみ対応可能な状態が続いており、商品制限もある状況です。これは通関業従事者にとって見逃せない制度変化です。
制度廃止前後で何が変わったかを整理します。
| 項目 | 廃止前(〜2025年8月28日) | 廃止後(2025年8月29日〜) |
|---|---|---|
| 800ドル以下の荷物 | 関税免除(デミニミス) | 関税課税対象(原則15%) |
| HSコード(10桁) | 不要 | 商業インボイスへの記載が必要 |
| 原産国の記載 | 任意 | 必須 |
| 通関書類の複雑さ | 簡易 | 一般貿易と同等の対応が必要 |
関税率は現在、日本からの輸出品に対して15%が適用される見込みとして示されています(一部品目を除く)。例えば3万円の商品なら約4,500円の関税が追加でかかる計算です。ハイエンドの電子機器やブランド品であれば、数万円単位での追加負担も珍しくありません。
米国向けの通関は「転送だから簡単」という時代が終わりました。これは原則です。小口の荷物にも一般貿易と同等の書類対応が求められるようになったことで、通関業者の関与機会は逆に増えています。依頼人への説明責任も含め、制度変化への継続的なウォッチが必要です。
チリでは2025年10月に越境EC向けのVAT新税制が導入されたことを受け、RGXは2026年3月31日をもってチリへの発送を停止することを決定しています。中東向けも情勢悪化を理由に複数国が一時停止中です。制度・情勢の変化によって突然配送できなくなるリスクがある点は、依頼人に予め伝えておくべき重要事項です。
ジェトロ:米国デミニミス制度廃止の衝撃と越境ECへの影響(2025年10月)
輸入国での関税・付加価値税(VAT)・物品サービス税(GST)は、RGXが代理納付する国とそうでない国があります。この仕組みを正確に理解していないと、依頼人が「届いたら追加請求が来て困った」という事態につながります。
RGXが現在GST・VATの事前徴収(代理납付)を行っている国と地域は、オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・シンガポールの4カ国です。これらの国向け発送では、RGXが輸入申告時に代わりに税を納付するため、受け取り時に別途税金を支払う必要がありません。実務上はスムーズな受け取りにつながります。
それ以外の国・地域では、輸入関税や税金は到着後に受取人が支払うケースがほとんどです。支払い方法は「配送員に手渡し」「後日送付される納付書での支払い」など国によって異なります。RGXは発送前にこれらの金額を提示できる立場にありません。関税の発生可否や税率は「現物を見た輸入国税関の判断による」と明言しており、事前の確定額を提示することは不可能な構造になっています。
また、関税が発生した荷物が通関を通過できなかった場合、RGXへ返送されることがあります。返送から30日以内に依頼人が再発送・国内転送などの対応をしなければ、廃棄処分になります。廃棄の場合でも処理手数料(1,000円+実費)が発生します。送料の返金はありません。返送・廃棄リスクは依頼人への事前説明で必ず触れておくべき内容です。
楽天ポイントを活用すると送料の1%が通常ポイントとして付与され(楽天カード払いで追加1%)、支払いにも充当できます。ただし商品代金・輸入税・関税にはポイントを使えません。あくまで「RGXへの発送手数料部分のみ」がポイント対象です。依頼人がポイントで「全部まかなえる」と誤解しないよう、適用範囲を正確に案内しましょう。