通関業務従事者は刑事罰の没収と行政没収を区別せず使うと判断ミスします。
没収とは、犯罪に関係のある物の所有権を国に移し、国庫に帰属させる刑罰または行政処分のことです。日本の刑法9条および19条に規定され、死刑や懲役などの主刑に付加して科される「付加刑」として位置づけられています。付加刑である以上、没収だけを単独で科すことはできず、必ず懲役、禁錮、罰金などの主刑と一緒に言い渡されます。
没収の本質は、犯罪に関連する物の所有権を原所有者から剥奪して国庫に帰属させる処分で、犯罪者から財産的利益を剥奪することを内容とする財産刑の一種です。主として犯罪予防を目的として没収されるものと、犯罪に基づく不正な利益を犯罪者の手元に残さないことを目的として没収されるものに大別できます。
参考)https://learninglaw.net/criminal-law/criminal-law-general-part/confiscation/
刑法19条は、没収の対象となる物を以下の4つに分類しています。
参考)https://wakailaw.com/keiji/8299
つまり没収が基本です。
刑法における没収は、物の所有権をはく奪して国庫に帰属させる処分として、刑法第9条で付加刑と明記されています。主刑(死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料)とは異なり、単独では言い渡されることがありません。
参考)刑事罰とは? 行政罰との違いや種類、刑の消滅方法などまとめ|…
没収の対象物については、原則として犯人以外の者に属しない物に限定されますが、例外として犯罪後に情を知って取得した第三者の物も没収可能です。この規定により、犯罪の共犯者や犯罪を知りながら物を引き受けた者の財産も没収の対象となります。
これは厳しいところですね。
参考)刑事罰と行政罰
拘留または科料のみが規定されている軽微な罪を犯した場合は、犯罪組成物件を除き、特別の規定がなければ没収の対象物とはされません。つまり、罪の重さによって没収の適用範囲が変わってきます。
覚せい剤取締法違反などの禁止薬物の所持罪では、よく没収が科されます。薬物事犯における薬物そのものが犯罪組成物件として没収され、犯罪予防の観点から再び社会に出回ることを防ぐ目的があります。
参考)没収|横浜の弁護士による無料相談|横浜ロード法律事務所
関税法における没収は、刑事罰としての没収(関税法118条)と行政処分としての没収(関税法69条の2第2項、69条の11第2項)の2種類が存在します。この2つは法的性質が全く異なり、通関業務従事者にとって区別が極めて重要です。
参考)https://ynu.repo.nii.ac.jp/record/12129/files/31-1_5.pdf
関税法118条の必要的没収は、禁制品輸入罪や密輸貨物運搬罪などに関して、禁制品や密輸品を刑事裁判を通じて必ず没収することを定めています。例えば、金地金の密輸事件では、密輸した金地金自体が犯罪組成物として没収の対象とされます。平成27年の事例では、暴力団幹部が懲役2年6月、罰金500万円とともに金地金112点の没収が言い渡されました。
参考)グローバルビジネスの基礎知識⑧~輸出入してはならない貨物
一方、行政没収は刑事裁判を経ずに税関長が独自に執行できる点が特徴です。知的財産権侵害貨物については、認定手続きを経た後、税関長が輸出されようとする対象貨物を没収して廃棄することができます。この場合、不服申立て(税関長に対する再調査の請求または財務大臣に対する審査請求)を行わない限り、経過日の翌日に自動的に没収されます。
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参考)https://www.customs.go.jp/kaisei/tsutatsu/2022tsutatsu/2022tsutatsu204/annex4_1.pdf
税関当局が税関法に基づいて没収対象と判断した品物は、関税当局に差し押さえられる場合があり、通常は偽造品、国内で禁止または違法とされている商品、または虚偽の申告が故意に行われたと判断された場合です。また、貨物は通関手続きが行われる仕向国だけでなく、貨物が通過する経由地でも没収される可能性があります。
通関業務では「没収」「押収」「没取」の3つの用語が使われますが、それぞれ法的意味が異なります。混同すると実務上の判断を誤る可能性があるため、正確な理解が必要です。
参考)「没収」と「押収」の違いとは?意味や違いを分かりやすく解釈
押収は刑事訴訟法上の手続きで、証拠となるものや犯罪に関連する物を一時的に取り上げることをいいます。押収された物は捜査や裁判が終わるまで保管され、裁判の結果次第では所有者に返還されることもあります。
つまり一時的な措置です。
没取は刑罰ではなく、行政庁や裁判所が物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる行政処分のことです。没取の典型例は、保釈された被告人が逃亡をはかるなどして保釈が取り消されたときに、保釈保証金が裁判所により没取されるケースです。刑罰ではないため、犯罪の成立を前提としません。
没収は前述のとおり、刑罰としての没収と行政処分としての没収の2種類があり、犯罪に関連する物の所有権を国庫に帰属させる点で共通しています。刑罰としての没収は裁判を経て確定し、行政没収は税関長などの行政機関が独自に執行できる点が異なります。
通関業務で貨物が「差し押さえられた」という場合、それは押収の段階にあり、まだ没収が確定していない状態を意味します。この時点で適切な対応(不服申立てや正しい申告の提出など)を取れば、没収を回避できる可能性があります。
没収には追徴という制度もあります。没収の対象物が費消などによって失われて没収できないときには、その価額を追徴します。例えば、密輸した金地金をすでに売却して現物がない場合でも、その金額相当を追徴されることになります。
通関業務従事者が実務で特に注意すべきなのは、刑事罰としての没収と行政没収が並行して適用される場面です。関税法における刑罰には、刑法総則に対する特別規定として予備罪、両罰規定、過失犯、必要的没収・追徴規定などがあります。
金地金の密輸に対しては厳正な処分がなされており、密輸した金地金自体も刑法の規定により犯罪組成物として没収の対象とされています。実際の事例では、韓国から国内線機として別の空港に向けて金地金を運び出そうとした事件で、主犯者に懲役2年6月、罰金500万円とともに金地金の没収が言い渡されました。この場合、少なくとも約3,000kg(約140億円相当)を国内で売却していたことが判明しています。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/gold/20171107_gold01.pdf
麻薬類の輸出入についても、税関長は輸出されようとする対象貨物を没収して廃棄することができます。ただし、政府が輸出するものおよび他の法令の規定により輸出することができることとされている者が当該地の法令の定めるところにより輸出するものは除かれます。
廃棄が原則です。
知的財産権侵害貨物については、認定手続きを経た後に税関長が没収・廃棄を執行できますが、回路配置利用権を侵害する物品は含まれません。この場合、認定通知を受け取った者が経過日までに不服申立てや貨物の廃棄などの対応を取らなければ、経過日の翌日に自動的に没収されます。
通関業務では、貨物が「税関でとめられた」という連絡を受けた時点で、それが行政没収の対象なのか、刑事手続きに進む可能性があるのかを見極める必要があります。行政没収であれば不服申立てによって没収を回避できる余地がありますが、刑事罰としての没収が適用される場合は、刑事裁判の結果によって決まります。
貨物は通関手続きが行われる仕向国だけでなく、貨物が通過する経由地でも没収される可能性があるため、国際輸送の全経路において法令遵守が求められます。特に、虚偽の申告が故意に行われたと判断されると没収のリスクが高まるため、申告内容の正確性が極めて重要です。
関税法違反で告発される事例は継続的に発生しており、例えば令和7年にはアメリカ合衆国からの航空貨物を利用した麻薬輸入未遂事件で犯則者が告発されています。このような事例からも、通関業務における法令遵守の重要性と、没収制度の実効性が理解できます。
参考)https://www.customs.go.jp/kyotsu/hodo/jikenhodo/2025jiken/jiken2025.htm
税関のカスタムスアンサー「2501 輸出してはならない貨物」では、輸出禁制品の詳細リストが確認できます