付加価値税と消費税の違い:通関業務に関わる基本税制の仕組み

付加価値税と消費税は名称が異なりますが、実は同じ仕組みを持つ間接税です。通関業務に関わる方が知っておくべき両者の違い、税率、計算方法、国際的な取り扱いの差をわかりやすく解説します。輸入時の税務処理で損をしていませんか?

付加価値税と消費税の違い

日本の消費税は輸出還付で利益を得られると思っていませんか?実際は課税事業者登録がないと1円も還付されません。

この記事で分かる3つのポイント
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付加価値税と消費税の本質

名称は違うが仕組みは同じ間接税で、流通段階ごとに付加価値へ課税する方式を採用

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輸入時の税金計算の仕組み

CIF価格に関税を加えた額に対して消費税が課されるため、実質的な負担額は商品価格より高くなる

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国際的な税率と制度の違い

日本は単一税率10%だが、EUなど多くの国は複数税率を採用し、税率も5%から27%まで幅広く存在

付加価値税と消費税は同じ仕組みの税


付加価値税(VAT: Value Added Tax)と日本の消費税は、実質的に同じ仕組みを持つ間接税です。どちらも最終消費者が税負担をする点で共通しており、流通段階ごとに付加価値へ課税する「仕入税額控除方式」を採用しています。
参考)付加価値税 - Wikipedia


つまり消費税が基本です。
日本では1989年に導入される際、政策的配慮により「消費税」という名称が採用されましたが、その仕組みはまさに付加価値税そのものです。欧州諸国で広く採用されている付加価値税は、加盟国ごとに異なる複数税率を特徴としており、事業者間の取引でも税が課されるものの、各段階での税額控除により最終消費者の負担となります。
参考)日本の消費税を徹底解説:欧米の税制度との比較と外資系企業への…


ただし、名称の違いには意味があります。「消費税」は消費者の負担を強調した表現であり、「付加価値税」は価値の増加に着目した表現です。通関業務従事者にとっては、この違いが輸出入の税務処理に影響を与えることを理解しておく必要があります。
参考)「付加価値税」と「消費税」違い:仕組み、名称の背景、国際的な…

付加価値税の課税対象と計算の仕組み

付加価値税は、モノやサービスが生み出される付加価値そのものに課税される税制です。一方、日本の消費税は消費行為に対して課税される点で、課税のタイミングと概念が若干異なります。
参考)付加価値税って?


付加価値税の計算では、各流通段階で事業者が受け取った売上税額から、仕入れ時に支払った税額を控除する仕組みが採用されています。例えば、製造原材料を1.00ドルで仕入れた物品メーカーが小売業者に1.20ドルで卸す場合、メーカーは0.20ドルの利益を手にします。小売業者が消費者に税込1.65ドル(1.50ドル×1.10)で販売すると、小売業者は0.15を納税し、残り0.30の利益を得る計算です。​
これが原則です。
この仕組みにより、最終的な税負担は消費者のみが負い、事業者は税の転嫁が可能になります。通関業務において、この控除システムを正しく理解していないと、輸入時に支払った税額を適切に控除できず、事業者が余分な税負担を抱えるリスクがあります。​

消費税と付加価値税の税率比較

日本の消費税は現行では単一税率10%(一部食品などは軽減税率8%)が採用されています。これに対し、付加価値税を導入している国々では、税率が5%から27%まで幅広く設定されています。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/d-globalbusiness-250523-2.php


具体的には以下のような税率が各国で採用されています:

税率は国により異なります。
約160か国でVATまたは類似の税制(GST=Goods and Services Tax)が導入されており、これは国際標準の間接税制度となっています。通関業務に従事する方は、輸出入先の国ごとに税率が異なることを前提に、取引先や顧客へのコスト提示を行う必要があります。​
日本の消費税は、輸出取引に対する免税制度がシンプルで、輸出を積極的に行う企業にとっては有利な面があります。一方、EU諸国では輸出免税を適用するために輸出書類や仕入れに関する適切な帳簿管理が求められ、管理の煩雑さが増します。​

輸入時の付加価値税と関税の計算方法

海外から商品を輸入する場合、CIF価格(商品価格+運賃+保険料)に関税を加えた額に対して消費税が課されるため、実際の負担が大きくなることが特徴です。
参考)関税・消費税・VATの違い|個人輸入・越境ECで失敗しないた…


計算手順は次の通りです:
参考)https://www.dhl.com/discover/ja-jp/logistics-advice/essential-guides/what-is-import-duty


  1. 関税の計算:CIF価格×関税率=関税額

  2. 課税価格の算出:CIF価格+関税額=課税価格

  3. 輸入消費税の計算:課税価格×10%(または8%)=輸入消費税額

課税価格が条件です。
例えば、CIF価格が100,000円、関税率が5%の商品を輸入する場合、関税額は5,000円となり、課税価格は105,000円です。この105,000円に対して消費税10%が課されるため、輸入消費税は10,500円となります。つまり、商品価格だけでなく関税や送料を含めた「課税価格」が対象になるため、実際の負担が予想以上に増えることがあります。
通関業務において、この計算を正確に行わないと、顧客への請求額に誤りが生じたり、自社の利益計算が狂ったりするリスクがあります。輸入品を保税地域から引き取る際には、品名、数量、金額等と関税や消費税の金額を記載した輸入(納税)申告書を税関長に提出し、引き取り時までに納付する必要があります。
参考)輸入における消費税の課税:日本

通関業務で知っておくべき付加価値税の国際的取り扱い

通関業務に関わる方が特に注意すべきは、国や地域によって付加価値税の申告頻度、登録基準、帳簿要件が異なる点です。EUはVAT制度を共通の枠組みで運用していますが、実務上は国ごとに税率・申告頻度・登録基準・帳簿要件などが異なり、単一のルールで完結できません。​
タイの付加価値税を例に挙げると、輸入時には通関段階で輸入VATが課され、輸入者が納税義務を負います。過少申告の場合、輸入関税は追徴税額の200%、輸入VATは追徴税額と同額の100%のペナルティが科される可能性があります。
参考)https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/pdf/2016/07/07_14-11-21-gjpth-kpmg-academy-vat-and-custom.pdf

厳しいところですね。
これに対し、日本の輸出免税制度は比較的シンプルです。ただし、適格請求書発行事業者として登録されていない免税事業者は、輸出還付を受けることができません。つまり、課税事業者登録がないと、輸出時に支払った消費税が1円も還付されないという事態が発生します。​
越境EC取引においては、デジタルサービスや低額商品の輸入に関するVAT処理が複雑化しており、EU諸国では2021年以降、オンライン販売事業者に対して新たな申告義務が課されています。通関業務従事者は、こうした国際的な税制変更に迅速に対応するため、専門家との連携や最新情報の入手が不可欠です。
参考)https://www.ijournalse.org/index.php/ESJ/article/download/2227/pdf

税務ソフトウェアやVAT申告代行サービスを活用することで、複数国にわたる税務処理の負担を軽減できます。特に外資系企業や越境EC事業者と取引する場合は、各国の税制に精通した税理士やコンサルタントとの連携が重要になります。​
JETRO(日本貿易振興機構)の輸入における消費税の課税に関するQ&Aでは、輸入取引にかかわる申告・納付の詳細が解説されています。
国税庁の税の国際比較ページでは、日本と諸外国の消費税・付加価値税の税率比較が掲載されています。





EU付加価値税の研究―わが国,消費税との比較の観点から―