表示義務違反の罰則を通関業者が知らないと許可取消になる

表示義務違反の罰則は「指示→命令→罰金」の流れだと思っていませんか?実は原産地虚偽表示は指示なしで即懲役2年・罰金200万円が適用される場合も。通関実務に直結するポイントを解説します。

表示義務違反の罰則と通関業者が押さえるべき法的リスク

原産地の虚偽表示は、指示も命令も飛ばして即懲役2年・罰金200万円があなたに直撃します。


この記事の3つのポイント
⚖️
罰則は「段階的」とは限らない

食品表示法では通常「指示→命令→罰則」の流れですが、原産地虚偽表示とアレルゲン・消費期限など安全性関連の表示義務違反は、指示・命令なしで即座に刑事罰が適用されます。

🚢
関税法71条による輸入不許可リスク

原産地を偽った表示・誤認を生じさせる表示がある貨物は、税関が輸入を許可しません。表示の訂正・積み戻しが必要となり、現場での対応コストが急増します。

🏢
通関業者も監督処分の対象になる

通関業者や通関士が関連する違反があった場合、通関業法による業務停止(最大1年)や許可取消の監督処分を受けることがあります。荷主だけの問題ではありません。


表示義務違反の罰則が「即時適用」になるケースとは

通関業務に従事していると、「表示義務に違反しても、まず指示が来て、それから命令があって、最後に罰則でしょ」という感覚を持つ方が少なくありません。確かに食品表示法における通常の違反フローはそうした段階を踏みます。ところが、特定の違反類型については、この「段階的アプローチ」がまったく適用されないのです。


食品表示法が定める罰則の即時適用パターンは大きく2つあります。第一は原産地・原料原産地の虚偽表示(食品表示法第19条)。第二はアレルゲン・消費期限・加熱の要否など、食品の安全摂取に重大な影響を及ぼす事項の不表示(食品表示法第18条)です。これらは指示も命令も省略されて、直接刑事罰が発動します。


具体的な数字を確認しておきましょう。原産地虚偽表示の罰則は行為者に対して2年以下の懲役または200万円以下の罰金、さらに法人には1億円以下の罰金が科されます(食品表示法第22条第1項)。安全性関連の表示不備が重篤な場合は、回収命令・業務停止命令違反に至ると行為者に3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人に3億円以下の罰金という上限まで引き上がります。


200万円という金額は、中小規模の通関業者や輸入者にとって決して軽い額ではありません。東京都内の小規模事業者の月商に匹敵するケースも珍しくないでしょう。つまり「最初は行政指導があるから大丈夫」という考えは、原産地関連の表示義務違反には通用しないということです。


































違反の種類 手続きの流れ 行為者への罰則 法人への罰則
一般的な表示義務不備 指示 → 命令 → 罰則 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 1億円以下の罰金
原産地・原料原産地の虚偽表示 即時罰則(指示・命令なし) 2年以下の懲役または200万円以下の罰金 1億円以下の罰金
安全性重要事項の不表示(アレルゲン・消費期限等) 即時罰則(指示・命令なし) 2年以下の懲役または200万円以下の罰金 1億円以下の罰金
回収・業務停止命令への違反 命令違反段階で発動 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 3億円以下の罰金


それが条件です。原産地と安全関連の表示は「即発動」と覚えておく必要があります。


通関実務の観点から重要なのは、輸入者が食品表示法上の「食品関連事業者等」に該当するという点です。海外から食品を輸入する輸入者は、製造者・販売者と同等の表示義務を負います。つまり、輸入申告を代行する通関業者としても、依頼人(荷主)の表示状況を見落とすと、業務上の注意義務が問われる可能性が生じます。


参考:消費者庁「食品表示法に基づく指示・命令・罰則の体系(食品表示ガイド)」
消費者庁「食品表示ガイド」(PDF)|原産地・アレルゲン表示義務違反の罰則体系を図解で確認できます


表示義務違反の罰則につながる「関税法第71条」の実務的意味

食品表示法の話とは別に、通関の現場で直撃するのが関税法第71条の存在です。この条文は「原産地について直接若しくは間接に偽った表示または誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可しない」と明確に規定しています。


「偽った表示」だけが問題なのではありません。ここが通関従事者が特に注意すべき点です。誤認を生じさせる可能性がある表示も同様に規制対象になります。たとえば「MADE IN ROC(Republic of China=台湾)」という略称は、一般消費者が判別しにくいとして誤認表示と判断された事例があります。また、「USA」のロゴが印刷されたデザインのTシャツが中国製だった場合も、原産地誤認の恐れがあるとして税関に指摘されます。


税関が誤認表示を発見した際の対応手順は次のとおりです。



  • 🔴 税関が輸入を許可しない(通関ストップ)

  • 🔴 輸入申告者(通関業者含む)に即時通知

  • 🔴 期間を指定して「表示の抹消・訂正」または「積み戻し」を選択させる


この「期間の指定」が現場では非常に重くのしかかります。たとえば内箱・個品すべてに誤認表示があった場合、数万点に及ぶラベルの張り替え作業が発生します。倉庫の延長使用料、作業員の手配コスト、荷主への説明対応──これらすべてが、表示1つの確認不足から生じるのです。


積み戻しを選択した場合も同様です。すでに日本の港に着いた貨物を送り返すコストは決して小さくなく、輸送費・保管料・再輸出手続き費用が一気に発生します。実務上は、表示の訂正対応を選ぶケースが多いのですが、それもまた予算外のコストです。


誤認表示への対処は早期発見が原則です。


参考:税関ホームページ「原産地を偽った表示等(関税法第71条の解説と事例)」
税関ホームページ「原産地を偽った表示等」|関税法第71条の条文・規制の趣旨・実務上の対処法が確認できます


表示義務違反の罰則が通関業者自身に及ぶ「監督処分」の仕組み

「表示義務違反は荷主の問題で、通関業者は手続きを代行しているだけ」と思っていると、大きなリスクを見落とします。通関業者は通関業法上の監督処分の対象になるからです。


通関業法第11条に基づき、財務大臣(実務上は各地の税関長が権限委任を受けて運用)は、通関業者が関税法等に違反した場合に次の処分を行うことができます。



  • 📋 口頭または文書による厳重注意

  • ⏸️ 1年以内の期間を定めた通関業務の停止(全部または一部)

  • 通関業の許可の取り消し

  • 📝 業務改善命令


これらは刑事罰とは別の行政処分です。業務停止が下された場合、その期間中は通関業務を行うことができません。実際に2025年5月、大手物流企業ケイラインロジスティックスが保税蔵置場での不適切な貨物取り扱いにより、成田・東京・横浜・名古屋・関西・福岡の各通関営業所において51日間の通関業務全部停止という監督処分を受けています。これはグループ全体の物流オペレーションに甚大な影響を与えた事例です。


また、通関業者に属する通関士個人も懲戒処分の対象になります。通関業法第35条に基づき、関税法等の規定に違反した通関士には戒告・1年以内の業務従事停止・2年間の業務従事禁止といった処分が下されます。通関士として積み上げたキャリアが一時停止あるいは停止となるリスクは、個人レベルで非常に深刻です。


監督処分には重大な二次被害もあります。処分が公表されると荷主企業からの信頼を失い、取引が縮小・解除されるケースがあります。通関業の許可取り消しに至れば、事業の継続そのものが不可能になります。厳しいところですね。


参考:税関「通関業者に対する監督処分の公告(東京税関)」
東京税関「通関業者に対する監督処分の公告」|実際に公告された監督処分の事例を確認できます


表示義務違反の罰則を回避するための実務チェックポイント

リスクを理解したうえで、通関従事者として実際にどのような確認をすればよいか、具体的な実務手順を整理します。


① 関税法71条チェック(原産地表示の確認)


通関申告前に、輸入貨物の外装・内箱・商品本体の原産地表示を確認します。誤認を生じさせる略称(ROC・PRCなど)、他国を連想させるブランド名・デザイン、存在しない伝統産地名の使用などが問題になります。疑義があれば荷主に確認し、必要なら事前に税関に相談することが最善策です。


② 食品表示法チェック(邦文表示の義務確認)


輸入食品を消費者向けに日本国内で販売する場合、外国語表記のみではいかなる食品も食品表示法違反になります。アレルゲン・消費期限・保存方法・原材料名・原産国名など、邦文(日本語)での表示が義務付けられています。「英語で書いてあるから分かるだろう」は法的には通用しません。この点は原則です。


③ 他法令の確認(食品衛生法・家庭用品品質表示法など)


輸入品の種類によって適用される他法令は異なります。食品は厚生労働省の輸入届出・検疫、雑貨類は家庭用品品質表示法、繊維製品には繊維製品品質表示規程、医療機器・化粧品は薬機法など、それぞれ固有の表示義務が存在します。貨物の品目ごとに確認が必要です。


④ 不正競争防止法との競合リスクの認識


原産地に関する虚偽表示は、関税法や食品表示法だけでなく、不正競争防止法にも抵触する場合があります。実際に、外国産わかめを「鳴門産」と偽った事案では、食品表示法違反に加えて不正競争防止法違反(同法第21条第2項第1号)も適用され、代表取締役が懲役10ヶ月(執行猶予3年)の有罪判決を受けています(静岡地判令和4年6月14日)。不正競争防止法が競合すると量刑が重くなる傾向があります。これだけは例外として押さえておきましょう。





























確認タイミング 確認箇所 主な根拠法令
輸出地・出荷前 外装・内箱・商品本体の原産地表示 関税法第71条
輸入申告前 邦文ラベルの貼付・内容確認 食品表示法・家庭用品品質表示法等
輸入申告前 食品衛生法・他法令の該非確認 食品衛生法・薬機法等
疑義発生時 税関への事前相談・照会 各税関の原産地表示相談窓口


輸出側の工場や仕入れ先への事前指示も重要です。輸入者の立場から「原産地表示の仕様書」を英文・中文などで作成して共有しておくと、現地での表示ミスを未然に防げます。これは使えそうです。


参考:ミプロ「輸入品の表示とマークQ&A 2023」(一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会)
ミプロ「輸入品の表示とマークQ&A 2023」(PDF)|食品・雑貨・繊維等の品目別義務表示と罰則を網羅的に確認できます


通関業者が見落としがちな「表示義務違反の罰則」に関する独自視点:指示公表による信用毀損リスク

刑事罰や業務停止という直接的なダメージ以外にも、表示義務違反には「公表」という目に見えにくいリスクが存在します。これは多くの実務解説では触れられていない点です。


食品表示法第7条は、消費者庁長官等が指示または命令を行った場合、その旨を公表しなければならないと規定しています。つまり、違反した食品関連事業者の氏名・住所・違反事実・処分内容が外部に公開されます。インターネット上に残るこの情報は、取引先・消費者・メディアの目に触れます。


通関業者の立場から見ると、荷主がこうした公表を受けた場合、「その通関手続きを担当していた業者」として暗示的に信用が傷つくケースも考えられます。また、荷主から「なぜ通関前に表示チェックをしてくれなかったのか」というクレームが発生することも実際に起きています。


一方、公表を免れる条件もあります。違反が常習性のない過失によるもので、事業者が直ちに表示を是正し、消費者への情報提供(社告・ウェブサイト掲示等)を自主的に行っている場合は、消費者庁の指針において公表を省略できるとされています。つまり、違反発覚後の初動対応の速さが、公表の有無を左右します。


通関業者として荷主をサポートする立場から考えると、違反を発見した際に速やかに是正を促し、自主的な改善措置を取るよう助言できるかどうかが、信頼関係を守る上で極めて重要です。言い換えれば、通関業者の業務価値は「申告書を作る」だけでなく「リスクを未然に把握して荷主に伝える」点にも大きくあります。



  • 📢 公表されると:氏名・住所・違反内容・処分内容がウェブ上に残る

  • ✅ 公表を回避できる条件:過失による一時的違反 + 即時是正 + 自主的な情報提供

  • 🕐 初動対応の速さが:公表リスクを左右する最大の変数


指示公表の内容は消費者庁のウェブサイトで誰でも閲覧できます。荷主の社名がそこに掲載されることの事業リスクは、罰金額と同等かそれ以上の経営ダメージになり得ます。これが条件です。是正スピードが明暗を分けると覚えておきましょう。


参考:消費者庁「食品表示法に基づく指示・公表の指針」
消費者庁「食品表示基準違反に係る指示及び指導並びに公表の指針」(PDF)|公表される条件と公表を回避できる要件を確認できます