通関申告時の書類確認だけでは不正競争防止法違反を見逃します。
不正競争防止法違反の事例として最も深刻なのが営業秘密の侵害です。通信教育業を営むベネッセでシステム開発に従事していた派遣労働者が、約3000万件の顧客データを私物のスマートフォンに複製して持ち出し、このうち約1000万件を名簿会社に開示した事件では、東京高等裁判所は懲役2年6月および罰金300万円の実刑判決を下しました。犯行は約2年間にわたって常習的に行われ、利益目的で不正な手段による取引拡大を図ったと認定されています。
参考)不正競争防止法違反とは?会社のデータ持ち出しは営業秘密侵害罪…
厳しいですね。
回転寿司チェーン「かっぱ寿司」の運営会社社長(当時)が、ライバル大手の仕入れ情報を持ち出したとして不正競争防止法違反の疑いで逮捕された事件も注目を集めました。この事例では、競合他社の営業秘密を不正に取得・使用する行為が問題となり、企業間競争における公正さが厳しく問われる結果となりました。
参考)不正競争防止法とは|違反の事例|注意点|弁護士が解説
営業秘密侵害罪の法定刑は、個人に対しては10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金、またはその併科です。法人の場合、行為者だけでなく法人自体も両罰規定により処罰対象となり、最高5億円の罰金刑が科されます。つまり、従業員一人の不正行為が企業全体に巨額の損害をもたらすということですね。
参考)不正競争防止法に違反した場合の措置・罰則 - 人事・労務・労…
通関業務に従事する者にとって、不正競争防止法違反物品の識別は極めて重要な職務です。関税法69条の11により、不正競争防止法に違反する物品は輸入禁制品として指定されており、国内への輸入は認められず、違反者には刑事罰が科されます。
参考)http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2011_07_947.pdf
これは必須です。
具体的には、故意に知的財産侵害物品を輸入した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその併科という重い刑罰が課せられます。代表者や従業員が法人の業務として違反行為を行った場合、その法人に対しても1000万円以下の罰金が課されるため、通関業者は申告内容の十分な確認が求められます。
参考)偽造品の輸入を税関で差し止めるにはどうすればよいか - BU…
税関は知的財産侵害物品の疑いがある疑義貨物を発見した際、輸入行為が悪質と判断した場合には犯則調査を行います。その結果、輸入者に刑事罰が課されるだけでなく、悪質性の程度によっては輸入者が関税法違反により逮捕される事例もあるため、通関業務従事者は慎重な対応が不可欠です。
経済産業省が公開する「改正不正競争防止法参考事例集」には、具体的な違反パターンと判断基準が詳細に記載されており、通関業務の実務判断に有用です。
平成27年の不正競争防止法改正により、営業秘密の保護が大幅に強化され、営業秘密侵害品の譲渡や輸出入等が不正競争行為に追加されました(不正競争防止法2条1項10号)。この改正を受けて関税法も改正され、税関において営業秘密侵害品の輸出入を差し止めることが可能になりました。
これは使えそうです。
権利者は、侵害品が輸入されようとする場合に税関長に対して認定手続を執るべきことを申し立てることができます(関税法69条の13)。税関長は侵害品に該当する貨物があると思料するときは、侵害品に該当するか否かの認定手続をとらなければなりません。
認定手続では、権利者と輸入者がそれぞれ証拠や意見を提出し、1か月程度を目途に税関が判断を下すこととされています。輸入者が所定の期間内に「侵害の該否を争う旨の申出書」を提出しない場合には、権利者の証拠・意見の提出は不要となり、迅速な処理が可能です。一方、輸入者が争う旨を申し出た場合には、権利者は証拠・意見を提出することで自己の権利を主張できます。
参考)【税関】模倣品の水際取締 ~輸入差止申立申請のご紹介~
つまり事前申立が重要です。
他社の商品の形態と実質的に同一の形態の商品を販売する行為は、不正競争防止法2条1項3号により違反行為とされ、個人なら5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)、法人なら3億円以下の罰金という刑罰が科されます。
痛いですね。
具体的な事例として、原告のユニットシェルフ(パーツを選んで組み合わせることができる棚)と類似の形態のユニットシェルフを販売した行為が不正競争行為と認定されたケース(知財高判平30.3.29)があります。また、原告の三角形のピースを敷き詰めるように配置することなどからなる形態のバッグ(BAO BAO)と類似の形態のバッグを販売した行為についても、不正競争防止法違反が認められました(東京地判令元.6.18)。
参考)不正競争防止法に違反するとどうなる?違反事例や罰則を弁護士が…
通関業務において、こうした形態模倣品を見極めることは容易ではありません。商品の外観だけでなく、発売時期、著名性、独自性などを総合的に判断する必要があります。模倣品対策の実務では、税関での輸入差止申立制度を活用し、権利者が事前に情報を提供しておくことで、税関職員が疑義貨物を発見しやすくなります。
商標権侵害と不正競争防止法違反を被侵害権利として輸入差止申立を行うことが実務では一般的です。海外で製造・販売された偽造品が日本に輸入されることを防止するためには、税関に対する知的財産侵害物品の輸入差止申立が最も有効な手段となります。
通関業務従事者が不正競争防止法違反のリスクを回避するためには、輸入申告時の詳細な確認が不可欠です。特に、営業秘密侵害品や形態模倣品、商標権侵害品などの疑義貨物については、以下のような確認が求められます。
まず、輸入者が正当な権利者または正規の販売代理店であるかを確認することが基本です。並行輸入品の場合でも、真正品であることの証明や、商標権者の了解があるかどうかを慎重に確認する必要があります。
参考)https://www.jpo.go.jp/support/ipr/kyusai/zeikan.html
次に、技術データや設計図などの電子媒体を含む貨物については、営業秘密侵害の可能性を考慮すべきです。特に、退職者や元従業員が関与する輸入案件では、営業秘密の不正取得・使用の可能性が高まります。顧客リストや製造プロセスに関する情報が含まれる場合、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす営業秘密に該当する可能性があります。
参考)不正競争防止法とは?違反事例や罰則をわかりやすく解説|改正対…
それで大丈夫でしょうか?
税関が公開する「輸入差止申立受理状況」を定期的に確認することで、どのような商品・ブランドが保護対象となっているかの最新情報を入手できます。この情報をもとに、疑義貨物の早期発見と適切な対応が可能になります。
また、不正競争防止法違反物品の輸入は、輸入者本人だけでなく、通関業者にも法的責任が及ぶ可能性があります。善意無過失であっても、業務上の注意義務を怠ったと判断されれば、民事上の損害賠償責任を問われるリスクがあるため、十分な注意が必要です。
特許庁の「税関に対し輸入差止めを申立てる」ページでは、意匠権、商標権、著作権などの知的財産権侵害物品および不正競争防止法違反物品の取扱いについて、実務上の手続が詳しく解説されています。
不正競争防止法は企業間の公正な競争を守るための重要な法律であり、通関業務においても日常的に関わる法規制です。営業秘密侵害や形態模倣品の輸入は、重い刑事罰の対象となるだけでなく、企業の信用失墜や巨額の損害賠償請求につながる可能性があります。通関業務従事者は、最新の法改正情報や税関の運用動向を常に把握し、適切な実務対応を心がけることが求められます。