申告種別LEで知るべき輸出大額通関の実務ポイント

申告種別LEとは何か、少額(SE)との違いや通関フロー、NACCS上の手続きまで実務に直結する情報を解説。あなたが見落としがちなポイントとは?

申告種別LEの輸出通関を正しく理解する

あなたが20万1円の貨物を普通に発送すると、翌日の船積みが間に合わなくなることがある。


申告種別LEとは?3つのポイント
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申告種別LEは「輸出申告(大額)」を意味する

NACCSシステム上で使われるコードで、申告価格が20万円を超える輸出申告に適用される。少額(SE)と区別され、統計品目番号の9桁入力が必須。

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税関審査は区分1〜3の3段階

申告後にNACCSが即時で区分1(簡易審査)・区分2(書類審査)・区分3(現物検査)のいずれかを通知。区分1にならないと許可まで時間がかかる場合がある。

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外為法の該非判定が見落とされやすい

LE申告では安全保障上の輸出管理チェックが必須。該非判定を怠ると外為法違反となり、許可取消や行政罰のリスクがある。


申告種別LEとは何か:NACCSコードの構造と大額・少額の基準

NACCSとは「輸出入・港湾関連情報処理システム(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)」の略称で、現在の日本では99%以上の輸出入申告がこのシステムを通じて行われています。このNACCSの貨物情報照会(ICG業務)画面には「申告種別」という項目があり、そこに表示されるコードのひとつが「LE」です。


LEは"Large-amount Export"に由来するとも解釈され、日本語では「輸出申告(大額)」を指します。つまり、申告種別LEは申告価格が20万円を超える通常の輸出申告であることを示すコードです。


大額と少額の線引きは明確です。輸出申告では、1品目あたりの申告価格が20万円を超える場合は「大額(LE)」、20万円以下の場合は「少額(SE)」という分類になります。この基準は農林水産省の少額貨物輸出額推計資料にも記載されており、実務上の基本として広く認識されています。


重要なのは「品目ごと」の金額で判断される点です。たとえば同じ輸出申告書に複数品目が含まれる場合でも、各品目の価格が20万円以下であれば少額(SE)として処理できる可能性があります。つまり合計額だけで判断しては不十分なのです。







































申告種別コード 内容 価格基準
LE 輸出申告(大額) 20万円超
SE 輸出申告(少額) 20万円以下
LT 特定輸出申告(大額) 20万円超・AEO認定が必要
LR 積戻申告(大額) 20万円超の積戻し貨物
LM 特定製造貨物輸出申告(大額) 製造工場から直送する大額貨物
LN 特定委託輸出申告(大額) 委託者が直接申告する大額貨物


大額申告であるLEでは、統計品目番号(HS番号)を9桁で正確に入力することが必須です。少額(SE)では一定の省略が認められますが、大額の場合はこの入力が貿易統計に直接反映されるため、正確性が強く求められます。これは基本です。


参考リンク(NACCSセンター公式:ICG業務コードと申告種別一覧)。
NACCSセンター公式 ICG(貨物情報照会)画面説明PDF


申告種別LEの通関フロー:EDA登録からNACCS審査区分通知まで

LE(大額輸出申告)の通関手続きは、大きく分けて3つのフェーズで構成されています。それぞれの流れを正確に理解することが、スムーズな通関の第一歩です。


フェーズ1:輸出貨物情報登録(ECR業務)と事前準備


まず、通関業者または輸出者がNACCSの「輸出貨物情報登録(ECR)」業務を行い、貨物の管理番号を発行します。この時点でインボイス(商業送り状)、パッキングリストを準備しておく必要があります。大額申告の場合、インボイスに記載された価格が申告価格の基礎となるため、記載漏れや誤記があると後に区分2(書類審査)へ回されるリスクが高まります。


フェーズ2:輸出申告事項登録(EDA)→輸出申告(EDC)


ECR後、通関業者は「輸出申告事項登録(EDA)」業務で申告内容を入力します。この段階で「大額・少額識別」フィールドに「L」を入力し、申告種別として「E(輸出申告)」を選択します。この組み合わせが申告種別LEを意味します。


その後、「輸出申告(EDC)」業務でNACCSに申告を送信すると、即座に審査区分が通知されます。これが区分1・2・3のいずれかです。


フェーズ3:審査区分に応じた対応と輸出許可


区分1(簡易審査扱い)であれば、申告と同時に輸出許可が下ります。通関実務において最も望ましい結果です。区分2(書類審査扱い)になると、インボイスやパッキングリストをNACCS経由で税関に提出し、税関官署の審査を待つ必要があります。区分3(検査扱い)の場合は、税関職員による現物検査が実施されます。


区分1が取り消されて区分2・3に変更されることはありますが、区分2や区分3から区分1に戻ることは原則ありません。厳しいところですね。


輸出許可が下りると「輸出許可通知書(大額)」が発行されます。この通知書には「申告種別:LE」「区分」「あて先税関」「申告番号」「申告年月日」などが明記されています。輸出を業として行う者は、この書類を一定期間保存する義務があります。



  • 📋 区分1(簡易審査):申告と同時に許可。最速で船積み可能。

  • 📂 区分2(書類審査):インボイス等を税関へ提出。数時間〜1営業日程度かかる場合も。

  • 🔎 区分3(現物検査):税関職員が実際に貨物を確認。日程調整が必要なケースも。


区分1になるかどうかは「通関情報総合判定システム(CIS)」が決定します。CISはNACCSから転送された申告実績・審査・非違(申告誤り)実績・事後調査結果を蓄積しており、過去の実績が良好な輸出者・通関業者は区分1になりやすいといわれています。つまり実績の積み重ねが条件です。


参考リンク(税関カスタムスアンサー:輸出通関手続きの概要)。
税関 Japan Customs「5001 輸出通関手続の概要」


申告種別LEと統計品目番号(HS番号)の関係:9桁入力が必須な理由

大額申告(LE)において、統計品目番号(HSコード)の9桁入力が厳格に求められる背景には、日本の貿易統計の精度維持という重要な目的があります。


日本税関への輸出入申告はすべて、9桁の統計品目番号で行われます。このうち上6桁はHS条約(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)に基づく国際共通番号で、下3桁が日本独自の統計細分となります。


少額申告(SE)では複数の少額品目を代表品目の番号にまとめて申告するケースが認められますが、大額申告では各品目ごとに正確な9桁のコードを入力しなければなりません。この入力が誤っていると、貿易統計データが歪み、後日の税関事後調査で申告誤りが指摘されるリスクがあります。


なお、統計品目番号の末尾(10桁目)に「E」が付いている品目は「普通貿易統計計上除外品目」を意味します。2024年7月の通関協議会資料によれば、「1品目の価格が20万円を超える普通貿易統計計上除外貨物(末尾E)の合算は認められない」と明記されています。これは意外ですね。


大額申告では品目ごとの申告価格も統合処理されます。NACCSのEDA(輸出申告事項登録)業務では、大額申告の場合に限り、同一の輸出統計品目番号を持つ欄の申告価格が自動的に合算処理される仕組みが組み込まれています。HSコードの正確な特定が金額計算にも直結するわけです。


HS番号の調べ方に迷ったときは、税関が公開している「輸出統計品目表(毎年1月更新)」を使うのが最も確実です。また、通関業者や最寄りの税関に照会することも可能です。HSコードを誤って申告してしまった場合、区分2で書類審査が入ることが多いため、事前の確認が必須です。



  • 🔢 9桁の構成:上2桁(類) + 上4桁(項) + 上6桁(号) + 下3桁(統計細分)

  • 🌐 上6桁:国際共通(HS番号)

  • 🇯🇵 下3桁:日本国内の細分番号

  • 末尾E品目:大額でも貿易統計に計上されない特殊品目


参考リンク(税関公式:統計品目番号の調べ方)。
税関 Japan Customs「統計品目番号の調べ方」


申告種別LEとLTの違い:特定輸出申告(AEO制度)活用で保税地域をスキップできる

申告種別コードの中で、LEとよく混同されるのが「LT(特定輸出申告・大額)」です。両者はどちらも大額の輸出申告ですが、手続きの流れと適用条件が大きく異なります。


通常のLE申告では、貨物を保税地域に搬入した後に輸出の許可を受けるのが原則です。保税地域とは税関の管理下に置かれたエリアで、港や空港の近くにあるコンテナヤード(CY)や保税蔵置場がこれにあたります。貨物をいったんここに運び込まなければ許可が下りないため、物理的な移動と時間が必ず発生します。


一方、LT(特定輸出申告・大額)を使えば、保税地域への搬入なしに輸出許可を取得できます。自社の工場や倉庫、港への輸送途中であっても輸出許可が受けられるため、リードタイムが大幅に短縮されます。これは使えそうです。


ただし、LTを使うためには「特定輸出者」としてあらかじめ税関長の承認を受けていることが条件です。これはAEO(Authorized Economic Operator)制度の一つで、コンプライアンス(法令遵守)に優れていると認定された企業だけが利用できます。





























比較項目 LE(通常輸出申告・大額) LT(特定輸出申告・大額)
保税地域搬入 ✅ 必要 ❌ 不要
申告官署 蔵置場所を管轄する税関 どの税関でも申告可能
審査・検査 通常の区分1〜3 コンプライアンス実績が反映・簡易化
利用条件 誰でも利用可 特定輸出者(AEO認定)が必要


AEO認定を受けた特定輸出者は、審査・検査においても実績が考慮されるため、区分1になりやすいという傾向があります。頻繁に輸出を行う企業にとっては、AEO認定の取得を検討する価値は十分あります。特定輸出申告のLTへの移行を視野に入れるなら、まず税関のAEO制度説明資料を一読することを勧めます。


参考リンク(税関カスタムスアンサー:特定輸出者制度の概要とメリット)。
税関 Japan Customs「5601 特定輸出者制度の概要及びメリット」


申告種別LEを使う際に見落としやすい外為法・安全保障輸出管理の確認事項

申告種別LEで輸出申告を行う際、多くの方が手続き面の確認に集中するあまり見落としがちなのが「安全保障貿易管理」です。これは外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく規制で、大量破壊兵器や通常兵器の開発・製造に転用される可能性のある貨物・技術の輸出を管理する制度です。


LE申告の審査区分を決定するCISシステムは、輸出申告の内容が安全保障上の輸出規制に抵触しないかどうかを確認する観点からも機能しています。税関は輸出申告において、輸出令別表第1に掲げられる規制品目(リスト規制)に該当する貨物が、必要な許可を得ずに申告されていないかを重点的にチェックしています。


「該非判定」とは何か?


該非判定とは、輸出しようとする貨物が輸出貿易管理令(輸出令)の規制対象に「該当する(該)」か「該当しない(非)」かを判断するプロセスです。輸出者が自ら行う責任があり、外部のメーカーから判定書を入手した場合でも、最終的な確認責任は輸出者にあります。


気をつけたいのは、「日常的な工業製品」でも規制に引っかかるケースがある点です。たとえば、工作機械・電子部品・化学品など、見た目は一般的な商品でも、スペックによってはリスト規制の対象となります。



  • ⚠️ リスト規制(16品目):輸出令別表第1の1〜15項に掲げる規制品目。経済産業大臣の許可が必要。

  • 🔍 キャッチオール規制:リスト規制非該当品目でも、大量破壊兵器などに転用されるおそれがある場合は規制対象となる。

  • 💰 少額特例:輸出令別表第1の5〜13項・15項の貨物で、総価格が100万円以下の場合は許可不要の特例あり。


外為法違反で輸出許可なしに規制品目を輸出した場合、刑事罰(懲役・罰金)が科されるほか、最長3年間の輸出禁止処分となることもあります。コンプライアンスのリスクとして非常に大きい問題です。


LE申告を行う前に、輸出しようとする貨物が安全保障輸出管理の観点で問題ないかを確認するために、経済産業省が公開している「貨物・技術のマトリクス表」を活用するのが有効です。また、複雑な判断が必要な場合には、専門の通関業者や安全保障貿易管理の専門機関である「安全保障貿易情報センター(CISTEC)」に相談する方法もあります。確認するアクション一つで大きなリスクを回避できます。


参考リンク(税関公式:輸出関係他法令の概要)。
税関 Japan Customs「5501 輸出関係他法令の概要」


参考リンク(経済産業省:安全保障貿易管理の概要)。
経済産業省「安全保障貿易管理の概要」